電気事業法とは?主な規制内容・
改正の流れ・違反時のペナルティ(罰則)
などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

電気事業法」とは、電気事業の運営の適正化・合理化、および電気工作物の工事・維持・運用に関する規制を定めた法律です。

各種の電気事業を営む事業者は、電気事業法に基づく登録許可を受け、または届け出をしなければなりません。さらに、各種電気事業に対応する業務規制を遵守する必要があります。
また、発電・蓄電・変電・送電・配電・電気の使用のために設置される工作物(=電気工作物)については、電気事業法の規制に基づく取り扱いが義務付けられます。

電気事業法に違反した事業者は、技術基準適合命令や許認可の取り消し、さらに刑事罰の対象になり得るので要注意です。

この記事では電気事業法について、主な規制内容や違反時のペナルティ(罰則)などを解説します。

ヒー

電気事業法は電力業界だけを規制する法律ですか?

ムートン

電気事業法は発電から電気使用まで、電気に関する幅広い事業や工作物を規制しています。ソーラーパネル発電なども対象なので、実は幅広い事業者に関係がありますよ。詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2023年6月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 法…電気事業法
  • 令…電気事業法施行令
  • 規則…電気事業法施行規則
  • 技術基準省令…電気設備に関する技術基準を定める省令

電気事業法とは

電気事業法」とは、電気事業の運営の適正化・合理化、および電気工作物の工事・維持・運用に関する規制を定めた法律です。
電気を幅広い人々に行き渡らせるとともに、電気に関する安全性を確保することなどを目的としています。

電気事業法改正の流れ(沿革)

電気事業法については、これまで度重なる法改正が行われてきました。電気事業法の沿革は、以下のとおりです。

電気事業法の沿革

1964年 電気事業法公布

1995年改正(第1次電力構造改革)
・発電部門への新規参入の拡大
・特定の供給地点における電力小売事業の制度化
・料金規制の見直し
など

1999年改正(第2次電力構造改革)
・大口需要家を対象とする小売供給の自由化
・接続供給制度の整備
・料金選択の多様化、料金引き下げの迅速化による小口への還元
など

2003年改正(第3次電力構造改革)
・送配電部門の調整機能の確保
・全国規模の電力流通の活性化
・電源開発投資環境の整備
・供給力確保、需給調整に関する役割分担ルール見直し
・供給源の多様性の確保
・行政の市場監視、紛争処理機能の整備
など

2011年改正
・簡易かつ機動的な料金改定手続き
・特定電気事業者が利用できる託送制度の整備
・送配電ネットワークの利用ルールの運用体制の整備
など

2013年改正(電力システム改革第1段階改正)
・広域的運営推進機関の設置
など

2014年改正(電力システム改革第2段階改正)
・電力小売全面自由化
など

2015年改正(電力システム改革第3段階改正)
・送配電部門の法的分離
・小売電気料金の規制撤廃
など

2020年改正
・災害時の連携強化
・送配電網の強靭化
・災害に強い分散型電力システム
など

ヒー

結構たくさんの改正がされているんですね…。

ムートン

さまざまな観点で改正がされていることから、条文も枝番号などが入り組み、複雑な法律になっています。まずは何を規制する法律かというポイントに絞って理解していくとよいでしょう。

電気事業法における主な規制

電気事業法では、主に以下の2点について規制が設けられています。

① 電気事業に関する許認可制・業務規制
② 電気工作物に関する規制

電気事業に関する許認可制・業務規制

電気事業法に基づき、以下の事業等については登録制許可制届出制とされています。

① 登録制の事業
・小売電気事業(法2条の2)

② 許可制の事業
・一般送配電事業(法3条)
・送電事業(法27条の4)
・配電事業(法27条の12の2)
・特定供給(法27条の33)

③ 届出制の事業等
・特定送配電事業(法27条の13)
・発電事業(法27条の27)
・特定卸供給事業(法27条の30)
・特定自家用電気工作物の設置(法28条の3)
・小規模事業用電気工作物の設置(法46条)

ムートン

登録制・許可制・届出制の違いは、以下のとおりです。

登録制:資源エネルギー庁による審査が行われます。審査に当たって、資源エネルギー庁の裁量は基本的に認められず、要件を満たせば登録を受けられます。
許可制:資源エネルギー庁による審査が行われます。審査に当たって、資源エネルギー庁の裁量が広く認められます。
届出制:資源エネルギー庁による審査は行われず、届出書類を提出すれば足ります。

登録制・許可制・届出制の各事業(特定供給と特定自家用電気工作物の設置を除く)については、それぞれ対応する業務規制が定められています。

登録制・許可制・届出制とされている各事業等の概要を、それぞれ簡単に紹介します。

登録制の事業

小売電気事業を営もうとする者は、経済産業大臣の登録を受けなければなりません(法2条の2)。

小売電気事業とは、一般の需要に応じて電気を供給する事業のうち、一般送配電事業・特定送配電事業・発電事業に該当する部分を除いたものをいいます(法2条1項1号・2号)。
家庭や店舗・事業所などに電気を供給する事業者(地域電力新電力)が、小売電気事業者に該当します。

