表明保証とは?
目的・対象事項・違反時のペナルティ・保険・
契約書チェック時のポイントなどを
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この記事のまとめ

表明保証」とは、契約において一定の事項を相手方に対して表明・保証することをいいます。M&Aに関する契約などでは、情報共有やリスク分担の明確化を目的として表明保証が行われるのが一般的です。

表明保証では、契約当事者に関する基本的な事項のほか、売買の目的物や財務・会計、事業の状況、反社会的勢力の排除などが定められます。実際に表明保証をする事項は、取引の内容を踏まえつつ当事者間で交渉を行って決めます。

表明保証に違反した場合は、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません。また、重大な表明保証違反は契約解除の対象にもなります。自社が過大な表明保証を行うことは避けつつ、相手方がコントロールすべき事項について懸念がある場合は、相手方に表明保証を求めることが大切です。

この記事では表明保証について、目的・対象事項・違反時のペナルティ・契約書チェック時のポイントなどを解説します。

ヒー

M&Aを担当する部署から「表明保証の必要性やポイントについて説明してほしい」と依頼がありました。

ムートン

表明保証とは何か、どのようなリスクを回避することができるのかといったことから、実務的な対応まで、詳しく解説していきます。

※この記事は、2026年8月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

表明保証とは

表明保証」とは、契約において一定の事項を相手方に対して表明・保証することをいいます。M&Aに関する契約などでは、情報共有リスク分担の明確化を目的として表明保証が行われるのが一般的です。

表明保証の目的

契約における表明保証条項の目的は、当事者間の公平の観点を踏まえてリスク分担を明確化することです。

表明保証をする側は、対象事項が真実・正確でなかった場合に、そのリスクを負うことになります。具体的には、相手方に対して損害賠償責任を負う、相手方に契約を解除されるといったリスクを負います。

表明保証の対象になるのは、主に一方の当事者にしかコントロールできない事項や、調査を尽くしても明らかにならなかった部分がある事項です。
例えば、契約の締結に当たっては適法な契約締結権限を有することが前提となりますが、契約締結権限は各当事者が自らの責任において確保すべきものです。したがって契約当事者は相互に、自らの契約締結権限について表明保証をする例がよく見られます。

M&Aの取引においては、対象会社の状態について詳細に調査する「デューデリジェンス」が行われます。しかし、どんなに詳細にデューデリジェンスを行っても、対象会社に潜むリスクを完全に把握することは困難です。
そこで、売主側が対象会社の状態について表明保証をすることにより、万が一トラブルが顕在化した場合に売主側がそのリスクを引き受ける例がよく見られます。

表明保証が定められることが多い主な契約

表明保証条項が定められることが多い契約の種類としては、次の例が挙げられます。

表明保証条項が定められることが多い契約類型

(a) M&Aに関する契約
対象会社の状態などについて、売主側が詳細な表明保証を行います。

(b) 不動産売買契約
目的物である不動産の状態などについて、売主側が詳細な表明保証を行います。

(c) 融資や出資に関する契約
融資や出資を受ける側が、自らの財務や事業などについて表明保証を行います。

基本的には、売主融資・出資を受ける側が詳細な表明保証を行います。他方で、適法な設立・存続、契約締結権限など、当事者に関する基本的な事項については双方が表明保証をするのが一般的です。

表明保証の対象となる事項の具体例

表明保証の対象となる事項としては、次の例が挙げられます。実際に表明保証をする事項は、取引の内容を踏まえつつ当事者間で交渉を行って決定します。

① 当事者に関する基本的な事項|適法な設立・存続、契約締結権限など
② 売買(譲渡)の目的物に関する事項|権利関係や状態など
③ 財務・会計に関する事項|財務諸表や税務申告の適正性など
④ 事業の状況に関する事項|適法性、主要な取引先や重要な契約の維持など
⑤ 反社会的勢力の排除に関する事項

当事者に関する基本的な事項|適法な設立・存続、契約締結権限など

契約の有効性を確保するため、当事者に関する基本的な事項について表明保証を行います。

例えば、次の事項などが表明保証の対象となります。

・当事者である会社が適法に設立され、有効に存続していること
・当事者が契約の締結、履行のために必要な能力を有していること
・契約を締結するために必要な手続きがすべて完了していること
など

売買(譲渡)の目的物に関する事項|権利関係や状態など

不動産の売買やM&Aなどの取引においては、売買(譲渡)の目的物(対象会社の株式などを含みます。以下同じ)に関する権利関係や状態などの表明保証を行います。

売買(譲渡)の目的物に関する一般的な表明保証事項としては、次の例が挙げられます。

・売主が目的物について適法かつ有効な所有権を有していること
・目的物に第三者の抵当権、質権、差押えその他の担保権・負担が設定されていないこと
・目的物について、第三者との共有関係が存在しないこと
・目的物について第三者から所有権その他の権利を主張されていないこと
・目的物に重大な欠陥や瑕疵が存在しないこと
・目的物について訴訟、紛争その他の法的手続が係属していないこと
など

なお、目的物に関する調査(M&Aのデューデリジェンスなど)において何らかの懸念や問題が生じた際には、その内容を表明保証に反映するのが一般的です。そのため、目的物に関する表明保証の内容は、取引によって個別に検討する必要があります。

財務・会計に関する事項|財務諸表や税務申告の適正性など

M&Aの契約においては、買収の対象会社の財務・会計についても表明保証を行うのが一般的です。

財務・会計に関する表明保証事項としては、次の例が挙げられます。

  • 財務諸表が適用される会計基準に従って適正に作成されていること
  • 財務諸表に重要な虚偽記載や計上漏れがないこと
  • 帳簿その他の会計記録が適切に作成、保存されていること
  • 開示された債務以外に重要な簿外債務が存在しないこと
  • 税務申告書が適正に作成、提出されていること
  • 納付すべき税金を適正に納付していること
  • 税務調査、税務当局との紛争その他の重要な税務上の問題が存在しないこと

