商標権侵害をされたときの対処法
手続きの種類・流れや注意点などを解説!

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この記事のまとめ

商標登録されている文字・図形・記号など(=登録商標)やその類似標章を、登録時に指定されたものと同一または類似の商品・サービスに使用する行為は、商標権侵害に当たります。

自社の商標権を侵害された場合は、差止請求・損害賠償請求や刑事告訴によって対応しましょう。その際には、商標権侵害の証拠を確保すること、「類似」を立証するための戦略を立てること、消滅時効・公訴時効に注意することなどが大切です。

今回は、自社の商標権を侵害された場合の対処法について、手続きの種類・流れや注意点などを解説します。

ヒー

あれ? わが社のロゴが他社のウェブサイトに勝手に使われています。これではわが社が作った製品のように見えてしまいます! すぐにやめさせることはできますか?

ムートン

そのロゴは商標登録していますか? 商標権の侵害には、証拠を集めて迅速に対応することが必要です。以下で確認していきましょう。

※この記事は、2023年4月3日時点の法令等に基づいて作成されています。

商標権侵害の要件

商標権侵害は、以下の要件を全て満たす場合に成立します。

商標権侵害の要件

商標登録されていること
独占権または排他権によって保護された使用行為であること
商標的使用に該当すること

①商標登録されていること

商標権は、設定の登録により発生します(商標法18条1項)。したがって、商標権侵害の成立には、問題となる商標が登録されていることが必要です。

商標の登録情報は、「特許情報プラットフォーム」から確認できます。

②独占権または排他権によって保護された使用行為であること

商標権者には、登録商標について「独占権」と「排他権」が与えられます。独占権または排他権によって保護された商標の使用行為を、商標権者に無断で行っていることが、商標権侵害の要件です。

独占権とは

独占権」とは、指定商品または指定役務につき、登録商標を独占的に使用する権利です(商標法25条)。

商標登録を申請する際には、商標を使用する商品やサービスを指定します。登録商標の独占的使用は、指定商品または指定役務の範囲に限って保障されています。

独占権侵害に当たるのは、指定商品または指定役務について、登録商標と全く同一の商標を、商標権者に無断で使用する行為です。

ムートン

イメージとしては、「登録されている商品・サービスについて、登録商標を勝手に使った場合」が、独占権侵害に当たります。

排他権とは

排他権」とは、登録商標について、他人による以下の使用行為を排除する権利です(商標法37条)。

① 指定商品または指定役務について、登録商標に類似する商標を使用する行為
② 指定商品または指定役務に類似する商品または役務について、登録商標を使用する行為
③ 指定商品または指定役務に類似する商品または役務について、登録商標に類似する商標を使用する行為

独占権によって保護されていない使用行為についても、商標権者の商品・サービスであると誤認されるような紛らわしい商標の使い方を排除するため、排他権が認められています。

ムートン

イメージとしては、
「登録されている商品・サービスに、登録商標に似たマークを使った場合」
「登録されているものと似たような商品・サービスに、登録商標を使った場合」
「登録されているものと似たような商品・サービスに、登録商標に似たマークを使った場合」
の3つが、排他権侵害に当たります。

③商標的使用に該当すること

商標権の効力は、以下の商標には及びません(商標法26条1項)。

① 以下の事項を普通に用いられる方法で表示する商標
(a) 自己の肖像・氏名(名称)
(b) 著名な雅号・芸名・筆名や、これらの著名な略称
(c) 指定商品やその類似商品・類似役務の特徴・数量・価格
(d) 指定役務やその類似役務・類似商品の特徴・数量・価格

② 指定商品・指定役務または類似商品・類似役務について慣用されている商標

③ 商品・商品の包装・役務が当然に備える特徴のうち、立体的形状・色彩・音(役務の場合は、役務の提供の用に供する物の立体的形状・色彩・音)のみからなる商標

④ 上記のほか、需要者が特定の事業者の商品・役務であることを認識できる態様により使用されていない商標

これらの商標は、需要者に対して商標権者の商品・サービスであると認識させる目的で使用されておらず、商標権による保護の趣旨に当てはまりません。そのため、上記商標の使用行為は、商標権侵害の対象外とされています。