許可制の事業

以下の事業を営もうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければなりません。

許可制の事業

① 一般送配電事業(法3条)
自ら維持・運用する送電用・配電用の電気工作物により、その供給区域において託送供給・電力量調整供給を行う事業のうち、発電事業に該当する部分を除いたものです(法2条1項8号)。
日本全土は10の供給区域に分割されており、各供給区域に1社ずつの一般送配電事業者が存在します。

② 送電事業(法27条の4)
自ら維持・運用する送電用の電気工作物により、一般送配電事業者または配電事業者に振替供給を行う事業であって、一般送配電事業に該当する部分を除いたものです(法2条1項10号)。
※一般送配電事業者または配電事業者への送電専用であり、供給期間10年以上かつ供給電力1,000キロワット超、または供給期間5年以上かつ供給電力10万キロワット超である電気工作物を用いるものに限ります(規則3条の3)。2023年5月時点で、3社が送電事業の許可を受けています。

③ 配電事業(法27条の12の2)
自ら維持・運用する電圧7,000ボルト以下の配電線路により、その供給区域において託送供給・電力量調整供給を行う事業のうち、一般送配電事業・発電事業に当たる部分を除いたものです(法2条1項11号の2、規則3条の3の2)。
一般送配電事業者の送配電網を利用した新規参入を認めるため、2022年から導入された新カテゴリーです。2023年5月時点では、まだ配電事業の許可を受けた事業者は存在しません。

④ 特定供給(法27条の33)
電気事業(発電事業)を営む場合および以下の場合を除く、電気を供給する事業です。
・専ら一の建物内、客観的な社団物によって明確に区画された一の構内、または事業の相互関連性が高い複数の構内の需要に応じ、発電等用電気工作物により電気を供給するとき
・小売電気事業、一般送配電事業、配電事業、特定送配電事業または特定卸供給事業の用に供するための電気を供給するとき

届出制の事業等

以下の事業等については、経済産業大臣に対する届け出が義務付けられています。

届出制の事業等

① 特定送配電事業(法27条の13)
自ら維持・運用する送電用・配電用の電気工作物により、小売電気事業・一般送配電事業・配電事業の用に供するための電気に係る託送供給を行う事業のうち、発電事業に該当する部分を除いたものです(法2条1項12号)。

② 発電事業(法27条の27)
自ら維持・運用する発電等用電気工作物を用いて、小売電気事業・一般送配電事業・配電事業の用に供するための電気を発電・放電する事業です(法2条1項14号)。
※出力要件等を満たすものに限ります(規則3条の4)。

③ 特定卸供給事業(法27条の30)
発電等用電気工作物を維持・運用する他の者に対して、発電・放電を指示するなどして集約した電気を、小売電気事業・一般送配電事業・配電事業の用に供するために供給する事業です(法2条1項15号の2)。

④ 特定自家用電気工作物の設置(法28条の3)
出力1,000キロワット以上の発電用・蓄電用の自家用電気工作物(太陽電池発電設備および風力発電設備を除く)を維持・運用する場合には、経済産業大臣への届出が必要です。

⑤ 小規模事業用電気工作物の設置(法46条)
小規模事業用電気工作物とは、小規模発電設備であって、出力が規則48条4項で定める出力以上であり、かつ低圧受電電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と電気的に接続されていないものをいいます。
小規模事業用電気工作物を設置する者は、使用開始前に経済産業大臣へ設置の旨を届け出なければなりません。

電気工作物に関する規制

電気工作物については、その安全性の確保等の観点から、電気事業法に基づき規制が設けられています。

電気工作物とは

電気工作物」とは、以下の目的のために設置する工作物です(法2条1項18号)

  • 発電
  • 蓄電
  • 変電
  • 送電
  • 配電
  • 電気の使用

例えば、以下の工作物が上記の目的のために設置された場合には、電気工作物に当たります。

(例)
・機械
・器具
・ダム
・水路
・貯水池
・電線路
など

ただし、以下の工作物は電気工作物に該当しないため、電気事業法の規制が適用されません(令1条)。

① 船舶や鉄道車両などに設置される工作物
② 航空機に設置される工作物
③ 電圧30ボルト未満の電気的設備であって、電圧30ボルト以上の電気的設備と電気的に接続されていないもの

電気工作物の種類

電気工作物は、一般用電気工作物事業用電気工作物の2つに大別されます。事業用電気工作物は、さらに電気事業の用に供する電気工作物自家用電気工作物の2つに分けられます。

