みどりの食料システム法とは?
基本方針や事業者にとってのポイントを分かりやすく解説!

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三浦法律事務所弁護士
University of Pennsylvania Law School(LL.M. with Wharton Business & Law Certificate)修了。 2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、ニューヨーク州弁護士、公認不正検査士(CFE)、中級食品表示診断士。長島・大野・常松法律事務所、Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr 法律事務所(ワシントンD.C.)、三井物産株式会社法務部出向を経て、2021年3月より現職。 危機管理・コンプライアンス、コーポレートガバナンス、ESG・SDGs、紛争解決等を中心に、広く企業法務全般を取り扱う。
この記事のまとめ

2022年4月22日に、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(以下、「みどりの食料システム法」)が成立しました。みどりの食料システム法は同年5月2日に公布され、同年7月1日に施行されました。

みどりの食料システム法は、農林漁業者のみならず、アグリテック事業者など、広く農業に関わる事業者に関係する法律です。

この記事では同法の概要を解説した上で、特に事業者にとってのポイントを解説します。

ヒー

この法律は誰を対象にしたものですか?

ムートン

「農林漁業及び食品産業の持続的な発展」を目的とした基本理念を定めるほか、認定制度を創設して、農林漁業者に加え、食品事業者、堆肥製造事業者、農業機械メーカー、アグリテック事業者など、広く農業に関わる事業者を支援する法律です。

※この記事は、2022年11月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・みどりの食料システム法…環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律
・薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
・温対法…地球温暖化対策の推進に関する法律
・食品等流通法…食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律
・補助金等適正化法…補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

みどりの食料システム法とは

みどりの食料システム法は、「農林漁業及び食品産業の持続的な発展等を図るため、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する認定制度の創設等の措置を講ずる」ことを趣旨とする法律です。

公布日と施行日は、以下のとおりです。

公布日・施行日

公布日|2022年5月2日
施行日|2022年7月1日

ムートン

みどりの食料システム法を理解するためには、そもそも「みどりの食料システム戦略」について知る必要があります。以下で詳しく解説していきます。

みどりの食料システム戦略とは

農林水産省のプレスリリース「みどりの食料システム法の本格運用がスタートします!」で、みどりの食料システム法は「みどりの食料システム戦略を実現するための法制度」とされています。

「みどりの食料システム戦略」とは、2021年5月に農林水産省が公表した戦略です。
「みどりの食料システム戦略」では、日本の食料・農林水産業が直面する持続可能性の課題、今後重要性が増す地球環境問題とSDGsへの対応、持続的な食料システムの構築の必要性を背景として、目指す姿、具体的な取り組みおよび工程表等がまとめられています。

具体的な取り組みは、以下のとおりです。

① 資材・エネルギー調達における脱輸入・脱炭素化・環境負荷軽減の推進
② イノベーション等による持続的生産体制の構築
③ ムリ・ムダのない持続可能な加工・流通システムの確立
④ 環境にやさしい持続可能な消費の拡大や食育の推進
⑤ 食料システムを支える持続可能な農山漁村の創造
⑥ サプライチェーン全体を貫く基盤技術の確立と連携
⑦ カーボンニュートラルに向けた森林・木材のフル活用によるCO2吸収と固定の最大化

これらは、農林水産省「みどりの食料システム戦略パンフレット(閲覧用)」の4枚目で、以下のように図示されています。

農林水産省「みどりの食料システム戦略パンフレット(閲覧用)

みどりの食料システム法制定の背景・目的

みどりの食料システム法制定の背景には、以下のような事情があると説明されています。

・気候変動、生物多様性の低下等、食料システムを取り巻く環境が変化
・農林漁業・食品産業の持続的発展等のためには、生産から販売までの各段階での環境負荷の低減、当該農林水産物・食品の流通・消費が課題
・みどりの食料システム戦略を策定し、国連食料システムサミットやCOP26で世界に発信

農林水産省「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の概要」1頁

このような背景事情を踏まえ、関係者の行動変容と技術開発・普及により、環境と調和のとれた食料システムの確立が必要であるという問題意識の下、みどりの食料システム法が制定されました。

みどりの食料システム法は同法1条にその目的を定めています。

第1条 この法律は、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動を促進するための措置及びその基盤を確立するための措置を講ずることにより、環境と調和のとれた食料システムの確立を図り、もって農林漁業及び食品産業の持続的な発展並びに国民に対する食料の安定供給の確保に資するとともに、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会の構築に寄与することを目的とする。