ムートン

イメージとしては、例えば、「製造元や出所の表示ではなく、飾りとして商標類似の図柄・文字を使った場合」は、商標権侵害とは判断されない可能性が高いです。

商標権侵害の具体例

商標権侵害に当たる行為としては、以下の例が挙げられます。

独占権侵害の具体例

(例)P社は家具(第20類)について「X」という登録商標を有しているところ、Q社がP社に無断で「X」という名称を付してソファを販売した。
→指定商品に関する登録商標の使用

排他権侵害の具体例

(例)P社は家具(第20類)について「X」という登録商標を有しているところ、

Q社がP社に無断で「ニューX」という名称を付してソファを販売した。
→指定商品に関する登録商標と類似の商標の使用

Q社がP社に無断で「X」という名称を付してベンチを販売した。
→指定商品に類似する商品に関する登録商標の使用

Q社がP社に無断で「ニューX」という名称を付してベンチを販売した。
→指定商品に類似する商品に関する登録商標と類似の商標の使用

商標権侵害を受けた場合の対処法

商標権侵害を受けた場合には、以下の方法によって損害の回復を図り、加害者の責任を追及しましょう。

① 差止請求
② 税関での輸入差止申立て
③ 損害賠償請求・不当利得返還請求
④ 信用回復措置請求
⑤ 刑事告訴

差止請求

商標権を侵害され、または侵害されるおそれがある場合には、その侵害の停止または予防を請求できます(商標法36条1項)。

さらに、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為も併せて請求可能です(同条2項)。

税関での輸入差止申立て

商標権を侵害する貨物が輸入されようとしている場合、商標権者は税関長に対して、輸入の差し止めを申し立てることができます(関税法69条の13)。

損害賠償請求・不当利得返還請求

商標権侵害によって商標権者が受けた損害については、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求できます(民法709条)。商標権侵害による損害額については、推定規定によって立証負担が緩和されています(商標法38条)。

不当利得返還請求(民法703条・704条)によって利得額の返還を請求することもできますが、不法行為に基づく損害賠償と競合する部分については、二重取りは認められません。

信用回復措置請求

故意または過失によって商標権を侵害した者に対しては、裁判手続きを通じて、業務上の信用を回復するのに必要な措置(=信用回復措置)を請求できます(商標法39条、特許法106条)。

信用回復措置の例としては、謝罪広告訂正広告の掲載などが挙げられます。

刑事告訴

商標権侵害は犯罪に当たるため、被害者である商標権者は、加害者を刑事告訴することができます(刑事訴訟法230条)。

商標権侵害に科される刑事罰(法定刑)

商標権侵害の法定刑は、以下のとおりです。

①独占権侵害
10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(商標法78条)
※併科あり

②排他権侵害
5年以下の懲役または500万円以下の罰金(同法78条の2)
※併科あり

行為者が法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者である場合には、両罰規定によって法人にも「3億円以下の罰金」が科されます(同法82条1項1号)。

ムートン

商標権侵害をした場合、会社も多額の罰金を命じられる可能性があります。注意しましょう。

商標権侵害に対する民事上の請求手続き

商標権侵害に関する差止請求・損害賠償請求などの民事上の請求は、主に以下の手続きを通じて行います。

① 内容証明郵便の送付
② 仮処分の申立て
③ 訴訟の提起
④ 強制執行

内容証明郵便(警告書)の送付

第一段階として、まず加害者に対して内容証明郵便を送付し、侵害行為の停止や損害賠償などを求めるのが一般的です。

内容証明郵便は、法的な請求を正式な形で行う際によく用いられます。メールや通常の文書で抗議するよりも、証拠が残る形で請求を行うことにより、加害者に対して責任追及の強いメッセージを伝えることが可能です。

また、内容証明郵便の送付により、商標権侵害に基づく損害賠償請求権の消滅時効の完成が6カ月間猶予されます(民法150条1項)。

仮処分の申立て

商標権侵害に当たる使用行為は、早期に止めさせなければ被害が拡大してしまいます。

訴訟の結果を待っていると時間がかかりすぎるため、商標権侵害の差止請求は、裁判所に対する仮処分申立てによって行うのが一般的です。
裁判所によって仮処分命令が発せられ、それが確定すれば、差し止めの強制執行を申し立てることが可能となります(民事執行法22条3号)。

裁判所の仮処分命令を得るためには、商標権者に著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがあり、それを避ける必要があることを疎明しなければなりません(民事保全法23条2項・13条)。

ヒー

「疎明」って何ですか? 「証明」とは違うのですか?

