知的財産法とは?
知的財産を保護する目的や種類などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「知的財産法」とは、「知的財産」について定めた法律の総称です。「知的財産」とは、財産的な価値のある情報であって、有形的な存在ではない無体物(形をもたないもの)です。
この記事では「知的財産法」について、知的財産を法的に保護する目的、知的財産法に含まれる法律の種類、主な知的財産法の概要などを解説します。
※この記事は、2022年8月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 不競法…不正競争防止法(平成5年法律第47号)
目次
知的財産法とは
「知的財産法」とは、「知的財産」について定めた法律の総称です。「知的財産法」という一つの法律があるのではなく、特許法や著作権法などの様々な法律が含まれています。
「知的財産」及び「知的財産権」について
「知的財産」及び「知的財産権」は、知的財産基本法において、次のように定義されています。
<知的財産基本法2条1項>
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
「知的財産基本法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
<知的財産基本法2条2項>
この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
「知的財産基本法」e-gov法令検索 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
このように、「知的財産」とは、財産的な価値がある情報であって、有形的な存在ではない無体物(形をもたないもの)です。知的財産を包括的に保護する単一の法律は存在しません。
「知的財産法」は、特定の知的財産を保護対象とする様々な法律の総称です。
知的財産法には、例えば、
などが含まれます。
「知的財産権」は、特定の知的財産を保護対象とする様々な法律によって規定される権利の総称です。
「知的財産」「知的財産権」の例
私たちの身近な物の中には、様々な知的財産を見つけることができます。例えば、スマートフォンについて見てみましょう。
- スマートフォンに関わる「知的財産」及び「知的財産権」
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✅デザイン
スマートフォンの形状などのデザインは、法律上「意匠」と呼ばれ、「意匠権」の対象です。✅ブランド
スマートフォンに付与されているマーク(文字や図形など)は、法律上「商標」と呼ばれ、「商標権」の対象です。(例:iPhone, Google Pixel, AQUOS, Xperiaなど)✅機能、性能
スマートフォンのCPUやメモリ、カメラ、センサなどの機能、性能に関する技術は、法律上「発明」や「考案」と呼ばれ、「特許権」や「実用新案権」の対象です。
また、CPUやメモリはLSI(集積回路)でできており、その素子や配線のレイアウトは「集積回路配置利用権」の対象です。✅コンテンツ
スマートフォンで視聴する音楽や動画などのコンテンツは、法律上「著作物」と呼ばれ、「著作権」の対象です。✅メーカー名
スマートフォンを製造販売などしているメーカーの名称は、法律上「商号」と呼ばれ、「商号権」の対象です。(例:Apple, Google, シャープ、SONYなど)
知的財産を法的に保護する目的
前述したとおり、知的財産は、情報であり無体物(形のないもの)です。有体物(形があるもの)の場合は、物理的空間的に物が存在するため、その物を利用するには、その物を所有している必要があります。所有している人がその物を利用しているときは、他人が同時に利用することはできません。
しかし、無体物である情報は、他人が無断で利用しても、創作した人の利用が妨げられることはありません。情報は、簡単に模倣することができ、利用により消費されることもないため、自由に複数人の他人が同時に利用することができます。
知的財産を他人が無断利用できる状態では、知的財産を創作した人が、その知的財産から経済的利益を得ることが難しくなり、今後、知的財産を創作しようとする意欲がなくなってしまいます。そのため、知的財産の創作を促進するためには、知的財産を、他人が無断で利用することができないよう、法的に保護する必要があるのです。
知的財産の創作に対して与えられる知的財産権は、創作することへの意欲を高めるインセンティブともいえます。
知的財産法の種類
知的財産法には、
があります。
創作物の保護に関する法律は、創作意欲の促進を目的とするもので、保護対象を産業的創作物とするものと、文化的創作物とするものに分けられます。
