社外取締役とは?
役割・設置すべき会社・設置のメリット・
人選基準・選任手続きなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

社外取締役」とは、創業経営者や従業員から登用した取締役などではなく、会社の外部から招いた取締役です。委員会設置会社および上場会社では、社外取締役の設置が義務付けられています。

社外取締役を選任すると、既存の経営陣が持たない知見や経験をプラスすることで、経営の幅を広げられます。また、経営陣の相互監視によるコーポレートガバナンスの強化や、スキルマトリックスの改善による対外的な評価の向上の観点からも、社外取締役の選任は非常に効果的です。

社外取締役の就任候補者は、既存の経営陣からの独立性や経験・スキルの内容、経営に関する経験の程度などを考慮して選びましょう。また、兼職が多すぎると十分に職責を果たせない可能性があるので、他社の取締役などの兼職状況も確認すべきです。

この記事では社外取締役について、役割・設置すべき会社・設置のメリット・人選基準・選任手続きなどを解説します。

ヒー

社外取締役がどのような仕事をしているのかよく分かりません。社内取締役の仕事は異なるのでしょうか。

ムートン

職務内容は同じです。ただ、社外取締役には、社内取締役とは異なる視点からの客観的なアドバイスを行うことが期待されます。この記事で勉強しましょう。

※この記事は、2023年9月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

社外取締役とは

社外取締役」とは、会社の外部から招いた取締役です。創業経営者や従業員から登用した取締役(=社内取締役)に対して、社外取締役は異なるバックグラウンドやスキルを活かした活躍が期待されています。

社外取締役と社内取締役の違い

社外取締役は会社の外部から招いた取締役であるのに対して、社内取締役は、創業経営者や従業員から登用した者など、就任以前から会社と緊密な関係があった取締役です。

会社の経営の中枢は社内取締役が担うケースが多い一方で、社外取締役には経営の監視やアドバイザー的な役割が期待されています

社外取締役に求められる役割

経済産業省が公表している「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」では、社外取締役の心得として以下の5点を挙げています。これらの心得は、そのまま社外取締役の役割と捉えることができます。

① 社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である
社長・CEOなど経営を担う経営陣を評価し、それに基づいて指名・再任や報酬の決定を行うことが求められます。必要であれば、社外取締役が社長・CEOの交代を主導することも期待されます。

② 社内のしがらみにとらわれない立場で、中長期的で幅広い多様な視点から、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考える
社内取締役とは異なり、会社内部の人間関係から離れた立場にあることを活かして、社内取締役にはない視点から経営のアイデアを出すことが求められます。

③ 業務執行から独立した立場から、経営陣に対して遠慮せず発言・行動する
社内の人が言いにくいことも、あえて空気を読まずに忖度なく発言・行動することが求められます。

④ 経営陣と適度な緊張感・距離感を保ちつつ、コミュニケーションを図って信頼関係を築く
経営の監督を実効的に行うため、社長・CEOなどの経営陣の話をよく聞いて、反論にも耳を傾けながら対話して信頼関係を築くことが求められます。

⑤ 会社と経営陣・支配株主等との利益相反を監督する
利益相反が生じ得る場面では、社外取締役が独立的な立場を活かして、その妥当性の判断へ積極的に関与することが求められます。

総じて社外取締役には、社内のしがらみから独立した立場を活かして、経営陣(社内取締役)にはできない活動や判断をすることが期待されています

社外取締役を設置すべき会社

社外取締役を設置すべきなのは、以下のいずれかに該当する会社です。

① 委員会設置会社
② 上場会社・上場を目指す会社
コーポレートガバナンスの強化を目指す会社

委員会設置会社|設置義務あり

委員会設置会社とは、経営機能と監督機能が分離した会社の組織形態です。一般的な会社では、取締役会が経営と監督の両方を担うのに対して、委員会設置会社では、経営と監督を異なる機関が担います

