製造物責任法(PL法)とは?
事例を含めて分かりやすく解説!

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弁護士法人大江橋法律事務所弁護士
2010年慶應義塾大学法学部卒業、2012年慶應義塾大学法科大学院修了。2014年裁判官任官。 2021年依願退官し、弁護士登録(第一東京弁護士会)。 訴訟・紛争解決、一般企業法務を中心として、倒産、保険等や、一般民事・家事事件を含め幅広い分野を取り扱う。
この記事のまとめ

製造物責任法(PL法)とは、製造物の欠陥によって、生命、身体または財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを定めた法律です。

製造物責任法の目的は、製造業者等に対し「製造物責任」を負わせ、これにより迅速かつ適切な被害者救済を図ることにあります。

この記事では、製造物責任法について、事例を含めて分かりやすく解説します。

PL法の「PL」って何ですか?

Product:製造物」と、「Liability:(責任)」の頭文字をとった略称ですよ。

※この記事は、2022年12月19日時点の法令等に基づいて作成されています。

目次

製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法(PL法)とは、製造物の欠陥によって、生命身体または財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを定めた法律です。

製造業者等とは

製造業者等とは、「製造物責任を負う対象となる者」として、製造物責任法2条3項1号~3号で定められた者です。

※詳細は、「製造物責任を負う対象となる者とは」で解説します。

製造物責任法は、製造業者等に対して製造物責任(製造物の欠陥により生じた損害を賠償する責任)」を課した法律といえます。

製造物責任法の目的

製造物責任法は、

製造業者等に対し製造物責任を負わせ、これにより迅速かつ適切な被害者救済を図ること

を直接の目的としています(製造物責任法3条)。そしてこの被害者救済によって、消費生活の安定向上および市場経済の健全な発展が図られることが期待されています(同法1条)。

製造物責任法ができる前は、消費者が購入した商品に欠陥があり、それによって損害が生じた場合、消費者は、購入先の小売店・製造業者等に対して、以下の措置をとることが可能でしたが、それぞれ課題がありました。

購入先の小売店に対して

以下の規定などに基づき、損害賠償請求をする
売買契約上の債務不履行責任(=契約上の義務を果たさなかったときに負う責任。民法415条)
瑕疵担保責任(=欠陥品を売ったときに負う責任。平成29年法律第44号による改正前の民法570条)

【課題】
必ずしも債務不履行の事実が認められるものではないこと、瑕疵担保責任による損害賠償の範囲が限定されていること等から、小売店への責任追及では十分に消費者の被害回復が図られなかった

製造業者等に対して

不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をする
※被害者は、その商品を製造した製造業者等との間では直接の契約関係にないため、製造業者等に対しては契約責任の追及をすることができず、不法行為に基づく損害賠償請求によることになる

【課題】
不法行為に基づく損害賠償請求をする場合、過失の主張立証責任は消費者側にあるが、製造過程を把握することができず、また技術的な知見に乏しい消費者側にとって、それらを主張立証するハードルが高く、製造業者への責任追及は困難な場合が多かった

こうした状況を踏まえ、製造物責任法を制定し、製造業者等に無過失責任を負わせる(=過失の有無にかかわらず責任を負わなければならなくなった)ことで、消費者側における過失の主張立証の困難さを回避し、迅速かつ適切に消費者救済を図ることができるようにしました。

また、被害者の保護を厚くすることによって、

・製造業者等がより安全な製品の供給を目指すようになること
・製造業者等の企業側と消費者側の、製品安全に関する意識が向上すること

で、消費生活の安定向上および市場経済の健全な発展が図られることも期待されています。

民法との関係性

製造物責任法は、民法の不法行為責任の特則に位置付けられます。

特則って何ですか?