市場の秩序維持に関する法律は、創作物の保護というよりも、マーク(識別標識)などに蓄積された信用の保護を目的とするものです。
知的財産法 | 創作物の保護に関する法律 | 特許法 実用新案法 意匠法 半導体集積回路の回路配置に関する法律 種苗法 不正競争防止法(※営業秘密、商品形態) | 産業的創作物 |
著作権法 | 文化的創作物 | ||
市場の秩序維持に関する法律 | 商標法 不正競争防止法(※商品等表示) 商法、会社法(商号関連規定) 特定農林水産物の保護に関する法律 |
創作物の保護に関する法律のうち、特許法、実用新案法、意匠法及び商標法については、特に「産業財産権法」と呼ばれます。産業財産権法に関する制度は、特許庁が所管しています。
知的財産法の分類
知的財産法は、保護目的や保護対象など様々な観点で分類することができます。上記の他に、例えば、保護方法の観点から、
とに分類できます。
権利付与法は、知的財産に対して権利を付与するものです。権利が登録によって発生するものと、登録といった手続をせずに、創作することによって発生するもの(「無方式主義」と呼びます。)と、に分けられます。
行為規制法は、権利を付与するのではなく、知的財産に関する一定の利用行為を制限し保護するものです。行為規制法に属する法律としては、不正競争防止法があります。
主な知的財産法の概要
ここでは、主な知的財産法の概要を解説していきます。
- ここで解説する知的財産法の種類
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✅特許法
✅意匠法
✅著作権法
✅商標法
✅不正競争防止法
特許法
特許法は、発明の保護・利用を図ることにより、発明を促し、産業の発達に寄与することを目的としています(特許法1条)。
すなわち、特許法とは、
を定めている法律です。
なお、特許権の存続期間は、出願から20年です(特許法67条)。
保護対象
特許法によって保護されるものは「発明」です。
「発明」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されており(特許法2条1項)、自然界にある法則(自然法則)を利用した技術的なアイデアが保護の対象となります。
逆に、
などは、「発明」とは認められません。
保護要件
「発明」であっても、全ての発明が保護されるわけではありません。特許法上、「発明」として保護されるには、以下の要件を満たし、特許庁の審査にパスする必要があります。
なお、特許要件を満たしていても、社会的なモラル(公序良俗)又は社会の健康(公衆衛生)を害するおそれのある発明である場合は、保護されません(特許法32条)。
特許権を取得するための手続
特許権を取得するためには、大まかに
必要があります。
なお、③実体審査において、特許庁から、発明が保護に値しない理由(拒絶理由)が通知されることがあります(特許法50条)。しかし、出願した人が拒絶理由について反論したり(意見書の提出)、出願について補正をしたり(補正書の提出)することで、その判断を覆すことが可能です。
こうしたやりとりを経て、発明が保護に値しない理由がなくなったと判断されると、特許権を付与する旨の行政処分(特許査定、特許法51条)が発出されます(※この時点ではまだ特許権はありません)。
出願人が登録料を納付し、特許権の設定登録がなされることではじめて(特許法66条2項)、特許権が発生します(同条1項)。
特許庁ウェブサイト「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」
特許権の効力
特許権を取得すると、特許権者は特許発明を独占的に実施(使用・譲渡など)できるようになります(特許法68条)。
特許権の存続期間は原則、出願から20年です(特許法67条)。
ただし、発明の円滑な利用を促進する観点から、一部のケースで、特許権の効力が制限されることもあります(特許法69条など)。
- 特許法の概要まとめ
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✅保護対象|発明
✅保護要件
①産業上、利用できる発明であること
②新規性を満たしていること
③進歩性を満たしていること など✅特許権取得のための主な手続
①特許庁に対し、「特許出願」をし、さらに、
②出願から3年以内に「出願審査請求」(特許法48条の3第1項)を行って、
③出願された発明が保護に値するかどうかの審査(実体審査)にパスする✅特許権の効力
特許権をもつ者は特許発明を独占的に実施(使用・譲渡など)できるようになる✅特許権の存続期間
原則、出願から20年
意匠法