「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

用語の整理

みどりの食料システム法を理解する際には、同法内で用いられている用語の定義を適切に押さえることが重要です。
以下では、同法内の重要な用語の定義について、一部の表現の形式修正・削除をした形でまとめています。事業者は、特に「基盤確立事業」の定義をきちんと押さえておく必要があります

用語
(条文)
定義
食料システム
(2条1項)
農林水産物等(農林水産物および食品〔全ての飲食物のうち医薬品(薬機法2条1項)、医薬部外品(同条2項)、再生医療等製品(同条9項)以外のもの〕)の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体
環境と調和のとれた食料システム
(2条2項)
農林水産物等の生産等(生産、製造、加工および流通〔輸送、保管、販売その他の取扱いの過程〕)の過程において環境への負荷の低減が図られ、かつ、当該農林水産物等の流通および消費が広く行われる食料システム
農林漁業者
(2条3項)
農業者、林業者もしくは漁業者またはこれらの者の組織する団体(これらの者が主たる構成員または出資者〔以下「構成員等」〕となっている法人を含む)
環境負荷低減事業活動
(2条4項)
農林漁業者が、当該農林漁業者の行う農林漁業(当該農林漁業者が団体である場合は、その構成員等の行う農林漁業を含む)の持続性の確保に資するよう、農林漁業に由来する環境への負荷(以下この条、第3章および第4章において「環境負荷」という)の低減を図るために行う次に掲げる事業活動
(1) 堆肥その他の有機質資材の施用により土壌の性質を改善させ、かつ、合成肥料および農薬の施用および使用を減少させる技術を用いた生産方式による事業活動
(2) 温室効果ガスの排出(温対法2条4項に規定する温室効果ガスの排出)の量の削減に資する事業活動
(3) 前二号に掲げるもののほか、環境負荷の低減に資するものとして農林水産省令で定める事業活動
特定環境負荷低減事業活動
(15条2項3号)
集団または相当規模で行われることにより地域における環境負荷の低減の効果を高めるものとして農林水産省令で定める環境負荷低減事業活動
基盤確立事業
(2条5項)
環境負荷の低減を図るために行う取り組みの基盤を確立するために行う次に掲げる事業
(1) 先端的な技術に関する研究開発およびその成果の移転の促進に関する事業
(2) 新品種の育成に関する事業
(3) 環境負荷の低減に資する資材または機械類その他の物件の生産および販売に関する事業
(4) 環境負荷の低減に資する機械類その他の物件を使用させる契約に基づき当該物件を使用させることに関する事業
(5) 環境負荷の低減を図るために行う取り組みを通じて生産された農林水産物をその不可欠な原材料として用いて行う新商品の開発、生産または需要の開拓に関する事業
(6) 前号に規定する農林水産物の流通の合理化に関する事業

基本方針とは

みどりの食料システム法は、国の責務や講じるべき施策(同法4条・7条~14条)、地方公共団体の責務(同法5条)、事業者および消費者の努力義務(同法6条)など、幅広い対象者に向けた規律が定められています。

その上で、農林水産大臣が環境負荷低減事業活動の促進およびその基盤の確立に関する基本的な方針(以下「基本方針」)として、以下の事項を定めることとされています(同法15条1項・2項)。

① 環境負荷低減事業活動の促進の意義および目標に関する事項
② 環境負荷低減事業活動の実施に関する基本的な事項
③ 特定環境負荷低減事業活動の促進を図る区域(以下「特定区域」)の設定に関する基本的な事項
④ 基本計画の作成に関する基本的な事項
⑤ 基盤確立事業の実施に関する基本的な事項
⑥ 上記のほか、環境負荷低減事業活動の促進およびその基盤の確立に関する重要事項

なお、基本方針については、2022年9月15日に「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(令和4年農林水産省告示第1412号)」が策定・公表されました。

基本計画とは

市町村および都道府県は、協働して、基本方針に基づき、環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画(以下「基本計画」)を作成して、農林水産大臣に協議し、その同意を求めることができるとされています(みどりの食料システム法16条1項)。

基本計画では、以下の事項を定めることとされています(同条2項)。

① 環境負荷低減事業活動の促進による環境負荷の低減に関する目標
② 環境負荷低減事業活動として求められる事業活動の内容に関する事項
③ 特定区域を定める場合にあっては、(ⅰ)当該特定区域の区域、(ⅱ)当該特定区域において実施する特定環境負荷低減事業活動として求められる事業活動の内容に関する事項
④ 環境負荷低減事業活動の実施に当たって活用されることが期待される基盤確立事業の内容に関する事項
⑤ 環境負荷低減事業活動により生産された農林水産物の流通および消費の促進に関する事項
⑥ 上記のほか、環境負荷低減事業活動の促進に関する事項

