債権回収とは?
迅速な回収のための
手段・注意点・弁護士費用などを解説!

この記事のまとめ

債権回収とは、期限どおりに支払われなかった債権を回収することをいいます。

売掛金や貸付金の債権回収を行うための手続には、内容証明郵便の送付・支払督促・少額訴訟・通常訴訟などがあります。最終的には、裁判所に強制執行を申し立てて債権回収を図ることになります。これらの手続は、弁護士に依頼するとスムーズに進めることが可能です。

消滅時効が完成すると、債権回収ができなくなるので、早めに対応しなければなりません。上記の各手続を講ずることにより、消滅時効の完成を阻止できます。

この記事では、債権回収の手段や注意点、弁護士費用などについて、わかりやすく解説します。

(※この記事は、2021年12月1日時点の法令等に基づいて作成されています。)

債権回収とは

債権回収とは、 期限どおりに支払われなかった債権(債務)を、債権者の側から具体的な行動を起こして回収すること を意味します。

債権回収が必要となる場面の具体例

債権回収が必要となる場面としては、例えば以下のケースが想定されます。

上記以外にも、他人に対して何らかの請求権を持っているにもかかわらず、相手が支払に応じない場合には、債権回収が必要となります。

債権回収を実現するための主な手続

債権回収の手続には、カジュアルなものから裁判所を利用する公的なものまで、さまざまなパターンが存在します。各手続の概要を見ていきましょう。

電話やメールなどによる取立てを行う

電話やメール(あるいはメッセンジャーアプリなど)での取立ては、債権回収の手続の中では、もっとも手軽な部類と言えるでしょう。

相手との信頼関係が完全には損なわれていないケースや、話合いの余地が残っているケースでは、まず電話やメールなどでの取立てを行うのが得策 と考えられます。例えば、貸付金や売掛金の支払が初めて滞り、相手がうっかり忘れているだけの可能性がある場合には、まず電話やメールなどで連絡してみましょう。

内容証明郵便を送付して催告する

債務の支払を再三催促したにもかかわらず、一向に支払が行われない場合には、内容証明郵便を送付して催告(請求)を行うことが次なる手段です。

内容証明郵便は、郵便局が差出人・受取人・差出日時・内容を証明してくれる郵便物です。 信頼性の高い文書であるため、「正式な請求である」というメッセージを債務者に伝えることができます 。さらに後述のとおり、内容証明郵便による催告には、消滅時効の完成を猶予する効果もあります。

裁判所に支払督促を申し立てる

債務者に対する直接の請求で債権を回収できない場合には、法的手続を講ずるほかありません。法的手続の中でも、簡易的に利用できるのが「支払督促」です。

支払督促は、 裁判所から債務者に対して、債務の支払を督促してもらえる制度 です。簡単な書類審査が行われるのみであるため、債権者は煩雑な書類を準備する必要がありません。手数料も、訴訟の半額となっています。

支払督促が債務者に送達されてから2週間が経過すると、「仮執行宣言付支払督促」が発せられて、それ以降は強制執行の申立てが可能となります。

ただし、支払督促については送達から2週間、仮執行宣言付支払督促についても送達から2週間、それぞれ異議申立て期間が設けられています。債務者から適法な異議申立てがあった場合には、支払督促は失効し、自動的に訴訟手続へ移行する点に注意が必要です。

裁判所に訴訟を提起する

支払督促に対して、債務者から異議申立てがなされた場合、訴訟を通じて引き続き請求を行います。また、異議申立てが予想される場合には、支払督促を申し立てずに、当初から訴訟を提起することも可能です。

訴訟において、債権の存在を証拠によって立証し、債権者側の言い分が認められれば、裁判所は債務者に対して支払を命ずる判決を言い渡します 。その後、控訴・上告の手続を経て、判決が確定します。

債権額が60万円以下の場合は「少額訴訟」を利用可能

通常の訴訟の場合、何度も期日が開催されるため、手続が半年~1年以上と長期化しやすいことが難点です。しかし、 請求額が60万円以下の場合には、「少額訴訟」を利用することにより、この難点を解消できます 。

少額訴訟は、原則として1回の審理で判決が行われます。さらに、通常の訴訟で認められている控訴や上告も、少額訴訟では認められません。

したがって、60万円以下の債権を回収する場合には、迅速な解決を目指して、少額訴訟の利用も検討するとよいでしょう。

最終的には強制執行により債権を回収する

債権回収の仕上げは「強制執行」です。強制執行とは、 債務者が所有する財産を差し押さえ、換価・処分などを行うことで、債権の弁済に充当する手続 をいいます。

強制執行を申し立てるには、仮執行宣言付支払督促や確定判決などの「債務名義」が必要となります(民事執行法22条各号)。したがって、強制執行を申し立てるためには、先に支払督促や訴訟の結果を確定させなければなりません。