意匠法は、意匠(デザイン)の保護・利用を図ることにより、意匠の創作を促し、産業の発達に寄与することを目的としています(意匠法1条)。特許法と同じく、産業の発達に寄与することを目的としますが、工業製品のデザイン(意匠)を保護の対象とし、存続期間は、出願から最長25年です(意匠法21条)。
保護対象
保護対象である「意匠」とは、
の「形状・模様・色彩」に関するデザインのことです(意匠法2条1項)。
特許庁ウェブサイト「令和元年意匠法改正特設サイト」
従来は、「物品」のデザインのみが保護対象でしたが、意匠法改正(2020年4月1日施行)により、建築物・内装のデザインや、デジタル技術を活用した画像のデザインも保護対象となりました。
ただし、画像であれば、何でも保護されるわけではなく、保護対象は、機器のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)(表示画像や操作画像)に限られています。単なる壁紙や、映画・ゲーム等のコンテンツの画像などは、意匠法では保護されません。
保護要件
「意匠」が保護されるためには、以下の要件を満たし、審査にパスしなければなりません。
新規性の要件に関しては、特許法と同様、出願した意匠(発明)が、すでに世の中に知られている場合(公知意匠、意匠法3条1項1号・2号)には保護されません。
ただし、意匠制度では、出願した意匠が、公知意匠と類似する意匠(同項3号)と同じ場合についても、保護を受けることができないという特徴があり、この点が特許法とは異なります。
意匠権の発生、効力
意匠制度には、特許と異なり、審査請求制度(出願後、審査に着手してほしい旨を特許庁に請求する制度)はありません。(※日本の特許制度では、出願を行っただけでは審査は開始されず、審査を受けるためには別途、出願審査請求をする必要があります。)
そのため、意匠制度では、出願をしたら自動で原則全ての出願について審査が行われていきます。
審査の結果、意匠登録の要件を満たしていると判断された場合、出願人が、登録料を納付することにより、意匠権の設定登録がなされ、意匠権が発生します(意匠法20条1項)。
意匠権を取得すると、意匠権者は、登録意匠を独占的に実施できるようになります。意匠権は、登録意匠と同一の意匠だけでなく、類似の意匠に対しても及びます(意匠法23条)。
- 意匠法の概要まとめ
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✅保護対象
物品・建築物・画像の「形状・模様・色彩」に関するデザイン✅保護要件
①工業上、利用できるデザインであること
②新規性があること
③創作非容易性がある(高い創作性がある)こと など✅意匠権取得のための主な手続
①特許庁に対し、「意匠登録の出願」をし
②特許庁の審査にパスする✅意匠権の効力
意匠権をもつ者は登録意匠を独占的に実施(使用・譲渡など)できるようになる(類似の意匠についても効果が及ぶ)✅意匠権の存続期間
出願から最長25年
著作権法
著作権法は、著作者等の権利の保護を図ることにより、文化の発展に寄与することを目的としています(著作権法1条)。特許法などの産業財産権が、産業の発達を目的としているのに対し、著作権法は、文化的な創作活動の発展を目的としています。
保護対象
著作権法では、「著作物」が保護の対象です。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)です。著作「物」といっても有体物ではなく、無体物である創作的表現が保護の対象となります。
著作権法では、著作物の種類が例示されています。
- 著作物の例示(著作権法10条1項)
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・小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物(1号)
・音楽の著作物(2号)
・舞踊又は無言劇の著作物(3号)
・絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物(4号)
・建築の著作物(5号)
・地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物(6号)
・映画の著作物(7号)
・写真の著作物(8号)
・プログラムの著作物(9号)
上記の他に、以下のような著作物もあります。
また、著作権法では、
などについても保護の対象となっています。
権利の内容
著作権法では、著作権の内容を、「著作権」(財産権)と、「著作者人格権」とに分けて定めています(著作権法17条)。
「著作権」は、著作者の財産的な権利を保護するものであり、創作した著作物から利益を得られるよう、様々な権利が定められています。一方、「著作者人格権」は、著作者の人格的な利益を保護するもので、著作物を公表するか(公表権)、著作物に氏名を表示するか(氏名表示権)などの権利が定められています。
