与信管理とは?
目的・担当部署・確認すべき事項・フロー・
問題判明時の対処法などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

与信管理」とは、取引先の信用力や支払能力を調査・評価したうえで、融資や売掛金などの与信限度額を設定し、債権が回収不能となるリスクを管理することをいいます。金融機関やカード会社が利用者に対して行うほか、掛け払いで業務を受託する企業なども与信管理を行うことが望ましいです。

与信管理に当たっては、取引先の会社概要と事業内容、財務状況、支払いの実績、信用情報、反社会的勢力との関係の有無などを確認します。これらの事項を総合的に考慮して、取引先にどの程度の信用を置けるかを判断し、与信限度額を設定します。
契約締結前だけでなく、取引中も定期的に与信管理を行うことが重要です。

与信管理を行う中で、取引先に問題があることが判明するケースもあります。まだ契約を締結していなければ、契約締結の中止を検討しましょう。取引中であれば、支払方法の変更や契約の解除を検討するとともに、未払金の回収を試みましょう。

この記事では与信管理について、目的・確認すべき事項・流れ・問題判明時の対処法などを解説します。

ヒー

「与信管理を強化したいから、取引先の与信チェックをして」という指示がありました、何をすればいいのでしょうか?

ムートン

与信管理は取引先の信用力や支払能力を調査・評価することから始まります。手順を説明していきますね。

※この記事は、2026年8月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

与信管理とは

与信管理」とは、取引先の信用力や支払能力を調査・評価したうえで、融資や売掛金などの与信限度額を設定し、債権が回収不能となるリスクを管理することをいいます。

与信」とは取引先に信用を供与すること、簡単に言えば債務の後払いを認めることを意味します。取引先の財務や事業などの状況を踏まえて、与信の範囲を適切にコントロールするのが与信管理です。

与信管理の目的

与信管理の目的は、取引先の倒産などによって債権が回収不能となるリスクを許容範囲内に抑えることです。

与信の例としては、金融機関が行う融資のほか、商品やサービスの代金を後払いにする取引(いわゆる「掛取引」)などが挙げられます。掛取引は、一般企業の間でもよく行われています。
例えば業務委託契約において、受託者が請求書を発行し、委託者が請求月の翌月末日までに代金を支払うとします。この場合、請求から代金の支払いまで1カ月程度のタイムラグ(=与信)が生じます。

取引の相手方から期限どおりに代金などが支払われないと、資金繰りが悪化してしまいます。最終的に相手方が倒産した場合は、債権を回収できなくなって「貸倒れ」の状態となり、損失を被ってしまいます。

貸倒れが相次ぐと急速に資金繰りが悪化し、自社も倒産に追い込まれてしまうことになりかねません。貸倒れのリスクをゼロにすることはできませんが、そのリスクを許容できる範囲内に抑えることが与信管理の目的です。

与信管理を行うべきケース

与信管理は、融資を行う金融機関などにおいて日常的に行われています。

しかしそれだけでなく、受注者側・売り手側として掛取引を行う一般企業も、与信管理に取り組むことが望ましいです。
例えば、他社から継続的に業務を受託する事業者や、他社に対して継続的に物品を販売する事業者などは、与信管理によって貸倒れのリスクをコントロールしましょう。

与信管理の担当部署・部門

銀行などの金融機関においては、利用者や取引先の信用力をチェックする審査部門などが与信管理を担当します。

一般企業においては、経理・財務部門営業部門などが与信管理を担当する例が多く見られます。法務部門や総務部門が関与するケースもあるほか、経営者が直接チェックする企業もあります。
企業の規模や体制などに応じて、適任と思われる部署・部門に与信管理を担当させましょう。

与信管理の際に確認すべき主な事項

取引先の与信管理を行う際には、次の事項などを確認しましょう。

① 会社概要・事業内容
② 財務状況
③ 支払いの実績
④ 信用情報
⑤ 反社会的勢力との関係の有無

会社概要・事業内容

まずは取引先の基本的な情報として、会社概要事業内容を確認しましょう。商業・法人登記の登記事項証明書(履歴事項全部証明書など)や公式ウェブサイト、信用調査会社の情報などを確認し、設立年月日・所在地・代表者・資本金・主要事業・主要取引先などを把握します。