事業の状況に関する事項|適法性、主要な取引先や重要な契約の維持など

M&Aの買主にとっては、対象会社の事業が想定どおりに、かつ適正に行われていることが重大な関心事となります。そのため、対象会社の事業の状況についても表明保証を定めましょう

事業の状況に関する表明保証事項としては、次の例が挙げられます。

・事業の運営が関係法令を遵守して行われていること
・事業に必要な許認可等が適法に取得、維持されていること
・主要な取引先との間に重大な紛争が存在しないこと
・主要な取引先との重要な契約が有効に存続していること
・重要な契約について、相手方から解除や変更等の通知を受けていないこと
・重要な契約において、契約違反(債務不履行)が発生していないこと
・重要な従業員との雇用関係が維持されていること
・事業に関する重大な訴訟や行政処分等が存在しないこと
・重要な知的財産権を適法に保有、利用していること
など

反社会的勢力の排除に関する事項

近年の企業間取引では、反社会的勢力の排除が徹底されています。そのため表明保証条項の中で、あるいは別途条項を設けて、反社会的勢力の排除を明記するのが一般的です。

反社会的勢力の排除については、次の事項などが表明保証の対象になります。

・暴力団や暴力団員などに該当しないこと
・暴力団員等によって経営を支配されているなどの状態にないこと
・暴力的な要求行為などをしないこと
など

表明保証に違反した場合のペナルティ|損害賠償・契約の解除

表明保証条項に違反した場合のペナルティは、契約の定めに従います。

一般的には、表明保証した内容が重要な点において真実・正確でなかった場合には、相手方に生じた損害を賠償(補償)しなければならないものと定められます。
また、相手方が重要な表明保証に違反した場合には、契約の解除を認めるのが一般的です。ただし取引が進んだ段階においては、巻き戻しのコストが大きくなることを考慮して、契約の解除までは認めないケースもあります。

表明保証保険とは|違反のリスクに備える

M&Aの契約などについては、各損害保険会社が「表明保証保険」を提供しています。

表明保証保険は、表明保証違反によって生じた損害賠償(補償)の責任をカバーする保険です。表明保証違反によって相手方に対して支払うべき金銭を、限度額まで保険会社が支払います。

表明保証保険に加入しておけば、万が一自社の表明保証違反が判明しても、損害賠償(補償)による経済的損失を最小限に抑えることができます。
また、相手方が表明保証保険に加入していれば、表明保証違反の損害賠償(補償)が回収できないという心配が少なくなります。

ただし、表明保証保険に加入するとしても、取引実行前のデューデリジェンスは通常どおり適切に行うべきです。デューデリジェンスが適切に行われていないと保険会社が判断すると、表明保証保険の保険金が支払われないこともあるので十分注意してください。

契約に表明保証を定める際のポイント|表明保証条項の書き方

契約書に表明保証を定める際には、特に次のポイントに注意しましょう。

① 表明保証の時点を明確にする
② 軽微な表明保証違反は契約解除の対象から除外する
③ 自社が過大な表明保証を行うことは避ける
④ 懸念している事項については、相手方に表明保証を求める

表明保証の時点を明確にする

表明保証条項においては、次の条文例のように、表明保証の時点を明記する必要があります。

(例)
売主は、本契約締結日およびクロージング日において、次に掲げる事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

特に契約締結日と実行日(クロージング日)が異なる場合は、上記の例のように、両時点において表明保証をするのが一般的です。

軽微な表明保証違反は契約解除の対象から除外する

表明保証違反が軽微である場合にも契約の解除を認めると、違反の程度に見合わない過大なコストが発生するなど、かえって不合理な結果を招いてしまうことがあります。

そのため次の条文例のように規定して、軽微な表明保証違反は契約解除の対象から除外するのが一般的です。

(例)
売主の表明保証が真実でなく、または正確でないことが判明したときは、買主は何らの催告を要することなく本契約を解除することができる。ただし、当該表明保証違反が本契約の目的に照らして軽微であるときは、買主は本契約を解除することができない。

自社が過大な表明保証を行うことは避ける

表明保証違反が判明したら損害賠償(補償)や契約解除のリスクを負うことを踏まえると、自社が過大な表明保証を行うことは避けるべきです。特に自社がコントロールできない事項については、表明保証そのものを拒否するか、または表明保証の範囲を限定するよう求めて相手方と交渉しましょう。

表明保証の範囲を限定する方法の一つとして、次の条文例のように、当事者の認識を基準とする旨を明記する方法があります。

(例)
売主の知る限り、本件事業に関して第三者との間に紛争は存在しない。

また、表明保証違反による責任を限定する観点からは、損害賠償(補償)の金額に上限を設けることや、責任の期間制限することなども考えられます。

懸念している事項については、相手方に表明保証を求める

デューデリジェンスなどの過程で生じた懸念や問題点については、そのままにして契約を締結するのではなく、何らかの方法でリスクを管理すべきです。相手方との間で、表明保証によるリスクの負担を求めて交渉しましょう。

例えば企業買収を検討している際、対象会社の簿外債務についての懸念が生じた場合は、簿外債務がないことについて売主に表明保証を求めます。買収実行前に発生した簿外債務は、売主側が責任をもって処理すべきものなので、このような表明保証を求めることは合理的といえるでしょう。

表明保証条項に関する交渉を行う際には、なぜ相手方がリスクを負うべきなのか、あるいは自社がリスクを負う立場にないことなどを説得的に主張することがポイントです。そうすれば、有利な形で取引条件をまとめられる可能性が高まります。

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