電波法とは?主な規制内容・免許制・
技適マーク・違反時のペナルティ(罰則)
などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

電波法」とは、電波の公平かつ能率的な利用を確保して、公共の福祉を増進することを目的とした法律です。

電波法では、無線通信に関して以下の規制などが設けられています。
① 無線局の免許制・登録制
② 無線設備に関する規制
③ 無線従事者に関する規制
④ 無線局の運用に関する規制

無線局の開設や無線設備の運用などを行う者は、電波法の規制を遵守しなければなりません。電波法に違反すると、行政処分や刑事罰の対象となるので要注意です。

この記事では電波法について、主な規制内容や違反時のペナルティ(罰則)などを解説します。

ヒー

電波法…関係する業種はなかなか狭そうですね。アマチュア無線とかですか?

ムートン

いえいえ、例えば皆さんが持っているスマホも立派な「無線設備」です。他にもワイヤレスマイクやワイヤレスヘッドセットなどにも電波法が関係しています。意外に身近な電波法を学んでいきましょう。

※この記事は、2023年6月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 法…電波法
  • 令…電波法施行令
  • 規則…電波法施行規則

電波法とは

電波法」とは、電波の公平かつ能率的な利用を確保して、公共の福祉を増進することを目的とした法律です。

電波法の概要

電波は有限であり、その公平かつ能率的な利用を確保するためには、法律による規制が必要になります。

そのため電波法では、無線局の免許制・登録制運用規制無線設備・無線従事者に関する規制などを設けて、電波利用の適正化を図っています。

2005年電波法改正により今後使えなくなる無線設備

2005年12月1日以降、無線設備のスプリアス発射強度について、新たな許容値が適用されています(新スプリアス規格)。

これにより、旧スプリアス規格については使用期限が定められましたが、当初の使用期限とされていた2022年11月30日を経過したものの、新型コロナウイルス感染症の影響等によって無線設備の製造・移行作業に遅れが生じていることを考慮し、当分の間延長されている状況です。

しかし、いずれは旧スプリアス規格の使用が停止されることが見込まれるため、新スプリアス規格への移行が済んでいない事業者は、できる限り早めに移行を済ませましょう。

参考|総務省電波利用ホームページ「無線設備のスプリアス発射の強度の許容値」

電波法における主な規制

電波法では、電波の利用等に関して、主に以下の規制が設けられています。

① 無線局の免許制・登録制
② 無線設備に関する規制
③ 無線従事者に関する規制
④ 無線局の運用に関する規制

無線局の免許制・登録制

無線局を開設する際には、原則として総務大臣の免許または登録を受けなければなりません。

免許制と登録制の違い

免許と登録は、いずれも行政官庁が事業者に与える許認可ですが、以下のように異なる制度です。

① 免許
一般に禁止・制限されている行為を、行政官庁が特定の人に対して許可することです。免許の審査に当たっては、行政官庁に広い裁量が認められます

② 登録
一定の事項を公証するため、行政官庁の公簿に当該事項を記載・記録することです。登録の審査に当たっては、行政官庁の自由裁量は認められず、要件の形式的な審査のみが行われます

電波法では、

✅ 公衆に与える影響が大きいと考えられる無線局の開設→免許制
✅ 公衆への影響が比較的小さいと考えられる無線局の開設→登録制

としています。
なお、電波が極めて弱い無線局などについては、例外的に免許も登録も不要とされています。

免許制の対象となる無線局

無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受ける必要があります(法4条)。ただし、以下のいずれかに該当する無線局の開設に当たっては、免許は必要ありません(同条但し書き)。

免許の必要のない無線局

・発射する電波が著しく微弱な無線局で、規則6条1項で定めるもの
・26.9MHzから27.2MHzまでの周波数の電波を使用し、かつ空中線電力が0.5ワット以下である無線局のうち、規則6条3項で定めるものであって、適合表示無線設備のみを使用するもの
・空中線電力が1ワット以下である無線局のうち、規則6条4項で定めるものであって、他の無線局に混信を与えないように運用できる機能を有するもので、かつ適合表示無線設備のみを使用するもの
・登録制の対象となる無線局

登録制の対象となる無線局

以下の要件をいずれも満たす無線局の開設に当たっては、総務大臣の登録を受ける必要があります(法27条の21第1項)。

登録制の対象となる無線局

・他の無線局に混信を与えないように運用できる機能を有するもの
・適合表示無線設備のみを使用するもの
・定められた区域内に開設するもの

無線設備に関する規制

無線設備については、電波法によって以下の規制が設けられています。

① 電波の質(法28条)
周波数の偏差・幅や高調波の強度など、電波の質を規則で定める基準に適合させなければなりません。

② 受信設備の条件(法29条)
受信設備から副次的に発せられる電波や高周波電流が、規則で定める限度を超えて、他の無線設備の機能に支障を与えるものであってはなりません。

