CSR(企業の社会的責任)とは?
コンプライアンスとの違い・取り組むべき事項・
事例などを簡単に解説!

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この記事のまとめ

CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、企業が社会的存在として果たすべき責任のことです。日本語では「企業の社会的責任」と訳されています。

企業が適切にCSRを果たすことは、信頼向上や人材採用・定着への好影響、法令違反のリスクを低減するなどの観点から非常に重要です。CSRの7つの原則を踏まえた上で、自社が取り組むべきCSR活動を検討しましょう。

今回はCSR(企業の社会的責任)について、取り組みの内容・メリット・注意点などを解説します。

ヒー

わが社もCSRに力を入れていきたいです! でも、そもそもCSRとは何を指しているのでしょう?

ムートン

「CSRを果たす」とはどういうことなのか、サステナビリティやSDGsと何が違うのか、順番に解説していきましょう。

※この記事は、2022年12月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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CSR(企業の社会的責任)とは

CSRとは、企業活動に対して、環境や次世代への配慮などを実践し、利害関係者である顧客・従業員・株主・地域社会などに責任ある行動を取り、説明責任を果たしていくことを求める考え方です。

日本語では「企業の社会的責任」と訳されています。

日本でCSRが普及した背景・理由

日本でCSRの考え方が普及したのは、企業の独善的な行動や不祥事について、社会全体で批判が高まったためです。

例えば1970年代には、オイルショックの際の便乗値上げや買い占め・売り惜しみなどによって生活物資が高騰し、小売企業らに対する批判的なムードが高まりました。また、2000年代には不景気の中で相次いで企業不祥事が問題となり、一般消費者に企業に対する信頼は大きく低下しました。

こうした状況を踏まえて、企業が社会からの信頼を回復・維持するためには、CSRを適切に果たすことが重要であると認識されるに至ったのです。

CSRの7つの原則|国際規格 ISO26000とは

CSRに関しては、国際標準化機構(International Organization for Standardization)によって「ISO26000」が定められています。企業がCSRを果たしていく上では、ISO26000に示されている「7つの原則」を念頭に行動することが求められます。

CSRに関する7つの原則

(1)説明責任
企業活動が社会に対して与える影響につき、十分な説明を行う必要があります。

(2)透明性
経営陣による意思決定や具体的な活動につき、社会に対して透明性を保つ必要があります。

(3)倫理的な行動
企業活動は、公平・誠実などの倫理観に基づいて行うことが求められます。

(4)ステークホルダーの利害の尊重
株主だけでなく、債権者・取引先・消費者・従業員など、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)に配慮して企業活動を行うことが求められます。

(5)法の支配の尊重
自国の法令や、自社に適用される他国の法令を遵守する必要があります。

(6)国際行動規範の尊重
法令のみならず、国際的に通用している規範を尊重することが求められます。

(7)人権の尊重
重要・普遍的である人権を尊重することが求められます。

アメリカにおけるCSRとの違い

アメリカはCSRの先進国として知られており、1990年代の後半ごろから、多くの米国企業でCSRに関する取り組みが見られるようになりました。
2000年代には、企業活動のグローバル化に伴って発展途上国の労働者を多数雇用したことにより、さまざまな社会的問題が発生したことを背景として、アメリカにおけるCSRの法整備はさらに進展しました。

米国企業は日本企業に比べて、全体的に規模(時価総額)が大きいため、CSRに関する取り組みの規模も大きくなる傾向にあります。米国の大企業では、年間数千億単位のCSR関連予算を設けているところも見られます。

米国の株式市場では、CSRに関する投資家の関心が非常に高いのが大きな特徴です。CSRへ積極的に取り組むことは、米国市場における企業価値(株価)への好影響をもたらす可能性が高いと考えられます。

ヨーロッパにおけるCSRとの違い

EUでは、2000年に採択された長期的な経済・社会改革戦略である「リスボン戦略(Lisbon Strategy)」の目標達成に向けて、CSR活動の強化を重要な要素と位置付けました。それ以来、EU圏内の各国においてCSRに関する方針策定などの取り組みが活発化しました。

