電子印鑑とは?
作り方・法的効力・メリット・
デメリット・注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「電子印鑑」とは、電子データ化された印鑑です。電子データとして作成される契約書や請求書などには、通常の印鑑の代わりに電子印鑑が押されることがあります。
電子印鑑を導入すると、押印に関する業務を効率化でき、さらに印鑑の紛失を防止できるメリットがあります。その一方で、取引先によっては電子印鑑が受け入れられないケースもあるので注意が必要です。
電子印鑑はスキャンやフリーソフトの利用などによって簡単に作成できますが、その分偽造されるリスクが高いのが難点です。電子署名を組み込んだ電子印鑑を利用するか、または電子印鑑と電子署名を併せて行うことが望ましいでしょう。
この記事では電子印鑑について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年12月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 電子署名法…電子署名及び認証業務に関する法律
目次
電子印鑑とは
「電子印鑑」とは、電子データ化された印鑑です。
【イメージ】
電子データとして作成される契約書や請求書などには、本人が作成したものであることを証明するため、通常の印鑑の代わりに電子印鑑が押されることがあります。
電子印鑑の法的効力
電子印鑑には原則として、法的効力はありません。
ただし、電子署名法が求める電子署名の要件を満たした電子印鑑の場合は、それが付された電磁的記録(電子データ)が真正に成立したことを推定させる効果があります。
- 電子署名法が求める電子署名の要件
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以下の要件をいずれも満たさなければなりません。
① 本人性(2条1項1号)
電子署名が付される電子情報(例:電子契約)が、電子署名を行った者によって作成されたことを示すものであること② 非改ざん性(2条1項2号)
電子署名が付される電子情報(例:電子契約)について、改変が行われていないかどうか確認できること
上記の要件を満たした電子印鑑である場合に限り、法的効力(=電子データが真正に成立したことを推定させる効果)が認められます。
電子印鑑を押す必要はあるのか?
契約書などの電子データの作成に関して、法律は特にルールを定めていないため、電子印鑑を押すことは必須ではありません。
ただし実務上は、多くの電子契約サービスにおいて、電子署名が付されたことの目印として電子印鑑が活用されています。また、社内稟議などの関係上、取引先から請求書を電子データで受領する際に、電子印鑑の押印を求める会社もあるようです。
電子印鑑と電子署名の関係性・違い
「電子印鑑」は、法令などに定義はありませんが、電子署名は、電子署名法2条1項において以下のとおり定義がなされています。
(定義)
「電子署名及び認証業務に関する法律」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第2条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
⑴ 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
⑵ 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
上記の定義に該当する電子署名は、当該電子署名が行われた電磁的記録(電子データ)が真正に成立したことが推定されます(電子署名法3条)。
電子印鑑が、上記の電子署名の定義に該当する場合は、同様の効果が得られます。しかし、ただ印影をスキャンしただけの画像や、汎用的なフリーソフトを用いて作成された画像などは、電子署名に当たりません。
その一方で、電子印鑑は電子署名に当たる措置と併せて押されることもあります。電子契約サービスの中には、電子署名を行うのと同時に、契約が締結されたことの目印として電子印鑑を自動的に付す仕様になっているものが多いです。
電子印鑑を利用するメリット
電子印鑑を利用することには、主に以下の2つのメリットがあります。
メリット1|押印に関する業務を効率化できる
メリット2|印章の紛失を防止できる
メリット1|押印に関する業務を効率化できる
紙の文書に対して通常の印鑑を逐一押すのは、事務的な手間がかかるのが難点です。例えば印章の保管や貸し出しの手続きなどについて手間がかかります。
紙の文書を電子化した上で、押印についても電子印鑑に移行すれば、印章の保管や貸し出しの手続きなどにかかる手間や時間を削減できます。その結果、押印に関する業務は効率化されるでしょう。
メリット2|印章の紛失を防止できる
通常の印鑑を利用する上で注意しなければならないのが、印章の紛失です。印章を紛失してしまうと、押印の事務が滞ってしまうほか、第三者に印章を悪用されてしまうリスクがあります。
電子印鑑の場合、通常の印鑑とは異なり、印章を物理的に保管する必要がありません。そのため、印章の紛失に伴うリスクを防止できます。
電子印鑑のデメリット
ただし、電子印鑑を利用することには、以下のデメリットがある点に注意が必要です。
デメリット1|取引先によっては受け入れてもらえないことがある
デメリット2|偽造のリスクがある
デメリット1|取引先によっては受け入れてもらえないことがある
