割印とは?
正しい押し方・押す意味・
失敗した場合の対応方法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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割印とは、書面を複数部作成する場合に、各部を互いに重ね合わせた部分に行う押印です。
割印は、契約書や領収書などに行われ、原本と控えにつき、関連性があること・同一の内容であることを証明する役割を担っています。
割印に用いる印鑑は、基本的に何でも構いません。契約書に割印を押す場合、調印に用いたものとは異なる印鑑を用いることもできます。
この記事では割印について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年8月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
割印とは
割印とは、書面を複数部作成する場合に、各部を互いに重ね合わせた部分に行う押印です。
【割印のイメージ】
割印を押す目的
割印を押す目的は、割印がある書面につき、関連性があること・同一の内容であることを証明するためです。
全く関係がない書面や、バージョンが違う書面の間で割印を押すことは、通常考えられません。言い換えれば、あえて割印が押された複数の書面は、経験則上互いに関連しており、または同一の内容であることが推認できます。
関連する書面を複数部作成し、または同一内容の書面を複数部作成する場合には、割印を押すことが望ましいです。
割印の法的効果
割印には、契約当事者として行う押印(文書の成立の真正に関する推定効が生じます。民事訴訟法228条4項)などとは異なり、具体的な法的効果が認められているわけではありません。
したがって、関連しまたは同一の書類を複数部作成する際に、割印が法的に必須というわけではありません。しかし、書面を作成した経緯を明らかにする観点から、実務上広く割印が行われています。
割印と関連する用語|違いも含め解説!
割印のほかにも、押印の方法にはさまざまな種類があります。
一例として、以下の意味を理解しておきましょう。
①消印
②止印
③訂正印
④捨印
⑤契印
なお、契約書と印鑑の基本ルールについては、以下の記事も併せてご参照ください。
消印
消印とは、郵便切手や収入印紙などが使用済みであることを示し、再使用できないようにするための押印です。以下のように、書面と収入印紙などの間にまたがるように押されます。
【消印のイメージ】
郵便切手については、配達を行う郵便局が消印を行います。収入印紙については、印紙税の課税文書に貼付する場合、文書の作成者に消印を行うことが義務付けられています。
印紙税の課税文書の種類や印紙税額などについては、以下の記事を併せてご参照ください。
止印
止印とは、文書の末尾に余白が生じた際、そこで文書が終わっていることを示すために押される押印です。
止印の目的は、文書の作成後の追記を防ぐことにあります。止印より後の箇所に記載された内容を無効とすることで、作成済み文書への意図しない追記を防止できます。
ただし近年では、契約書などを作成する際、止印は省略するケースが多くなっています。
訂正印
訂正印とは、ある書面を締結・交付した後に文言を訂正する必要が生じた場合に、訂正箇所に行う押印です。その箇所の訂正につき、文書の作成者自身が行ったことを証明するために行われます。
訂正印を押さずに文書の訂正がなされた場合、その訂正は誰が行ったか分からないので、有効性が否定されやすくなります。
訂正印の押し方は実務慣行に従いますが、以下のように、訂正箇所に二重線を引いた上で、その上に訂正印を押す方法などが一般的です。
【訂正印のイメージ】
捨印
捨印とは、あらかじめ文書の余白に押印し、文書の誤りが見つかった際に訂正印として利用できるようにする押印です。もし文書に誤りが見つかったら、捨印の横に訂正内容を記載すれば、訂正印として利用できます。
【訂正印のイメージ】
捨印を押す場合、文書の原本を保管する側に訂正の権限を委ねることになります。相手方によって不本意な訂正が行われればトラブルの原因となるため、相手方が十分信頼できる場合に限って捨印を行うべきでしょう。
契印
契印とは、文書が複数ページにわたる場合において、製本後に各ページにまたがって行う押印です。
- 文書のページが正しく連続していること(抜き取りや差し替えが行われていないこと)
- 文書全体が当事者によって承認されていること
を示すため、以下のようなかたちで行われます。
【契印のイメージ】
【製本した場合の契印のイメージ】
複数のページにわたる契約書を作成する場合などには、すべてのページが一体であることを証明するため、契印を行うことが望ましいです。
割印を押すべき書類の例
割印は、契約書や領収書に押されるケースが多いです。
- 契約書
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契約書は、当事者の数と同じ部数を作成するのが一般的です(全て原本とするか、一部を写しとするかは状況によって異なります)。
複数部の契約書が互いに同一の内容であることを示すため、割印が行われます。
- 領収書
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手書きの領収書を交付する際には、支払者に原本を交付する一方で、複写式で同一内容の写しを作成して交付者が保管するのが一般的です。領収書の原本と写しが同一の内容であることを示すため、割印が行われることがあります。
また、領収書の原本と控えを切り離すかたちとなっている場合は、切り取り線の部分にあらかじめ割印を押しておくのが一般的です。
割印の正しい押し方・ルール
割印の押し方については、特に法律上のルールはありません。全ての文書にまたがって押印がなされていれば、割印としての役割は十分果たしています。
実際に割印を行う際には、合理的な実務慣行に従えば問題ないでしょう。以下では、割印に用いる印鑑と割印を押す箇所について、一般的な実務慣行を紹介します。
割印に用いる印鑑にルールはある?
