医療法とは?
医師法との違い・改正内容・遵守すべき広告規制・
医療法人の仕組みなどを分かりやすく解説!

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【2024年4月より順次施行】医師の働き方改革のポイント
この記事のまとめ

医療法」とは、医療提供施設の開設・管理に関する事項などを定めた法律です。医療を受ける者の利益の保護や、良質かつ適切な医療の効率的な提供を確保することなどを目的としています。

医療法では、病院診療所などの医療を提供する施設(=医療提供施設)および助産所について、主に以下の規制を設けています。
①医業・歯科医業・助産師の広告規制
②病院・診療所・助産所に関する規制
③医療法人に関する規制

病院・診療所・助産所を開設する場合は、医療法に基づく上記の規制を遵守しなければなりません。

この記事では医療法について、病院・診療所などが遵守すべき規制や、医療法人の仕組みなどを解説します。

ヒー

医療法は病院に関する法律ですか? 医師法や薬機法とは違うんですよね?

ムートン

医療法は医療の提供について、病院などの施設や広告に関する規制や、医療法人に関する規定などが主な内容です。分野としては「医事法」として医師法などとともにまとめられることが多いですね。

※この記事は、2023年7月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 法…医療法
  • 規則…医療法施行規則

医療法とは

医療法」とは、医療提供施設の開設・管理に関する事項などを定めた法律です。医療を受ける者の利益の保護や、良質かつ適切な医療の効率的な提供を確保することなどを目的としています。

医療法と医師法の違い

医療法と並んで、医業に関する規制を定めた法律として「医師法」が挙げられます。医師法では、医師の免許・研修・業務などに関する規制が定められています。

医師法の規制が医師個人を対象とするのに対して、医療法に定められている規制は、病院診療所助産所などの施設を対象とするものが中心です(広告規制については、医師などの個人にも適用されます)。

医療法と医師法は、規制の対象に違いはあっても、いずれも医業の適正な運営を確保する目的があります。

医療法改正の流れ

医療法は1948年の制定以来、1985年から現在に至るまで8回の改正が行われています。

ヒー

医療法ってけっこう頻繁に改正されているんですね。

ムートン

医療の提供をめぐる状況や課題は日々変化しており、素早い対応が求められる分野といえます。

直近では、2021年5月改正医療法が成立しており、2024年4月1日施行が予定されています

2021年改正(2024年施行予定)の概要

医師の働き方改革(医師の長時間労働の見直し)
各医療関係職種の専門性の活用(医師の負担減)
地域の実情に応じた医療提供体制の確保

医療法に基づく医療提供施設等の種類

医療法の規制を受ける施設は、医療提供施設および助産所です。

① 医療提供施設(法1条の2第2項)
→病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設です。

(a) 病院(法1条の5第1項)
→医師または歯科医師が、公衆または特定多数人のため医業または歯科医業を行う場所であって、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものです。

(b) 診療所(法1条の5第2項)
→医師または歯科医師が、公衆または特定多数人のため医業または歯科医業を行う場所であって、患者を入院させるための施設を有しないもの、または19人以下の患者を入院させるための施設を有するものです。
入院病床の有無および収容人数によって、病院と診療所が区別されています。

(c) 介護老人保健施設(法1条の6第1項、介護保険法8条28項)
→支援を要する要介護者に対して、必要な医療と日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたものです。医療法の中では、主に医療法人に関する規制が適用されます。

(d) 介護医療院(法1条の6第2項、介護保険法8条29項)
→長期療養が必要な要介護者に対して、必要な医療と日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたものです。医療法の中では、主に医療法人に関する規制が適用されます。

(e) その他(調剤を実施する薬局など)
→(a)~(d)のほか、医療を提供する施設はいずれも医療提供施設に該当します(調剤を実施する薬局を含みます)。医療法の中では、事業者の努力義務規定や、国・地方公共団体の施策に関する規制などが適用されます。

