原契約とは?
読み方・現契約や本契約との違い・
変更契約や個別契約との適用関係などを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「原契約(げんけいやく)」とは、契約の変更・更新を行う場合における変更前・更新前の契約、または個別契約を締結する場合における基本契約を意味します。なお、読み方が同じ「現契約(げんけいやく)」は、現在有効である契約を意味します。
変更契約・更新契約・個別契約を締結する際には、契約書において原契約の位置づけ等を明記する必要があります。締結しようとする契約と原契約の関係性が明確になるような記載を心がけましょう。
原契約と変更契約等は、スムーズに内容を対照できるように、一体的に管理することが大切です。また、新たに変更契約等を締結する際には、原契約の内容を正確に把握しましょう。
加えて、原契約が印紙税の課税文書である場合には、変更契約等に収入印紙を貼付する必要があるか否かについても検討を要します。
この記事では原契約について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2024年4月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
原契約とは|読み方も含め分かりやすく解説!
「原契約(げんけいやく)」とは、「元となる契約」という意味です。
具体的には、
- 契約の変更・更新を行う場合における変更・更新前の契約
- 個別契約を締結する場合における基本契約
が原契約に当たります。
原契約と現契約の違い
原契約と読み方が同じ用語として「現契約(げんけいやく)」があります。「現契約」とは、現在有効である契約を意味します。
例えば変更契約を締結して、従前の契約(=原契約)を変更するとします。
この場合の「現契約」は、変更契約の締結前であれば変更前の契約、変更契約の締結後であれば変更後の契約を指します。
原契約と本契約の違い
契約書に関しては、「本契約(ほんけいやく)」という用語が使われることもあります。
「本契約」は、おおむね以下の2通りの意味で用いられます。
① 本契約=「この契約」
・「本契約」の用語が記載されている契約そのものを指すパターンです。
例:甲および乙は……以下の内容で本契約を締結した。
・変更契約や個別契約においては、「原契約」と「本契約」は対比的な位置づけとなります。
例:本契約(=変更契約または個別契約)において用いられる用語は、本契約で別途定義される場合を除き、原契約において定義された意味を有する。
② 本契約=「正式な契約」
先行する仮契約や暫定的な合意などに対して、正式な契約を「本契約」と表記するパターンです。
例:M&Aに関して、左記に基本契約を締結し、デューデリジェンスの完了後に本契約を締結する。
「原契約」の表記が使われる場面
「原契約」の表記が使われるのは、主に以下の契約書を締結する場面です。
場面1|変更契約書・更新契約書
場面2|個別契約書
場面1|変更契約書・更新契約書
従前の契約内容を変更する場合には変更契約書、従前の契約を更新する場合は更新契約書を締結するのが一般的です。
変更契約書および更新契約書においては、その契約を「本契約」、変更・更新前の契約を「原契約」と呼称して区別します。
(例)
・甲及び乙は、原契約を以下の内容により変更することを目的として、本契約(変更契約)を締結した。
・甲及び乙は、原契約を同一の条件により更新することを目的として、本契約(更新契約)を締結した。
複数回の変更・更新があった場合における「原契約」の定義
契約の変更・更新が複数回行われた場合においては、「原契約」は変更・更新直前の契約を指すのが一般的です。
(例)
① 当初の契約を締結
② 1回目の変更契約を締結
③ 2回目の変更契約を締結
→2回目の変更契約における「原契約」は、②1回目の変更契約による変更後の契約を意味します。
場面2|個別契約書
継続的な売買や業務委託を行う際には、当初に基本契約書、個々の取引が発生する際に個別契約書というかたちで、2段階にわたって契約を締結するケースがあります。
①基本契約書:すべての取引に共通する基本的な事項を定める契約書
②個別契約書:個別の取引について具体的な内容・条件を定める契約書
個別契約書においては、個別契約を「本契約」、基本契約を「原契約」または「基本契約」と呼称して区別します。
(例)
本契約(個別契約)の定めは、原契約(基本契約)に優先して適用される。
原契約について定める契約条項の例
変更契約・更新契約・個別契約においては、原契約について以下のような条項を定めるのが一般的です。
① 原契約の定義
② 原契約における用語の使用
③ 原契約と変更契約等の適用関係
④ 契約変更の効力発生時期
条項①|原契約の定義
変更契約・更新契約・個別契約の条文において「原契約」を用いる場合は、その意味を定義しておく必要があります。「原契約」の定義は、契約書の前文等に記載するのが一般的です。
- 例
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(a)変更契約の場合
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲乙間の×年×月×日付「○○契約書」(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)を変更するため、以下のとおり本契約を締結する。(b)更新契約の場合