ムートン

「疎明」とは、ざっくりいうと、裁判官が「一応確からしい」と思う程度に根拠を示すことです。「証明」は裁判官に確信を得させる必要があるのに対し、より緩やかなレベルの根拠でよいということです。

訴訟の提起

商標権侵害に当たる行為が停止されない場合や、損害賠償に関する交渉が決裂した場合には、裁判所に訴訟を提起して争いましょう。

商標権者には、裁判所の法廷において、侵害行為の事実や損害額などを立証することが求められます。そのためには、法的な観点から説得力のある主張を組み立てた上で、十分な証拠を揃えて立証を行うことが重要なポイントです。

訴訟で著作権者の請求を認める判決が確定すれば、強制執行の申立てが可能となります(民事執行法22条1号)。

強制執行

仮処分命令や判決が確定したにもかかわらず、加害者が商標権侵害の停止・予防や損害賠償を拒否する場合には、裁判所に強制執行を申し立てることができます。

強制執行の方法は、侵害行為の停止・予防については「間接強制」、損害賠償については「直接強制」となります。

① 間接強制
義務を履行するまでの間、加害者に対して間接強制金の支払いを義務付けます。

② 直接強制
加害者の財産を差し押さえ、強制的に損害賠償請求権の弁済に充当します。間接強制金についても、直接強制による強制執行の申立てが可能です。

商標権侵害に対する刑事告訴の手続き

商標権侵害に関する刑事告訴は、検察官または司法警察員(警察官)に対して行います(刑事訴訟法241条1項)。口頭による刑事告訴も認められていますが、会社が被害者である場合には、告訴状を提出するケースが大半です。

商標権侵害の罪は親告罪でないため、被害者の告訴がなくても、検察官は加害者を訴追することができます。
しかし、捜査機関に対して商標権侵害の事実を知らせるきっかけになるため、加害者に対して厳しい処罰を求めたい場合には、民事上の請求と併せて刑事告訴を行うことを検討しましょう。

商標権侵害に対処する際の注意点

自社の商標権を侵害された場合には、以下の各点に留意しつつ準備と対応を進めましょう。

① 商標権侵害の証拠を確保する
② 類似性を立証するための戦略を立てる
③ 消滅時効・公訴時効に注意

商標権侵害の証拠を確保する

差止請求や損害賠償請求などを成功させるには、商標権侵害の証拠を十分に確保することが大切です。

(例)
・侵害を構成する商品やサービスの販売状況を撮影した画像、スクリーンショット
・加害者とやり取りしたメッセージのデータ
・加害者との通話や会話の録音
など

どのような証拠が利用できるかについて幅広く検討を行い、商標権侵害を確実に立証するための準備を整えましょう。

類似性を立証するための戦略を立てる

商標権侵害のうち、独占権侵害を立証することは比較的容易ですが、排他権侵害の立証は難航する場合があります

排他権侵害を立証するためには、少なくとも以下のいずれかの類似性を立証しなければなりません。

① 侵害物件に用いられている商標が、登録商標と類似していること(商標の類似性
② 侵害物件である商品・役務が、指定商品・指定役務と類似していること(商品・役務の類似性

商標の類似性は、需要者が出所を混同するほど似ているかどうかによって判断されます。見た目・発音・意味など、多角的な観点から「いかに似ているか」を説得的に主張しましょう。

商品・役務の類似性は、特許庁の「類似商品・役務審査基準」に沿って判断されるケースが多いです。同じグループ(類似群コード)に属していれば、商品・役務の類似性が推定されます。

いずれにしても、排他権侵害を主張する際には、上記の各類似性をどのように立証するかについて、精緻な戦略を立ててから臨みましょう。

消滅時効・公訴時効に注意

商標権侵害の損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると、時効によって消滅します(民法724条)。

① 損害および加害者を知った時から3年
② 侵害行為の時から20年

また、商標権侵害について検察官が加害者を訴追できるのは、公訴時効期間が経過するまでです。侵害行為の時から起算して、独占権侵害については7年、排他権侵害については5年で公訴時効が完成します。

商標権侵害について加害者の責任を追及する際には、消滅時効・公訴時効に注意して、早めに対応へと着手しましょう。

ムートン

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