【最判令和6年4月26日】
職種限定労働者に対する
同意なき配置転換の権限を認めなかった事例
| おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 労働法に関する研修資料 |
- この記事のまとめ
-
最高裁令和6年4月26日判決の事案では、公的施設である福祉用具センターに技術者として勤務していた従業員Aが、使用者である社会福祉協議会に総務課への配置転換を命じられました。Aは配置転換の無効を主張し、社会福祉協議会に対して損害賠償を請求しました。
原審の大阪高裁は、Aと社会福祉協議会の間に職種限定の黙示合意が成立したことを認定しつつ、総務課への配置転換は権利濫用に当たらず有効と判断しました。
これに対して最高裁は、職種限定の黙示合意がある場合には、使用者は他職種への配置転換を命ずる権限を有しないことを指摘し、原審判決を破棄して審理を大阪高裁に差し戻しました。職種限定合意が契約上明記されていなくても、実際には長年にわたって同じ職種で勤務しているという従業員はたくさんいます。本判決は、そのような従業員に対する他職種への配置転換命令は無効となる可能性が高いことを示唆するものといえます。
※この記事は、2025年8月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
公的施設である福祉用具センターに勤務していた従業員Aが、使用者である社会福祉協議会に配置転換を命じられた事案です。Aは配置転換の無効を主張し、社会福祉協議会に対して損害賠償を請求しました。
Aは、福祉用具の改造・製作および技術の開発に関する技術職として雇用されていました。しかし社会福祉協議会は、需要の減少を理由に福祉用具の改造・製作業務の廃止を決定し、Aに対して総務課の施設管理担当への配置転換を命じました。
Aの職種を技術職に限るとする書面合意はなかったものの、原審の大阪高裁はその黙示の合意を認定しました。しかし原審は、職種限定合意を認定したにもかかわらず、Aに対する配置転換命令を有効と判断しました。
Aは原審判決を不服として、最高裁に上告しました。