ある規定に関する特別なルールのことです。今回でいえば、製造物責任法は、民法の不法行為責任を拡充するために定められた法律ということですね。

そのため、製造物責任法に規定のない事項については、民法の規定が適用されます(製造物責任法6条)。

なお、製造物責任法があったとしても、製造業者等が民法上の責任を負わなくなるものではありません。民法上の不法行為責任・債務不履行責任等の要件を満たす場合には、被害者は、それぞれの責任を追及することができます。

製造物責任法が適用された事例

ここでは、製造物責任法に基づく損害賠償責任が認められた裁判例をいくつか紹介します。

①ノートパソコンのバッテリー発火に起因して火災が生じた事例(東京地判平成31年3月19日)

ノートパソコンを使用していた原告が、当該ノートパソコン搭載のバッテリーパックが発火し、それに起因して発生した火災により損害を被ったと主張して、ノートパソコンの製造業者に対し、製造物責任に基づく損害賠償金の支払いを求めた事案です。

裁判所は、

・ノートパソコンのバッテリーパックが発火して火災が生じたこと
・適正な使用方法で使用していたこと
・ノートパソコン自体の欠陥以外に発火原因となるべき事情が見当たらないこと

などを指摘して、ノートパソコンに欠陥があることを認め、ノートパソコンの製造業者に対して損害賠償を命じました。

②石けんの使用によりアレルギーを生じた事例(福岡高判令和2年6月25日(原審:福岡地判平成30年7月18日))

石けんの使用によってアレルギー症状を発症したとして、これらの被害を生じた原告らが、石けんの販売業者、製造業者およびアレルギー成分を含む原材料の製造業者に対し、製造物責任に基づく損害賠償金の支払いを求めた事案です。

裁判所は、石けんの使用によりアレルギーを発症する頻度は高いとはいえないとする一方で、

・石けんの包装等に記載された注意表示では、アレルギーの発症・増悪を防止することを期待できないものであったこと
・アレルギーの原因となる原材料を配合しない設計も可能であったこと

等の事情を指摘して、本件石けんの欠陥を認め、本件石けんの製造業者、販売業者に対して損害賠償を命じました。

また、アレルギーの原因となる原材料については、

・石けんの原材料として使用された場合にアレルギー被害を引き起こす危険性を備えたものであること
・そのような危険性について的確な指示、警告が付されていなかったこと

等の事情から、原材料の欠陥も認め、原材料の製造業者に対しても損害賠償を命じました。

なお、東京、大阪等全国の裁判所でも同種の訴訟が提起され、石けんの販売業者らの責任が認められています。

③手術における医療機器の使用により患者が死亡した事案(東京地判平成15年3月20日)

病院で手術を受けた患者が、その手術に使用された医療機器の欠陥により死亡したとして、患者の遺族が、医療機器の製造業者に対して損害賠償を求めた事案です。

当該医療機器には他社製の補助用具が用いられることもあるところ、他社製品が使用される場合の危険性についての指示・警告等の措置が不十分であったとして、当該医療機器の欠陥を認め、医療機器の製造業者に対して損害賠償を命じました。

以上、3つの裁判例を紹介しましたが、このうち消費者が購入した商品の欠陥を原因として消費者に損害が生じた場合(①、②)に、その商品の製造業者に製造物責任が認められることは、一般的にも想起しやすい類型といえるでしょう。

それ以外にも、製造物責任法の下では、②の裁判例のように原材料の製造業者も製造物責任を負うことがあります。また、③の裁判例のように、消費者が購入し使用したものでない製品の欠陥により消費者が被害を受けた場合にも、製造業者が製造物責任を負うことがあります。

つまり、消費者に直接商品を販売する企業でなくても、製造物責任が生じることがあり、製造物責任法が適用される場面は広いといえます。

製造物責任を負う対象となる者とは

製造物責任法によって賠償責任を負う対象となる者は、次の4つです(製造物責任法2条3項1号~3号)。

① 「製造物を業として製造、加工又は輸入した者」
② 「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者」
③ 「当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」
④ 「当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」

※製造物責任法は、①~④をまとめて、「製造業者等」と定義しています。

以下、それぞれ詳しく解説します。

①製造業者・加工業者・輸入業者(製造物責任法2条3項1号)

責任主体としてまず該当するのが、上記①に該当する以下の者です。

・製造業者
・加工業者
・輸入業者

※以下、まとめて「製造業者」といいます。

製造、加工した者については、「製造物の欠陥を生み出し、流通させた者」として責任を負うべきと考えられています。そのため、実質的に製造に関与していない設計事業者は責任主体に含まれないと考えられます。製造や加工の意味については、「製造又は加工」を参照ください。

