入札とは?
目的・種類・流れ・参加方法・
入札談合に関する独占禁止法の規制などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「入札」とは、国・地方公共団体・官営企業・半官半民企業などが発注を行う際に、受注希望者に受注金額を提示させた上で、最もよい条件を提示した者を受注者に選ぶ方式です。
公的機関と民間事業者の癒着を防ぎ、公平・公正に受注者を選ぶため、公共発注については入札が原則とされています。なお、公的機関側が任意に受注者を選ぶ方式は「随意契約」と呼ばれています。
入札の方式には、誰でも参加できる「一般競争入札」のほか、公的機関側が入札者を指名して行う「指名競争入札」があります。
入札価格だけで判断するのではなく、企画提案や技術提案なども募集して総合評価を行う方式は「企画競争入札」と呼ばれますが、法律上は随意契約の一種です。入札に参加するには、まず入札案件に対応する参加資格を取得する必要があります。
その後、仕様書の取得・入札説明会への参加・入札書類の作成などの事前準備を整え、実際に入札を行います。落札が決まったら、公的機関との間で受発注の契約を締結します。入札に関しては、独占禁止法によって規制が設けられている点に注意が必要です。入札価格についてあらかじめ他の事業者と談合を行うと、独占禁止法違反によってペナルティを受けることになってしまいます。
この記事では入札について、目的・種類・流れ・参加方法・入札談合に関する独占禁止法の規制などを解説します。
※この記事は、2024年1月29日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
目次
入札とは
「入札」とは、国・地方公共団体・官営企業・半官半民企業などが発注を行う際に、受注希望者に受注金額を提示させた上で、最もよい条件を提示した者を受注者に選ぶ方式です。
入札を行う目的
入札の主な目的は、公的機関と民間事業者の癒着を防ぎ、公平・公正に受注者を選ぶことです。
市民に対して中立を保つべき公的機関については、賄賂の収受や贈与が犯罪とされているほか(刑法197条以下)、キャリア層は数年ごとの人事異動が確立されているなど、民間事業者との癒着を強く警戒する仕組みが整備されています。
公共工事の受注についても、入札を原則とすることによって恣意的な受注者の選択を排し、公平性・公正性の維持が図られています。
また、入札によって受注価格を競わせることにより、合理的な価格での受注を可能にすることも入札の目的の一つです。
入札と随意契約の違い
入札に対して、公共機関側が任意に受注者を選んで契約することを「随意契約」といいます。
随意契約の場合は、スピーディに受注者を選んで事業を進められる反面、受注者の恣意的な選択が行われてしまうリスクがあるのが難点です。
例えば地方自治法234条2項では、地方公共団体の中立性・公正性を確保するため、随意契約は政令で定める場合に該当するときに限って認められるとされています(随意契約によることができる場合につき、地方自治法施行令167条の2)。
入札方式の種類
入札の方式には、誰でも参加できる「一般競争入札」のほか、公的機関側が入札者を指名して行う「指名競争入札」があります。
入札価格だけで判断するのではなく、企画提案や技術提案なども募集して総合評価を行う方式は「企画競争入札」と呼ばれますが、法律上は随意契約の一種です。
一般競争入札
「一般競争入札」は、入札できる業者を制限することなく(=誰でも入札できる)、最も安価な価格を提示した事業者を受注者として選定する方式です。
例えば、ある工事について、
A社:300万円
B社:500万円
C社:700万円
各社が上記の受注価格で一般競争入札に参加した場合は、原則としてA社が落札者となります。
ただし、あまりにも安い価格で入札に参加する事業者は、業務の品質等に問題がある可能性が高いです。そのため、入札価格の下限(=最低制限価格)が設けられることがあります。
例えばA社が300万円、B社が500万円、C社が700万円で入札したケースにおいて、最低制限価格が400万円だった場合は、A社ではなくB社が落札者となります。
また、入札参加者の談合によって落札価格が青天井に吊り上げられることを避けるため、上限として予定価格が設けられるのが一般的です。
例えばA社が300万円、B社が500万円、C社が700万円で入札したケースにおいて、予定価格が250万円だった場合には、全参加者が予定価格を上回っているので落札者なしとなります。
一般競争入札は透明性が高く、中立性・公正性を確保しやすいのが大きな特徴です。そのため、地方公共団体による契約の締結は、一般競争入札によることが原則とされています(地方自治法234条1項、2項)。
指名競争入札
「指名競争入札」は、公的機関側が信頼できる事業者のみを指名して入札に参加させる方式です。あまりにも資力に乏しい事業者や、過去に問題を起こした事業者などを入札から排除することを目的としています。
入札者を限定する点以外は、一般競争入札と同様の方式で落札者の選定が行われます。すなわち指名競争入札でも、落札者は原則として最も安価な価格を提示した事業者となりますが、最低制限価格や予定価格が設定されることがあります。
指名競争入札では、入札できる事業者をどのような基準で選定するかが大きな問題となります。恣意的な基準を設定すると、低価格で高品質の業務を行う優良な事業者が排除されてしまいかねません。
そこで地方自治法では、指名競争入札は政令で定める場合に該当するときに限って認められています(同法234条2項、地方自治法施行令167条)。
企画競争入札
「企画競争入札」は、入札価格だけでなく、企画提案や技術提案なども併せて総合的に考慮して受注者を決める方式です。「プロポーザル方式」とも呼ばれています。
企画競争入札が適しているのは、受注者によって業務の内容や結果が異なる場合です。例えば建築設計や、各種のコンサルティングサービスなどについて企画競争入札が行われることがあります。
企画競争入札という呼称ではありますが、法的には随意契約の一種であると解されています。
