産休(産前産後休業)とは? いつからいつまで?
妊娠中・産後の働き方や
出産手当金の手続きなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

産休産前産後休業)とは、妊娠中出産後の女性労働者が取得することのできる、労働基準法で定められた休業のことです。

産休中は、社会保険料を免除する制度や、収入を補償するための出産手当金制度などがあります。
また、各種法令では、妊娠中・出産後の女性労働者の働き方について制限を設け、事業主が講じるべき措置を定めています。

この記事では、産休に際して会社が行うべき手続き、妊娠中・産後の従業員の働き方について、分かりやすく解説します。

ヒー

これから産休に入る従業員がいます、必要な手続きはいつまでに何をすればよいですか?

ムートン

産休前・産休中・復帰後にすべき手続きがあります。産休の期間や対応について解説します!

※この記事は、2025年5月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています。

  • 男女雇用機会均等法、均等法…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
  • 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

産休(産前産後休業)とは

産休産前産後休業)とは、労働基準法65条で次のように定められた、妊娠中と産後の女性労働者に認められた休業のことです。

労働基準法

第65条 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

② 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

労働基準法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

以下で、産休について詳しく解説していきます。

休業期間|産休はいつからいつまで?

産休の休業期間は、出産日以前6週間(詳細は「出産予定日と出産日」)と出産日翌日から8週間です。

6週間の産前休業は、妊娠中の女性労働者本人が休業を請求することが要件ですが、産後の6週間は女性労働者本人からの請求がなくとも、絶対に休ませなければならない期間となっています。
産後6週間を過ぎた場合は、女性労働者本人が働きたいと請求し、医師が働くことに支障がないことを認めた場合は、働かせてもよいとされております。

なお、双子以上を妊娠・出産する場合、産前休業期間は14週間になります。

出産予定日と出産日

産休について、実務的にはどのように日数カウントするべきか、ご説明いたします。

産前休業は、出産予定日を基準として6週間を計算します。
出産予定日に出産した場合は、出産予定日と出産日が同一であるため、その翌日から8週間の産後休業が開始します。

ヒー

でも、出産日に予定どおりに生まれてこないこともよくありますよね。早まったり、遅れたりすると休業はどうなるのでしょうか?

ムートン

出産予定日と出産日が異なる場合は、以下のようになります。

図のように、産前休業は、出産予定日を基準として6週間となりますが、もし予定よりも遅れて出産した場合予定日から出産日までの日数も産前休業にカウントされます
逆に、予定日よりも早く出産した場合は、産前休業開始日から実際の出産日までが産前休業となります。
どちらの場合でも、出産日当日は産前休業となるため、産後休業は出産日翌日から8週間となります。

また、労働基準法上、「出産」は妊娠4カ月(1カ月を28日として計算するため、85日)以上の出産を指し、死産も含められています。妊娠85日以上であれば、妊娠中絶(人工流産)であっても産後休業の規定が適用されます。

対象者|パート・アルバイト・派遣社員も取得可能

産休は、妊娠中・産後の女性労働者であれば、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員であっても適用されます。
ただし、産前休業については、正社員同様に、出産を予定している女性労働者が会社に休業を請求した場合のみ、取得させる必要があります。

育休(育児休業)との関係

育休育児休業)は、原則1歳までの子どもを養育する労働者に適用される休業ですが、女性労働者が育休を取得する場合、産後休業の後から開始します。

また、育休は適用が除外される場合がありますが、産休については、適用除外となるケースはありません
出産を予定する全ての女性労働者が取得できるのが、産休です。

従業員が産休を取得する場合に人事労務担当者がすべきこと

以下では、従業員から妊娠の報告を受けたときに、人事労務担当者がすべき手続きについて、産休前・産休中・復帰後の3つの時期に分けて、それぞれ説明します。

① 産休前の手続き
② 産休中の手続き
③ 復帰後の手続き

①産休前の手続き

制度の説明と意向確認・配慮

まず、妊娠の報告を受けた際は、以下の事項を確認できる、会社所定書式を記入してもらいましょう。

妊娠の報告を受けたときに本人に確認すべきこと

① 出産予定日
② 単胎か多胎か
③ いつからいつまで産休を希望するか(産前休業は本人の請求により取得されます)
④ 産休中の連絡先
⑤ 産休中の住民税の扱いについて(会社が建て替え/一括徴収/普通徴収のどの方法とするか)

