2025年(令和7年)に施行される法改正のまとめ!
育児介護休業法等改正・建設業法等改正などを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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2025年(令和7年)には、企業法務に関連するさまざまな改正法および新法の施行が予定されています。企業の法務担当者は、自社の事業に関連する法改正について、その内容を正しく理解しておきましょう。
この記事では、2025年中の施行が予定されている主な法改正の概要を解説します。
※この記事は、2024年11月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- 高年齢者雇用安定法…高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
- 建築物省エネ法…建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律
- 特定秘密保護法…特定秘密の保護に関する法律
- 重要経済安保情報保護法…重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律
- 流通業務総合効率化法…流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律
- 物資流通効率化法…物資の流通の効率化に関する法律
- プロバイダ責任制限法…特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
- 情報流通プラットフォーム対処法…特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律
- 公共工事適正化促進法…公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
目次
2025年(令和7年)施行予定の主な法改正一覧
2025年(令和7年)には、企業法務に関連するものを含めて、各種の改正法および新法の施行が予定されています。
① 育児介護休業法等改正(2025年4月1日・10月1日施行)|育児に関する働き方の柔軟化措置・意向聴取等の義務化など
② 雇用保険法等改正(2025年4月1日・10月1日施行)|雇用保険制度の拡充と見直し
③ 高年齢者雇用安定法の経過措置終了(2025年3月31日まで)|65歳までの雇用確保の完全適用
④ 建築基準法・建築物省エネ法改正(2025年4月1日施行)|省エネ基準適合義務化・4号特例縮小など
⑤ 重要経済安保情報保護法(2025年5月までに施行)|セキュリティ・クリアランス制度の導入
⑥ 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正(2025年5月までに施行)|物流効率化と特定事業者への規制強化
⑦ プロバイダ責任制限法改正(2025年5月までに施行)|情報流通プラットフォーム対処法として大規模プラットフォーム事業者規制が開始
⑧ 刑法改正(2025年6月1日施行)|懲役と禁錮を拘禁刑に一本化
⑨ 建設業法等改正(2025年12月までに施行)|建設業労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上
育児介護休業法等改正(2025年4月1日・10月1日施行)|育児に関する働き方の柔軟化措置・意向聴取等の義務化など
男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、育児介護休業法および次世代育成支援対策推進法の改正により、労働者を支援するための措置等が行われます。
育児介護休業法および次世代育成支援対策推進法の改正は、2025年4月1日と同年10月1日の2回に分けて施行される予定です。
- 育児介護休業法等改正のポイント
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<2025年4月1日施行>
(a) 残業免除の対象範囲拡大|3歳以上小学校就学前の子も対象に
(b) 子の看護等休暇の拡大|行事参加等の場合も取得可能に
(c) 育児休業取得状況の公表の義務化(従業員数300人超)
(d) 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、情報提供、雇用環境整備等の措置<2025年10月1日施行>
(a) 働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設
(b) 妊娠・出産の申し出に対する、仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化
雇用保険法等改正(2025年4月1日・10月1日施行)|雇用保険制度の拡充と見直し
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化、および共働き・共育ての推進等を目的として、雇用保険法および子ども・子育て支援法の改正により、雇用保険制度の見直しが行われます。
2025年4月1日と同年10月1日の2回に分けて、以下の改正が行われる予定です。
- 雇用保険法等改正のポイント
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<2025年4月1日施行>
(a) 自己都合退職者が、教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限解除
(b) 就業促進手当の見直し(就業手当の廃止および就業促進定着手当の給付上限引下げ)
(c) 育児休業給付に係る保険料率引上げ(0.4%→0.5%)および保険財政の状況に応じて保険料率引下げ(0.5%→0.4%)を可能とする弾力的な仕組みの導入
(d) 教育訓練支援給付金の給付率引下げ(基本手当の80%→60%)および当該暫定措置の令和8年度末までの継続
(e) 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の暫定措置の令和8年度末までの継続
(f) 「出生後休業支援給付」・「育児時短就業給付」の創設
(g) 子ども・子育て支援特別会計の創設
(h) 高年齢雇用継続給付の給付率引下げ(15%→10%)<2025年10月1日施行>
教育訓練休暇給付金の創設
高年齢者雇用安定法の経過措置終了(2025年3月31日まで)|65歳までの雇用確保の完全適用
高年齢者雇用安定法に基づき、事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合は、原則として希望者全員を対象としなければなりません。
ただし例外的に、2013年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として対象者の限定が認められていました。
この経過措置は2025年3月31日で終了します。したがって2025年4月1日以降は、希望者全員を継続雇用制度の対象としなければなりません。