一般にヨーロッパの政策的取り組みは、EUにおける意思決定に主導されて発生することが多いです。CSRに関する取り組みも、EUの主導により、加盟国の間ではおおむね足並みを揃えて行われています。

これに対して日本では、国際協調の観点を踏まえつつも、基本的には自国における状況に即してCSRに関する方針などが策定されています。

CSRと関連の深い用語の関係性・違い

以下に挙げる用語は、CSRと関連の深いものとして知られています。

・サステナビリティ
・SDGs
・コンプライアンス

各用語とCSRの関係性・違いは、以下のとおりです。

サステナビリティとの関係性・違い

サステナビリティ(sustainability)」とは、将来にわたって現在の社会的機能を維持・継続できること、またはそれを可能にするためのシステムやプロセスを意味します。企業活動の文脈では、「社会に悪影響を与えることなく、健全に企業活動を続けていくこと」と言い換えることができます。

サステナビリティは、企業がCSRを果たすに当たって、意識すべき要素の一つです。その一方で、CSRはサステナビリティよりもさらに広く、社会に対して好ましい働きかけを能動的に行うことも視野に入れています。

SDGsとの関係性・違い

SDGs(Sustainable Development Goals)」とは、国連総会で採択された「持続可能な開発のための17の国際目標(持続可能な開発目標)」のことです。開発が進む中で地球環境を保全し、よりよい世界を目指すための国際目標として、2015年9月に採択されました。

SDGsで示された17の目標は、企業がCSRを果たすに当たり、いずれも意識すべき重要な方向性を示しています。ただし、SDGsはあくまでも普遍的な目標であって、具体的に企業がどのようにCSRを果たしていくかについては、個々の企業の事情に応じて判断しなければなりません。

コンプライアンスとの関係性・違い

コンプライアンス(compliance)」は、法令をはじめとした社会的規範を遵守することを意味します。

コンプライアンスを強化することは、ISO26000で示されたCSRに関する7つの原則すべてに通じるものです。そのため、企業がCSRを果たすに当たっては、コンプライアンスの徹底が重要な要素となります。

ただし、CSRを十全に果たすためには、コンプライアンスを徹底するだけでは不十分です。それに加えて、企業がその能力を活かして、社会に対してどのように貢献できるかを考え、行動することが求められます。

CSVとの関係性・違い

「CSV(creating shared value)」とは、事業活動を通じて社会的な課題を解決し、同時に企業価値を向上させる経営フレームワーク(経営手法)です。「共有価値の創造」などと訳されます。

企業は営利団体である以上、自社の企業価値を高めて株主利益を図ることが第一の目的です。CSR活動についても、社会的課題を解決することによって企業の評判を高め、企業価値の向上に貢献することが理想形となります。

CSVは、CSR活動の理想形を実現し得る経営フレームワークであると言えるでしょう。CSRへの取り組みを単なるコストではなく、企業価値を向上させるための重要な取り組みであると捉えることが、CSVを構築する上での本質的な考え方です。

なお、CSRは企業の「責任」を表すのに対して、CSVは「経営フレームワーク(経営手法)」を表すという違いがあります。

ボランティア活動との関係性・違い

「ボランティア活動」とは、自発的な意思に基づいて他人や社会に無償で貢献する活動をいいます。

企業が行うCSR活動の中には、ボランティア活動に当たるものも含まれます。たとえば従業員が会社の周りを無償で掃除する活動などは、CSR活動であると同時にボランティア活動でもあります。

しかし企業のCSR活動は、ボランティア活動のように無償で行われるものに限りません。たとえば環境問題・社会課題・企業統治について積極的に取り組む企業への「ESG投資」は、リターンを期待する点でボランティア活動に当たりませんが、CSR活動の一環として位置づけることはできるでしょう。

ボランティア活動とCSR活動は、いずれも社会貢献的な取り組みを内容とする点で共通しています。その一方で、ボランティア活動は無償で行われるのに対して、CSR活動は無償・有償を問わず、企業の社会貢献的な取り組みを広く意味する点が大きな違いです。

