有給休暇を時間単位で
年間5日を超えて付与すると違法?
労働基準法のルールを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

有給休暇は、労使協定を締結すれば時間単位で付与することが認められます。これは「時間単位の年次有給休暇制度」や「時間単位年休」などと呼ばれるものです。

法定の有給休暇のうち、時間単位で付与できるのは5日分までです。ただし、法定日数を超える有給休暇を付与している場合は、超過分を時間単位で与えても構いません。

この記事では時間単位の有給休暇について、5日を超えて付与すると違法になるのか、導入時に必要な手続き、企業が注意すべきポイントなどを解説します。

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時間単位の有給休暇付与は、年5日を超えると違法になってしまうのですか?

ムートン

法定の有給休暇のみを付与している場合はそうですが、例外もあります。時間単位の有給休暇付与について、考え方や導入に必要な手続きなどについて確認していきましょう。

※この記事は、2025年10月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

有給休暇を時間単位で年間5日を超えて付与するのは違法?

有給休暇は、労使協定を締結すれば時間単位で付与することが認められます。これは「時間単位の年次有給休暇制度」や「時間単位年休」などと呼ばれるものです。
法定の有給休暇のうち、時間単位で付与できるのは5日分までです。ただし、法定日数を超える有給休暇を付与している場合は、超過分を時間単位で与えても構いません

なお、規制改革推進会議が令和7年(2025年)5月28日に公表した「規制改革推進に関する答申」では、年次有給休暇制度の在り方の見直しの一案として、時間単位年休の上限を年次有給休暇の付与日数の 50%程度に緩和することを挙げています。
令和7年度中に結論を得ることとされており、近いうちに年5日を超える時間単位年休の付与が認められる可能性があります。

参考:規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申」

時間単位の有給休暇とは

時間単位の有給休暇」とは、時間単位で取得できる有給休暇です

通常は、有給休暇の取得単位は1日単位が原則で、労働者の申出があれば半日単位(午前休・午後休など)で与えることもできます。しかし、労使協定を締結して一定のルールを定めれば、有給休暇を時間単位で与えることが認められます(労働基準法39条4項)。

法定の有給休暇のうち、時間単位で付与できるのは5日まで

労働基準法では、雇入れ時からの継続勤務年数や勤務形態に応じて、一定日数以上の有給休暇の付与を使用者に義務付けています。

例えばフルタイム労働者の場合、下記の日数の有給休暇を付与する必要があります。

継続勤務期間付与すべき有給休暇の日数
6カ月10日
1年6カ月11日
2年6カ月12日
3年6カ月14日
4年6カ月16日
5年6カ月18日
6年6カ月以上20日
フルタイム労働者の要件

以下のいずれかに該当すること

・1週間の所定労働日数が5日以上
・1年間の所定労働日数が217日以上
・1週間の所定労働時間が30時間以上

労働基準法によって付与が義務付けられた有給休暇のうち、時間単位で付与できるのは5日までです。したがって、有給休暇を法定日数どおりに付与している場合は、6日分以上を時間単位で付与することは認められません

法定日数を超える有給休暇を付与している場合、超過分は時間単位で与えてもよい

労働基準法によって義務付けられている日数を上回る有給休暇を付与しているときは、超過分については時間単位で与えても構いません

例えば、労働基準法上は10日の有給休暇を与えるべき労働者に、18日の有給休暇を付与しているとします。
労働基準法によって付与が義務付けられた10日のうち、時間単位で付与できるのは5日までです。その一方で、超過分の8日は全て時間単位で与えることができます。
したがって、時間単位で付与できる有給休暇は合わせて13日分となります。

時間単位の有給休暇を導入するメリット・デメリット

時間単位の有給休暇を導入する場合、従業員にとっては利便性が向上して働きやすさにつながる一方で、企業側にとっては勤怠管理が複雑になるのが難点と言えます。

時間単位の有給休暇を導入するメリット

時間単位の有給休暇を導入すると、従業員にとっては有給休暇の取得方法に関する選択肢が増えます

例えば子どもの送り迎えや通院など、短時間で済みそうな用事をこなすためには、時間単位の有給休暇が役立ちます。1日単位や半日単位で取得する場合に比べると、別の機会に取得する有給休暇をより多く残しておけます。

有給休暇を取得しやすくなれば、ワークライフバランスや働きやすさの向上につながり、職場としての魅力もアップするでしょう

時間単位の有給休暇を導入するデメリット

時間単位の有給休暇を導入すると、企業としては有給休暇について管理すべき事項が増えます
具体的には、時間単位で取得した有給休暇を日数単位に換算する、時間単位で付与できる有給休暇の上限日数を管理するなどの手間が発生します。

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時間単位の有給休暇を導入する際の手続き

時間単位の有給休暇を導入する際には、以下の2つの手続きが必要になります。

① 就業規則への記載
② 労使協定の締結

就業規則への記載

常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、就業規則の作成が義務付けられています(労働基準法89条)。休暇は就業規則の絶対的必要記載事項(記載が義務付けられている事項)の一つに当たるため、時間単位の有給休暇を導入する場合は、その制度内容を就業規則に書き込まなければなりません

なお、常時使用する労働者の数が9人以下の事業場では、就業規則を作成する法律上の義務はありません。しかし、全ての労働者に共通するルールを定めて管理する観点からは、就業規則を作成することが望ましいと考えられます。

時間単位の有給休暇に関する就業規則の記載例

モデル就業規則においては、時間単位の有給休暇について以下の条文が定められています。参考にしつつ、自社に合った形にアレンジしてください。

(年次有給休暇の時間単位での付与)
第24条 労働者代表との書面による協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての労働者とする。
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。
① 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者…6 時間
② 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者…7 時間
③ 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者…8 時間
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。