公開情報だけを鵜呑みにするのではなく、実際に取引先と向き合う中で知り得た情報と照らし合わせて、不審な点がないかを検討しましょう。

財務状況

支払能力や倒産リスクの程度を判断するために、取引先の財務状況を確認しましょう。

融資審査においては通常、税務申告書や試算表の記載から財務状況を確認します。
これに対して、一般企業が与信管理を行う際には、取引先に対して税務申告書などの提出を求めるのは一般的でないと思われます。取引先から情報提供を受けられない場合は、信用調査会社の企業情報や公式ウェブサイトに掲載されている情報などから、可能な範囲で確認を行いましょう。

支払いの実績

これまでの取引における支払いの実績も、与信の可否を判断するうえで重要な考慮要素の一つです。

過去に入金が遅れたことがあるか、どの程度遅れたのか、資金不足などを理由に支払条件の変更が行われたことがあるかなどを確認します。これらの事情が認められる場合は、将来的に支払いが滞るリスクの兆候と捉えて、与信限度額を引き下げるなどの対応を検討しましょう。

信用情報

金融機関などの与信審査においては、個人信用情報機関が収集・管理している信用情報が参照されます。例えば支払遅延や倒産などの情報が登録されている場合は、与信審査において大きく不利に働きます。

一般企業は通常、個人信用情報機関のデータベースを閲覧することはできないので、別の方法で与信の可否を検討しましょう。

反社会的勢力との関係の有無

近年の情勢を踏まえると、反社会的勢力と取引を行っていることが明るみになれば、企業としての評判は失墜してしまう可能性が高いです。
そのため、取引先または取引先候補が反社会的勢力に該当する可能性が高い場合は、直ちに取引を中止しなければなりません。与信審査においては、反社会的勢力との関係の有無についても確認を行いましょう。

具体的には、信用調査会社の情報や報道・SNSなどを確認する方法が挙げられます。取引先の会社自体に加えて、役員や主要株主などについても反社チェックを行いましょう。

また、契約書に反社会的勢力の排除に関する表明保証等(=反社条項)を定めて、反社該当の事実が判明したときは直ちに契約を解除できるようにしておきましょう。

与信管理の流れ・フロー

与信管理の一般的な流れ・手順は次のとおりです。

① 情報の収集・分析
② 信用力の評価・与信限度額の決定
③ 契約条件の交渉・契約の締結
④ 取引開始後の与信チェック

情報の収集・分析

まずは、取引先の信用力を判断するために必要な情報収集・分析します。

会社概要・事業内容・財務状況・支払実績などを、公開情報や取引先から提供を受けた資料、自社内に蓄積された情報、信用調査会社の企業情報などから確認しましょう。そのうえで、集めた情報が与信に与える影響を分析します。
できる限り多面的に情報を収集・分析することが、適切な与信管理につながります。

信用力の評価・与信限度額の決定

収集した情報の分析結果に基づいて取引先の信用力を評価し、与信限度額を決定します。

信用の置ける取引先に対しては余裕のある与信限度額を設定する一方で、何らかの問題が懸念される取引先に対しては与信限度額を低く設定するのが基本的な考え方です。

また、特定の取引先に対して大きな額の与信を行うと、その取引先からの支払いが滞った場合に致命的な事態に陥りかねません。例えば、一つの取引先の全体に対する上限割合を定めるなど、与信が偏りすぎないようにすることも大切です。

契約条件の交渉・契約の締結

決定した与信限度額を踏まえて、個々の取引の条件について取引先との間で交渉します。

取引先が提示した契約条件では与信限度額を超えそうな場合は、条件の変更を求めて交渉しましょう。例えば、受注や販売の数量の引き下げや、支払サイクルの前倒しなどを提案することが考えられます。

取引の条件について合意が得られたら、その内容を反映した契約を締結します。合意した条件が適切に反映されているかどうか、締結前に慎重にチェックしましょう。

取引開始後の与信チェック

与信管理は契約締結前だけでなく、取引開始後も継続的に行うことが求められます。

取引先の信用状況が悪化した場合には、与信限度額の見直しを検討すべきです。例えば入金が遅延した場合や、取引先についてネガティブな報道がなされた場合などには、与信限度額の引き下げを検討した方がよいでしょう。