また、著作権の他に、著作物の伝達に重要な役割を果たした者を保護する「著作者隣接権」もあります。
権利の発生、保護期間
著作権は、著作物が創作された時に発生します(著作権法51条1項)。特許権や意匠権のように、著作権を取得するための手続は一切不要で、これを「無法式主義」といいます。
また、保護期間は、著作物の創作の時から始まり、著作者の死後、原則70年間です(著作権法51条2項)。著作権が消滅した著作物は、社会全体が共有する財産として、誰でも利用することができるようになります。
なお、著作物として保護されている間でも、私的に使用する・教育で使用するなどの一定の場合には、権利者の了解を得ずに著作物等を利用できます。
- 著作権法の概要まとめ
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✅保護対象|著作物
✅保護要件
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること✅著作権取得のための主な手続
著作物が創作された時に発生するため手続不要(無法式主義)✅著作権の権利の内容
・著作権(財産権)|著作者の財産的な権利を保護するもの
・著作者人格権|著作者の人格的な利益を保護するもの✅保護期間
著作物の創作の時から始まり、著作者の死後、原則70年間
商標法
商標法と特許法との根本的な違い
企業等が経済活動を行う際、他人の商品等と区別することができなければ、いくら良い商品やサービスを提供し、その商品等を宣伝しても、消費者に購入してもらうことは困難です。
そこで、商品やサービスにマーク(商標)を付けることで、
が分かる仕組みが必要となってきます。
商品やサービスに付された商標は、使用されることにより、商品等を提供する事業者への信用が蓄積されていきますが、他人がその商標を自由に使える状態では、消費者は、商標を信頼して商品等を購入することができなくなってしまいます。
そこで、商標法では、商標の保護により、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与し、あわせて需要者(消費者)の利益を保護しています(商標法1条)。
同じ産業財産権法である特許法は、技術的なアイデアを保護して、産業の発達に寄与することを目的としています。一方、商標法では、商標を保護し、産業の発達に寄与することに加え、需要者の利益を保護することも目的とします。
また、特許権は、発明の保護と利用のバランスから、権利期間は出願から20年で終了します(特許法67条)。一方、商標権の権利期間は設定登録の日から10年です(商標法19条1項)が、商標権は、商標に蓄積された信用を保護することが目的であり、商標を使用する期間が長くなるほど、信用が蓄積され価値が高まることから、申請により何度でも更新登録することができます(商標法19条2項)。
保護対象
商標法は「商標」を保護します。
「商標」とは、
をいいます(商標法2条1項)。
商標の種類 | ||
---|---|---|
文字商標:文字のみからなる商標 | 図形商標:図形だけで構成する商標 | 記号商標:暖簾や紋章、文字を図案化した記号などで構成される商標 |
立体商標:立体的形状で構成する商標 | 結合商標:文字・図形・記号・立体的形状の二つ以上を組み合わせた商標 | 動き商標:文字や図形等が時間の経過に従って変化する商標 |
ホログラム商標:文字や図形等がホログラフィー等の方法により変化する商標 | 色彩のみからなる商標:単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標 | |
音商標:音楽・音声・自然音等からなる商標 | 位置商標:図形等を商品等に付す位置が特定される商標 | |
引用元|特許庁「2022年度知的財産権制度入門テキスト第2章 第4節 商標制度の概要」
保護要件
「商標」が保護されるためには、以下の要件を満たし、審査にパスしなければなりません。
日本の商標制度では、現実に商標を使用している必要はなく、自分の業務に関する商品等について使用する意思があれば(商標法3条1項柱書)、出願に基づいて、登録を受けることができます。
商標権の発生、効力
商標権は、文字、図形等のマークと、その登録商標を使用する商品やサービス(役務)との組合せで権利範囲が定まります。
つまり、商標登録出願をするにあたっては、「○○という商品に○○という商標を使用します」といったかたちで、商標をどのような商品・役務について使用するのかを指定します(商標法6条1項)。登録した商標を使用する商品を「指定商品」、使用する役務を「指定役務」といいます。