CSR活動に取り組むメリット

企業が積極的にCSR活動に取り組むことには、主に以下のメリットがあります。

・企業としての信頼向上
・人材採用・従業員定着に関する好影響
・法令違反リスクの低減

企業としての信頼向上

CSR活動に積極的に取り組む企業は、不祥事を起こしにくく、さらに社会にとってプラスの存在であると認識されるようになります。

その結果、取引先や一般消費者からの信頼を集め、さらなる業績向上へとつなげられる可能性があります。

人材採用・従業員定着に関する好影響

CSR活動によって信頼性が高まれば、企業経営の安定にもつながります。その結果、従業員の待遇アップや福利厚生の充実、労働環境の改善などを行う経営上の余裕も生まれてくるでしょう。

その結果、新卒者や転職希望者の間では自社を志望する人が、既存の従業員の間ではずっと働き続けたい人が増え、人材採用や従業員定着の観点から好循環をもたらす可能性があります。

法令違反リスクの低減

CSR活動に取り組むに当たっては、必然的に自社の活動に関するコンプライアンス・チェックを行うことになります。

コンプライアンス・チェックを徹底すれば、法令違反の状態や原因を早期に発見し、是正できる可能性が高まります。その結果、法令違反によって民事・刑事・行政上のペナルティを受けたり、社会的評判が傷ついたりするリスクを減らすことができます。

CSR活動に取り組むデメリット

一方、企業がCSR活動に取り組むことには、以下のデメリットがあることに注意が必要です。

・コストの増加
・人手不足に陥る可能性
・業務効率が悪化する可能性

コストの増加

CSR活動は、短期的な業績アップにつながるとは限りません。その一方で、CSR活動を行うに当たっては、人件費その他のコストが必然的に発生します。

目に見える業績アップがすぐには得られない中で、コストを費やしてCSR活動を行うことは、企業にとって根気を必要とするでしょう。

人手不足に陥る可能性

CSRを意識した企業活動を行うに当たっては、日々の業務の中で追加的な作業が生じ、場合によっては本業との関連性が薄い作業を行わなければならないこともあります。

本業とCSR活動の両方に高い質で対応するには、本来であれば十分な人員を投入しなければなりません。しかし、コストなどの観点からすぐには人員を増強できないとすると、慢性的な人手不足に陥るおそれがあります。

業務効率が悪化する可能性

会社の本業との関係では、CSRを意識して活動するよりも、売上・業績の向上にフォーカスして活動した方が、業務効率自体は向上する可能性が高いです。言い換えれば、CSR活動は多かれ少なかれ、業務効率を犠牲にして行う部分があります。

CSR活動に労力を割くことによる業務効率の悪化は、社会的信頼などの観点から将来に向けた投資と割り切るほかないでしょう。

CSR活動として具体的に取り組むべき事項|事例も含め解説

企業がCSR活動として取り組むべき事項は、会社の状況に合わせて検討する必要があります。以下ではカテゴリーを分けて取り組み例を紹介しますが、自社に合った取り組みの内容を個別にご検討ください。

・組織統治(ガバナンスやコンプライアンスの確保)
・人権
・労働慣行
・環境
・公正な事業慣行
・消費者課題
・コミュニティへの参画およびコミュニティの発展

組織統治(ガバナンスやコンプライアンスの確保)

会社組織として有効な意思決定の仕組みを整え(ガバナンスの確保)、法令などの規範を遵守しながら健全に企業活動を行う体制を整備すること(コンプライアンスの確保)は、CSR活動の土台となる基本的な取り組みです。

組織統治に関する取り組み例

・監査役の選定、監査業務の適切な運営
・社外専門家の活用(弁護士、公認会計士、税理士など)
・各種ステークホルダーとの対話(ダイアログ)

人権

社会的に高度な価値を持つ「人権」を擁護することは、CSR活動における最重要課題の一つです。

人権を守るためには、会社全体として人権擁護の方針を明確化するとともに、各構成員にも人権擁護の意識を浸透させることが大切になります。

人権に関する取り組み例

・差別のない公正な雇用
・従業員に対する人権教育(研修)

労働慣行

個々の会社における労働慣行は、それが積み重なって、社会全体における労働文化を形成しています。長時間労働やハラスメントを避け、従業員にとって働きやすい環境を整えることが、社会全体の労働文化の改善につながります。

労働慣行に関する取り組み例

・職場の安全環境の皆瀬
・ワーク・ライフバランスの推進
・長時間労働の是正
・ハラスメントの撲滅
・適切な職業訓練

環境

環境問題に取り組むことも、代表的なCSR活動の一つです。

企業活動を行う上では、どの企業も何らかの形で環境問題との接点があります。自社のオペレーションにおいてできる限り環境への悪影響を減らす、あるいは積極的に環境保全・回復に取り組むことを意識すべきです。

環境に関する取り組み例

・省エネ、省資源
・CO2削減
・サプライチェーンにおける環境・生物多様性保全活動

公正な事業慣行

他社との関わり合いにおいても、CSRの観点から不当に独善的な行動を取らず、社会に対して責任ある倫理的行動を取る必要があります。

特に、独占禁止法で禁止されている私的独占等や、下請法で禁止されている「下請けいじめ」などについては、CSRの考え方に真っ向から反する行為であるため、厳に避けなければなりません。

公正な事業慣行に関する取り組み例

・従業員に対するコンプライアンス研修
・内部通報相談窓口の設置
・フェアトレード製品の購入

消費者課題

自社製品・サービスの欠陥に起因して消費者に危害が及んだり、自社製品・サービスを利用した消費者による環境破壊等が行われたりしないようにすることも、CSRの一環として重要です。

消費者課題に関する取り組み例

・製品やサービスに関する積極的な情報開示
・消費者とのコミュニケーションの強化
・エコ製品の製造

コミュニティへの参画およびコミュニティの発展

地域住民との対話に基づき、教育・文化の向上や雇用の創出などで、地域コミュニティに対して幅広く貢献することも、CSRの一環として企業に期待される役割です。

コミュニティへの参画・コミュニティの発展に関する取り組み例

・ボランティア活動
・地域住民を対象にした教育活動
・地域におけるスポーツの促進

CSR活動に取り組む上での注意点

企業がCSR活動に取り組むに当たっては、以下の各点に注意しながら業務を行ってください。

・自社が取り組むべきCSR活動を吟味する
・CSR活動のコスト・リターンを分析する
・CSR担当者の業務負担に配慮する|専門部署の設置が望ましい

自社が取り組むべきCSR活動を吟味する

CSR活動への取り組み方には幅広い可能性があるところ、自社の得意分野を活かすことが効果的なCSR活動につながります。

社会におけるニーズと、それを満たすことのできる自社の能力や経験を照らし合わせて、具体的に取り組むべきCSR活動を吟味の上でご選択ください。

CSR活動のコスト・リターンを分析する

CSR活動は慈善事業ではなく、あくまでも、会社が中長期的に利益(リターン)を獲得するために行うものです。

有形・無形のリターンと、CSR活動にかかるコストを分析した上で天秤にかけ、自社に利益をもたらし得る方法でCSR活動に取り組みましょう。

CSR担当者の業務負担に配慮する|専門部署の設置が望ましい

CSR活動を既存の従業員に担当させると、本業を含めて業務状況がひっ迫してしまう可能性があります。

そのため、可能であれば専門部署を設置してCSR活動を担当させ、他の部門においてCSR活動が本業を圧迫しないような仕組みを整えるべきでしょう。

会社内部で専門部署を設置することが難しければ、弁護士公認会計士税理士などの専門家をリストアップし、CSR活動の一部分を担当してもらうなどの対応も考えられます。

この記事のまとめ

CSRの記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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参考文献

外務省ウェブサイト「JAPAN SDGs Action Platform」