②助産所(法2条)
→助産師が公衆または特定多数人のために業務(病院または診療所で行うものを除く)を行う場所です。

医療法に基づく主な規制の内容

事業者に対して適用される医療法の規制は、以下の3つに大別されます。

① 医業・歯科医業・助産師の業務等に関する広告規制
② 病院・診療所・助産所に関する規制
③ 医療法人に関する規制

医業・歯科医業・助産師の業務等に関する広告規制

医療法では、医業・歯科医業、病院・診療所、助産師の業務、助産所に関して、以下の広告規制を設けています。

① 虚偽広告の禁止(法6条の5第1項・6条の7第1項)
文書その他いかなる方法によるかを問わず、虚偽の広告をしてはなりません。

② 広告基準への適合(法6条の5第2項・6条の7第2項、規則1条の9)
広告の内容・方法を、以下の基準に適合させなければなりません。
・他の病院または診療所と比較して、優良である旨の広告をしないこと
・誇大な広告をしないこと
・公序良俗に反する内容の広告をしないこと
・患者等の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告をしないこと
・治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある、治療等前後の写真等の広告をしないこと

③ 広告事項の制限(法6条の5第3項・6条の7第3項)
広告の内容は原則として、医療法および医療法施行規則所定の事項に制限されます。広告可能な事項は、一定の性質を持った項目群ごとにまとめられています(「~に関する事項」。包括規定方式)。
なお、診療科名を広告する際には、厚生労働大臣の許可を受けた診療科名と併せて、当該許可を受けた医師または歯科医師の氏名を広告しなければなりません(法6条の6第1項・4項)。

病院・診療所・助産所に関する規制

医療法では、病院・診療所・助産所の開設等および管理、ならびにこれらの施設に対する監督に関する規定が設けられています。

病院・診療所・助産所の開設等

病院・診療所・助産所を開設する際には、医療法の定めに従って届け出を行い、または許可を受けなければなりません。

<届出制>(法8条)
・臨床研修等修了医師・臨床研修等修了歯科医師による診療所の開設
・助産師による助産所の開設

※いずれも開設後10日以内の届け出が必要

<許可制>(法7条)
・病院の開設
・臨床研修等修了医師または臨床研修等修了歯科医師でない者による診療所の開設
・助産師でない者による助産所の開設

※医療法人による診療所の開設は、許可制

許可を受けて開設した病院・診療所・助産所については、正当な理由なく1年を超えて休止してはなりません(法8条の2第1項)。

また、以下の事由が発生した場合には、10日以内に所在地の都道府県知事へ届け出る必要があります。

  • 病院、診療所または助産所の休止および再開(法8条の2第2項)
  • 病院、診療所または助産所の廃止(法9条1項)
  • 病院、診療所または助産所の開設者の死亡または失踪宣告(法9条2項)

病院・診療所・助産所の管理

病院・診療所・助産所の管理について、医療法は主に以下の規制を設けています。

① 管理者(法10条~12条)
医業をなす病院・診療所は臨床研修等修了医師に、歯科医業をなす病院・診療所は臨床研修等修了歯科医師に、助産所は助産師に管理させなければなりません。

なお、開設者が管理者となることができる者であれば、都道府県知事の許可を受けて他の者に管理させる場合を除き、開設者が自ら病院・診療所・助産所を管理する必要があります。

② 業務報告(法12条の2~12条の4)
地域医療支援病院の開設者は都道府県知事に対して、特定機能病院・臨床研究中核病院の開設者は厚生労働大臣に対して、毎年10月5日までに業務報告書を提出しなければなりません。提出された業務報告書は公表されます。

③ 入院施設を有する診療所の管理者の義務(法13条)
入院施設を有する診療所の管理者は、患者の急変に備えて速やかに診療を行う体制を確保するよう努めるとともに、他の病院または診療所との緊密な連携を確保しなければなりません。

④ 助産所の入所人数制限(法14条)
助産所の管理者は、原則として同時に10人以上の妊婦・産婦・じょく婦を入所させてはなりません。

⑤ 掲示すべき事項(法14条の2)
病院・診療所・助産所には、管理者の氏名や従事する医師・歯科医師・助産師の氏名など、医療法所定の事項を掲示しなければなりません。

⑥ 従業者の監督等(法15条1項・2項)
病院・診療所・助産所の管理者は、従業者を監督し、その他管理・運営について必要な注意をしなければなりません。

⑦ エックス線装置の届け出(法15条3項)
病院または診療所の管理者が、診療の用に供するエックス線装置を備えたときは、所在地の都道府県知事に届け出なければなりません。