債権回収時は「消滅時効」に要注意

債権の消滅時効が完成すると、債権回収は失敗に終わってしまう可能性が高いです。そのため、債権回収を行う際には、消滅時効の完成を阻止する必要があります。

債権の消滅時効期間

債権の消滅時効は、以下の期間が経過することによって完成します。

債権の発生時期消滅時効期間
2020年3月31日以前・原則
→権利を行使できる時から10年
・飲食料・宿泊料債権
→権利を行使できる時から1年
・弁護士・公証人の報酬債権、小売商人・卸売商人などの売掛債権
→権利を行使できる時から2年
・医師・助産師の診療報酬債権
→権利を行使できる時から3年
・商行為によって生じた債権
→権利を行使できる時から5年
2020年4月1日以降・権利を行使できることを知った時から5年
・権利を行使できる時から10年
※いずれかが経過した時点で、消滅時効が完成する

債権の発生時期によって期間が異なるのは、2020年4月1日に施行された現行民法により、消滅時効のルールが変更されたためです。

消滅時効が完成するとどうなる?

消滅時効が完成した場合、債務者は消滅時効を「援用」できるようになります(民法145条)。「援用」とは、消滅時効の利益を受ける旨を主張することを意味します。

債務者が消滅時効を援用した場合、債権(債務)は消滅し、債権回収が不可能となってしまうので注意しましょう。

消滅時効の完成を阻止する方法は?

消滅時効の完成を阻止するには、時効の「完成猶予(停止)」又は「更新(中断)」の措置を講ずる必要があります。

時効の「完成猶予」

時効の「完成猶予」とは、 消滅時効期間が経過してもなお、時効完成の効果を生じさせないようにすること をいいます。なお、「完成猶予」は現行民法における用語であり、2020年4月1日の改正民法施行より前は、時効の「停止」と呼ばれていました。

時効の「停止」事由  ※2020年3月31日以前に発生した債権に適用

✅天災など
✅内容証明郵便などによる履行の催告(6か月間のみ)

時効の「完成猶予」事由 ※2020年4月1日以降に発生した債権に適用

✅裁判上の請求
✅支払督促
✅和解
✅調停
✅倒産手続参加
✅強制執行
✅担保権の実行
✅競売
✅財産開示手続
✅第三者からの情報取得手続
✅仮差押え、仮処分
✅内容証明郵便などによる履行の催告(6か月間のみ)
✅協議の合意

時効の「更新」

時効の「更新」とは、 消滅時効期間をリセットし、ゼロからカウントし直すこと を意味します。なお、「更新」は現行民法における用語であり、2020年4月1日の改正民法施行より前は、時効の「中断」と呼ばれていました。

時効の「中断」事由 ※2020年3月31日以前に発生した債権に適用

✅裁判上の請求
✅差押え、仮差押え、仮処分
✅債務の承認

時効の「更新」事由 ※2020年4月1日以降に発生した債権に適用

✅裁判上の請求、支払督促、和解、調停、倒産手続参加をした後、確定判決等によって権利が確定したこと
✅強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続、第三者からの情報取得手続が終了したこと
✅権利の承認(債務の承認と同義)

スムーズに債権回収を進めるためのフロー

債権回収をスムーズに行うためには、情報収集や法的検討を含めて、入念な準備が必要になります。以下の流れ・ポイントを押さえたうえで、状況に応じて臨機応変に対応しましょう。

契約内容・支払履歴・消滅時効などを確認する

まずは、債権の現状を把握することが大切です。

具体的には、契約内容・支払履歴・消滅時効などの状況を確認しましょう。不法行為など、契約が存在しないケースでは、債権が発生する原因となった事実を法的に分析することが必要です。

契約書や入出金履歴などから、これらの状況を正確に把握すれば、債務者に対してどのような請求ができるのかがわかってきます。

チェックするべき主な条項

債権の発生原因となる契約の中では、以下の条項を重点的に確認しておきましょう。

✔期限の利益喪失条項
→債務不履行によって債務者が期限の利益を失い、残債務の一括支払を請求できる旨の条項です。金銭消費貸借契約(ローン契約)において一般的に規定されます。