商標制度には、審査請求制度はなく、原則全ての出願について特許庁による審査が行われます。審査の結果、商標登録の要件を満たしていると判断された場合、登録料を納付することにより、商標権の設定登録がなされ、商標権が発生します(商標法18条1項)。
商標権を取得した者(商標権者)は、指定商品又は指定役務について、登録商標を独占的に使用できるようになります(商標法25条)。
また、第三者が、指定商品等と同じ商品等に自己の登録商標と類似する商標を使用することや、指定商品等と類似する商品等に自己の登録商標と同一又は類似の商標を使用することを排除することができます(商標法36条及び37条1号)。
特許庁「2022年度知的財産権制度入門テキスト第2章 第4節 商標制度の概要」
- 商標法の概要まとめ
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✅保護対象|商標
✅保護要件
①自己と他人の商品等とを区別することができないものでないこと(商標法3条1項各号)
②公共の機関のマークと紛らわしい等の公益性に反するものでないこと(同法4条1項1~7・9・16・18号)
③他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいものでないこと(同項8・10~15・17・19号) など✅商標権取得のための主な手続
①特許庁に対し、「○○という商品(役務)に○○という商標を使用します」というかたちで出願をし
②特許庁の審査にパスする✅商標権の効力
指定商品(指定役務)について、登録商標を独占的に使用できるようになる✅存続期間
設定登録の日から10年
※ただし申請により何度でも更新登録することができる
不正競争防止法
不競法は、不正な競争行為を防止し、事業者間の公正な競争を図ることによって、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(不競法1条)。
不競法は、特許法などのように権利を発生させて保護するのではなく、「不正競争」として定義される特定の行為を禁止して保護するという構成になっています。
規制される行為
不競法は、「不正競争」になる行為を列挙しており、これに該当しないものは、不正競争行為とは認められず、規制を受けません。
- 不正競争となる行為(不競法2条1項)
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・周知表示混同惹起行為(1号)
・著名表示の冒用(2号)
・商品形態の模倣(3号)
・営業秘密の不正利用(4号~10号)
・限定提供データの不正利用(11号~16号
・技術的制限手段の回避装置の提供(17号・18号)
・ドメイン名の不正取得(19号)
・品質誤認行為(20号)
・競業者に関する虚偽事実の告知・流布(21号)
・代理人等による商標不正利用(22号)
上記の不正競争行為による被害を受けた場合は、差止請求(不競法3条)や、損害賠償請求(不競法4条)等の民事的救済が認められるほかに、一部の行為には刑事罰(不競法21条)も用意されています。
また、上記以外にも、条約上の禁止行為として、以下の行為が定められています。これらの規定に違反すると、刑事罰の対象になります(不競法21条2項7号)。
- 条約上の禁止行為
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外国の国旗の商業上の使用行為(不競法16条)
国際機関の標章の商業上の使用(不競法17条)
外国公務員等への贈賄(不競法18条)
特許法などの権利付与法においては、差止請求をできる者が明確に限定されています。例えば、特許法上、特許権の侵害行為に対し差止請求ができるのは、特許権者と専用実施権者のみです(特許法100条)。
これに対し、不競法の場合、差止請求ができる者かどうかは、問題の不正競争によって営業上の利益を害される(おそれのある)者であるか否かできまるので、解釈の余地が大きくなります。
- 不競法の概要まとめ
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✅特許法などとの違い
特許法などのように権利を発生させて保護するのではなく、「不正競争」として定義される特定の行為を禁止して保護する✅禁止されている事項
・不競法2条1項で列挙されている不正競争に該当する行為
・条約上、禁止されている行為
この記事のまとめ
知的財産法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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参考文献
特許庁ウェブサイト「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」