確定拠出年金とは?
企業型DCのメリットやiDeCoとの違い、
導入手続きなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「確定拠出年金」とは、拠出された掛金とその運用益の合計額を基に、将来受け取れる給付の額が決まる年金制度です。公的年金(国民年金・厚生年金)の上乗せ部分に位置づけられ、近年加入者が増加しています。
確定拠出年金には「企業型DC」と「iDeCo(イデコ)」の2種類があります。
企業型DCは会社などの事業主が導入し、従業員が加入します。これに対してiDeCoは、個人が自ら手続きを行って加入します。
企業型DCを導入する際には、証券会社などの金融機関を通じて手続きを行う必要があります。新たに導入を検討している企業は、本記事を参考にしてください。
この記事では確定拠出年金について、企業型DCとiDeCoの違いや、企業型DCの導入手続きなどを解説します。
※この記事は、2025年8月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
確定拠出年金とは
「確定拠出年金(DC)」とは、拠出された掛金とその運用益の合計額を基に、将来受け取れる給付の額が決まる年金制度です。
公的年金(国民年金・厚生年金)の上乗せ部分に位置づけられ、近年加入者が増加しています。
確定拠出年金と公的年金(国民年金・厚生年金)の違い
「公的年金」とは、高齢者などの自力で収入を得ることが難しい人を経済的に支えるため、年間を通して国から支給されるお金のことです。日本では「国民年金」と「厚生年金」の2つが設けられています。
国民年金は、全ての国民に加入が義務付けられています。また、一定の要件を満たす給与所得者には、厚生年金への加入も義務付けられます。
これに対して、確定拠出年金への加入は任意です。将来受け取る年金の額を増やしたいと考える人は、自分の判断で確定拠出年金に加入することができます。
確定拠出年金と確定給付年金(DB)の違い
拠出額(=掛金の額)が決まっている確定拠出年金に対して、給付額(=受け取れる年金の額)が決まっているものを「確定給付年金(DB)」といいます。
日本に存在する確定給付年金としては、以下の2種類があります。
① 確定給付企業年金
会社が資金の拠出・運用・管理・給付を行う年金制度です。運用結果が悪ければ、会社が不足分を補てんします。
② 厚生年金基金
老齢厚生年金(=老齢年金の2階部分)の一部を、国に代わって基金が支給する制度です。基金が行う年金給付には、本来の老齢厚生年金に一定額が上乗せされます。
なお、2014年4月1日以降、厚生年金基金の新規設立は認められていません。
確定給付年金は給付額が決まっているので、運用の結果にかかわらず受け取れる年金の額は同じです。
これに対して確定拠出年金は、運用の結果に応じて受け取れる年金の額が変わります。
確定拠出年金の種類
確定拠出年金には、「企業型DC」と「iDeCo(イデコ)」の2種類があります。
企業型DC
「企業型DC」とは、会社が一定額の掛金を拠出し、その掛金を加入者(従業員)が運用する確定拠出年金です。多くの会社が、福利厚生の一環として企業型DCを導入しています。
iDeCo(イデコ)
「iDeCo(イデコ)」とは、加入者が自分で掛け金を拠出し、自ら運用する確定拠出年金です。元々は自営業者などが老齢年金を確保することを主な目的としていましたが、現在では幅広い人がiDeCoに加入できるようになっています。
企業型DCとiDeCoの違い
企業型DCとiDeCoの間には、主に以下の違いがあります。
| 企業型DC | iDeCo | |
|---|---|---|
| 実施主体 | 企業型年金規約の承認を受けた事業主 | 国民年金基金連合会 |
| 加入対象者 | 実施企業に勤務する従業員 | 国民年金の被保険者 |
| 掛金を拠出する人 | 原則として事業主 | 原則として加入者 |
| 拠出限度額 | 最大5万5000円/月 | (a)第1号被保険者 最大6万8000円/月 (b)第2号被保険者 最大2万3000円/月 (c)第3号被保険者 最大2万3000円/月 (d)任意加入被保険者 最大6万8000円/月 |
実施主体
企業型DCを実施するのは、各事業主(会社など)です。企業型DCの導入に当たっては、企業型年金規約について厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。
これに対して、iDeCoは国民年金基金連合会が実施しています。
| 参考: 国民年金基金連合会HP |
加入対象者
企業型DCに加入できるのは、実施企業に勤務する従業員のみです。
これに対して、iDeCoには以下の者が加入できます。企業型DCよりも、iDeCoの加入対象者は幅広くなっています。
- iDeCoの加入対象者
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(a)国民年金第1号被保険者