③ 安全施設(法30条)
無線設備には、人体への危害や物件の損傷を防ぐため、規則で定める施設をしなければなりません。

④ 周波数測定装置の備え付け(法31条)
電波の送信設備について、誤差が使用周波数の許容偏差の2分の1以下である周波数測定装置を備え付けなければなりません。

⑤ 船舶局への計器および予備品の備え付け(法32条)
船舶局の無線設備には、規則の定めに従い、操作のために必要な計器と予備品を備え付けなければなりません。

⑥ 義務船舶局に備えるべき無線設備(法33条~35条)
義務船舶局の無線設備には、送信設備および受信設備の機器、遭難自動通報設備の機器、船舶の航行の安全に関する情報の受信機器などを備えなければなりません。
また義務船舶局については、無線設備の設置場所や、予備設備・計器・予備品の備え付けに関する規制も設けられています。

⑦ 義務航空機局の条件(法36条)
義務航空機局の送信設備は、規則で定める有効通達距離を持つ必要があります。

⑧ 人工衛星局の条件(法36条の2)
人工衛星局の無線設備は、遠隔操作によって電波の発射を直ちに停止できる者でなければなりません。また原則として、無線設備の設置場所を遠隔操作で変更できる必要があります。

⑨ 無線設備の機器の検定(法37条)
送信設備の周波数測定装置、船舶に備えるレーダー・救命用の無線設備、義務船舶局の無線設備の機器、船舶地球局の無線設備の機器、航空機に施設する無線設備の機器については、総務大臣の型式検定に合格する必要があります。

⑩ 無線設備に関するその他の技術基準(法38条)
無線設備(放送の受信のみを目的とするものを除く)は上記のほか、規則で定める技術基準に適合するものでなければなりません。

基準認証制度・技術基準適合証明(技適マーク)とは

無線局開設の免許審査においては、無線設備が技術基準に適合しているか否かが検査されます(法7条1項1号・12条)。

ただし、携帯電話など小規模な無線局に使用するための無線局であって規則で定めるもの(=特定無線設備)については、技術基準への適合性に関して登録証明機関の「技術基準適合証明」を受けることができます(法38条の6第1項)。これを「基準認証制度」といいます。

技術基準適合証明がなされた特定無線設備には、その旨の表示(=技適マーク)が付されます(法38条の7第1項)。技適マークが付された特定無線設備を使用する無線局については、特例として免許審査が簡略化されます。

技適マーク

基準認証制度(技術基準適合証明・技適マーク)の詳細については、総務省電波利用ホームページをご参照ください。

参考|総務省電波利用ホームページ「制度の概要(登録証明機関一覧)」

無線従事者に関する規制

無線局の無線設備を単独で操作できるのは、原則として無線従事者のみです。それ以外の者は原則として、主任無線従事者の監督を受けなければ、無線局の無線設備を操作できません(法39条1項)。

無線従事者資格(免許)の種類

無線従事者の資格は、以下のとおり細分化されています(法40条、令2条)。

①無線従事者(総合)
・第一級総合無線通信士
・第二級総合無線通信士
・第三級総合無線通信士

②無線従事者(海上)
・第一級海上無線通信士
・第二級海上無線通信士
・第三級海上無線通信士
・第四級海上無線通信士
・第一級海上特殊無線技士
・第二級海上特殊無線技士
・第三級海上特殊無線技士
・レーダー級海上特殊無線技士

③無線従事者(航空)
・航空無線通信士
・航空特殊無線技士

④無線従事者(陸上)
・第一級陸上無線技術士
・第二級陸上無線技術士
・第一級陸上特殊無線技士
・第二級陸上特殊無線技士
・第三級陸上特殊無線技士
・国内電信級陸上特殊無線技士

⑤無線従事者(アマチュア)
・第一級アマチュア無線技士
・第二級アマチュア無線技士
・第三級アマチュア無線技士
・第四級アマチュア無線技士

無線従事者になろうとする者は、業務の内容に対応する総務大臣の免許を受けなければなりません(法41条1項)。

無線従事者免許の取得方法

無線従事者免許を取得する方法には、以下の4つがあります。なお、無線従事者免許は生涯有効です。

① 国家試験に合格する
② 養成課程を修了する
③ 学校で無線通信に関する科目を修めて卒業する
④ 一定の資格・業務経歴を得る

免許取得方法の詳細については、総務省電波利用ホームページをご参照ください。

参考|総務省電波利用ホームページ「無線従事者資格の取得方法」

無線局の運用に関する規制

無線局の運用について、電波法は主に以下の規制を設けています。

① 目的外使用の禁止(法52条)
無線局は原則として、免許状に記載された目的・通信の相手方・通信事項の範囲を超えて運用してはなりません。

② 免許状または登録状の記載遵守(法53条)
無線設備の設置場所・識別番号・電波の型式・周波数は、無線局の免許状または登録状の記載に従わなければなりません(遭難通信を除きます)。