① 一般用電気工作物
構内に設置する電気工作物のうち、低圧受電電線路以外の電線路によって構外の電気工作物と接続されておらず、かつ以下のいずれかに該当するものをいいます(法38条1項)。
・電気を使用するための電気工作物
・小規模発電設備であって、一定出力未満(規則48条4項)の電気工作物

② 事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物※を含む)
一般用電気工作物以外の電気工作物です(法38条2項)。

(a) 電気事業の用に供する電気工作物
事業用電気工作物のうち、以下の事業の用に供するものです(法38条4項参照)。
・一般送配電事業
・送電事業
・配電事業
・特定送配電事業
・発電事業であって、その事業の用に供する発電等用電気工作物が主務省令(規則48条の2)で定める要件に該当するもの

(b) 自家用電気工作物
事業用電気工作物のうち、(a)に該当しないものです(法38条4項)。

経済産業省ウェブサイト「電気工作物の保安」

一般用電気工作物に関する規制

経済産業大臣は、一般用電気工作物が技術基準省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、所有者または占有者に対して、技術基準適合命令を行うことができます(法56条。後述)。

また、一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持・運用する者は、原則として、その一般電気工作物が技術基準に適合しているかどうかを調査しなければなりません(法57条1項)。

事業用電気工作物に関する規制

事業用電気工作物には、一般用電気工作物よりも厳格な以下の規制が適用されます。

① 技術基準への適合(法39条~41条)
技術基準省令で定める技術基準への適合が求められ、適合していない場合は技術基準適合命令の対象となります。

② 自主的な保安(法42条~46条)
保安規程の整備や、免状の交付を受けた主任技術者の選任などが求められます。
ただし小規模事業用電気工作物については、保安規程の整備と主任技術者の選任が免除されます。

③ 工事計画および検査(法47条~55条)
事業用電気工作物の設置・変更の工事であって、公共の安全の確保上特に重要なものを行う際には、工事計画について主務大臣の認可を受けなければなりません。認可制の対象ではない設置・変更工事についても、主務大臣に対する工事計画の届け出が必要です。
さらに事業用電気工作物については、使用開始前の検査定期検査などを受ける必要があります。

④ 承継(法55条の2)
相続やM&Aなどによって事業用電気工作物を承継した場合、その旨を遅滞なく主務大臣に届け出なければなりません。

自家用電気工作物にも、事業用電気工作物と同様の規制が適用されます。
なお、「届出制の事業等」に記載のとおり、特定自家用電気工作物(出力1,000キロワット以上の発電用・蓄電用の自家用電気工作物〔太陽電池発電設備および風力発電設備を除く〕)の設置者には、届出義務があります。

ムートン

自家用電気工作物については、電気事業以外を営む事業者も規制の対象となるため、注意が必要です。

電気事業法に違反した場合のペナルティ

電気事業法に違反した場合、以下のペナルティを受ける可能性があります。

① 技術基準適合命令
② 登録・許可の取り消し
③ 刑事罰

技術基準適合命令

経済産業大臣は、一般用電気工作物または事業用電気工作物が技術基準省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、所有者または占有者に対して、当該電気工作物の修理・改造・移転・使用の一時停止を命じ、または使用を制限することができます(法40条・56条)。これを「技術基準適合命令」といいます。

技術基準適合命令には法的拘束力があり、違反した場合は刑事罰の対象となります。

登録・許可の取り消し

経済産業大臣は、電気事業法違反によって公共の利益を阻害すると認めるときは、以下の事業に関する登録・許可を取り消すことができます(法2条の9・15条・27条の8・27条の12の8・27条の21)。

<登録制>
・小売電気事業

<許可制>
・一般送配電事業
・送電事業
・配電事業
・特定供給

刑事罰

電気事業法に違反する行為の一部は、刑事罰の対象とされています。

刑事罰が科され得る主な違反行為は、以下のとおりです。

違反行為の内容条文法定刑
無許可営業(一般送配電業事業、送電事業、配電事業)
技術基準適合命令違反(原子力発電工作物に限る)
法116条3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
※法人の両罰規定あり(300万円以下の罰金。法121条3号)
無登録営業(小売電気事業)
無届出営業(特定送配電事業、特定卸供給事業)
法117条の21年以下の懲役または100万円以下の罰金(併科あり)
※法人の両罰規定あり(100万円以下の罰金。法121条3号)
技術基準適合命令違反(原子力発電工作物を除く)法118条300万円以下の罰金
※法人の両罰規定あり(300万円以下の罰金。法121条3号)
無届出営業(特定供給)法119条100万円以下の罰金
※法人の両罰規定あり(100万円以下の罰金。法121条3号)
届出義務違反(特定自家用電気工作物の設置)法128条10万円以下の過料
ムートン

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参考文献

経済産業省「2020年度版 電気事業法の解説」