「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立のための措置」とは

みどりの食料システム法は、「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立のための措置」として、以下のように定めています。

(ⅰ) 認定環境負荷低減事業活動実施計画等に係る措置
(ⅱ) 有機農業を促進するための栽培管理に関する協定に係る措置
(ⅲ) 認定基盤確立事業実施計画に係る措置

・(ⅰ)認定環境負荷低減事業活動実施計画等に係る措置

農林漁業者・団体が「環境負荷低減事業活動実施計画」の認定を申請し、都道府県知事が同法19条5項各号に適合すると認めるときには、その認定をすると定められています(同法19条1項・5項)。

農林水産省「みどりの食料システム法の認定制度等について」(2022年9月)11頁

基本計画において定められた特定区域において、特定環境負荷低減事業活動を行おうとする農林漁業者・団体が「特定環境負荷低減事業活動実施計画」の認定を申請し、都道府県知事が同法21条5項各号に適合すると認めるときには、その認定をすると定められています(同法21条1項・5項)。

農林水産省「みどりの食料システム法の認定制度等について」(2022年9月)13頁

・(ⅱ)有機農業を促進するための栽培管理に関する協定に係る措置

基本計画において定められた特定区域内にある相当規模の一団の農用地(農地または採草放牧地)の所有者等が、有機農業の生産団地を形成するために、市町村長または都道府県知事の認可を受けて、「有機農業を促進するための栽培管理に関する協定」(以下「協定」)を締結することができるとされています(同法31条1項)。
協定については、協定区域内の農用地に係る農用地所有者等の全員の合意が必要とされています(同条3項)。また、協定の内容は法令に基づき策定された国または地方公共団体の計画に適合するものでなければならないとされています(同条4項)。

・(ⅲ)認定基盤確立事業実施計画に係る措置

事業者が主務大臣に対して、基盤確立事業実施計画」の認定を申請し、主務大臣がみどりの食料システム法39条4項各号に適合すると認めるときには、その認定を受けられるというものです(同法39条1項・4項)。認定基盤確立事業実施計画に従って行われる基盤確立事業を以下「認定基盤確立事業」といいます。

農林水産省「みどりの食料システム法の認定制度等について」(2022年9月)16頁
ムートン

ここまでが「計画」に関する事項でした。次は重要な「基盤確立事業」について解説していきます。

みどりの食料システム法における「基盤確立事業」とは

基本方針において、基盤確立事業は、以下の3つの要件に適合したものとすると定められています。

① みどりの食料システム法2条5項各号に掲げるいずれかの事業であって、「環境負荷の低減の効果の増進」または「環境負荷の低減を図るために行う取組を通じて生産された農林水産物の付加価値の向上」に相当程度寄与するものであること
② 事業効果が広域的に寄与すること
③ 事業内容が一定の先進性を有すること

①みどりの食料システム法2条5項各号に掲げるいずれかの事業であって、「環境負荷の低減の効果の増進」または「環境負荷の低減を図るために行う取組を通じて生産された農林水産物の付加価値の向上」に相当程度寄与するものであること

①-1「みどりの食料システム法2条5項各号に掲げるいずれかの事業」

第1に、みどりの食料システム法2条5項各号の「基盤確立事業」について、以下の表にまとめました。これらの基盤確立事業に該当することが①の要件の基礎となります。

基盤確立事業定義備考
(1)先端的な技術に関する研究開発およびその成果の移転の促進(1号)ロボット、AI、IoT等を活用したスマート農業技術を始め、環境負荷の低減に対して効果のある技術の研究開発を行い、当該研究開発の成果の事業化を目指す事業「先端的な技術」であるかについては、現行の技術の水準、当該技術の普及状況や事業の新規性等を総合的に勘案する
(2)新品種の育成(2号)病虫害抵抗性や少肥適応性等、環境負荷の低減に資する生産方式に適した新たな品種を育成する事業
(3)環境負荷の低減に資する資材または機械類その他の物件の生産および販売(3号)環境負荷の低減を図るため、堆肥を広域的に流通させるためのペレット堆肥や混合堆肥複合肥料、食品残さを活用した有機質肥料その他の環境負荷の低減に資する資材の製造および販売、除草機や可変施肥機その他の環境負荷の低減に資する機械類の製造および販売に取り組む事業「物件」にはソフトウェアを含む
(4)環境負荷の低減に資する機械類その他の物件を使用させる契約に基づき当該物件を使用させること(4号)環境負荷の低減に効果のあるスマート農業機械等の産地全体での導入の加速化に資する当該機械等のリース・レンタル等を行う事業「物件」にはソフトウェアを含む
(5)環境負荷の低減を図るために行う取り組みを通じて生産された農林水産物をその不可欠な原材料として用いて行う新商品の開発、生産または需要の開拓(5号)環境負荷低減事業活動等の取り組みにより生産された農林水産物を活用した新商品の開発、製造または当該新商品の販路の拡大を行う事業「不可欠な原材料」であるかについては、当該農林水産物を原材料として用いることが当該商品の品質等を特徴づけるものとなっているか等を総合的に勘案する
(6)環境負荷の低減を図るために行う取り組みを通じて生産された農林水産物の流通の合理化(6号)環境負荷低減事業活動等の取り組みにより生産された農林水産物について、荷さばき業務の合理化、調製、保管もしくは配送の共同化、または品質管理もしくは販売情報管理の高度化等、既に用いている流通の方式を改善しまたは新たな流通の方式を導入する事業「流通の合理化」とは、農林水産物の流通コストを削減するための流通の効率化、農林水産物の価値を高め、または新たな需要を開拓するために行う流通上の品質管理や衛生管理の高度化等をいう