20歳以上60歳未満の農業者、自営業者、学生、無職の人など(b)国民年金第2号被保険者
会社員、公務員など(c)国民年金第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されていて、年収130万円未満である20歳以上60歳未満の配偶者(d)国民年金任意加入被保険者
60歳以降で国民年金に任意加入している人
掛金を拠出する人
企業型DCの掛金を加入するのは、原則として実施主体である事業主です。ただし、企業型年金規約に定めがある場合は、加入者自身による拠出も認められています(=マッチング拠出)。
これに対してiDeCoの掛金は、原則として加入者自身が拠出します。
ただし、「iDeCo+(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)」を導入している場合は、事業主がiDeCoの掛金を拠出することもできます。
拠出限度額
企業型DCの拠出限度額は、1カ月当たり5万5000円です。
ただし、確定給付企業年金や厚生年金基金など、他の年金制度の掛金を拠出している場合は、その額が企業型DCの拠出限度額から差し引かれます。
これに対してiDeCoの拠出限度額は、国民年金の被保険者の種別によって異なります。
- iDeCoの拠出限度額
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(a)国民年金第1号被保険者
1カ月当たり6万8000円
※国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、その額が差し引かれます。(b)国民年金第2号被保険者
1カ月当たり2万3000円
※企業型DCにも加入している場合、iDeCoの拠出限度額は1カ月当たり2万円です。ただし、企業型DCを含む他の年金制度との掛金の合計額が1カ月当たり5万5000円を超えてはなりません。(c)国民年金第3号被保険者
1カ月当たり2万3000円(d)国民年金任意加入被保険者
1カ月当たり6万8000円
※国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、その額が差し引かれます。
企業が企業型DCを導入するメリット・デメリット
企業型DCを導入することには、福利厚生の充実化や掛金の損金算入のメリットがある反面、導入や運営にコストがかかるのが難点です。
企業型DC導入のメリット|福利厚生の充実化・掛金の損金算入
企業型DCの掛金は、原則として事業主が拠出します。
従業員にとっては賃金の増額に近い恩恵を受けられるため、福利厚生が大幅に充実します。その結果、人材が定着しやすくなる効果が期待できるでしょう。
また、事業主が企業型DCの掛金は、全額を税務上の損金に算入できます。特に大幅な利益が出ている事業主にとっては、企業型DCの導入が法人税等の節税につながります。
企業型DC導入のデメリット|導入・運営コスト
企業型DCを導入する際には、金融機関に導入一時金を支払う必要があります。また、制度設計の検討、企業型年金規約の作成や承認申請などを行う際にも、人件費などのコストがかかります。
企業型DCを実際に運用する段階でも、掛金に加えて、金融機関に支払う手数料や人件費などのコストがかかりつづけます。
このように、企業型DCを導入すると、長期的なスパンで多額のコストがかかる点に注意が必要です。
確定拠出年金の掛金の運用方法
確定拠出年金の掛金は、加入者自身が運用します。
加入者は、口座を開設した金融機関(証券会社や銀行など)のウェブサイトなどを通じて、掛金を投資する対象をあらかじめ選択します。
投資対象は、投資信託や定期預金などの中から自由に選べます。長期投資に向いている商品がラインナップされていますが、その中でも期待リターンやリスク、手数料などは多種多様です。
口座へ掛金が入金されると、加入者があらかじめ選択した投資商品が購入されます。購入した投資商品を売却して、別の投資商品を購入することも可能です。
確定拠出年金の給付内容|受給要件も解説
確定拠出年金による給付の種類は、「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3つです。
ただしごく限られたケースに限り、確定拠出年金から脱退して「脱退一時金」を受け取ることができます。
老齢給付金|原則として60歳に達したとき
確定拠出年金の加入者が一定以上の年齢に達すると「老齢給付金」を受け取れます。
老齢給付金を受給できるようになる年齢は、以下のとおりです。通算加入期間が10年以上であれば、60歳に達した時点以降に老齢給付金を請求できます。
| 通算加入期間 | 受給開始可能年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 満60歳 |
| 8年以上10年未満 | 満61歳 |
| 6年以上8年未満 | 満62歳 |
| 4年以上6年未満 | 満63歳 |
| 2年以上4年未満 | 満64歳 |