例えば地方自治法施行令では、「性質または目的が競争入札に適しない」契約について随意契約が認められており(同167条の2第1項2号)、企画競争入札は同規定を根拠とするものです。
企画競争入札の場合、一般競争入札や指名競争入札とは選考基準が大きく異なるものの、入札手続きの流れはおおむね共通しています。
ただし、一般競争入札や指名競争入札と比べて、企画競争入札の準備には多くの労力を要するケースが多い点に注意が必要です。
入札の流れ・参加方法
入札に参加する際の手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
- 入札の流れ
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① 入札参加資格を取得する
② 入札案件を探す
③ 入札の事前準備|仕様書の取得・入札説明会への参加・入札書類の作成など
④ 入札する
⑤ 落札の決定後、契約を締結する
入札参加資格を取得する
入札へ参加するに当たっては、発注機関が定める入札参加資格を取得しなければなりません。入札参加資格の申請は、原則として無料です。
入札参加資格の種類は、発注機関や業務の内容などによって異なります。一例として、各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争入札・指名競争入札については、全省庁統一資格が設けられています。
入札案件を探してから入札参加資格を取得するケースもありますが、スムーズに入札へ参加できるように、取り扱う業務に関連する入札資格はあらかじめ取得しておくことが望ましいでしょう。
入札案件を探す
発注機関が公示している入札情報を収集し、入札したい案件を探します。入札情報は、官公庁や地方公共団体のウェブサイト、および入札関連の情報をまとめたポータルサイトなどで公表されています。
入札の事前準備|仕様書の取得・入札説明会への参加・入札書類の作成など
入札したい案件が決まったら、実際の入札に向けた事前準備を行います。具体的に必要となる作業は、主に以下のとおりです。
① 仕様書の取得
入札方式や要件などの詳細情報が記載された仕様書を、ウェブサイトからのダウンロードや資料請求などによって取得します。
② 入札説明会への参加
入札説明会への参加が入札の必須要件とされている場合には、日程を合わせて参加します。仕様書が入札説明会において交付される案件もあります。
③ 入札書類の作成
仕様書の記載に従って、入札書類を作成します。
など
入札する
入札書類の作成が完了したら、実際に入札を行います。入札の方法は、発注機関が指定した会場での入札、電子入札または郵送入札のうちいずれかとされるのが一般的です。
入札は原則として、入札期間中に1回しかできません。競合他社の動向も考慮しつつ、どの程度の金額で入札するかを慎重に検討しましょう。
落札の決定後、契約を締結する
入札の結果、落札者となった場合には、発注機関との間で受注契約を締結します。契約の締結に当たっては、契約書の内容をよく確認しましょう。
入札談合に関する独占禁止法の規制
入札に関しては、独占禁止法によって入札談合の規制が設けられている点に注意が必要です。入札価格についてあらかじめ他の事業者と談合を行うと、独占禁止法違反によってペナルティを受けることになってしまいます。
入札談合とは
「入札談合」とは、公共工事や物品の公共調達などに関する入札に参加する企業同士が、事前に相談して受注する企業や金額などを決めることをいいます。
入札談合を行うと、理論上は際限なく落札価格を吊り上げることができてしまいます。発注機関の側で予定価格を設定するケースが多いため、実際には青天井となることはありませんが、それでも落札価格は適正な水準よりも高くなってしまうでしょう。
入札談合に参加する事業者の間では、落札者を持ち回りとする旨を合意するケースが多いです。受注できるかどうか分からない入札に取り組むよりも、数回に1度は確実に受注できた方が、事業者にとっては安心感があるでしょう。また、受注できた際には価格を高めに設定することができます。
このように、安定した高利潤を追求する目的で、入札談合に参加する事業者が後を絶ちません。
入札談合は「不当な取引制限」に当たる
入札談合は、入札において働くべき競争原理を阻害する不正行為です。事業者間での競争がなくなると、受注価格の高騰やサービスの品質低下を招き、ひいては一般消費者を中心とする国民の利益を害してしまいます。
そこで独占禁止法では、入札談合を「不当な取引制限」として禁止しています(同法2条6項・6条)。なお入札談合以外に、カルテルも不当な取引制限に当たります。
入札談合をした事業者に対するペナルティ(罰則)
入札談合をした事業者は、独占禁止法違反によって公正取引委員会から排除措置命令や課徴金納付命令を受ける可能性があるほか、刑事罰の対象にもなり得ます。
① 排除措置命令(独占禁止法7条)
公正取引委員会が違反事業者に対して、入札談合の差止めなどを命じます。排除措置命令を発するかどうかは、公正取引委員会の裁量に委ねられています。
② 課徴金納付命令(同法7条の2)
公正取引委員会が違反事業者に対して、入札談合を行った期間中の売上額等の10%に当たる課徴金の納付を命じます。ただし、違反事業者およびグループ会社がすべて中小企業の場合は、課徴金の算定率は4%となります。
排除措置命令とは異なり、課徴金納付命令は必要的とされています。ただし、課徴金額が100万円未満となる場合は納付が免除されるほか、公正取引委員会による調査の開始前の段階で、入札談合を最初に報告した事業者についても、課徴金が免除されます。
③ 刑事罰(同法89条・95条1項1号・2項1号)
入札談合を含む不当な取引制限をした者には「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」が科されるほか、両罰規定によって法人・団体にも「5億円以下の罰金」が科されます。
企業にとって入札談合は得られる利益以上のリスクとなります。自社の担当者が入札談合を行わないように教育をするなど社内体制を整えましょう。
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