輸入業者については、自ら製造物の欠陥を生み出した者ではありませんが、欠陥のある製造物を輸入し国内に危険を持ち込んだといえることや、海外の製造業者に対する責任追及が困難であること等から、製造、加工した者と同様に責任を負うべきとされています。

これらの製造業者については、法人か個人かを問いませんが、製造・加工・輸入を「業として」行う者に限定されています。

「業として」の定義

「業として」とは、ある行為を反復継続して行うことを意味しますが、そのような意図をもって行われたものであれば最初の行為も「業として」の行為に当たるとされています。

また、反復継続する意図をもって行ったものであれば、営利性をもつか否か(有償か無償か)も問いません。したがって、試供品のように無償配布を予定している物の製造業者であっても、製造物責任を負い得ることになります。

②製造業者として表示をした者・③製造業者と誤認させるような表示をした者(製造物責任法2条3項2号)

上記②の「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者」や、③の「当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」については、自ら製造等をしている者ではありませんが、製造業者として表示をすることなどによって、製造業者としての信頼を与えているといえます。


そこで、以下の者も責任を負うべきと考えられています。

・製造業者として表示をした者
OEM製品やプライベートブランド品に製造業者としての表示(例:製造元○○/○○謹製/○○作)を付した者を想定。

・製造業者として誤認させるような表示をした者
特に肩書を付さずに自己の氏名・ブランド・ロゴマーク等を製造物に付けている者を想定。誤認させる表示か否かは、被害者等の主観的判断によるものではなく、社会通念に照らして客観的に判断される。

④実質的な製造業者と認めることができる表示をした者(製造物責任法2条3項3号)

上記④の「当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」とは、要約すると、実質的な製造業者と認めることができる表示をした者」のことです。

例えば、「発売元○○」、「販売元○○」、「販売者○○」といった表示をした者が該当します。

販売業者も、製造物責任を負う可能性があるのですね!

そうです。販売業者だとしても、実際は、製造物に関する指示を与えているなど、製造物の製造等に深く関与している場合が少なくありません。そのため、製造物の製造等に深く関与しているといえる表示がある者も責任を負うとしています。

「実質的な製造業者と認めることができる表示」に当たるか否かの判断は、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態、消費者の認識などのさまざまな事情を総合的に考慮して、社会通念に照らして客観的に判断されます。

【製造物責任を負う対象となる者まとめ】

製造物責任が認められる要件

製造業者等に製造物責任が認められる要件は次のとおりです(製造物責任法3条)。

① 「製造物」に該当すること
② 製造業者等が製造物を「引き渡した」こと
③ 製造物に「欠陥」が存在したこと
④ 損害が発生したこと
⑤ 欠陥と損害との間の因果関係があること

上記の要件からわかるように、製造業者等の過失(不注意により発生した損害か否か)は要件とされていません。また、被害者は消費者に限定されておらず、事業者であっても製造業者等に対して製造物責任を追及できます。

上記の要件のうち①~③の詳細について、以下で詳しく説明します。なお、④および⑤は、不法行為に基づく損害賠償責任における議論と同様なので本記事では立ち入った説明は行いません。

製造物責任法における「製造物」とは(要件①)

上記①の「製造物」とは、製造または加工された動産をいいます(製造物責任法2条1項)。

すなわち、「動産」であること「製造または加工された」ものであること、の2つの要素を満たすものが、製造物責任法上の「製造物」になります。

動産とは

製造物責任法上の「製造物」に該当するといえるためには、上記のとおり「動産」である必要があります。動産とは、不動産以外の有体物(形のあるもの)をいいます(民法86条2項、85条)。そのため、

・不動産
・有体物に当たらない電気などの無形エネルギー、ソフトウェアなど

は「製造物」から除外されます。

もっとも、不動産を構成するエレベーター等は、製造業者等から引き渡された時点では動産であったことから、その時点において存在した欠陥によって生じた損害について製造物責任を問われることがあります。

また、ソフトウェアについては、ソフトウェア自体が製造物責任法の対象から除外されるとしても、ソフトウェアが組み込まれた製造物については製造物責任法上の「製造物」に該当する可能性があります。そのため、ソフトウェアの不具合を原因として、それが組み込まれた製造物による事故が生じた場合に、その製造物に欠陥があるとして、製造物責任法に基づく損害賠償責任が認められることがあります。