契約解除条項
→相手方の債務不履行等を理由に、契約を解除できる旨の条項です。継続的な取引に関する契約などに規定されます。

✔保証金(敷金)条項
→相手方から保証金(敷金)の預託を受け、債務が未払となった場合には弁済に充当できる旨の条項です。不動産賃貸借契約などに規定されます。

✔増担保条項
→債務不履行が発生した場合や、相手方の財務状況が悪化した場合などに、担保権の追加設定を請求できる旨の条項です。金銭消費貸借契約などに規定されます。

✔連帯保証条項
→債務不履行が発生した場合に、主債務者(相手方)に代わって連帯保証人が債務を支払う旨の条項です。金銭消費貸借契約・不動産賃貸借契約など、幅広い契約に規定されます。

✔遅延損害金条項
→債務不履行発生後の期間につき、債務元本に加えて遅延損害金の支払いを課す旨の規定です。幅広い契約に規定されます。

✔担保権に関する条項(抵当権・質権・所有権留保など)
→債務不履行時の担保実行手続に関する規定です。競売のほか、任意売却が認められている場合もあります。

✔合意管轄条項
→契約当事者間で紛争が発生した場合に備えて、第一審の管轄裁判所を合意により定める条項です。

債権回収の手続を検討・選択する

債務者に対する請求の内容が固まったら、具体的にどの手続を通じて債権回収を行うかを検討しましょう。

債務者の態度や過去のやり取りなどから、話合いの余地があると思えば、ソフトな対応をとるとよいでしょう。これに対して、債務者に支払う意思が全くないような場合には、最初から訴訟などの強硬な手段を講ずることも有力です。

実際の債権回収手続に取り掛かる

選択する手続が決まったら、実際に債権回収へと取り掛かります。

あくまでも債務全額を支払うように求めることが基本となりますが、債務者から利息や遅延損害金のカットなど、譲歩を求められることも考えられます。もし債務者から譲歩の提案があった場合には、早期解決によるメリットと、回収額が減るデメリットを天秤にかけて、応諾するかどうかを判断しましょう。

分割払いに応じる場合の注意点

一括での支払は厳しいため、債務者が分割払いを提案してくるケースがあります。債権者としては、少しでも債権回収の可能性を高めるため、分割払いに応じるのも一案です。

ただし、分割払いに応じるメリットがあるのかどうか、債務者はきちんと債務を支払える見込みがあるのかどうかといった点は、事前に確認しておく必要があります。具体的には、以下のポイントについて検討を行ったうえで、債務者の分割払いの提案を受け入れるかどうか判断しましょう。

債務者の財産を特定して強制執行を申し立てる

支払督促や訴訟の後、強制執行を申し立てる場合には、対象となる債務者の財産を特定することが必要です。

債務者の財産の例

✅不動産(自宅の土地・建物など)
✅車
✅美術品
✅現金
✅預貯金債権
✅給与債権
✅有価証券(株・投資信託など)
など

あらゆる手がかりを辿って、債務者が上記のような財産を有していないかを調査しましょう。

債務者の財産の特定が難しいときは「第三者からの情報取得手続」

債権者が債務者の財産を自力で突き止めるのは、実際のところかなり困難なケースが多いです。そのようなときに有効な手続として、「第三者からの情報取得手続」(民事執行法204条以下)が用意されています。

第三者からの情報取得手続を申し立てると、 公的機関や金融機関から、債務者が所有する不動産・給与債権・預貯金債権に関する情報提供を受けることができます 。もし債務者財産の特定が難しい場合には、第三者からの情報取得手続の利用を検討しましょう。

債権回収の弁護士費用はどのくらい?

債権回収の各種手続は、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえます。ただし、一定の弁護士費用が掛かるので、コストパフォーマンスも考慮したうえで、依頼するかどうかを決めるとよいでしょう。複数の弁護士に相談して、相見積りを取得することも有効です。

債権回収の弁護士費用の主な項目・金額目安

発生時期支払のタイミング
(例外あり)
金額目安
相談料相談時相談時無料~30分1万円程度
着手金正式依頼時正式依頼時無料~請求額の10%程度
報酬金案件終了時案件終了時回収額の4~20%程度
日当出張時案件終了時出張1日当たり3万円~5万円程度
実費実際の支出時案件終了時実費(訴訟費用・郵便代・印刷代など)

具体的な弁護士費用の金額は、個々の弁護士によって異なるので、法律相談の際に必ず弁護士へ確認しましょう。

債権回収を長期間怠っていると、債務者の側にも「支払わなくていいや」という気持ちが芽生えたり、消滅時効の完成が近づいたりして、後から煩雑な対応を迫られるおそれがあります。そのため、滞納が2か月、3か月と続くようであれば、早い段階で債権回収に取り掛かることをお勧めいたします。

この記事のまとめ

債権回収の記事は以上です。 最新の記事に関する情報は、契約ウォッチの メルマガ で配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

裁判所ウェブサイト「支払督促」

裁判所ウェブサイト「少額訴訟」