会社法では、「監査等委員会設置会社」と「指名委員会等設置会社」の2種類が認められており、いずれも社外取締役の設置が義務付けられています

① 監査等委員会設置会社
取締役会が経営を行う一方で、取締役で構成される監査等委員会が経営の監督を行う組織形態です。
監査等委員である取締役は3人以上で、その過半数は社外取締役でなければなりません(会社法331条6項)。

② 指名委員会等設置会社
取締役会を監督機能に特化し、経営は執行役に行わせる組織形態です。取締役を委員として、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3委員会が設置されます。
各委員会の委員は3人以上で、その過半数は社外取締役でなければなりません(会社法400条3項)。

委員会設置会社の社外取締役が満たすべき要件

委員会設置会社の社外取締役は、以下の要件をすべて満たす必要があります(会社法2条15号)。

① 現在および過去の一定期間において、当該会社または子会社の業務執行取締役等でないこと
親会社等またはその役員もしくは使用人でないこと
親会社等が経営を支配している別の会社(いわゆる「兄弟会社」)の業務執行取締役等でないこと
④ 経営陣や重要な使用人などの配偶者または二親等内の親族でないこと

上場会社・上場を目指す会社|設置義務あり

監査役会設置会社かつ大会社である上場会社(公開会社)には、社外取締役の設置が義務付けられています(会社法327条の2)。

また、各証券取引所の上場規則では、すべての上場会社に対して社外取締役の設置を求めています(例えば、東京証券取引所の有価証券上場規程436条の2、437条の2)。したがって、上場会社またはこれから上場を目指す会社は、社外取締役の設置が必要です

上場会社の社外取締役が満たすべき要件

上場会社の社外取締役についても、委員会設置会社と同様に、会社法2条15号の要件を満たす必要があります。

さらに、各証券取引所の上場規則によって、独立役員の確保が求められています。

例えば、東京証券取引所の上場内国会社は、1名以上の独立役員を確保しなければなりません(有価証券上場規程436条の2第1項)。社外取締役を独立役員とする場合は、一般株主と利益相反が生じるおそれのない者であることが必要です。

コーポレートガバナンスの強化を目指す会社

社外取締役は、会社経営に対する監督を行いやすい立場にあるため、その設置はコーポレートガバナンス強化の観点から効果的です。

会社法または上場規則によって社外取締役の設置が義務付けられていない会社でも、コーポレートガバナンスの強化を目指す場合は、社外取締役を設置することが望ましいでしょう。

コーポレートガバナンス・コードによる独立社外取締役の設置状況

東京証券取引所の上場会社に適用される「コーポレートガバナンス・コード」では、2021年のコード改定以降、プライム市場上場会社においては少なくとも3分の1以上、スタンダード市場上場会社については少なくとも2名以上の独立社外取締役を選任することを求めています。

実際にプライム市場(2021年以前は東証第一部)の上場会社では、2021年時点で独立社外取締役を3分の1以上選任していた割合が72.8%だったのに対して、2022年時点では92.1%に上昇しています。

コーポレートガバナンス・コードに沿った社外取締役の設置は、上場会社の間で広く浸透している状況が窺えます。

社外取締役を設置するメリット

社外取締役を設置することには、主に以下のメリットがあると考えられます。

① 経営陣の知見や経験を広げられる
② 既存経営陣に対する監視|コーポレートガバナンスの強化に繋がる
③ スキルマトリックスの改善|対外的な評価につながる

経営陣の知見や経験を広げられる

社外取締役の役割は、創業経営者や従業員から登用した取締役とは異なる経験を生かして活動することです。

既存の取締役にはない知見・経験を持つ社外取締役を招聘することで、経営に関する視野が広がり、時流に合った柔軟な経営が可能となります。

既存経営陣に対する監視|コーポレートガバナンスの強化に繋がる

社外取締役には、社内の人間関係などに縛られず、既存の経営陣に対して忖度なく意見を言うことが期待されます。

その結果、経営を担う取締役と社外取締役の間に緊張関係が生まれ、不適切な業務執行がしにくくなることにより、コーポレートガバナンスの強化につながります。

スキルマトリックスの改善|対外的な評価につながる

東京証券取引所の上場会社に適用される「コーポレートガバナンス・コード」では、各取締役のスキルを一覧化したスキルマトリックスなどの開示が求められています。

社内取締役だけではスキルが偏りがちですが、異なるバックグラウンドを持つ社外取締役を招聘すれば、取締役の有するスキルが多様化し、対外的な評価の上昇につながる可能性があります。