引用元|モデル就業規則 – 厚生労働省

就業規則を変更する際の手続き

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更するに当たり、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数代表者の意見を聴かなければなりません(労働基準法90条1項)。

労働者側の意見は書面(意見書)にまとめてもらい、提出を受けましょう。その後、就業規則変更届に労働者意見書を添付して、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に届け出ます(同法89条、90条2項)

変更後の就業規則の内容は、以下のいずれかの方法で労働者に周知させなければなりません(同法106条1項、労働基準法施行規則52条の2)

(a) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける。
(b) 書面を労働者に交付する。
(c) 電子計算機(PCなど)に備え付けられたファイル、または電磁的記録媒体(HDD、SSDなど)をもって調製するファイルに記録し、各作業場にその内容を常時確認できる機器を設置する。

労使協定の締結

時間単位の有給休暇を導入する際には、事業場ごとに労使協定を締結しなければなりません。労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数代表者との間で締結します。

時間単位の有給休暇に関する労使協定に定めるべき事項

時間単位の有給休暇に関する労使協定では、以下の事項を定める必要があります(労働基準法39条4項、労働基準法施行規則24条の4)。

(a) 対象者の範囲
時間単位の有給休暇を取得できる労働者の範囲を定めます。
一部の者を対象外とすることができるのは、事業の正常な運営を妨げる場合のみです。取得目的などによって対象範囲を定めることはできません(例:育児を行う労働者だけが取得できる、というのはNG)。

(b) 時間単位で有給休暇を取得できる日数
年5日までの範囲内で定めます。

(c) 有給休暇1日分の時間数
1日分の有給休暇が、何時間分に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は、時間単位に切り上げます(例:所定労働時間が7時間30分の場合は、8時間分とする)。

(d) 1時間以外を単位とする場合の時間数
時間単位の有給休暇は、1時間以外の時間単位で与えることもできます(2時間、3時間など。分単位は不可)。その場合は、1日の所定労働時間数に満たない範囲内で時間単位を定めます。

時間単位の有給休暇に関する労使協定の記載例

時間単位の有給休暇に関する労使協定の記載例を紹介します。

年次有給休暇の時間単位での付与に関する労使協定(例)

〇〇株式会社と〇〇労働組合とは、標記に関して次のとおり協定する。

(対象者)
第1条 すべての労働者を対象とする。

(日数の上限)
第2条 年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数は5日以内とする。

(1日分の年次有給休暇に相当する時間単位年休)
第3条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日の年次有給休暇に相当する時間数を8時間とする。

(取得単位)
第4条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1時間単位で取得するものとする。

〇〇〇〇年〇月〇日

〇〇株式会社 総務部長 〇〇〇〇
〇〇労働組合 執行委員長 〇〇〇〇

引用元|時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう – 厚生労働省

労使協定を締結する際の手続き

時間単位の有給休暇に関する労使協定を締結する際には、まず労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者との間で、その内容を協議します。

協議がまとまったら、その内容を記載したドラフトを作成し、労使双方が調印して労使協定を締結します。なお、労使協定の労働基準監督署に対する届出は不要です

締結した労使協定は、以下のいずれかの方法によって労働者に周知させなければなりません(労働基準法106条1項、労働基準法施行規則52条の2)

(a) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける。
(b) 書面を労働者に交付する。
(c) 電子計算機(PCなど)に備え付けられたファイル、または電磁的記録媒体(HDD、SSDなど)をもって調製するファイルに記録し、各作業場にその内容を常時確認できる機器を設置する。

時間単位の有給休暇の付与について、企業が注意すべきポイント

従業員に時間単位で有給休暇を付与する際には、企業は特に以下のポイントに注意しましょう。

① 所定労働時間に1時間未満の端数がある場合の取り扱い
② 有給休暇を繰り越した場合でも、時間単位で付与できるのは年5日分まで
③ 年5日以上有給休暇を取得させる義務との関係|時間単位で付与したものは含めない

所定労働時間に1時間未満の端数がある場合の取り扱い

1日分の有給休暇が何時間分に相当するかを定めるに当たり、所定労働時間に1時間未満の端数がある場合は、時間単位に切り上げる必要があります
例えば所定労働時間が7時間30分の場合は、1日分の有給休暇を8時間に換算しなければなりません。

有給休暇を繰り越した場合でも、時間単位で付与できるのは年5日分まで

付与後1年間で取得しきれなかった有給休暇は、さらに1年間繰り越すことができます。ただし、有給休暇が繰り越された場合でも、時間単位で取得できる有給休暇の日数は年5日までです

例えば、労働基準法に基づいて付与された年20日の有給休暇を全て翌年度に繰り越したため、1年間で40日の有給休暇を取得できることになったとします。この場合でも、時間単位で取得できるのは年5日までとなります。年10日に増えるわけではありません。

年5日以上有給休暇を取得させる義務との関係|時間単位で付与したものは含めない

年10日以上の有給休暇を付与すべき労働者については、使用者は最低でも年5日以上、時季を指定して有給休暇を取得させる義務を負います(=時季指定義務、労働基準法39条7項)。

労働者が自発的に取得した有給休暇のうち、1日単位または半日単位で取得したものは、時季指定義務の対象日数から差し引くことができます。
これに対して、時間単位で取得された有給休暇の日数は、時季指定義務の対象日数から差し引くことができないので注意してください

参考文献

厚生労働省「時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう」

厚生労働省「年次有給休暇のポイント」

ムートン

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