ステルスマーケティング(ステマ)とは?
問題点・定義(要件)・景品表示法の規制と
運用基準などを分かりやすく解説!

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- この記事のまとめ
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「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、実際には事業者による広告や宣伝であるのに、そのことを一般消費者から見てわかりにくいように隠して行われる表示をいいます。
インフルエンサーによるSNSの投稿や、インターネット上に投稿される口コミなど、幅広い表示がステマに該当する可能性があります。ステマは、2023年10月1日から施行された消費者庁告示により、新たに景品表示法上の不当表示に指定されました。一般消費者に対して、実際の商品・サービスよりも良いものだという印象を不当に抱かせるおそれがあるためです。
どのような表示がステマ(不当表示)に当たるかについては、消費者庁の運用基準によって考え方が示されています。
ステマ規制に違反すると、消費者庁による措置命令等の対象になるので注意が必要です。ステマ規制に違反しないためには、規制が適用される投稿等を正しく把握することが大切です。また、ステマ規制が適用される投稿等においては、広告である旨を明瞭に表示しましょう。
この記事ではステルスマーケティング(ステマ)について、問題点・定義(要件)・景品表示法の規制と運用基準などを解説します。
※この記事は、2023年11月14日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法
目次
ステルスマーケティング(ステマ)とは
「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、実際には事業者による広告や宣伝であるのに、そのことを一般消費者から見てわかりにくいように隠して行われる表示をいいます。2023年10月1日より、ステマは景品表示法上の不当表示として規制されるようになりました。
ステルスマーケティングの意味・語源
ステルスマーケティング(stealth marketing)は英語で、直訳すると「こっそり行う(stealth)」「マーケティング(marketing)」となります。
「マーケティング」とは本来、商品やサービスの販売活動全般を指しますが、ここでは主に「広告」が想定されています。実際には広告であるのに、一般消費者から見ると広告とはわかりづらい形で行われる点が「stealth」と表現されているのです。
「サクラ」や「やらせ」との違い
いわゆる「サクラ」や「やらせ」は、ステルスマーケティングの一手法として用いられることがあります。
「サクラ」とは一般に、事業者の依頼を受けた者が、その事業者自身や、その事業者が提供する商品・サービスなどについて好意的な評価を行ったり、人気があるように装うための行動をしたりすることをいいます。たとえばSNSや口コミサイトに高評価コメントを投稿する、商品を購入するための行列に並ぶといった行動を、事業者の依頼を受けて行うようなことが「サクラ」と呼ばれています。
事業者からサクラの依頼を受けていることは公言せず、あくまでも一般のユーザーや顧客であることを装ってサクラ行為をするのが通常です。したがって多くの場合、サクラはステルスマーケティングに当たると考えられます。
「やらせ」とは一般に、存在しない事実を捏造したり、事実を意図的に捻じ曲げたりすることをいいます。たとえばテレビ番組において、タレントが素人には達成困難と思われる企画に挑戦する際、裏でアシストして成功させたにもかかわらず、タレント本人の力だけで成功したかのように見せかけるようなケースが挙げられます。
やらせは事実の捏造や歪曲を意味する広い概念ですが、商品やサービスの広告に関して行われた場合はステルスマーケティングに当たる可能性が高いです。
たとえばテレビ番組の中で、タレントが「食レポ」をする際、その食品を提供する事業者が考えたコメントをタレントに言わせたとします。これは「やらせ」であると同時に、「ステルスマーケティング」にも当たると言えるでしょう。
ステマの問題点|何が悪い? 違法になる?