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲乙間の×年×月×日付「○○契約書」(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)を更新するため、以下のとおり本契約を締結する。(c)個別契約の場合
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲乙間の×年×月×日付「○○基本契約書」(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)に係る個別契約として、以下のとおり本契約を締結する。
複数回の変更等が行われるケースを想定して、当初契約締結後の変更等を含めて「原契約」という旨を明記するとよいでしょう。
条項②|原契約における用語の使用
原契約における用語については、変更契約・更新契約・個別契約においても同じ意味で用いるのが一般的です。契約書の前文等において、その旨を明記しておきましょう。
(例)
本契約で用いられる用語は、本契約で別途定義される場合を除き、原契約において定義された意味を有する。
条項③|原契約と変更契約等の適用関係
変更契約・更新契約・個別契約に定められた事項は、原契約よりも優先させるのが一般的です。
他方で、変更契約・更新契約・個別契約に定めがない事項については、原契約の定めが適用されます。
原契約と変更契約等の適用関係が明確になるように、上記の旨を明記しておきましょう。
- 例
-
(a)変更契約・更新契約の場合
本契約に基づき明示的に変更されたものを除き、原契約の他の条項は、引き続き有効にその効力を維持する。(b)個別契約の場合
1. 本契約(個別契約)と原契約(基本契約)の内容が矛盾抵触する場合は、本契約が優先的に適用されるものとする。
2. 本契約に定めがない事項については、原契約が適用されるものとする。
条項④|契約変更の効力発生時期
変更契約(契約変更を伴う更新契約を含む)では、契約変更の効力が生じる時期について定める必要があります。
契約変更の効力発生時期は、変更契約の締結日とするのが原則ですが、例外的に変更の効力を遡らせるケースもあります。
いずれにしても、契約変更前になされた行為の効力は、変更契約の締結にかかわらず維持されます。契約変更の効力発生時期と併せて、念のためその旨も明記しておきましょう。
- 例
-
(a)変更契約の締結日を効力発生日とする場合
1. 本契約に基づく原契約の変更の効力は、本契約締結日から将来に向かって生じるものとする。
2. 本契約に基づく原契約の変更は、原契約に基づき既に行われた行為の効力に何らの影響も与えるものではない。(b)バックデートの場合
1. 本契約に基づく原契約の変更の効力は、本契約締結日にかかわらず、○年○月○日(注:契約締結日よりも前の日)から将来に向かって生じるものとする。
2. 本契約に基づく原契約の変更は、原契約に基づき既に行われた行為の効力に何らの影響も与えるものではない。
原契約の取り扱いに関する契約管理上の注意点
契約の変更・更新が発生した場合や、基本契約と個別契約を2段階で締結する場合には、契約管理に関して以下の各点に十分注意しましょう。
- 原契約と変更契約等は一体的に管理する
- 原契約の内容を正確に把握する
- 原契約が課税文書の場合における、変更契約書の収入印紙の要否
原契約と変更契約等は一体的に管理する
当初に締結した契約と、その後に締結した変更契約・更新契約は、スムーズな相互参照ができるように一体的に管理すべきです。
また、基本契約と個別契約を締結する場合にも、やはり相互参照する機会が生じ得るため、それらを一体的に管理する必要があります。
原契約と変更契約等の管理方法がバラバラだと、契約書の対応関係を把握するのに時間を要するほか、どちらか一方を紛失してしまい内容が分からないという事態にもなりかねません。
原契約の内容を正確に把握する
変更契約・更新契約における「原契約」とは、変更・更新直前の契約を指すため、必ずしも当初の契約が原契約とは限りません。すでに変更・更新が行われている場合には、当初契約にその内容を反映したものが原契約となります。
基本契約についても、当初の締結後に変更されている場合があります。その場合は、変更内容を反映したものが原契約となります。
原契約の内容を正確に把握できていないと、変更契約・更新契約・個別契約を適切にレビューすることはできません。
原契約が課税文書の場合における、変更契約書の収入印紙の要否
変更契約書の締結に当たって、原契約が印紙税の課税文書である場合は、変更契約書にも収入印紙を貼付する必要がないかどうか検討しなければなりません。
国税庁の見解によれば、変更契約書が課税文書に該当するかどうかは、当該変更契約書に「重要な事項」が含まれているかどうかによって判定されます。
「重要な事項」に当たる事項は、印紙税法基本通達別表第2「重要な事項の一覧表」において、文書の種類ごとに例示されています。
(例)
・原契約である工事請負契約書における規定事項のうち、工事代金の支払方法を変更した。
→第2号文書(請負に関する契約書)の重要な事項に当たる「契約金額の支払方法」を変更するものであるため、変更契約書も第2号文書として取り扱われ、収入印紙の貼付が必要です。
・原契約である工事請負契約書における規定事項のうち、契約の相手方に対する通知方法のみを変更した。
→通知方法は第2号文書(請負に関する契約書)の重要な事項に当たらないので、変更契約書は課税文書に当たらず、収入印紙の貼付は不要です。
なお、変更契約書を電子的に締結する場合は、課税文書の作成に当たらないと解されているため、収入印紙を貼付する必要はありません。
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