取引先に対する与信チェックは、時期を決めて定期的に行いましょう。さらに、取引先に関する随時情報を収集しながら、必要であれば臨時的に行うことも求められます。

与信管理のために重要な「期限の利益喪失条項」

取引先の信用不安が生じた場合には速やかに債権回収を図ることも、与信管理の一環として重要な取り組みの一つです。それを実現するため、契約に「期限の利益喪失条項」を定めておきましょう。

期限の利益喪失条項とは

期限の利益喪失条項」とは、取引先の信用に悪影響を及ぼす事由などが生じた場合に、期限が到来していない債務の期限を到来させ、債務残高全額の支払いを請求できるようにする条項です。

期限の利益喪失条項を定めておけば、支払遅延が発生したり、取引先の信用に悪影響を及ぼす事由が生じたりした場合には、早い段階で債権回収の対応を始めることができます。

期限の利益喪失条項の記載例

期限の利益喪失条項の記載例を紹介します。

第○条(期限の利益の喪失)
1. 甲は、次に掲げるいずれかの事由が発生したときは、本契約に基づく一切の債務について当然に期限の利益を失い、乙に対して直ちに当該債務を弁済しなければならない。
(1) 甲が支払不能若しくは支払停止の状態に陥ったとき、又は手形若しくは小切手が不渡りとなったとき。
(2) 甲について破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始その他の倒産手続開始の申立てがあったとき。
(3) 甲が解散し、合併、会社分割、株式交換、株式移転若しくは株式交付その他の組織再編を行い、事業を譲渡し若しくは事業を譲り受け、又は組織変更を行ったとき。
(4) 甲が所在不明となったとき。
 
2. 甲は、次に掲げるいずれかの事由が発生したときは、本契約に基づく一切の債務について、乙の請求により期限の利益を失い、乙に対して直ちに当該債務を弁済しなければならない。ただし、前項に定める事由が発生した場合には、前項の規定を適用する。
(1) 甲が乙に対して、本契約に基づく債務を弁済期において支払わずに3営業日が経過したとき。
(2) 甲が本契約に基づく義務に違反したとき。
(3) 甲の財産につき、仮差押え、仮処分、強制執行又は公租公課の滞納処分があったとき。

1項では、債権者の請求がなくとも当然に期限の利益を失う事由(=当然喪失事由)を定めています。
2項では、債権者の請求によって期限の利益を失う事由(=請求喪失事由)を定めています。

与信管理で問題が判明した場合の対処法

与信管理の過程で取引先について問題が判明したときは、次に挙げる対応を検討してください。

① 契約の締結を中止する
② 支払方法の変更を求める
③ 契約を解除する
④ 未払金の回収を試みる

契約の締結を中止する

取引開始前の与信審査において、取引先につき信用上の問題が判明したときは、契約の締結の中止を検討しましょう。

見切り発車や希望的観測によって取引を始めてしまうと、後に深刻なトラブルが発生するリスクがあります。長期的な視点に立ち、契約中止の判断をすることも時には必要です。

支払方法の変更を求める

直ちに取引を終了する必要まではないと思われるものの、取引先の信用力の低下や不足が懸念されるときは、未回収の債権が膨らみすぎないように支払方法の変更を求めましょう。

例えば、後払いから前払いや現金払いに変更する、支払期日を早める、分割払いの回数を少なくするといった変更を求めることが考えられます。支払方法の変更について合意が得られたら、その内容をまとめた契約書や覚書などを締結しましょう。

契約を解除する

取引開始後に、取引先の重大な信用不安が生じたときは、今後の貸倒れリスクを回避するため、早い段階で契約の解除を検討しましょう。

締結済みの契約書を確認し、解除事由や解除通知の方法、期限の利益喪失条項などをチェックします。これらの契約上の条件に従い、解除に向けて必要な対応をとりましょう。

未払金の回収を試みる

支払遅延が発生したときは、速やかに未払金の回収を図りましょう。

まず取引先に連絡して支払いを催促し、必要に応じて内容証明郵便による請求、支払督促、民事訴訟などの手続きを検討します。未払金の額と手続きに要するコストなどのバランスなどを考慮しつつ、適切な方針を立てて債権回収に取り組みましょう。

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