ステマの問題点は、通常の広告に対する批判的な視線を回避することで、実際の商品・サービスよりも良いものだという印象を不当に抱かせるおそれがある点です。
広告であれば、一般消費者は通常、ある程度の誇張・誇大が含まれていると考えます。広告における誇張・誇大を割り引いて捉えることにより、商品やサービスの実態に近いイメージを抱くことができ、適切な商品・サービスの選択が可能となります。
しかしステマの場合、一般消費者にとっては、そもそも広告であると認識(判別)することが困難です。本当は広告であるにもかかわらず、誇張や誇大が含まれない客観的な感想だと捉えてしまうと、実際の商品やサービスよりも良いものだという印象を抱く可能性が高いと考えられます。
商品やサービスについて、実態とは異なる印象を抱かせるような広告は、消費者を誤導する不適切な表示です。ステマもこのような不適切な表示の一種として問題視されています。
ステマは景品表示法上の不当表示に当たる
景品表示法では、優良誤認表示(同法5条1号)および有利誤認表示(同条2号)のほか、内閣総理大臣の指定に基づく不当表示を禁止しています(同条3号)。
2023年10月1日に「令和5年3月28日内閣府告示第19号」(以下「ステマ告示」といいます)が施行され、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(=ステマ)が新たに不当表示として指定されました。
したがって現在では、ステマをした事業者は景品表示法違反の責任を問われることになります。
ステマの定義(要件)
ステマ告示によれば、ステマに当たるのは以下の2つの要件を満たす表示です。
① 事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示であること(=事業者の表示)
② 一般消費者が①の表示であることを判別することが困難であると認められること(=判別困難性)
要件1|事業者の表示
景品表示法によるステマ規制は、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示に対して適用されます。
ステマに当たる表示を実際に行うのは、商品やサービスの販売事業者ではなく、インフルエンサーやアフィリエイターなどの第三者です。このような第三者による表示であっても、事業者の表示に当たるのかどうかが問題となります。
インフルエンサーなどが自主的に商品やサービスを紹介する場合は、その商品・サービスを販売する事業者が行う表示ではないので、ステマ規制の対象になりません。これに対して、インフルエンサーなどが事業者から内容を指示されて行った投稿については、事業者の表示に当たるため、ステマ規制の対象となることがあります。
要件2|判別困難性
ステマ規制は、事業者の表示であるにもかかわらず、そのことを一般消費者が判別し難いものについて適用されます。
例えば、インフルエンサーなどが事業者から依頼を受けたにもかかわらず、そのことを示さずに行う商品やサービスの紹介投稿などは、事業者の表示であることが判別困難であるものの典型例です。
ステマの手法・ステマに当たる行為の例
ステマが問題になることが特に多いのは、インフルエンサーによるSNS投稿やブログ記事です。
企業が影響力の大きいインフルエンサーに対して、あたかも自分が好きで使っているかのように商品やサービスを紹介してほしいと依頼するケースがよくあります。このようなケースにおいて、インフルエンサーが広告であることを表示せずに商品やサービスを紹介する投稿を行った場合は、ステマに該当します。
また、アフィリエイト広告についてもステマが問題となることがあります。販売事業者が指定した内容のアフィリエイト広告記事を、アフィリエイターが広告である旨を表示せずに掲載した場合はステマに当たる可能性があります。
さらに、口コミサイトへの投稿もステマに当たることがあります。販売事業者の依頼によって投稿される、いわゆる「サクラ」のコメントはステマに当たる可能性が高いです。
なりすまし型(事業者自身や従業員による投稿)
「なりすまし型」のステルスマーケティングは、事業者が自ら商品やサービスに関する表示(広告)を行っているにもかかわらず、事業者とは関係がない第三者の表示であるかのように装うものです。
たとえば、SNSや口コミサイトにおいて、事業者自身やその従業員がその立場を秘して好意的な投稿をするケースが挙げられます。
また、一般ユーザーのものと称してYouTubeチャンネルを開設し、その中で商品やサービスの感想動画を投稿したところ、実はそのチャンネルの運営者が事業者やその従業員だったといったケースも「なりすまし型」の典型例です。
利益提供秘匿型(インフルエンサー等への依頼)
「利益提供秘匿型」のステルスマーケティングは、事業者が第三者に依頼し、報酬の支払いや利益の供与を行ったうえで商品やサービスに関する表示(広告)をさせているにもかかわらず、その事実を閲覧者や視聴者に対して表示しないものです。
典型的には、いわゆるインフルエンサーに対して事業者が依頼し、報酬を支払ったうえで商品やサービスの好意的なレビューをさせる行為が挙げられます。SNS投稿や動画の中で、広告であることが明示されていない場合、閲覧者や視聴者はインフルエンサー自身の感想であるかのように誤解するおそれがあるため、ステルスマーケティングに当たります。
消費者庁によるステマ規制の運用基準
ステマ規制の運用に関して、消費者庁は運用基準を公表しています。
消費者庁の運用基準においては、ステマ規制の趣旨に加えて、ステマ規制の要件の意義が解説されています。
ステマ規制の趣旨
ステマ規制の趣旨について、ステマは広告ではないと誤認された結果、誇張・誇大が含まれていることが考慮されない可能性があることが指摘されています。
その上で、一般消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるため、ステマを不当表示として規制する旨が示されています。
ステマ規制の対象となる表示については、「事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示であると一般消費者に誤認される場合を規制するものである」とされています。
その一方で、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭または社会通念上明らかであるものや、事業者でない者が行う表示は、ステマ規制の対象外である旨が明記されています。
「事業者の表示」とは
インフルエンサーやアフィリエイターなど、販売事業者以外の第三者による表示が「事業者の表示」に当たるかどうかについて、消費者庁の運用基準では判断基準と具体例が示されています。
事業者の表示に当たるかどうかの判断基準
インフルエンサーのSNS投稿やアフィリエイターのブログ記事のように、外形上は事業者以外の第三者の表示のように見えるものが「事業者の表示」に当たるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合です。
客観的な状況に基づき、第三者(インフルエンサーやアフィリエイターなど)の自主的な意思による表示内容と認められない場合は事業者の表示に当たります。
第三者の表示が事業者の表示に当たる場合の典型例は、事業者が第三者に対して表示内容を具体的に指示したケースです。