電子印鑑は、通常の印鑑に比べて、実務上十分に浸透しているとはいえません。通常の印鑑とは異なり、原則として文書の成立の真正を推定させる効力が認められていないためです。
取引先によっては、電子印鑑を押したPDFファイルなどを受け入れず、紙の文書に通常の印鑑を押印したものを交付するよう求めてくることがあります。その場合は、電子印鑑ではなく通常の印鑑で対応せざるを得ないでしょう。
デメリット2|偽造のリスクがある
電子印鑑の印影画像は、汎用的なデザインであるケースが多いです。そのため、会社とは無関係の第三者が、電子印鑑を偽造する事態も想定しなければなりません。
なお、印鑑登録している会社の実印の印影をスキャンして、電子印鑑として用いている会社がありますが、実印を偽造されるリスクが高いので避けるべきでしょう。
近年では3Dプリンタなどの技術が発展し、立体的な模造品を作成することが容易になっているので、実印の偽造リスクには特に敏感に注意を払うことをおすすめします。
電子印鑑の主な作り方
電子印鑑の作り方としては、主に以下の例が挙げられます。
作り方1|印鑑をスキャンして自作する(無料)
作り方2|印鑑風画像の作成ソフトを利用する(無料)
作り方3|電子契約サービスを利用する(有料)
作り方1|印鑑をスキャンして自作する(無料)
もっとも手軽な方法は、印影の画像をスキャンして電子印鑑を自作することです。
- まずは印章を紙に押し、その紙をスキャンします。
- その後、画像編集ソフトなどを用いて、印影画像の部分だけをトリミングした画像を作成します。
- トリミング画像は、そのまま電子印鑑として用いることができます。
この方法であれば、電子印鑑を無料で作成できます。ただし、本人以外の者でも作成できてしまうので、本人が電子文書などを作成したことに関する証明力はないのが難点です。
作り方2|印鑑風画像の作成ソフトを利用する(無料)
インターネット上には、印鑑風画像を作成できるフリーソフトが公開されています。印字したい文字を入力するだけで、その文字を用いた印鑑風画像をすぐに生成してくれるものが多いです。
このようなフリーソフトを利用すれば、やはり無料で電子印鑑を作成できます。ただし、生成される印鑑風画像は汎用的なものが多いため、それだけでは本人が電子文書などを作成したことに関する証明力はないです。
作り方3|電子契約サービスを利用する(有料)
電子契約サービスには、電子印鑑を押す機能が組み込まれているものが多いです。
電子契約サービスの利用は原則として有料ですが、電子印鑑と併せて電子署名機能が組み込まれているものが多く、電磁的記録(電子データ)が真正に成立したことを推定させる効果(電子署名法3条)が認められる点が大きなメリットです。
電子印鑑を使用するときの留意点
電子印鑑を使用する際には、特に以下の2点に注意しましょう。
①取引先に対して、電子印鑑への対応の可否をあらかじめ確認すべき
②電子印鑑は証拠力が不十分
取引先に対して、電子印鑑への対応の可否をあらかじめ確認すべき
電子印鑑への対応状況は、会社によって異なります。取引先の中には、電子印鑑には全く対応していないところもあるかもしれません。
スムーズに取引を行うためには、請求書などを発行する前の段階で、あらかじめ電子印鑑への対応の可否を確認しておくとよいでしょう。
電子印鑑は証拠力が不十分
電子印鑑を利用するとしても、印影の画像を電子文書に付しただけでは、その電子文書を本人が作成したことを証明するのには不十分です。電子印鑑を押す場合には、電子署名を併用することをおすすめします。
電子署名の法的効力
前述のとおり、電子署名法上の電子署名には、当該電子署名が行われた電磁的記録(電子データ)が真正に成立したことを推定させる効果があります(電子署名法3条)。
例えば、電子契約が当事者によって締結されたかどうかが争われたとします。
電子契約ファイルに当事者の電子署名が付されていれば、その電子契約は真正に成立したものと推定されます。この場合、電子契約が成立していないことを主張する側は、そのことを示すための証拠を提示した上で反証をしなければなりません。反証に失敗すれば、電子契約は成立したものとして取り扱われます。
万が一に備え、電子印鑑だけでなく電子署名を併用することをおすすめします。
契約書に電子署名を付す方法
電子署名法上の電子署名として認められるためには、それが行われる電子文書が改変されていないかどうか確認できるようにする措置を講じる必要があります(電子署名法2条1項2号)。さらに、電子署名を本人だけが行うことのできるように、電子署名に必要な符号や物件を適正に管理することも必要です(同法3条)。
これらの措置や管理の仕組みを、一般の会社が独自に導入するのは非常に大変です。仮に可能だったとしても、システム上の不備などを理由に、電子契約の有効性が争われてしまうリスクが想定されます。
電子契約に電子署名を付す際には、十分なユーザー数を抱えている電子契約サービスを利用するのがよいでしょう。セキュリティや便利な機能が充実しており、サブスクリプション方式で比較的安価に利用できるサービスが多数リリースされています。
電子契約サービスの機能や特徴、利用料金などは、個々のサービスによって異なります。会社として電子署名を導入する際には、実務上必要になりそうな機能や予算などを考慮した上で、自社のニーズに合った電子契約サービスの利用を申し込みましょう。
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