製造又は加工とは

「製造物」といえるためには、その動産が「製造又は加工された」ものである必要があります。「製造」「加工」の定義は、以下のとおりです。

・製造:原材料に手を加えて新たな物品を作り出すこと
・加工:動産を材料としてこれに工作を加え、その本質は保持させつつ新しい属性を付加し、価値を加えること

製造も加工もされていない自然産物(例:畑で収穫された野菜)は、製造物責任法の対象から除外されます。

「加工」の判断は、個々の事案の下で諸般の事情を考慮して、社会通念に照らして判断されます。例えば食品につき、加熱、味付け、粉挽き、搾汁などは一般に「加工」に当たると考えられますが、単なる切断、冷凍、冷蔵、乾燥などは基本的に「加工」に当たらないと考えられます。したがって、生乳、鶏卵、冷凍肉等は加工されておらず「製造物」に該当しませんが、牛乳、ジュース、ソーセージ等は加工されたものとして「製造物」に該当することになります。

修理、修繕、整備は「製造又は加工」に該当しない

「製造又は加工」に類似する概念として、修理、修繕、整備といわれる行為が「製造又は加工」に該当するかが問題となりますが、修理などは、新たな物品を作り出す行為ではないと考えられるため、基本的には「製造又は加工」には該当しません。

改良、改造は「製造又は加工」に該当する

他方、改良、改造というべき行為の場合には、既存の製造物に新たな属性が加えられていることから、「製造又は加工」に該当すると考えられます。同様に、製造物の設置、組み立てについても、既存の製造物に新たな属性を加えたといえる場合には、「製造又は加工」に該当すると考えられます。

製造業者等が「引き渡したもの」(要件②)

製造物責任の要件として、上記②のとおり、製造物について、製造業者等が「引き渡したもの」である必要があります。

「引き渡した」とは、自らの意思に基づいて製造物を移転させることをいい、有償無償を問いません。

また、引き渡しの相手方も消費者に限定されず、事業者も対象になります。したがって、部品製造業者が最終製品の製造業者に対して部品を引き渡した場合は、その部品は「引き渡したもの」に該当することになります。他方で、製造業者の倉庫から盗み出された製造物については、製造業者が「引き渡したもの」に当たりません。

製造物責任法における「欠陥」とは(要件③)

製造物責任が認められるためには、製造業者が引き渡した製造物について「欠陥」が認められる必要があります(上記③)。民法の不法行為責任では故意または過失が要件とされていますが、製造物責任法では、これらが要件とされていない代わりに、この「欠陥」が要件とされています。

欠陥の定義と類型

製造物責任法上、「欠陥」とは、製造物に関するさまざまな事情を総合的に考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(製造物責任法2条2項)。

欠陥の類型について法律上の規定はありませんが、一般的に、

(1)設計上の欠陥
(2)製造上の欠陥
(3)指示・警告上の欠陥

の3つの類型があると考えられています。

(1)設計上の欠陥とは、設計段階で十分に安全性に配慮がされなかったため、製造物が安全性に欠ける場合をいいます。

(2)製造上の欠陥とは、製造物の製造過程で粗悪な材料が混入したり、組み立てに誤りがあったりすることで、設計・仕様どおりに製造されなかったために安全性を欠いた場合をいいます。

(3)指示・警告上の欠陥とは、製造物に、(有用性等の関係で)除去し得ない危険性が存在する場合に、その危険性について消費者が防止・回避するために適切な情報を与えなかったことによって、製造物が安全性を欠いていると評価される場合をいいます。

これらの分類については、「欠陥がどこにあるのか」を検討するに当たって、論点を整理するのに有用です。例えば、(2)製造上の欠陥であれば設計と実際の製造物との差異を検討することになります。また、(1)設計上の欠陥、(3)指示・警告上の欠陥であれば、どういった設計や指示・警告をすべきであったのかという評価の点を中心にみていくことになります。

欠陥の判断方法

欠陥の判断基準については、

「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物にかかる事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」

という抽象的な定義があるのみで、具体的な判断基準が定められているものではありません。

一般的にいえば、上記定義のとおりのさまざまな事情を総合的に考慮し、その製造物の危険性が社会的に許容できないものかどうかを個別具体的に判断することになります。

欠陥の有無についての判断基準となる時点は、製造業者等が製造物を引き渡した時点となります。すなわち、製造業者等が製造物を引き渡した時点で、その製造物に欠陥が存在していたことが必要になります。

