【最判令和5年6月27日】
公立学校教員の酒気帯び運転を理由とする
退職手当等の全額不支給処分が
適法とされた事例
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- この記事のまとめ
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最高裁令和5年6月27日判決の事案では、宮城県内の公立高校の教諭が酒気帯び運転により懲戒免職処分を受け、さらに退職手当の全額が不支給とされました。元教諭はこれらの処分を不服として取消訴訟を提起しました。
最高裁は、退職手当等の全額不支給処分は適法であると判断しました。その理由として最高裁は、平素から職員の職務等の実情に精通している者の裁量に委ねる必要があり、県側の広範な裁量が認められることなどを挙げています。
企業も、退職金の支給について一定の裁量権を有すると考えられます。しかし、労働契約法における懲戒権の濫用規定が存在することなどを踏まえて、安易な不支給処分にはリスクが伴うことを正しく理解し、処分の適否について慎重に検討することが求められます。
| 裁判例情報 最高裁令和5年6月27日判決(民集77巻5号1049頁) |
※この記事は、2025年9月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
宮城県内の公立高校の教諭が酒気帯び運転により懲戒免職処分を受け、さらに退職手当の全額が不支給とされた事案です。元教諭はこれらの処分を不服として取消訴訟を提起しました。
元教諭は、勤務していた高等学校の歓迎会に参加し、ビールを中ジョッキとグラスで各1杯程度、さらに日本酒を3合程度飲んだ後に、20km以上離れた自宅へ自家用車を運転して帰ろうとしました。しかし自家用車を発進させてから間もなく、丁字路交差点を右折する際に、優先道路から交差点へ進入してきた車両と衝突する事故を起こしました。事故の相手方にけがはなく、車両が壊れただけの物損事故にとどまりました。
その後、元教諭は呼気アルコール検査を受けた際、呼気1Lにつき0.35mgのアルコールが検出されたため、道路交通法違反の罪(酒気帯び運転)で現行犯逮捕されました。同罪について、元教諭は後に罰金35万円の略式命令を受けました。
宮城県教育委員会は、酒気帯び運転を理由に元教諭に対して懲戒免職処分を行い、さらに退職手当等1724万6467円の全部を支給しないことを決定しました。
原審の仙台高裁は、懲戒免職処分を適法と判断しました。
他方で退職手当等の全額不支給処分については、元教諭が管理職でないこと、過去に懲戒処分歴がないこと、約30年間誠実に勤務してきたこと、物損事故にとどまり被害弁償も行われたこと、反省の情が示されていることなどを考慮して、3割を超える部分の不支給は違法としました。
宮城県は原審判決を不服として、最高裁に上告しました。