①-2「環境負荷の低減の効果の増進」

第2に、「環境負荷の低減の効果の増進」とは、上記の(1)~(6)の事業を通じて、農林漁業者が環境負荷の低減に取り組む際の労働負荷や生産コストの上昇、収量の低下等の課題に対処し、農林漁業者が環境負荷の低減に取り組みやすくなることをいいます。

①-3「環境負荷の低減を図るために行う取組を通じて生産された農林水産物の付加価値の向上」

第3に、「環境負荷の低減を図るために行う取組を通じて生産された農林水産物の付加価値の向上」とは、環境負荷低減の取り組みが持続的に行われるためには、当該取り組みを通じて生産された農林水産物が再生産可能な価格で十分な量が流通することが重要なことから、上記の(1)~(6)の事業を通じて、農林漁業の所得向上につながる新たな付加価値を創出することをいいます(なお、事業の実施に当たっては、許認可や届出等を要する個々の関係法令や国が定めるガイドライン等を遵守するよう留意するものとされています)。

②事業効果が広域的に寄与すること

基盤確立事業は、農林漁業者が容易に環境負荷の低減に取り組める環境を全国的に整備するものであることから、事業展開による環境負荷低減の取り組みへの効果が地域の農業協同組合の管轄区域や県域を超えて波及することが求められます。
そして、その際、自らの事業の実績または同業他社の事業の実施状況等を勘案するものとされています。

③事業内容が一定の先進性を有すること

基盤確立事業は、環境負荷の低減の効果の増進を相当程度期待するものとして、事業内容について一定の先進性を有することが求められます。
そして、その際、現行の技術水準や当該技術を備えた製品およびサービスの普及状況、同業他社や事業実施地域における事業の実施状況等を勘案するものとされています。

事業者にとってのメリット

上記のとおり、みどりの食料システム法は、農林漁業者以外の事業者も支援措置を受けられる立て付けになっています。

具体的には、基盤確立事業を行おうとする事業者は、基盤確立事業実施計画の認定を申請し、主務大臣の認定を受けた場合に、以下のようなメリットを受けることができます

食品等流通法の特例(長期低利の資金貸付)

認定基盤確立事業に食品等の流通の合理化が含まれる場合には、みどりの食料システム法41条のみなし規定により、食品等流通法7条(資金の貸付け)の規定を適用するとされています。

これにより、株式会社日本政策金融公庫による長期かつ低利の資金貸付が適用されることになります。

種苗法の特例(品種登録の出願料および登録料の減免)

農林水産大臣は、認定基盤確立事業の成果に係る出願品種*の品種登録出願について、その出願者がみどりの食料システム法42条1項各号に掲げる者であって当該認定基盤確立事業を行う認定基盤確立事業者であるときは、政令で定めるところにより、出願料軽減・免除することができるとされています(みどりの食料システム法42条1項)。

*種苗法3条2項に規定する出願品種をいい、当該認定基盤確立事業の実施期間の終了日から起算して2年以内に同条1項1号に規定する品種登録出願がされたものに限る。

また、農林水産大臣は、認定基盤確立事業の成果に係る登録品種**について、登録料を納付すべき者がみどりの食料システム法42条2項各号に掲げる者であって当該認定基盤確立事業を行う認定基盤確立事業者であるときは、政令で定めるところにより、当初6年分の登録料軽減・免除することができるとされています(みどりの食料システム法42条2項)。