製造物責任の内容とは

製造物責任が認められた場合には、製造業者等は、被害者に対して損害賠償責任を負うことになります(製造物責任法3条本文)。製造物責任法上、被害者は消費者に限定されていませんので、事業者間においても損害賠償責任を負う可能性があります。

損害賠償

製造物責任の内容は、被害者に対する損害賠償責任です。

損害賠償とは

損害賠償とは、違法な行為により他人に損害を生じさせた者が、その損害を受けた者に対し、損害をつぐなうことをいいます。

製造物責任においても同様に、責任を負う製造業者等が、被害者に対し、その被害者に生じた損害をつぐなう責任を負います。

製造物責任法には、「民法との関係性」でも述べたとおり、民法の規定が適用されることから(製造物責任法6条)、損害賠償の方法は金銭賠償が原則となります(民法417条、722条)。また損害賠償の範囲(民法416条類推適用)や損害額の算定方法も、民法上の不法行為の場合と同一に扱われることになります。

なお、損害が製造物自体のみにとどまる場合には、その損害は損害賠償の対象から除外されています(製造物責任法3条ただし書き)。これは、製造物責任法の目的が、製造物の欠陥によって他人の生命・身体・財産に対する損害が生じた場合に損害賠償責任を認めて、それらの保護を図ることにあるためです。

ただし、製造物自体の損害にとどまる場合でも、民法の債務不履行責任、不法行為責任等は追及できます。

免責事由

製造物責任があっても、以下に該当する場合は免責(=製造物責任を問われない)となります(製造物責任法4条各号)。

① 引き渡し時の科学的・技術的知見では、欠陥を認識できなかったこと(開発危険の抗弁
② ある製造物が他の製造物に組み込まれる場合、他の製造物に組み込んだ者の指示に従ったことにより欠陥が生じ、かつその欠陥が生じたことにつき過失がない場合(設計指示の抗弁/部品・原材料製造業者の抗弁

開発危険の抗弁(製造物責任法4条1号)

開発危険とは、製品を流通に置いた時点における科学・技術の水準では、欠陥を発見できない危険をいいます。開発危険についてまで製造業者が責任を負うことになると、技術革新や研究開発が阻害され、国民経済の健全な発展が阻害されるおそれがあることから、開発危険については製造業者の責任が免責されています。

この免責が認められるためには、製造業者等が、製造物の引き渡し時点において、その時点の科学又は技術に関する知見によっては当該製造物に欠陥があることを認識することができなかったこと、について主張立証する必要があります。

ただし、開発危険の抗弁が認められるための要件は非常に厳格であるため、この抗弁によって免責が認められる例は極めて限定されると考えられます。実際に、裁判上、開発危険の抗弁が争われた例はありますが、免責を認めた裁判例は見当たりません(本記事執筆時点)。

部品・原材料製造業者の抗弁/設計指示の抗弁(製造物責任法4条2号)

部品・原材料自体に欠陥がある場合には、部品・原材料の製造業者は製造物責任を負うのが原則です。

しかしながら、その欠陥が、専ら、最終的に製品に組み込んだ製造業者の指示に起因するものであり、欠陥が生じたことにつき過失がない場合には、部品・原材料の製造業者については免責されるものとされています。この抗弁は「設計指示の抗弁」や「部品・原材料製造業者の抗弁」といわれています。

一般的に、部品・原材料の製造業者は、完成品の製造業者から指示を受け、それに従って部品・原材料を製造、納入している関係にあることが多いです。また、納入した部品や原材料が、完成品の製造にどのように使用されているのか十分に把握できないことから、完成品の製造業者と同程度に責任を問うのが困難である場合があります。こうした事情に鑑み、部品・原材料の製造業者に一定の免責を認めたものになります。

消滅時効

製造物責任法に基づく損害賠償請求権は、以下の期間で時効消滅します。

①被害者またはその法定代理人が、損害および賠償義務がある者を知ったときから3年間が経過したとき(製造物責任法5条1項1号)。
②その製造業者が当該製造物を引き渡してから10年を経過したとき(同項2号)。