他に、産休に入る前の従業員に対して行うべき措置として、育児休業制度等の説明意向確認意向聴取と配慮があります。

育児介護休業法では、本人または配偶者の妊娠・出産した旨の報告を受けた際に、育児休業制度等について周知することと、育児休業の取得意向を確認することが義務付けられています。

育児・介護休業法で義務付けられている事項
① 個別の周知と意向確認周知事項✅ 育児休業・出生時育児休業に関する制度
✅ 育児休業・出生時育児休業の申出先
✅ 育児休業給付・出生後休業支援給付・育児時短就業給付に関すること
✅ 労働者が育児休業・出生時育児休業期間に負担すべき社会保険料の取扱い
② 個別の意向聴取・配慮
(2025年10月1日施行)
聴取事項✅ 勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
✅ 勤務地(就業の場所)
✅ 両立支援制度等の利用期間
✅ 仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

また、2025年10月1日施行の改正により、上記に加えて、個別の意向聴取と、その意向に対し、配置や業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等に関して、自社の状況に応じて配慮することが義務付けられます。

上記周知と意向確認、意向聴取については、その方法として面談(オンライン可)、書面交付 、FAX 、電子メール等が認められています。 ただし、FAX・電子メール等は労働者が希望した場合に限ります。

②産休中の手続き

次に、従業員が産休中に行うべき手続きについて説明します。

社会保険料の免除の手続き

産休中の社会保険料は、年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」を提出することで、従業員本人負担分・会社負担分の両方について、免除されます。健康保険組合に加入している会社の場合は、健康保険組合と年金事務所の両方に提出が必要です。

ムートン

各申請書の届け出先については、会社が加入する健康保険の保険者ごとに異なりますので、届け出前に保険者に確認してから提出しましょう。以下、全ての届け出について同様です。

出産予定日と出産日が異なった場合や、予定よりも早く産休を終了した際は、「産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」を提出します。

なお、産休中に給与の支給がなければ、雇用保険料と所得税は発生しません。住民税については産休中でも免除されませんので、産休前に納付方法について従業員に確認しておきましょう。

参考:
日本年金機構ウェブサイト「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き
日本年金機構ウェブサイト「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を変更・終了したときなどの手続き

生まれた子を扶養に入れる場合の手続き

従業員が出産した子を従業員本人の健康保険上の扶養に入れる場合、出産後速やかに手続きをする必要があります。

従業員が住所を管轄する役所へ出生届を提出すると、子の戸籍が登録されます。
出産後、5日以内に年金事務所(会社が健康保険組合に加入している場合は健康保険組合)へ、「被扶養者(異動)届」を提出しましょう。

参考:
日本年金機構ウェブサイト「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き

出産手当金・出産育児一時金の手続き

社会保険加入者については、産休中に会社から給与の支給がない場合、出産手当金の支給を受けることができます。また、被保険者およびその被扶養者が出産した際に受給できる一時金として、出産育児一時金があります。

以下では、出産手当金と出産育児一時金の手続きについて説明します。

出産手当金の支給期間と支給額

出産手当金の支給期間は、産休と同じく、出産日以前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)から、出産日の翌日以後8週間までの範囲内で、会社を休んだ期間について支給されます。

また、実際の出産日が予定日よりも遅れた場合は、遅れた日数についても、出産手当金が支給されます。一方で、実際の出産日が予定日よりも早まった場合、産休を開始した日から実際の出産日までが産前休業となるため出産手当金の支給期間は出産日が早まった日数分短くなります。

1日当たりの出産手当金支給額の計算式は、以下のとおりです。

1日当たりの出産手当金支給額

出産手当金支給額(1日当たり)
=(支給開始日の以前の継続した12カ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)