③ 空中線電力の規制(法54条)
空中線電力は、免許状または登録状に記載されたものの範囲内で、かつ通信を行うため必要最小のものでなければなりません(遭難通信を除きます)。

④ 運用許容時間の遵守(法55条)
無線局は原則として、免許状に記載された運用許容時間内でなければ、運用してはなりません。

⑤ 混線等の防止(法56条)
無線局は原則として、他の無線局などの運用を阻害するような混信等を与えないように運用しなければなりません。

⑥ 疑似空中線回路の使用(法57条)
無線設備の機器の試験・調整を行うための運用時、または実験等無線局の運用時には、なるべく疑似空中線回路を使用しなければなりません。

⑦ 秘密の保護(法59条)
原則として、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して、その存在・内容を漏らし、または窃用してはなりません。

⑧ 時計・業務書類等の備付け(法60条)
無線局には原則として、正確な時計や無線業務日誌などの書類を備え付けなければなりません。

⑨ 通信方法等(法61条)
無線局の通信方法や、無線設備の機能を維持するために必要な事項については、規則の定めに従う必要があります。

上記に加えて、アマチュア無線局の行う通信については、暗語を使用してはならないものとされています(法58条)。また、海岸局等・航空局等の運用については、特別の規制が適用されます(法62条~70条の6)。

無線局の運用の特例

無線局は免許人等による運用が原則とされていますが、以下の場合には例外的に、免許人等以外の者による運用が認められています

① 地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、または発生するおそれがある場合において、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保または秩序の維持のために必要な通信を行うとき(法70条の7)

② 電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局のうち、他の無線局に混信等を与えないように運用できる機能を有するものについて、免許人以外の者による運用が電波の能率的な利用に資するとき(簡易な操作によるものに限ります。法70条の8)

③ 登録局について、登録人以外の者による運用が電波の能率的な利用に資するものであり、かつ、他の無線局の運用に混信等を与えるおそれがないとき(法70条の9)

電波法違反に対して課されるペナルティ

電波法違反の行為をした事業者には、行政処分または刑事罰が科される可能性があります。

行政処分

電波法に違反した事業者は、以下の行政処分を受ける可能性があります。

① 技術基準適合命令(法71条の5)
無線設備が技術基準に適合していないときは、総務大臣によって、無線設備の修理その他の必要な措置が命じられることがあります。

② 電波発射停止命令(法72条)
無線局の発射する電波の質が基準に適合していないときは、総務大臣によって、当該無線局に対して臨時に電波の発射停止が命じられることがあります。

③ 無線局の運用停止命令等(法76条1項・3項)
無線局の免許または登録を受けた者(=免許人等)が電波法や放送法などに違反したときは、3カ月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、または期間を定めて運用許容機関・周波数・空中線電力が制限されることがあります。

また登録局について、技術基準に適合しない無線設備を使用することで他の登録局に悪影響を及ぼすおそれがあるなど、不適正な運用により電波の能率的な利用を阻害するおそれが著しいときは、運用停止命令、運用許容機関・周波数・空中線電力の制限または新規開設の禁止が行われることがあります。

④ 無線局の免許・登録の取消し(法76条4項~7項)
一定の重大な違反に該当した場合には、無線局の免許・登録が取り消されることがあります。

⑤ 無線従事者の免許取消し等(法79条)
無線従事者が電波法違反に当たる行為をした場合などには、無線従事者としての免許が取り消され、または3カ月以内の業務停止が命じられることがあります。

など

刑事罰

電波法違反に該当する行為の一部は、刑事罰の対象とされています。主な罰則対象行為と法定刑は、以下のとおりです。

主な罰則対象行為条文法定刑
虚偽の通信を発する行為法106条1項3年以下の懲役または150万円以下の罰金
憲法・政府の暴力的破壊を主張する通信を発する行為法107条5年以下の懲役または禁錮
わいせつな通信法108条2年以下の懲役または100万円以下の罰金
無線通信に関する秘密の漏えい・窃用法109条1年以下の懲役または50万円以下の罰金
※無線通信の業務に従事する者については、2年以下の懲役または100万円以下の罰金
無免許・無登録での無線局の開設法110条1年以下の懲役または100万円以下の罰金
ヒー

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