テクノロジーハラスメント(テクハラ)とは?
具体例・リスク・予防策・
発生時の対応などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

テクノロジーハラスメント(テクハラ)」とは、ITに関する知識が豊富な従業員が、そうでない従業員に対し、知識量の差を利用して行う嫌がらせです。
例えば、デジタル機器やシステムをうまく活用できないことを過度に責めたり、知識不足で荷が重すぎる業務を押し付けたりすることはテクノロジーハラスメントに当たる可能性があります。

テクノロジーハラスメントを放置すると、従業員間のITリテラシーの偏りがいつまでも改善されず、業務の効率も低下します。また、被害者がメンタル不調によって休職や離職に追い込まれたり、企業が損害賠償責任を負ったりすることにもなりかねません。
このような事態を避けるため、企業はテクノロジーハラスメントの予防策を講じるともに、万が一テクノロジーハラスメントが発生したら迅速・適切に対処することが求められます。

この記事ではテクノロジーハラスメント(テクハラ)について、具体例・リスク・予防策・発生時の対応などを解説します。

ヒー

新しいシステムが入ったんですが、十分な説明もなく、IT担当者に使い方を聞きに行くと「面倒なヤツだな」という対応をされます。もう質問したくないです…。

ムートン

システムが使えないことを責め立てるようなコミュニケーションは、テクノロジーハラスメントといえるかもしれません。対策などを考えてみましょう。

※この記事は、2026年5月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • ・労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

テクノロジーハラスメント(テクハラ)とは

テクノロジーハラスメント(テクハラ)」とは、ITに関する知識が豊富な従業員が、そうでない従業員に対し、知識量の差を利用して行う嫌がらせです。パワーハラスメント(パワハラ)の一種として位置づけられます。

テクノロジーハラスメントの要件|「分からない・苦手」は甘え?

テクノロジーハラスメントは、ITに関する知識差という優越的な関係を背景としたパワハラの一種です。

労働施策総合推進法では、事業主に対してパワハラを防止するための雇用管理上必要な措置を義務付けています(同法30条の2第1項)。
労働施策総合推進法におけるパワハラの要件を参考にすると、次の要件を満たす行為がテクノロジーハラスメントに当たると理解すべきでしょう。

① 職場において、ITの知識に優れた側が劣る側に対して行う、その知識差を背景とした言動であること
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
③ その言動を受けた労働者の就業環境が害されること

業務上必要なITの知識を伝えるため、必要かつ相当な範囲で行う指導などは、テクノロジーハラスメントに当たりません。

しかし、過度に威圧的である言動や、相手をバカにするような言動が「指導」などの名目で行われた場合は、テクノロジーハラスメントに当たる可能性があります。
ITについて「分からない」「苦手」と感じる従業員に対しては、それが「甘えだ」などと見下すのではなく、相手の理解度に応じた適切な指導を行うことが求められます。

テクノロジーハラスメントの具体例

テクノロジーハラスメントに当たる言動としては、次の例などが挙げられます。

テクノロジーハラスメントの例

・ITツールの操作に不慣れな従業員に対し、「こんなこともできないのか」「デジタルに弱い奴は不要だ」などと侮辱する。
・新しいシステムを使いこなせない従業員を、会議やプロジェクトから排除する。
・十分な研修を行わないまま、新システムに即時に対応するよう強要する。
・ITスキル不足を理由に、不当に低い人事評価を行う。
・オンライン接続や監視ツールの利用を常時強制し、過度に行動を監視する。
・「若い人ならできて当然」などと言って、ITに不慣れな若手従業員のサポートを拒否する。
・「紙で仕事をする人は時代遅れだ」などと発言し、自分の価値観を押し付ける。
・IT機器の操作方法を質問した従業員に対し、嘲笑したり、嫌味を言ったりする。
・ITツールを使いこなせていない従業員に対し、退職を強要する。
など

テクノロジーハラスメントが発生する理由・原因

職場において、ITに詳しい人とそうでない人が混在しているのは自然なことです。そのような状況において、ITに詳しい側がそうでない側に対する配慮を欠いていると、テクノロジーハラスメントに発展することがあります。
特に、ITリテラシーの差仕事に関する能力差と短絡的に結び付け、「ITツールは使いこなせて当然」「できないのは努力不足」と決めつけるような認識は、ITに不慣れな人を排除する言動につながるので注意が必要です。