※支給開始日:最初に出産手当金が支給される日

ムートン

ざっくりいうと、給与(報酬)の額の2/3が支給されることとなります。

もし、支給開始日以前の加入期間が12カ月に満たない場合、次のいずれか低い額を使用して計算します。

① 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
② 当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額

ただし、休んだ期間に対して、給与の支給がある場合は、出産手当金との差額が支給されます。出産手当金の金額よりも多い給与が支給された場合は、出産手当金は支給されません。

出産手当金の申請方法

出産手当金は、「健康保険出産手当金支給申請書」を、会社が加入する健康保険の保険者に応じて、全国健康保険協会の場合は会社を管轄する協会けんぽの支部へ、健康保険組合の場合は加入している健康保険組合へ提出することで申請することができます。

「健康保険出産手当金支給申請書」は、産前休業分・産後休業分と複数回に期間を分けて提出することが可能です。手続きを行ってから実際に手当金の入金があるまで数カ月かかるため、従業員が早めの受給を希望する場合は、産休中に手続きを行いましょう。

協会けんぽに提出する「健康保険出産手当金支給申請書」は、申請書1ページ目は被保険者である従業員が記入する欄となっており、申請書2ページ目は医師または助産師の記入が必要な、「医師または助産師による証明」欄があります。産休前に1ページ目と2ページ目を従業員に渡しておきましょう。事業主記入用の3ページ目と一緒に、協会けんぽへ提出します。

参考:
全国健康保険協会ウェブサイト「出産で会社を休んだとき

なお、国民健康保険組合に加入する場合には、出産手当金の給付がない場合があります。出産手当金給付制度の有無は加入する国民健康保険組合にお問い合わせください。

資格喪失後の継続給付

出産手当金は、一定の要件を満たせば、会社を退職し被保険者資格を喪失した後も継続して給付を受けることができます。
資格喪失後の継続給付に必要な要件は、以下のとおりです。

退職(資格喪失)後の出産手当金継続給付に必要な要件

① 資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あること
② 被保険者の資格喪失の日の前日に、現に出産手当金の支給を受けているか、受けられる状態であること
③ 出産日以前42日目が加入期間であること、かつ、退職日は出勤していないこと

出産前後に退職する従業員がいた場合は、退職日に出社させると、出産手当金の継続給付を受けることができなくなるため、注意しましょう。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、健康保険被保険者およびその被扶養者が出産した時に受けることができる給付です。

出産育児一時金の支払い方法は、基本的に直接支払制度がとられることが多いですが、直接支払制度では事務的負担や資金繰りへの影響が大きいと考えられる施設については、受取代理制度を利用することができます。

✅ 直接支払制度
保険者から出産育児一時金を医療機関等に直接支払う仕組み

✅ 受取代理制度
被保険者(もしくは被扶養者)が事前に受け取り代理の申請書を保険者に提出することで、医療機関等が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る仕組み

直接支払制度については、特に会社側の手続きは不要です。被保険者本人が出産する医療機関等で直接支払制度を利用する旨の署名を行うだけで、出産費用の窓口負担額が、出産育児一時金の金額と相殺した後の金額になります。一般的には、直接支払制度を利用するケースが多いです。

受取代理制度を利用する際は、出産予定日の2カ月前までに、協会けんぽもしくは健康保険組合へ受取代理申請書を提出する必要があります。

参考:
全国健康保険協会ウェブサイト「子どもが生まれたとき

③復帰後の手続き

最後に、従業員が産休から職場へ復帰した後、時短勤務等で産休前よりも給与が減額された場合に行う手続きについて、以下で説明します。

標準報酬月額の改定の手続き

産休が終了し、職場復帰した直後の標準報酬月額は、産休前の等級がそのまま適用されます。そのため、例えば時短勤務により、従前より給与が少なくなっているのにもかかわらず、フルタイム勤務だった産休前と同じ額の社会保険料が控除されるというアンバランスが生じ得ます。