社外取締役の選任方法・人選基準とは

社外取締役の候補者を選ぶ際には、以下の観点に着眼するのがよいでしょう。

① 既存の経営陣からの独立性
② 既存の経営陣が持っていない経験・スキル
③ 経営に関する経験
④ 他社の取締役等の兼任状況

既存の経営陣からの独立性

最も重要な役割である経営監視を実効的に行うため、社外取締役は既存の経営陣から独立していることが必要不可欠です。

創業経営者と昔から付き合いがある人などは避け、既存の経営陣に対して忖度なく意見を言えると思われる立場の人を候補者に選びましょう。

既存の経営陣が持っていない経験・スキル

取締役のスキルを多様化するという観点からは、既存の経営陣が持っていない経験やスキルを持つ人を社外取締役に選任することが望ましいです。

取締役のスキルを一覧化した上で、足りないポイントをピックアップし、それを補える人材を社外取締役の候補者に選びましょう。

経営に関する経験

社外取締役が経営監視を実効的に行うためには、自らも経営に関する経験を有することが望ましいです。過去の実績を確認した上で、経営者としても有能と思われる人材を候補者に選ぶのがよいでしょう。

ただし、経営に関する経験がなかったとしても、他のスキルが会社にとって必要と判断すれば、社外取締役として招聘することは十分に考えられます。

他社の取締役等の兼任状況

あまりにも多くの会社で役員を兼任している人は、社外取締役として招聘しても、十分な時間を割いて適切に職務を行うことは期待できません。

社外取締役の候補者を選定する際には、他社の取締役等の兼任状況についても調査を行い、兼任が多すぎる人は避けた方が無難でしょう。

社外取締役を選任する際の手続き

社外取締役を選任は、以下の手続きに従って行います。

① 候補者との任期・報酬などの下交渉・合意
株主総会決議
③ 取締役就任の登記申請

候補者との任期・報酬などの下交渉・合意

まずは候補者との間で、社外取締役としての任期や報酬などについて下交渉を行います。

条件面での合意が調ったら、締結予定の委任契約書についても確認してもらい、株主総会決議の後すぐに就任できるように準備を進めましょう。

株主総会決議

社外取締役の選任に当たっては、通常の取締役と同様に、株主総会の普通決議が必要となります。定時株主総会において決議することもできますが、臨時株主総会を開催するケースの方が多いです。

普通決議は、原則として行使可能議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって成立します。ただし、定足数については定款で排除可能です(会社法309条1項)。

取締役就任の登記申請

取締役の氏名は、株式会社の登記事項とされています(会社法911条3項13号)。

社外取締役が新たに就任した際には、就任日から2週間以内に、会社の本店所在地の法務局または地方法務局において変更登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)。

この記事のまとめ

社外取締役の設置は、経営陣の知見や経験の幅を広げること、コーポレートガバナンスの強化、スキルマトリックスの改善による対外的な評価向上などの観点から有用です。

委員会設置会社および上場会社では、法令または上場規則によって社外取締役の設置が義務付けられます。また、社外取締役の設置が必須ではない会社でも、今後会社の拡大を目指す場合には、早い段階で社外取締役の設置を検討するとよいでしょう。

生え抜きの取締役にはないスキルを持ち、客観的な視点から忌憚のない意見を述べてくれる人こそ、社外取締役に適任です。自社の事業内容や経営陣の陣容を分析した上で、外部の経営者や資格専門職などから社外取締役の適任者を探しましょう。

ムートン

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