割印に用いる印鑑は、文書の作成者として調印した印鑑と同じものを用いるのが一般的です。
別の印鑑を用いても構いませんが、調印と割印で印鑑を分ける必要は基本的にないでしょう。ただし、3通以上の契約書を作成する場合には、割印専用の縦長の印鑑を用いることもあります。
【書類別】割印を押す箇所
割印を押す箇所は、文書の種類によって異なります。契約書・領収書・収入印紙について、割印(収入印紙については消印)を押す箇所の例を紹介します。
契約書に割印を押す場合
契約書に割印を押す場合、契約書を少しずらして重ね合わせた上で、重なった部分に押印します。押印後は、それぞれの契約書に割印が半分ずつ押された状態になります。
領収書に割印を押す場合
領収書に割印を押す場合も、原本と写しを少しずらして重ね合わせた上で、重なった部分に押印します。
収入印紙に消印を押す場合
印紙税の課税文書に収入印紙を貼付する際には、印紙税法に基づき消印を行う必要があります(印紙税法8条2項)。
消印は、課税文書と印紙の彩紋の両方にかかるように、以下のいずれかの者の印章による押印、または署名をして行います(印紙税法施行令5条)。
- 自己
- 自己の代理人(法人の代表者を含む)
- 使用人その他の従業者
割印をきれいに押すためのポイント
割印をきれいに押すためには、以下の手順で行うことを意識しましょう。
ポイント1|割印の箇所を確認する
まずは、割印を行う箇所を確認します。
ポイント2|捺印マットの上に文書を設置する
割印をきれいに押すためには、捺印マットを用いるのが効果的です。捺印マットの上に、文書をきれいに重ね合わせて設置しましょう。
ポイント3|印章に朱肉を均等に付ける
印章に付いた朱肉がまばらな状態では、割印をきれいに押すことはできません。朱肉を印章に付ける際には、均等に朱肉が付くように意識しましょう。
ポイント4|正しい方法で印章を持つ
印章は、以下のポイントを踏まえて3点で支えるかたちで持つと、押印時に正しく力を加えやすくなります。
- 人差し指を印面の文字の真上に当てる
- 親指の指の腹を印章に添える
- 中指の側面を印章に添える
ポイント5|文書に対して印章を垂直に構える
割印を押す際には、各文書に対して均等に力を加えなければなりません。そのため、印章は書類に対して垂直に構えましょう。
ポイント6|適度な力で捺印する
文書が正しく設置され、正しい姿勢で印象を構えることができていれば、割印を押す際にそれほど強い力は必要ありません。適度な力で割印を行いましょう。
ポイント7|文書をしっかり手で押さえて、真上の方向にゆっくり印章を離す
印章を書類から離す際には、朱肉が滲むことがないように注意しなければなりません。文書をしっかり手で押さえて、真上の方向にゆっくり離しましょう。
ポイント8|印章をティッシュや布などで拭く
割印が完了した後は、印章を保護するため、朱肉を拭き取ってから保管場所にしまいましょう。
割印をうまく押せなかった場合の訂正方法
割印がうまく押せなかったときは、別の箇所に改めて割印を押せば大丈夫です。失敗した割印について、訂正印などは特に必要ありません。
失敗後に再度割印を押す際には、「割印をきれいに押すためのポイント」で解説した方法を意識して正しく書類を設置し、正しい姿勢で印章を持ちましょう。
3通以上の契約書に割印を押す方法
契約書を3通以上作成する場合は、すべての部について割印を行うことになります。
3通以上の契約書に割印を押す方法は、主に以下の2通りです。
①割印専用の縦長の印鑑を用いる
割印専用の縦長の印鑑があれば、以下の画像のように、全ての契約書にまたがるかたちで、一度に割印を押せる場合があります。
なお、割印に用いる印鑑は、契約書の調印に用いたものと異なるものであっても構いません。
②2通ずつ割印を行う
例えばA・B・Cという3部の契約書がある場合に、以下の画像のように、まずA・Bの間で割印を行い、さらにB・Cの間で割印を行う方式です。
4部以上の場合も、同様の要領で2通ずつ割印を行います。
収入印紙の割印(消印)は誰が押すべき?
収入印紙の消印は、以下のいずれかの者の印章による押印、または署名によって行う必要があります(印紙税法施行令5条)。
- 自己
- 自己の代理人(法人の代表者を含む)
- 使用人その他の従業者
契約書など、複数の者によって作成される課税文書については、いずれかの当事者の印章によって消印を行えば足ります。
全ての当事者が消印を行う必要はありません。これは消印の目的が、割印とは異なり、あくまでも収入印紙が使用済みであることを示し、再使用できなくすることにあるからです。
割印がない契約書は有効か?
割印が押されていなくても、契約書としての効力は否定されません。契約の締結方式は原則として自由であり、割印が必須とはされていないからです。
しかし割印を押すことは、契約書の改ざん等を防止する観点から効果を発揮します。
割印が押された契約書の内容が互いに異なっている場合、少なくともいずれか一方が改ざんされた可能性が高いです。
例えば契約トラブルが訴訟に発展し、相手方が改ざんされた契約書を提出してきたとします。この場合、こちらも割印が押された契約書を証拠提出すれば、相手方が提出した契約書の証拠力を減殺できます。
契約書を締結するに当たり、割印は絶対に必要というわけではありません。しかし、契約書の改ざんを防止し、契約トラブルのリスクをできる限り抑える観点からは、重要な契約書については割印を押すことが望ましいでしょう。
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