また、仮に明示的な依頼・指示がなかったとしても、以下の2つの要件を満たす場合には事業者の表示に該当します。
- 事業者の表示の該当例
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① 事業者と第三者との間に、事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があること
② 客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性があること
事業者の表示の具体例
消費者庁の運用基準では、ステマ規制との関係で事業者の表示に当たり得るものとして、以下の例を挙げています。
① 事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員による表示
(例)
・販促担当者が、SNSに自社の商品・サービスの画像や文章を投稿する
・子会社のマーケティング担当者が、SNSに親会社の商品・サービスの画像や文章を投稿する
② 事業者が第三者に依頼して行わせる、SNSや口コミサイト上での自社の商品・サービスに関する表示
(例)
・インフルエンサーに依頼して、自社が販売する化粧品の宣伝をしてもらう
③ ECサイトに出店する事業者がブローカーや購入者に依頼して行わせる、自社商品に関する表示
(例)
・Amazonの自社商品ページに、「サクラ」として好意的なコメントをしてもらう
④ 事業者がアフィリエイターに委託して行わせる、自社の商品・サービスに関する表示
(例)
・商品に誘導する紹介文にリンクを設定し、成果などに応じ報酬を支払う
⑤ 事業者が他の事業者に依頼して行わせる、競合事業者の商品・サービスに関する低評価の表示
(例)
・Amazonの他社商品ページに、その商品を貶す内容のコメントをしてもらう
「判別困難性」とは
判別困難性の要件についても、消費者庁の運用基準において判断基準と具体例が示されています。
判別困難性の判断基準
判別困難性の要件については、インフルエンサーやアフィリエイターなどの第三者の投稿が事業者の表示であることが、一般消費者にとって明瞭になっているかどうかの観点から判断されます。
一般消費者がどのように認識するのが通常であるか(事業者の表示か、それとも第三者の表示か)は、表示内容全体から判断します。
判別困難な表示の具体例
消費者庁の運用基準では、事業者の表示であることが判別困難なものとして、以下の例を挙げています。
- 判別困難性の該当例
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① 事業者の表示である旨が全く記載されていないもの
② 事業者の表示である旨を、部分的にしか表示していないもの
③ 「広告」と記載しているにもかかわらず、「これは第三者として感想を記載しています」などと分かりにくい表示をしているもの
④ 動画において、非常に短時間のみ事業者の表示である旨を表示するもの
⑤ 一般消費者が事業者の表示である旨を認識できない文言を使用しているもの(業界用語、外国語、暗号など)
⑥ 事業者の表示である旨を、一般消費者が認識しにくい形で表示する(長文、非常に小さい文字、薄い色、大量のハッシュタグに紛れ込ませるなど)
ステマ規制に違反した場合のペナルティ
ステマ規制に違反した場合は、消費者庁の措置命令を受けることがあります(景品表示法7条)。事業者は措置命令に従い、ステマに当たる行為の差止めや再発防止措置を行わなければなりません。
措置命令を受けた事実は消費者庁のウェブサイトで公表されるほか、措置命令に違反すると「2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」に処されます(景品表示法46条)。
ステマ規制に違反しないための注意点
ステマ規制に違反しないためには、以下の2点に十分注意しましょう。
① ステマ規制が適用される投稿等を把握する
② 広告である旨を明瞭に表示する
ステマ規制が適用される投稿等を把握する
ステマ規制は、非常に幅広い表示について適用される余地があります。インフルエンサーやアフィリエイターの投稿に加えて、口コミサイトへの口コミなどについても、事業者の表示であるのにそれが判別困難な場合はステマ規制の対象です。
自社の依頼や指示によって掲載されている広告表示(投稿など)のうち、ステマ規制の対象になり得るものを漏れなく把握して、運用基準に照らしたルールの遵守に努めましょう。
広告である旨を明瞭に表示する
第三者に表示を依頼する広告については、広告であることを明瞭に表示する必要があります。
不明瞭な表示や短時間のみの表示を行ったに過ぎない場合などには、事業者の表示であることが一般消費者には判別困難だとして、ステマ規制に抵触するおそれがあるので十分ご注意ください。
「#PR」など関係性の明示方法と記載例
消費者庁の運用基準では、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているもの、すなわちステルスマーケティングに当たらないものとして、次の例が挙げられています。
- ステルスマーケティングに当たらない例
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(a) 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示を行う場合
(b) 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合
(c)次のような場合
・放送におけるCMのように、広告と番組が切り離されている表示を行う場合
・事業者の協力を得て制作される番組放送や映画等において、当該事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合
・新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示を行う場合
・商品または役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示を行う場合
・事業者自身のウェブサイトにおける表示を行う場合
・事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合
・社会的な立場、職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合
実務上は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言を、SNS投稿や動画などにおいて明瞭に表示するのが簡便と思われます。その際、一般消費者が広告であることを明瞭に認識できるように、表示の方法について配慮することが大切です。
たとえば、小さすぎる文字や他の部分に紛れる文字で表示することや、動画においてごく短時間のみ表示することなどは避けるべきでしょう。一定以上の大きさの読みやすい文字で、動画の場合はその文字を表示し続けるなどの配慮が求められます。
| 参考:消費者庁「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf |
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