なお、①について、損害が、人の生命または身体に関する損害(=財産以外の損害)である場合、消滅時効は5年間に伸長されます(製造物責任法5条2項)。

また、②に関し、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害等については、引き渡したときではなく、「その損害が生じたとき」から起算するとされています(製造物責任法5条3項)。

企業が行うべき製造物責任対策|PLラベル・PL保険への加入など

製造物責任法には、製造業者等に対し、一定の内容の注意表示をすることやPL保険への加入など、何らかの具体的な対策を行うべき義務は定められていません。

しかし、

・製造業者等は過失の有無にかかわらず重い責任を負うこと
・製造物の欠陥の発生を完全に防ぐことは極めて困難であること
・消費者に対しての被害は、被害者の人数が多く、また深刻な被害が生じることも往々にあること

等の事情に鑑みると、製造業者等において、積極的に、欠陥の発生防止に努めるとともに、万一製造物の欠陥による事故が生じた場合への備えをしておくことが望ましいと考えられます。

欠陥の発生防止に努める

まずは、欠陥の発生を防止するため、以下のような対策をとることが考えられます。

・製造物に欠陥が生じないように安全性を確保した設計、製造を行う
・既存の安全基準や他社製品の過去の事故例等を参考に、安全性の水準を設定し、それに見合った設計を行う
・部品・原材料の納入時の検品を徹底する
・製造ラインの保守管理等を適切に行う
・完成品の検品を適正に実施する

適切な警告・表示を行う

警告・表示に関しては、消費者が、使用方法を誤ったり、目的外のことに使用したりすることも想定した上で、警告と表示を行うことが重要です。

通常の使用の範囲に限って警告・表示を行うこともあり得るところですが、最初から通常の使用の範囲に限定して検討するのではなく、広く想定し得る事象を検討した上で、必要とされる警告・表示の対象を選択すべきでしょう。

警告・表示に当たっては、取扱説明書に詳細に記載するとともに、PLラベル(警告ラベルなどともいいます)を製造物に貼付・印字するなどして活用することも有用です。

PLラベルとは

PLラベルとは、図やメッセージなどを使用して、使用時に発生し得る危険を警告・喚起するためのラベルです。

PLラベルを活用する際は、効果的な警告・表示となるよう心掛けるべきです。また、製造物の使用年数や使用環境等を踏まえて、その使用が通常想定される期間中に読めなくなることや剝がれることなどがないようにする必要があります。

事前に損害が発生した場合に備える

実際に製造物の欠陥により被害が生じてしまった場合には、その被害の拡大を防止し、被害を最小限に抑えるために、迅速にクレーム対応体制を構築するとともに、リコールの対応を取るといった対策を行うことが重要です。

そのためには、事前に被害対応のための体制を想定して準備しておくとよいでしょう。

製造物責任法に基づく損害賠償責任をカバーするPL保険に加入しておくことも有効な対策といえます。PL保険については、損害賠償責任自体のみならず、リコール費用(製品の回収、修理、交換等に要する費用)をカバーするものであることが望ましいでしょう。

さらに、製造・販売から長期間経過した後に責任追及を受けることも想定されます。そのため、製造を終了した製造物について一定期間保管しておき、事後的な検証ができる状態にしておくことも、責任の有無を検討する上で有用と考えられます。

どのような対策をどの程度実施するのかは、製造物責任が追及され、また実際に責任を負うことになった場合のリスクを踏まえ、個々の製造業者等で判断する必要がありますが、一般的には上記のような対策が考えられます。

この記事のまとめ

製造物責任法の目的、責任主体、責任が認められるための要件、責任の内容、免責事由について概観し、また企業が行うべき対策等についても簡単に説明しました。

製造物責任法に基づく責任は、ひとたび欠陥があると判断された場合に製造業者が負う責任が非常に大きなものになるおそれがありますので、どのような場合に責任が生じるのかという点の理解と、その対策をあらかじめ検討しておくことが有用です。

そうした検討や、実際に製造物による事故が発生してしまった場合の対策等に当たり、この記事が参考になれば幸いです。

製造物責任法の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

消費者庁「製造物責任(PL)法の逐条解説」

消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」

消費者庁「製造物責任(PL)法に基づく訴訟情報の収集」