そこで産休後については、特例的に随時改定の要件を満たさずとも標準報酬月額を改定できる制度があり、復帰後に時短勤務等で毎月の給与額に変動がある場合は、手続きを行うことができます。

被保険者である従業員の申し出により、会社が年金事務所へ「産前産後休業終了時報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者産前産後休業終了時報酬月額相当額変更届」を提出することで、標準報酬月額の改定を行うことができます。会社が健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合と年金事務所の両方に申請が必要です。

改定ができる要件は、以下のとおりです。

・従前の標準報酬月額と、改定後の標準報酬月額に1等級以上の差があるとき
・産前産後休業終了日の翌日の属する月以後3カ月のうち、少なくとも一月において「報酬の支払いの基礎となる日数」が17日以上であること
※特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は11日以上

産前産後休業終了日の翌日の属する月以後3カ月間に支給した給与の平均額に基づき、4カ月目の標準報酬月額から改定されます。社会保険料を翌月給与で徴収する場合は、5カ月目に支給される給与から社会保険料が変更となります。

参考:
日本年金機構ウェブサイト「産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出

養育期間の標準報酬月額特例の申請

厚生年金の受給額は、標準報酬月額をもとに算出されます。
前項の手続き等で標準報酬月額を引き下げた場合、将来的に従業員が受給できる厚生年金額に影響が出てしまうのを防ぐために、従前の標準報酬月額を「みなし標準報酬月額」とすることができる制度があります。

人事労務担当者から制度について従業員へ説明をして、本人の申し出があれば、年金事務所へ「養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」を提出しましょう。
この制度は、3歳未満の子を養育する被保険者に適用できますので、産休復帰後に限らず、育児休業からの復帰後や、育児中の従業員についても確認するとよいでしょう。

参考:
日本年金機構ウェブサイト「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

育児時短就業給付金の申請

2025年4月1日より、雇用保険制度に育児時短就業給付金が創設されました。
以下の2つの要件を満たす従業員が対象となります。

① 2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること
② 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて、育児時短就業を開始したこと、 または、育児
時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12カ月あること

給付の対象となるのは、原則、育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月ですが、支給要件がありますので、詳細を確認してから申請を行うようにしてください。
原則として、育児時短就業中に支払われた賃金額×10%相当額が支給されます。ただし、支給額と賃金額の合計が、育児時短就業開始時の賃金額を超えないように調整されます。
会社を管轄するハローワークに所定の届けを提出することで、申請することができます。

妊娠中・産後の女性労働者の働き方に関する注意点

妊娠中や産後の女性労働者については、労働基準法や男女雇用機会均等法によって働き方に制限があり、事業主には一定の配慮が義務付けられています。
以下に、制限や義務の内容について表でまとめました。

根拠法対象者および要件・期間制限・義務の内容
労働基準法64条の2妊娠中の女性および、業務に従事しない旨を申し出た産後1年を経過しない女性労働者坑内業務の就業制限
64条の3妊娠中および産後1年を経過しない女性労働者危険有害業務の就業制限
66条妊娠中および産後1年を経過しない女性労働者が請求したとき変形労働時間制の適用制限
時間外労働/休日労働/深夜労働の制限
65条3項妊娠中の女性労働者が請求したとき軽易な業務への転換
67条生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者が請求したとき育児時間の確保(1日2回各々少なくとも30分)
19条女性労働者の産前産後休業中およびその後30日間解雇制限
男女雇用機会均等法9条女性労働者婚姻・妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止
11条の3・11条の4 妊娠・出産等に関するハラスメント対策
12条妊娠中および産後1年を経過しない女性労働者保健指導または健康診査を受けるために必要な時間の確保
13条1項医師等からの指導事項を守ることができるようにするための措置

妊娠・出産を経ても働き続けることができるように、従業員本人の希望を聞いた上で配慮することが大切です。

ムートン

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参考文献

厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

厚生労働省「働く女性の母性健康管理のために」

厚生労働省ウェブサイト「育児・介護休業法のあらまし」

厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」

日本年金機構ウェブサイト

全国健康保険協会(協会けんぽ)ウェブサイト

働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート