【民法改正(2020年4月施行)に対応】遅延損害金とは?契約書のレビューポイントを解説!

この記事のまとめ

改正民法(2020年4月1日施行)に対応した
遅延損害金(遅延利息)条項のレビューポイントを解説!!

遅延損害金(遅延利息)の条項は、金銭の支払いが発生する契約書に多くみられる重要な定めです。 この条項に関連する主な改正点は、

法定利率が引き下げられて変動制が導入されたこと

です。 改正点を分かりやすく解説したうえで、 遅延損害金(遅延利息)の条項をレビューするときに、どのようなポイントに気を付けたらよいのかを解説します。

この記事では、遅延損害金(遅延利息)の基本的な事項と改正点も解説しています。レビューで見直すべきポイントのみ確認したい方は、 遅延損害金(遅延利息)条項のレビューで見直すべきポイント からお読みください。

※この記事は、2020年6月1日時点の法令等に基づいて作成されています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・民法…2020年4月施行後の民法(明治29年法律第89号)
・旧民法…2020年4月施行前の民法(明治29年法律第89号)

先生、とうとう民法が改正されましたね。今までどおり遅延損害金の条項をレビューして大丈夫でしょうか?

法定利率が引き下げられ、その後も変動します。今後も、契約でしっかり定めておくことが重要になります。

遅延損害金の定めは、一般的に、売買契約金銭消費貸借契約・賃貸借契約など金銭の支払いが発生する取引の契約書に定められます。

遅延損害金(遅延利息)とは?

遅延損害金(遅延利息)とは、金銭債務について、債務者が履行を遅滞したときに、損害を賠償するために支払われる金銭をいいます。遅延損害金は、通常、金銭債務の額に対して、一定の料率に基づいて、遅滞した期間に比例する方法で計算されます。

たとえば、売買契約において、次のような条件で、買主が代金の支払債務を負っていたとします。

  • 売買代金……10万円
  • 弁済期……2021年3月31日
  • 遅延損害金の料率……年3%

ところが、買主は、弁済期から1年間遅滞してしまい、翌年2022年3月31日に代金を支払うことになりました。
このとき、買主は、代金を支払うのみでは足りず、1年間遅滞した分だけ損害を賠償しなければなりません。
このケースの場合は、
売買代金10万円
に加えて、
遅延損害金として3000円
を支払うことになります。

遅延損害金における法定利率と約定利率とは?

遅延損害金の利率には、「法定利率」と「約定利率」があります。 上記のケースのように、当事者間で合意した利率を「約定利率」といいます。 当事者間の合意で、遅延損害金の利率を定めなかった場合は、民法などの法令に定められた「法定利率」に従って計算します。 すなわち、約定利率が定められている場合、法定利率よりも約定利率が優先して適用されます(民法419条1項ただし書)。

  • 法定利率…法律に定められている利率
  • 約定利率…当事者間の合意によって定める利率(※法定利率よりも優先して適用される)

民法(2020年4月施行)の法定利率は、年3%とされ、3年ごとに見直されます(変動金利制)。 約定利率を定めなかったときは、利息が生じた最初の時点における法定利率が、その債権の利息となります。

法定利率は、今回の民法改正で変更となった点です。以下、詳しく解説します。

遅延損害金に関する主要改正ポイント

遅延損害金に関する主な改正ポイントは、1つです。

改正ポイント(1つ)

ポイント1: 法定利率が引き下げられる

ポイント1 法定利率が引き下げられる

法定利率は、改正前の民法では、一般の取引に適用される民事法定利率(年5%)と、 商行為で生じた債務に適用される商事法定利率(年6%)となっていました。

改正前の法定利率

民事法定利率……年5%(旧民法404条)

商事法定利率……年6%(旧商法514条)

しかし、この利率は、明治期に民法・商法が制定されてから見直されておらず、現在は、市中金利を大きく上回っています。 そこで、市中金利と大きく乖離することを防ぐため、法定利率を固定しないことにしました。 代わりに、法定利率が、合理的に変動するような仕組みを定めました。

すなわち、改正では、商事法定利率が廃止されて一律3%となり、その後、3年ごとに日銀が公表する短期貸付金利の過去5年間の平均が1%以上変動すれば1%刻みで変動します(民法404条)。

改正後の法定利率

施行時…年3%(404条2項)

施行後、3年ごとに法定利率を1%単位で見直す(404条3項)

商事法定利率を廃止

(=商行為によって生じた債務についても、民事法定利率を適用)

遅延損害金(遅延利息)条項のレビューで見直すべきポイント

具体的な利率を定めなければ、法定利率3%が適用されますが、その後の市況によって変動する可能性があります(民法404条)。 そのため、このように具体的な利率を記載するとよいでしょう。

記載例

(遅延損害金)
本契約の当事者が本契約に基づき相手方に対して負担する金銭債務の弁済を遅延したときは、弁済期の翌日から支払い済みに至るまで、年3%の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

具体的な利率はどのように決めるのがよいでしょうか?

たとえば、現在の法定利率を固定化するために、年3%と定めることが考えられますね。 あるいは、債権者の立場からは、もっと高い利率(旧商法の年6%や消費者契約法の年14.6%) を定めることも多いですよ。

まとめ

民法改正(2020年4月1日施行)に対応した遅延損害金(遅延利息)のレビューポイントは以上です。 実際の業務でお役立ていただけると嬉しいです。

改正点について、解説つきの新旧対照表もご用意しました。

ぜひ、業務のお供に!ご活用いただけると嬉しいです!

〈サンプル〉

参考文献

法務省『民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

筒井健夫・松村秀樹編著『【一問一答】一問一答・民法(債権関係)改正』商事法務、2019