雇用保険の加入条件は?
対象者・変更点・給付・事業主が
行うべき手続きなどを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上継続して雇用される見込みがある労働者については、雇用保険への加入が義務付けられています。
雇用保険に関する手続きは、事業主(会社など)が行わなければなりません。労働者を雇い入れる場合や、労働者が離職する場合などに手続きが必要になります。
この記事では雇用保険の加入条件について、事業主が行うべき手続きと併せて解説します。
※この記事は、2025年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
雇用保険とは
「雇用保険」とは、失業などによって賃金を得られなくなった労働者の生活保障を目的とする公的保険です。
労働者の多くは、収入の大半を勤務先から受け取る賃金に依存しています。失業などによって働けなくなると、労働者は生活費に窮してしまうおそれがあります。そのため、一定の要件を満たす労働者には雇用保険への加入が義務付けられています。
雇用保険に加入している労働者が失業した場合には、基本手当を受給することができます。そのほか、育児休業等給付・介護休業給付・高年齢雇用継続給付・育児休業等給付などのさまざまな給付が設けられています。
雇用保険の加入条件
雇用保険に加入する必要があるのは、以下の要件をすべて満たす人です。
① 雇用保険の適用事業所に勤務していること
② 1週間の所定労働時間が20時間以上であること(2028年10月からは10時間以上)
③ 31日以上継続して雇用される見込みがあること
④ 被保険者とならない者に当たらないこと
雇用保険の適用事業所に勤務していること
労働者を1人以上雇用している事業所は、原則として雇用保険の適用事業所に当たります(=当然適用事業)。
ただし、以下の事業は「暫定任意適用事業」に当たり、雇用保険への加入が任意とされています。
- 雇用保険の暫定任意適用事業
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個人経営である以下の事業であって、常時5人未満の労働者を雇用するもの
(a)農業、林業
・土地の耕作、開墾の事業
・植物の栽植、栽培、採取、伐採の事業
・その他農林の事業(b)畜産業、養蚕業、水産業
・動物の飼育の事業
・水産動植物の採捕、養殖の事業
・その他畜産、養蚕または水産の事業※国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業および法人である事業主の事業を除く
暫定任意適用事業に従事する労働者が雇用保険の加入対象となるのは、事業主が任意加入の申請を行い、その申請が認められた場合のみです。
ただし、その事業に使用される労働者の2分の1以上が希望するときは、事業主に雇用保険への任意加入の申請が義務付けられます。
1週間の所定労働時間が20時間以上であること(2028年10月からは10時間以上)
1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は、雇用保険の加入対象外とされています。
ただし2028年10月からは、1週間の所定労働時間が10時間以上の労働者まで、雇用保険の適用対象が拡大される予定です。働き方や生計維持の在り方の多様化していることを踏まえ、雇用のセーフティネットを拡げることが目的とされています。
31日以上継続して雇用される見込みがあること
31日以上継続して雇用されることが見込まれない者は、原則として雇用保険の加入対象外です。
ただし、直前の2カ月間の各月において18日以上同一の事業主に雇用されている者は、31日以上継続して雇用されることが見込まれない場合でも、雇用保険の加入対象となります。
被保険者とならない者に当たらないこと|学生は原則不可
以下のいずれかに当たる者は、雇用保険の加入対象外とされています。
- 雇用保険の被保険者とならない者
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・会社の役員
・会社代表者の同居の親族
・雇用期間4カ月以内で、季節的業務に使用される人
・学生、生徒(一部の例外を除く)
・家事使用人
・海外で現地採用される者
・臨時または内職的に日雇い労働を行う者
など
学校に在学している学生・生徒は、原則として雇用保険の加入対象になりません。ただし例外的に、以下の学生・生徒は雇用保険の加入対象になり得ます。
- 雇用保険の被保険者となり得る学生・生徒
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・卒業を予定しており、卒業後も引き続き雇用されることとなっている者
・休学中の者
・定時制の課程に在学する者
・上記に準ずる者として職業安定局長が定めるもの
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、以下の式によって計算します。
雇用保険料額=賃金総額×雇用保険料率
「賃金総額」とは、労働の対償として支払う全てのものの総額です。基本給や手当のほか、賞与や残業代なども賃金総額に含めなければなりません。
雇用保険料率は、事業の種類に応じて決まっています。
令和7年度の場合、一般の事業の雇用保険料率は1.45%です。そのうち0.55%が労働者負担、0.9%が事業主負担とされています。
事業主は、年度当初に概算で雇用保険料の申告・納付を行います。そして、翌年度の当初に確定申告を行い、雇用保険料を精算します。
雇用保険の給付の種類
雇用保険の被保険者が受給できる主な給付は、以下のとおりです。
① 求職者給付
② 就職促進給付
③ 教育訓練給付
④ 雇用継続給付
⑤ 育児休業等給付
①求職者給付
「求職者給付」とは、失業した人が安定した生活を送りつつ、1日も早く再就職できるように支援するための給付です。
求職者給付には、以下の給付などが含まれています。失業者を幅広く対象としている「基本手当」が最も代表的です。
| 求職者給付の種類 | 対象者 |
|---|---|
| 基本手当 | 失業した一般被保険者 |
| 高年齢求職者給付金 | 失業した高年齢被保険者 |
| 特例一時金 | 失業した短期雇用特例被保険者 |