また、DXの推進業務効率化の流れが広まる中で、新しいITツールの導入が急速に進むと、十分な周知やサポートが行われないまま運用が始まってしまうケースがあります。
このようなケースでは、習熟度の低い従業員の業務効率が大幅に低下し、適切なフォローが行われることなく放置されてテクノロジーハラスメントに発展するリスクが高いので要注意です。

さらに、成果主義の傾向が強い企業においては、ITへの適応が従業員の自己責任とみなされるケースが多く、コミュニケーションやサポートの不足によってテクノロジーハラスメントを招くことがよくあります。

テクノロジーハラスメントを抑制するには、ITに詳しい従業員の意識を改革することに加えて、習熟度の低い従業員を置き去りにしないような企業文化を育てることも重要です。

「逆テクハラ」にも注意

最近では、ITに詳しくない従業員が、詳しい従業員に対してITに関する業務を押し付ける「逆テクハラも問題視されています。

テクノロジーハラスメントも逆テクハラも、ITに関する知識差のある従業員の間で、お互いに配慮する意識が足りないことに起因する問題です。企業としては、職場における従業員間の相互理解を促すことが求められます。

テクノロジーハラスメントを放置した場合のリスク

職場におけるテクノロジーハラスメントを放置すると、企業は次のリスクを負ってしまいます。

① ITリテラシーの偏りが改善されない
② 業務の効率が低下する
③ 従業員のメンタルヘルス不調を招く|休職や離職に繋がることも
④ 損害賠償責任を負う|安全配慮義務違反・使用者責任

ITリテラシーの偏りが改善されない

テクノロジーハラスメントが横行する職場では、ITに詳しい従業員とそうでない従業員の間に断絶が生じてしまいます。その結果、ITが苦手な従業員のリテラシーが全く向上せず、ITツールの導入・活用などに支障を来すおそれがあります。

業務の効率が低下する

テクノロジーハラスメントが頻繁に発生していると、従業員同士のコミュニケーションが阻害され、部署内外での連携がうまくいかなくなります。従業員の業務に対するモチベーションも低下し、企業全体の業務効率が大幅に低下してしまうおそれがあります。

従業員のメンタルヘルス不調を招く|休職や離職に繋がることも

テクノロジーハラスメントを受けた従業員は、精神的に大きなストレスを抱え、メンタルヘルス不調に陥ってしまうことがあります。業務に対するモチベーションの低下と相まって、休職離職に追い込まれることも少なくありません。

テクノロジーハラスメントが原因で貴重な人材を失うと、企業の生産性や成長性が損なわれてしまいます。

損害賠償責任を負う|安全配慮義務違反・使用者責任

企業がテクノロジーハラスメントの予防や対応を怠った場合は、被害者に対して安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負うことがあります。

被害者から損害賠償請求を受けたときは、和解交渉や裁判手続きに対応しなければならず、多大な労力やコストを要します。最終的には数百万円以上の損害賠償を余儀なくされることもあるなど、経済的に大きなリスクを伴うので注意が必要です。

テクノロジーハラスメントを予防するために企業がとるべき対策

企業は、職場におけるパワハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負っています(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

パワハラの一種であるテクノロジーハラスメントを防止するため、次の対策などを行いましょう。

① 多様な従業員の相互交流の促進
② テクノロジーハラスメント防止の方針の明確化・周知啓発
③ テクノロジーハラスメントに関する相談・対応体制の整備

多様な従業員の相互交流の促進

テクノロジーハラスメントを防ぐためには、ITに詳しい従業員とそうでない従業員との間で、相互理解を促すことが効果的です。

企業における業務の中には、IT以外のスキルを役立てて行うものも多く含まれています。ITに詳しくなかったとしても、各従業員はそれぞれの強みを活かして企業の中で活躍しているはずです。
ITに詳しい従業員が、自分とは異なる強みを持つ従業員と盛んに交流するようになれば、ITスキルの高低だけで相手の能力を判断するようなことはなくなるでしょう。

