スメルハラスメント(スメハラ)とは?
具体例・職場への悪影響・対処法などを
分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 社内研修に使える!研修資料3点セット |
※この記事は2023年11月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
研修資料3点セットを無料配布中!
「研修でそのまま使う」「自社にあわせてカスタマイズしてから使う」などといった用途で自由にご活用ください。
目次
スメルハラスメント(スメハラ)とは
「スメルハラスメント(スメハラ)」とは、臭いに関して周囲の人に不快感を与える行為です。
近年ではセクハラやパワハラをはじめとして、多様な種類のハラスメントが社会的に問題となっています。その中で、職場において不快感を覚える要素の一つである悪臭に関連して、スメハラもハラスメントの一種として指摘されるようになりました。
スメハラに当たり得るものの具体例
スメハラに当たり得るものとしては、以下の例が挙げられます。
①不快な体臭・口臭
②タバコの臭い
③強烈な香水・コロンの臭い
④柔軟剤の臭い
具体例1|不快な体臭・口臭
風呂に入らない、歯磨きをしないなどの不衛生な生活を続けていると、体臭や口臭がきつくなることがあります。
不快な体臭や口臭は、周囲の従業員にとっては非常に気になるものです。不快感を覚えた周囲の従業員は、仕事のパフォーマンスが低下してしまうおそれがあります。
具体例2|タバコの臭い
ヘビースモーカーの従業員は、強烈なタバコの臭いを発しているケースがあります。
近年では喫煙率が大幅に低下しており、タバコの臭いに強い嫌悪感を覚える人が増えている状況です。このような状況において、身体や衣服から強烈なタバコの臭いを発することはスメハラに当たる可能性があります。
具体例3|強烈な香水・コロンの臭い
香水やコロンなどの香りは、人によって好き嫌いが分かれるものです。心地よいと感じる人もいる一方で、強い嫌悪感を覚える人も存在します。
少々の香りであれば大きな問題にはなりませんが、香水やコロンの香りがあまりにも強すぎる場合は、スメハラに当たる可能性があります。
具体例4|柔軟剤の臭い
柔軟剤の香りについても、香水やコロンなどと同様に、人によって好き嫌いが分かれます。こちらも少々の香りであれば問題ありませんが、柔軟剤の香りがあまりにも強すぎる場合はスメハラに当たる可能性があります。
職場におけるスメハラの悪影響
職場においてスメハラが行われると、以下の悪影響が生じるおそれがあります。
①周囲の同僚が体調を崩す
②部署全体のパフォーマンスが低下する
③チームワークや人間関係が悪化する
悪影響1|周囲の同僚が体調を崩す
臭いは五感の一つである嗅覚に訴えるものであるため、人間の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
不快な臭いの中で長時間過ごさざるを得ないと、吐き気や気持ち悪さを感じることもありますし、精神的にも大きなストレスになります。その結果、体調を崩して休みがちになったり、出社することに抵抗感を覚えたりする従業員が出てくるかもしれません。
スメハラによって従業員が離脱してしまうと、人手不足につながるので会社にとって大きな痛手です。また、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)を理由に、被害者から損害賠償請求を受けるおそれもあります。
スメハラは従業員の健康に害を及ぼす可能性があるため、会社としては従業員を守る意味でも、その防止に努めなければなりません。
悪影響2|部署全体のパフォーマンスが低下する
不快な臭いが職場に立ち込めていると、その場にいる従業員の集中力が低下する可能性が高いです。不快な臭いから逃げるための離席が増えたり、思考が満足に働かなかったりした結果、業務のパフォーマンスが大幅に悪化してしまうおそれがあります。
従業員のパフォーマンスが低下すると、同じ業務をこなすのにより多くの人件費がかかるうえに、顧客に対して提供できるサービスの質が低下します。その結果、コストとパフォーマンスの両面で競争力が失われ、会社の成長に陰りが生じてしまうかもしれません。
悪影響3|チームワークや人間関係が悪化する
会社の業務を円滑に遂行するには、従業員間のチームワークや良好な人間関係が欠かせません。
しかし、不快な臭いを発している従業員に対しては、多くの上司や同僚が嫌悪感を抱くでしょう。その結果、職場における陰口などが増え、部署内のチームワークや人間関係が乱れてしまう可能性が高いです。
せっかく働きやすい職場づくりを目指しても、スメハラをする従業員が一人いるだけで、それが壊れてしまうおそれがあります。会社としては、良好な職場環境を維持するためにも、スメハラの撲滅に努める必要があります。
スメハラ対応の難しさ
職場におけるスメハラに対応する必要性は高いといえますが、セクハラやパワハラなどに比べて、スメハラ対応には特有の難しさがあります。
特に以下の各点は、スメハラへの対応を難しくしている要素といえるでしょう。
①臭いの感じ方は人それぞれ|明確な基準がない
②本人に責任があるとは限らない
③本人に臭いの自覚がない場合があり伝え方が難しい
④対応を誤ると、名誉毀損やハラスメントの責任を問われることも
臭いの感じ方は人それぞれ|明確な基準がない