建築基準法・建築物省エネ法改正(2025年4月1日施行)|省エネ基準適合義務化・4号特例縮小など
建築物分野における省エネ対策を加速させること、および木材利用を促進することを目的として、建築基準法・建築物省エネ法改正により以下の変更が行われます。
建築基準法・建築物省エネ法改正は、2025年4月1日に施行される予定です。
- 建築基準法・建築物省エネ法改正のポイント
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(a) 4号特例の見直し・縮小
建築物の省エネ基準や構造安全性基準への適合を、審査プロセスを通じて確実に担保するため、いわゆる「4号特例」の見直し・縮小が行われます。(b) 構造規制の合理化
建築物への木材利用を促進するため、簡易な構造計算で建築可能な3階建て木造建築物の範囲を拡大するなどの改正が行われます。(c) 省エネ基準への適合義務化
建築物の省エネ化を促進するため、全ての新築住宅・非住宅について、省エネ基準への適合が義務付けられます。
重要経済安保情報保護法(2025年5月までに施行)|セキュリティ・クリアランス制度の導入
「セキュリティ・クリアランス制度」とは、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、その者の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度です。
従来は「特定秘密保護法」によってセキュリティ・クリアランス制度が定められていましたが、安全保障の必要性が高まっている国際情勢と企業からのニーズを背景として、新たに「重要経済安保情報保護法」が制定されました。
重要経済安保情報保護法は、2025年5月17日までに施行される予定です。
重要経済安保情報保護法に基づくセキュリティ・クリアランス制度のポイントは、以下の3点です。
- セキュリティ・クリアランス制度のポイント
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(a) 重要経済安保情報の指定
一定の秘匿性の高い国家機密情報を、行政機関の長が「重要経済安保情報」として指定します。(b) 厳格な情報管理・提供ルール
重要経済安保情報を取り扱う事業者は、適合事業者の要件を満たした上で、当該情報を保有する行政機関との間で契約を締結しなければなりません。
適合事業者においては、重要経済安保情報に関する情報管理措置等を講ずることが求められます。また、実際に重要経済安保情報を取り扱う者は、あらかじめ適性評価を受ける必要があります。(c) 罰則
重要経済安保情報を漏らした者に対しては、厳格な罰則規定が適用されます。
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正(2025年5月までに施行)|物流効率化と特定事業者への規制強化
「2024年問題」による物流停滞への懸念や、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加に対処するため、流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正によって新たな規制が設けられました。
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正は、2025年5月15日までに施行される予定です。
- 流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正のポイント
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(a) 物流事業者・荷主に対する施策
・物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務化
・特定事業者の指定、義務付けなどの規制強化(b) トラック事業者間の取引に対する施策
・実運送体制管理簿の作成の義務付け
・運送契約締結時の書面交付等の義務付け
・下請け適正化の努力義務化、一定規模以上の事業者への義務付け(c) 軽トラック事業者に対する施策
・貨物軽自動車安全管理者の選任の義務付け
・貨物軽自動車安全管理者に定期講習を受けさせることの義務付け
・国土交通大臣に対する事故報告の義務付け
プロバイダ責任制限法改正(2025年5月までに施行)|情報流通プラットフォーム対処法として大規模プラットフォーム事業者規制が開始
インターネット上における誹謗中傷被害を防止するため、従来のプロバイダ責任制限法が「情報流通プラットフォーム対処法」に改められ、SNSや匿名掲示板などの大規模プラットフォームを運営する事業者に対する新規制が設けられました。
情報流通プラットフォーム対処法は、2025年5月17日までに施行される予定です。
- 情報流通プラットフォーム対処法のポイント
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(a) 総務大臣に対する届出
(b) 被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表
(c) 侵害情報に係る調査の実施
(d) 侵害情報調査専門員の選任・届出
(e) 送信防止措置の申出者に対する通知
(f) 送信防止措置の実施に関する基準等の公表
(g) 送信防止措置を講じた場合の発信者に対する通知等
(h) 送信防止措置の実施状況等の公表
刑法改正(2025年6月1日施行)|懲役と禁錮を拘禁刑に一本化
従来の刑法では、受刑者を刑事施設(刑務所など)に収監する刑罰としては「懲役」と「禁錮」の2種類が定められていました。懲役は刑務作業を義務付けるのに対して、禁錮は刑務作業が任意であるという違いがあります。
しかし、刑事施設における実際に状況に鑑み、懲役と禁錮の差がなくなっていることや、受刑者の特性に応じた更生プログラムを実施して再犯予防を図るべきことなどが指摘されていました。そこで改正刑法により、従来の懲役と禁錮が「拘禁刑(こうきんけい)」に一本化されます。
拘禁刑については、刑務作業の有無や更生プログラムの内容が個別に決定され、受刑者の特性に応じた処遇がなされることが予定されています。
拘禁刑を新設する改正刑法は、2025年6月1日に施行される予定です。
建設業法等改正(2025年12月までに施行)|建設業労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上
建設業の担い手を確保するため、労働者の処遇改善・働き方改革・生産性向上を促すことを目的として、建設業法・公共工事適正化促進法改正が行われます。
建設業法および公共工事適正化促進法の改正は、2025年12月14日までに施行される予定です。
- 建設業法・公共工事適正化促進法のポイント
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(a) 労働者の処遇改善(賃金引上げ)
(b) 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
(c) 働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)