⑧ 検体検査(法15条の2・15条の3)
検体検査を行う場合は、規則9条の7に定める基準に適合させなければなりません。また、検体検査業務の外部委託は、基準に適合する事業者に対してのみ認められます。

⑨ 病院での宿直(法16条)
医業を行う病院の管理者は、原則として病院に医師を宿直させなければなりません。

⑩ 専属薬剤師(法18条)
病院または診療所には、原則として専属の薬剤師を置かなければなりません(所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除きます)。

⑪ 助産所における医師等への嘱託(法19条)
助産所の開設者は、嘱託する医師および病院または診療所を定めなければなりません。

⑫ 清潔の保持・安全の確保(法20条)
病院・診療所・助産所は清潔を保持し、その構造設備は衛生・防火・保安上安全と認められるものでなければなりません。

⑬ 病院の人員・施設(法21条)
病院では、医療法および医療法施行規則所定の人員および施設を有し、かつ記録を備え置かなければなりません。

⑭ 構造設備(法23条)
病院・診療所については規則16条、助産所については規則17条の基準を満たす構造設備を備えなければなりません。

病院・診療所・助産所に対する監督

医療法の規定に違反した病院・診療所・助産所に対しては、以下の行政処分が行われる可能性があります。

① 業務停止命令等(法23条の2)
→病院または療養病床を有する診療所について、人員配置が基準に照らして著しく不十分な場合には、期限を定めて、人員の増員または業務の全部もしくは一部の停止を命じられる可能性があります。

② 使用制限命令等(法24条)
→病院・診療所・助産所が清潔を欠くとき、構造設備が基準に適合していないとき、または衛生・保安上危険であるときは、期間を定めて使用の制限・禁止または修繕・改築が命じられる可能性があります。

③ 措置命令(法24条の2)
→病院・診療所・助産所の業務が法令に違反し、またはその運営が著しく不適正な場合には、期限を定めて必要な措置を命じられる可能性があります。

④ 勧告・措置命令・公表(法27条の2)
→病院または診療所の開設者・管理者が、正当な理由なく許可条件に従わないときは、期限を定めて当該条件に従うように勧告が行われます。
勧告に従わない場合は措置命令、措置命令に従わない場合は公表の対象となります。

⑤ 管理者の変更命令(法28条)
→病院・診療所・助産所の管理者に、犯罪・医事に関する不正行為・管理者として不適当な事由がある場合には、期限を定めて管理者の変更を命じられる可能性があります。

⑥ 閉鎖命令(法29条)
→以下のいずれかに該当する場合には、期間を定めて病院・診療所・助産所の閉鎖を命じられる可能性があります。
・開設許可を受けた後、正当な理由がなく6カ月以上業務を開始しないとき
・許可を受けて開設した病院、診療所、助産所が、休止後正当な理由がなく1年以上業務を再開しないとき
・開設者が医療法に基づく命令または処分に違反したとき
・開設者に犯罪または医事に関する不正行為があったとき

医療法人に関する規制

以下の医療提供施設については、医療法の規定に従って医療法人とすること(=法人)が認められています(法39条)。

  • 病院
  • 医師または歯科医師が常時勤務する診療所
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

医療法人の設立

医療法人設立する際には、定款または寄付行為を定めた上で、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けなければなりません(法44条)。認可申請の際には、初年度支出予算の2カ月分に相当する運転資金の拠出が必要です。

都道府県知事の認可後、主たる事務所の所在地における設立登記の完了をもって、医療法人が成立します(法46条1項)。

医療法人の機関

医療法人には、以下の機関を設置する必要があります(医療法46条の2)。

① 社団の場合
・社員総会
・理事
・理事会
・監事

② 財団の場合
・評議員
・評議員会
・理事
・理事会
・監事

医療法人の持分

医療法人は、「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」の2つに大別されます。

① 持分あり医療法人
出資者が出資した割合に応じて、退社時に払い戻しを受けられる医療法人です。

② 持分なし医療法人
出資者の退社時に出資の払い戻しが行われない医療法人です。

2007年の第5次医療法改正の施行以降、「持分あり医療法人」の新規設立はできなくなりました。しかし、それより前に設立された医療法人については、引き続き「持分あり医療法人」とすることが認められています。

ムートン

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