ある臭いに対して心地よいと感じるか、それとも不快感を覚えるかは人によって異なります。多くの人にとって不快な臭いというのは存在しますが、それも程度問題であって、明確な基準は存在しません。
臭いの感じ方は人それぞれであることは、スメハラの指摘に対する強力な反論材料になり得ます。強烈な臭いを発する人に対して「臭いよ」と伝えても、「臭いの感じ方は人それぞれでしょう」と反論されると、それ以上追及することは難しいケースが多いです。
結局のところ、スメハラ対応は本人の自覚に基づく予防を促すにとどまることが多く、本人が拒否すれば有効な対応をしにくい面があります。
本人に責任があるとは限らない
従業員が発する臭いが強烈であり、周囲の人々にとって不快なものであるとしても、必ずしも本人にその責任があるとは限りません。体質的にやむを得ない場合もありますし、何らかの病気が原因の場合もあります。
本人に責任がない臭いについては、本人に対策を求めたとしても、問題を解消することは困難です。医学的な処置を行えば臭いが解消される可能性はありますが、それを本人に強制することはできません。
本人に臭いの自覚がない場合があり伝え方が難しい
一般的に人間は、自分の発している臭いには鈍感です。周囲の人々が不快に感じる臭いを発していても、本人はそれに気づいていない場合があります。
本人に臭いの自覚がない場合は、臭いについてどのように指摘するかが難しい問題です。
あまりにもストレートに指摘すると、本人を過剰に傷つけてしまうおそれがあります。そうはいっても、オブラートに包み過ぎると、周囲の問題意識が本人に伝わりにくくなります。
対応を誤ると、名誉毀損やハラスメントの責任を問われることも
臭いの問題について、本人への伝え方や周囲との連携の方法を誤ると、会社が名誉毀損やハラスメントの責任を問われるおそれがあります。
例えばスメハラ対応を行う際、他の役員や従業員に対して「○○さんは臭い」などと伝えたとします。スメハラ対応という正当な理由があるとはいえ、これは本人の社会的評価を下げるような言動です。口止めしつつ数人に限って伝えるならまだしも、不特定多数の人に拡散され得るような伝え方をすると、名誉毀損に当たる可能性があります。
会社側の言動が名誉毀損に当たる場合は、本人に対して損害賠償責任を負うほか、名誉毀損罪(刑法230条1項)に問われることにもなりかねません。
また、臭いを理由に特定の従業員を侮辱したり、仲間外れにしたりすることはパワハラに当たります。会社は職場におけるパワハラを防止する措置を講じる義務を負っているため(労働施策総合推進法30条の2)、当該措置を怠ったことを理由に、本人から損害賠償を請求されるおそれがあります。
特に、臭いについて本人に指摘をする際、本人の感情を過剰に傷つけてしまうと、名誉毀損やハラスメントに関するトラブルのリスクが高まります。
職場におけるスメハラへの対処法
職場におけるスメハラを未然に防ぐため、または実際に問題となっているスメハラに対処するためには、会社は以下の対応を行いましょう。
①臭いについて、周囲に配慮するよう注意喚起をする
②ハラスメント窓口で相談を受け付ける
③様子を見て本人からも事情を聞く|聞き方には要注意
臭いについて、周囲に配慮するよう注意喚起をする
スメハラは比較的新しいタイプのハラスメントなので、会社の中でも問題意識を強く持っている人は少ないことが多いです。
まずは、自分が発する臭いが周囲に不快感を与える可能性について注意喚起をし、自らケアを行うなど周囲に配慮するよう求めましょう。
最初の段階では、特定の従業員に対してスメハラを指摘するのではなく、会社全体に対する注意喚起を行うのがよいでしょう。スメハラに対する問題意識が会社全体で高まり、自発的に臭い対策を行う従業員が増えることが期待されます。
ハラスメント窓口で相談を受け付ける
多様な種類のハラスメントが問題になっている昨今では、ハラスメントに関する相談窓口を設けて、従業員からの相談を受け付ける会社が増えています。
パワハラやセクハラについては、すでに多くの会社においてハラスメント相談窓口が設けられていますが、これらに限らず、スメハラなどのほかのハラスメントについても相談を受け付けるのがよいでしょう。職場におけるハラスメントの兆候を早期に発見し、適切な対策を行うことができるようになります。
ハラスメント窓口の担当者は、実際の相談へ適切に対応できるように備えておかなければなりません。ハラスメントの種類に応じた対応マニュアルを整備し、担当者向けの研修を定期的に行うなど、教育訓練を実施しましょう。
特にスメハラについては、臭いの感じ方は人それぞれで明確な基準がないことや、本人に対する伝え方が難しいことなど、特有の注意点があります。相談担当者には、スメハラ対応の特徴をきちんとインプットしておきましょう。
様子を見て本人からも事情を聞く|聞き方には要注意
実際にスメハラが発生している場合には、何らかの方法で本人に是正を促す必要があります。その前提として、まずは本人から事情を聞かなければなりません。
臭いの原因については、本人に責任がない場合もありますし、臭いについて本人が自覚していない場合もあります。
会社としては、本人を批判するようなトーンは極力抑えて、臭いの問題の解決策を建設的に話し合う姿勢が求められます。もし本人が何らかの問題を抱えている場合は、会社としてサポートを惜しまない旨を伝えて、本人との間で信頼関係の構築を目指しましょう。
研修資料3点セットを無料配布中!
「研修でそのまま使う」「自社にあわせてカスタマイズしてから使う」などといった用途で自由にご活用ください。