**種苗法20条1項に規定する登録品種をいい、当該認定基盤確立事業の実施期間の終了日から起算して2年以内に品種登録出願されたものに限る。

農地法の特例(農地転用許可手続のワンストップ化)

認定基盤確立事業者が認定基盤確立事業実施計画(みどりの食料システム法39条3項1号イ・ロに掲げる事項が記載されているものに限る。次項において同じ)に従って、同号ロの施設の整備を目的として農地を農地以外のものにする場合には、農地法4条1項の農地転用許可があったものとみなすとされています(みどりの食料システム法43条1項)。

また、認定基盤確立事業者が認定基盤確立事業実施計画に従って、みどりの食料システム法39条3項1号ロの施設の用に供することを目的として農地・採草放牧地をそれ以外のものにするため、所有権または使用・収益を目的とする権利を取得する場合には、農地法5条1項の農地転用のための権利移動の許可があったものとみなすとされています(みどりの食料システム法43条2項)。

上記のみなし規定により、農地転用許可手続のワンストップ化が実現されます。

補助金等適正化法の特例

認定基盤確立事業者が認定基盤確立事業実施計画(みどりの食料システム法39条3項2号に掲げる事項が記載されているものに限る)に従って基盤確立事業を行う場合には、認定があったことをもって、補助金等適正化法22条に規定する各省庁の長の承認があったものとみなすとされています(みどりの食料システム法44条)。

上記のみなし規定により、補助金等交付財産の処分の制限解除に関する承認手続のワンストップ化が実現されます。

みどり投資促進税制

主務大臣の認定を受けた農業者や資材メーカー・食品事業者は、化学農薬や化学肥料に代替する生産資材の専門の製造施設・設備等の導入に対する投資促進税制が適用されます。具体的には、機械等については32%、建物等については16%の特別償却の適用を受けることができます。

詳細は、農林水産省「みどり投資促進税制パンフレット(令和4年9月15日時点)」に記載されています。

また、農林水産省のウェブサイトでは、水稲農業者、畑作等農業者、食品事業者、堆肥製造事業者、および農業機械メーカーに向けた「みどり投資促進税制のご案内」が公表されています。

本税制の適用は、租税特別措置法の規定により、2024年3月31日までの間に、認定実施計画に基づき対象設備等を新規取得等し、事業の用に供した場合に限られるとされており、適用を求める事業者は、タイムリーな対応が必要となります

2022年度に限った措置

原則として、設備等の発注・着工・取得前に計画の認定を受ける必要がありますが、2022年度中(2022年4月1日~2023年3月31日)に発注・着工した設備等に限った措置として、計画の認定前に発注・着工している設備であっても、計画の認定後に取得したものであれば、本税制の対象となるとされています。

みどり投資促進税制パンフレット(令和4年9月15日時点)」4頁

実務上の留意点

自社ビジネスへの活用可能性を検討する

農林水産省は、「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画の作成等の手引き」において、「特に環境負荷の低減を図る取組は、農林漁業者以外の事業者が持つ技術や知見、経営資源を積極的に取り入れ、農林漁業者が容易に環境負荷の低減に取り組める環境を整備することが重要となります。また、『農林漁業×環境』の取組の拡大は、事業者にとっても、新たなビジネスチャンスとなる可能性があります。」と明記しています。

この記載から分かるとおり、みどりの食料システム法は、まさに、農林漁業×環境」という切り口でビジネスを展開することを検討している事業者にとっては追い風となる法律といえます。

みどりの食料システム法は、農林漁業者のみならず、食品事業者、堆肥製造事業者、農業機械メーカー、アグリテック事業者等、広く農業に関わる事業者に関係する法律です。また、同法は、事業者に規制や義務を課すことに重きを置いているものではなく、むしろ農林漁業者以外の事業者も支援措置を受けることができるものです。
自社ビジネスに同法の各種支援措置の活用を検討することは一考に値します。

実施計画の作成など適切な手続を履践する

みどりの食料システム法に基づく各種支援措置を事業者が受けようとする場合、基盤確立事業実施計画の作成等、必要な手続きがあります。
また、上記のみどり投資促進税制の適用期限に留意するなど、メリットを享受するためのタイムラインについてもきちんと理解しておく必要があります。

基盤確立事業実施計画については、農林水産省の「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業実施計画の作成等の手引き」に詳しい記載がなされています。
また、この記事で引用した農林水産省のウェブサイトにはひな型や資料などが豊富に掲載されています。

申請窓口となる農林水産省・地方農政局等への事前相談のほか、分からない点は専門家に相談するなどして、抜け漏れの無い適切な手続きを履践し、本来得られるメリット・支援措置を確実に受けられるようにすることが肝要です。