- 雇用保険の被保険者区分
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(a)一般被保険者
被保険者のうち、高年齢被保険者・短期雇用特例被保険者・日雇労働者被保険者以外の者(b)高年齢被保険者
65歳以上である雇用保険の被保険者のうち、短期雇用特例被保険者または日雇労働者被保険者に該当しない者(c)短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される被保険者のうち、次のいずれにも該当しない者
・4カ月以内の期間を定めて雇用される者
・1週間の所定労働時間が30時間未満である者(d)日雇労働者被保険者
被保険者のうち、以下のいずれかに該当する者
・日々雇用される者
・30日以内の期間を定めて雇用される者
②就職促進給付
「就職促進給付」とは、失業者が早期に再就職した場合などに行われる給付です。
就職促進給付には、以下の給付などが含まれています。
| 就職促進給付の種類 | 対象者 |
|---|---|
| 再就職手当 | 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、安定した職業に就いた人 |
| 就職促進定着手当 | 再就職手当の支給を受け、引き続きその再就職先に6カ月以上雇用されたものの、離職前に比べて賃金額が低下した人 |
| 常用就職支度手当 | 障害があるなど就職が困難な状態で、安定した職業に就いた人 ※再就職手当の受給資格者は対象外 |
③教育訓練給付
「教育訓練給付」は、厚生労働大臣が指定した教育訓練を受講・修了した人を対象とする給付です。労働者の主体的なキャリアアップを支援する目的で設けられています。
④雇用継続給付
「雇用継続給付」とは、60歳になった時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける、60~64歳の人を対象とした給付です。高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用継続を援助・促進する目的で設けられています。
雇用継続給付には、以下の給付が含まれています。
| 雇用継続給付の種類 | 対象者 |
|---|---|
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 被保険者期間(基本手当を受給したことがある場合は、受給後の期間)が通算5年以上で、60歳到達後も継続して雇用されており、60歳になった時点に比べて賃金が75%未満に低下している60~64歳の人 |
| 高年齢再就職給付金 | 基本手当を受給した後、60歳になった後に再就職して、基本手当の基準となった額から賃金が75%未満に低下しており、以下の3つの要件を満たす60~64歳の人 ・基本手当について算定基礎期間が5年以上ある ・再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある ・安定した職業に就いた |
⑤育児休業等給付
「育児休業等給付」は、子どもを育てるために休業する労働者を対象とする給付です。仕事と育児の両立を支援する目的で設けられています。
育児休業等給付には、以下の給付が含まれています。
| 育児休業等給付の種類 | 対象者 |
|---|---|
| 出生時育児休業給付金 | 出生時育児休業(=子の出生後8週間以内に合計28日まで取得できる育児休業)を取得した人 |
| 育児休業給付金 | 通常の育児休業を取得した人 |
| 出生後休業支援給付金 | 出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受け、かつ両親ともに一定期間内に14日以上の育児休業を取得した人 |
| 育児時短就業給付金 | 2歳未満の子を養育するために時短勤務を行い、賃金が低下した人 |
雇用保険について事業主が行うべき主な手続き
雇用保険に関して、事業主が行うべき主な手続きを紹介します。
初めて労働者を雇い入れる場合|事業所設置届・雇用保険被保険者資格取得届
事業主が雇用保険の適用対象となる労働者を初めて雇い入れる際には、事業所を管轄するハローワークに以下の書類を提出しなければなりません。
- 雇用保険適用事業所設置届(提出期限:最初の労働者の雇用開始日の翌日から10日以内)
- 雇用保険被保険者資格取得届(提出期限:雇用開始日の属する月の翌月10日まで)
雇用保険被保険者資格取得届を提出すると、ハローワークから「雇用保険被保険者証」が交付されます。雇用保険被保険者証は、紛失防止などの観点から事業主が保管するケースが多く見られますが、本来は労働者へ交付することになっています。
2人目以降の労働者を雇い入れた場合|雇用保険被保険者資格取得届
事業主が雇用保険の適用対象となる2人目以降の労働者を雇い入れる際にも、初めて労働者を雇い入れる場合と同様に、事業所を管轄するハローワークに対して雇用保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。提出期限は、雇用開始日の属する月の翌月10日までです。
労働者が離職または死亡した場合|雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書
労働者が離職または死亡したときは、事業所を管轄するハローワークに以下の書類を提出しなければなりません。提出期限はいずれも、離職日または死亡日の翌日から起算して10日以内です。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用保険被保険者離職証明書
雇用保険に関する手続きを怠った事業主が受けるペナルティ
事業主が雇用保険に関する届出を怠ると、6カ月の拘禁刑または30万円以下の罰金に処されます(雇用保険法83条)。
また、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が雇用保険に関する届出を怠った場合は、法人にも「30万円以下の罰金」が科されます(同法86条1項)。
参考文献
厚生労働省ウェブサイト「離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>」