| 1カ月以上2年未満 | 満65歳 |
老齢給付金は、年金もしくは一時金、または年金と一時金の併給(両方)によって受け取ります。
年金は毎月一定額が支払われ、一時金は請求額が一括で支払われます。
なお、75歳になっても老齢給付金を請求しない場合は、運用資産全額が一時金として支給されます。
障害給付金|一定以上の障害状態になったとき
確定拠出年金の加入者が、以下のいずれかに相当する病気やけがの診断を受けた場合は「障害給付金」を受け取れます。
(a)障害基礎年金の受給者(1級・2級)
(b)身体障害者手帳(1級~3級)の交付を受けた者
(c)療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた者
(d)精神保健福祉手帳(1級・2級)の交付を受けた者
障害給付金を請求できるのは、原則として「障害認定日」から70歳の誕生日の2日前までです。
障害認定日とは、上記の病気やけがの初診日から起算して1年6カ月を経過した日をいいます。ただし、その期間内に病気やけがが治癒した場合は、治癒した日が障害認定日となります。
死亡一時金|加入者が死亡したとき
確定拠出年金の加入者が死亡したときは、遺族が「死亡一時金」を受け取れます。
加入者が死亡一時金の受取人を指定していたときは、その人に対して死亡一時金が支給されます。加入者の指定がなかった場合は、法令所定の順位に従って受取人が決まります。
脱退一時金|一定の要件を満たした状態で脱退するとき
企業型DCまたはiDeCoの加入資格を失った時点で、運用資産額が一定額以下(企業型DC:1万5000円以下、iDeCo:25万円以下)であるなどの条件を満たす場合に限り「脱退一時金」を受け取ることができます。
ただし実際には、脱退一時金を受け取れるケースはほとんどないと思われます。脱退一時金を受け取れない場合、企業型DCやiDeCoからの脱退はできず、少なくとも60歳になるまで運用が続くことになります。
企業型DCの導入手続き
企業型DCを導入する手続きの流れは、以下のとおりです。
① 必要書類の準備
② 制度内容の確定
③ 従業員への説明・労使合意
④ 金融機関に対する書類の返送・厚生局に対する申請
⑤ 制度加入者の登録・制度開始
必要書類の準備
企業型DCの運用開始日は4月1日とされていますが、事業主においてはその前年10月ごろまでに以下の書類を準備する必要があります。
- 企業型DCの導入申請の必要書類
-
・就業規則
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
・厚生年金適用事業所と確認できる書類(毎月の社会保険料の領収済書など)
必要書類の準備に当たっては、企業型DCの口座を開設する予定の金融機関に相談してサポートを受けましょう。
制度内容の確定
企業型DC導入の前年11月ごろまでに、制度内容を確定します。
決めるべき主な事項は、以下のとおりです。制度設計のパターンについては、多くの企業で選択制が用いられています。
- 企業型DCの制度内容について決めるべきこと
-
(a)制度設計のパターン
下表参照(b)加入対象者の範囲
・役員を対象とするかどうか
・60歳以上の継続雇用者を対象とするかどうか
など
| 企業型DCの制度設計 | 概要 |
|---|---|
| 選択制 | 給与の一部を企業型DCの事業主掛金とするか、それとも給与として受け取るかを従業員が選べる |
| 給与上乗せ支給 | 現行の給与を維持しつつ、企業型DCの掛金を上乗せする |
| 給与上乗せ支給+選択制 | 給与の一部を企業型DCの事業主掛金とするか、それとも給与として受け取るかを従業員が選べるようにしつつ、さらに企業型DCの掛金を上乗せする |
| マッチング拠出 | 現行の給与に上乗せして事業主掛金を拠出しつつ、従業員も掛金を拠出できるようにする |
従業員への説明・労使合意
企業型DCの導入には、労使の合意が必須とされています。事業主は、導入の前年11~12月ごろをめどに説明会を開催するなど、従業員に対して企業型DCの制度内容を周知します。
金融機関に対する書類の返送・厚生局に対する申請
企業型DCの口座を開設する予定の金融機関から、厚生局に対する申請に関する書類が送られてきます。各書類に署名捺印などを行って、金融機関に返送しましょう。
書類を受け取った金融機関が、厚生局に対して申請書類を提出します。
厚生局では2カ月程度にわたって審査が行われるため、遅くとも導入する年の1月末までには申請を完了しなければなりません。書類の返送は、金融機関が指定した期限までに確実に行いましょう。
制度加入者の登録・制度開始
企業型DCを導入する直前の3月中旬ごろまでに、金融機関のウェブサイト上の管理者ページなどを通じて加入者を登録します。登録の方法が分からない場合は、金融機関に問い合わせましょう。
その後、4月1日から企業型DCの運用が始まります。
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