ITに詳しくない従業員の側としても、ITに詳しい従業員の人柄などに触れれば、「気難しい」「言っていることがよく分からない」といったネガティブな印象が取り除かれ、業務の中でのコミュニケーションの円滑化が期待できます。

従業員同士の交流の機会を増やす試みとしては、食事会や共同で作業を行う社内イベントを定期的に開催する、部署横断型のプロジェクトに取り組むといった方法が考えられます。

テクノロジーハラスメント防止の方針の明確化・周知啓発

テクノロジーハラスメントを許さない旨の方針を明確化し、従業員に対して周知・啓発することも効果的です。企業として強いメッセージを発すれば、それが従業員の行動規範となり、テクノロジーハラスメントに対する抑止効果を発揮します。

例えば、ハラスメント防止規程などの社内規程でテクノロジーハラスメントの撲滅を宣言するとともに、社内広報などでも継続的にその旨を周知・啓発するのがよいでしょう。

テクノロジーハラスメントに関する相談・対応体制の整備

テクノロジーハラスメントを早期に発見して対処するため、従業員からの相談を受け付ける窓口を設置しましょう。匿名での相談も受け付け、相談を理由に不利益な取り扱いをしないことを約束するなど、従業員が安心して相談できる環境を整えることが大切です。

また、実際にテクノロジーハラスメントが発生するケースを想定して、とるべき対応の内容や手順なども明確化しておきましょう。どのような対応をとる必要があるかは、次の項目で解説します。

テクノロジーハラスメントが発生した場合に企業がとるべき対応

テクノロジーハラスメントが疑われる事案が生じたときは、状況に応じて次の対応などを適切に行ってください。

① 事実関係の確認|当事者や第三者からの事情聴取など
② 被害者への配慮
③ 加害者に対する処分
④ 紛争解決援助制度の利用
⑤ 再発防止策の検討・実践

事実関係の確認|当事者や第三者からの事情聴取など

まずは、実際にどのような言動が行われたのか、テクノロジーハラスメントに当たるのか否かなどの事実関係を把握する必要があります。被害者や加害者とされている人、周囲の上司や同僚などの関係者から事情を聞き、正確な状況の把握に努めましょう。

テクノロジーハラスメントを裏付ける客観的資料の確保も試みましょう。チャットログや業務メールなどの中に、テクノロジーハラスメントの手掛かりや言動が記録されていることがあります。

被害者への配慮

テクノロジーハラスメントの被害者は、精神的に大きなストレスを抱えていることが想定されます。その心情に寄り添いながら、安心できる状況の確保と心身の回復のサポートを行いましょう。

具体的には、配置転換や在宅勤務などによって被害者と加害者を引き離す、産業医やカウンセラーと連携してケアを行うなどの対応が求められます。

加害者に対する処分

テクノロジーハラスメントが実際に行われたことが確実となった場合は、加害者に対する処分を検討しましょう。

特に懲戒処分を行う際には、加害者の行為の性質や態様などに見合った内容とする必要があります。重すぎる懲戒処分は無効となるので注意が必要です(労働契約法15条)。戒告などの軽い懲戒処分から段階的に行うことを検討してください。

紛争解決援助制度の利用

被害者に対する損害賠償について、和解交渉がまとまらないときは、法令に基づく紛争解決援助制度の利用が有力な選択肢となります。労働審判訴訟などの裁判手続きへ進む前に、早期・円満な解決を得られる可能性があります。

パワハラに当たるテクノロジーハラスメントは、労働施策総合推進法に基づく紛争解決援助の対象となります。都道府県労働局の職員による助言を受けたり、調停委員に解決案を作成してもらったりするなど、解決に向けたサポートを受けられます。

参考:厚生労働省ウェブサイト「職場でのトラブル解決の援助を求める方へ」

再発防止策の検討・実践

テクノロジーハラスメントが再び起こることを防ぐため、教訓を生かした再発防止策を検討・実践しましょう。例えば、次のような再発防止策を講じることが求められます。

・テクノロジーハラスメントが発生した原因の検証、分析
・従業員間のコミュニケーションのさらなる促進
・発生したテクノロジーハラスメントの状況に関する周知、注意喚起
・テクノロジーハラスメントをした者に対する処分の強化
など

ムートン

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参考文献

厚生労働省ウェブサイト「職場でのトラブル解決の援助を求める方へ」