開業届とは?
個人事業主のメリット・様式・記載事項・
必要なものなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

開業届」とは、個人事業主が事業を始めた際に税務署へ提出する書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。

開業届の提出は、所得税法によって義務付けられています。
提出しなくてもペナルティはありませんが、所得税の青色申告ができる、屋号名義の銀行口座を開設できる、住宅ローン審査の際に提出できるなどのメリットがあるため、開業後速やかに提出しましょう。開業届の様式は、国税庁のウェブサイトにて公表されています。

開業届と併せて、青色申告を行う場合は「所得税の青色申告承認申請書」、給与を支払う場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」をそれぞれ税務署に提出しましょう。
また、納税地の都道府県税事務所には「事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)」を提出する必要があります。

この記事では開業届について、提出すべき場合・提出のメリット・様式・記載事項・併せて提出する書類などを解説します。

ヒー

フリーランスの方と業務委託契約を締結する際に「開業届の提出って必要ですか?」と聞かれました。よく分かりません…。

ムートン

個人事業主が事業を始めた際には、開業届の提出が義務付けられています。提出しなくてもペナルティはないですが、メリットも多いですよ。詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2024年1月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

開業届とは

開業届」とは、個人事業主が事業を始めた際に税務署へ提出する書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。

個人事業主は開業届を提出すべき?

開業届の提出は、所得税法によって義務付けられています。日本国内において新たに不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を開始し、または当該事業に係る事務所・事業所その他これらに準ずるものを設けた者は、税務署長に開業届を提出しなければなりません(所得税法229条)。

個人事業は、通常は事業所得を生ずべき事業に当たるため、開業届の提出義務の対象です。個人事業を開始したら、速やかに開業届を提出しましょう。

開業届の提出先・提出期限

開業届の提出先は、納税地の税務署長です。提出期限は、開業日から1カ月以内とされています(所得税法229条)。

個人事業主が開業届を提出するメリット

開業届を提出しなくてもペナルティはないため、実際には開業届を提出せずに個人事業を営んでいる方も少なくありません。
しかし、開業届を提出することには実益(メリット)があるので、個人事業を始めたときは開業届を提出しておきましょう。

個人事業主が開業届を提出するメリットとしては、以下の各点が挙げられます。

① 青色申告ができる
② 屋号付き口座を開設できる
③ 住宅ローン審査の際に提出できる

青色申告ができる

確定申告時に青色申告をするためには、税務署長に対して「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります(後述)。個人事業主が所得税の青色申告承認申請書を提出できるのは、開業届を提出している場合のみです。

個人事業主が青色申告をすると、以下のメリットを受けられます。

個人事業主が青色申告をするメリット

① 青色申告特別控除
事業所得または不動産所得から、最大65万円の所得控除を受けることができます。

参考:国税庁ウェブサイト「No.2072 青色申告特別控除」

② 青色事業専従者給与の必要経費算入
配偶者その他の親族に対して、労務の対価として相当な額の給与を支払い、事業所得の必要経費に算入できます。
青色申告をしない場合(白色申告の場合)は、配偶者については年間86万円、その他の親族については年間50万円の控除上限が設けられていますが、青色事業専従者給与についてはこのような上限はありません(ただし、労務の対価として過大とされる部分については、必要経費に算入できません)。

参考:国税庁ウェブサイト「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

③ 赤字の3年間繰り越し
事業所得などの赤字を、翌年以後3年間にわたって繰り越した上で、各年分の所得金額について控除を受けられます。

④ 貸倒引当金
事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5パーセント以下(金融業の場合は3.3パーセント以下)の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額が必要経費として認められます。

屋号付き口座を開設できる

一部の金融機関では、屋号付き口座の開設を受け付けています。屋号付き口座を開設して事業用決済などに用いれば、プライベート口座と明確に区別でき、適切な経理や税務申告に役立ちます。

ヒー

「屋号付き口座」って何のことですか?

ムートン

屋号は個人事業主にとっての会社名のことです。屋号付きの口座なら、「〇〇事務所 ムートン」などの屋号と氏名を併記できるため、事業に使用している口座であることが一目で分かります。

屋号付き口座を開設するためには、屋号を用いて営業していることを証明できる書類を金融機関に提出しなければなりません。一般的には、屋号を登記している場合は商業登記簿謄本、登記していない場合は開業届の写しが求められます。
開業届を提出していれば、屋号付き口座の開設を申請する際、金融機関に対して写しを提出して、スムーズに口座開設を行うことができます。

住宅ローン審査の際に提出できる

個人事業主の住宅ローンの審査に当たっては、収入だけでなく開業以来の営業年数も審査の対象になるといわれています。安定的に事業を続けているかどうかは、債務者としての信用力を左右する重要な事情だからです。

個人事業主の営業年数については、開業届の記載を基準に計算されます。したがって、住宅ローンの審査を申請する際には、開業届の提出を求められることが大半です。
開業届を速やかに提出しておけば、将来的に住宅ローンの審査を申請した際に、営業年数が正当に評価されます。

開業届の様式・記載事項

開業届の様式と、記載すべき事項を紹介します。

開業届の様式

開業届の様式は、国税庁のウェブサイトに掲載されています。また、税務署の窓口でも開業届の様式の交付を受けられます。

参考:国税庁ウェブサイト「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

開業届の記載事項

開業届の記載事項は、以下のとおりです。なお、以下に挙げていない項目は空欄で構いません。

開業届の記載事項

① 税務署長
提出先の税務署長名を記載します。
(例)品川税務署長

② 提出日
開業届を提出する年月日を記載します。

③ 納税地
住所地・居所地・事務所等のいずれかの所在を、納税地として記載します。

④ 納税地以外の住所地・事業所等
納税地以外に住所地・事業所等がある場合は、その所在を記載します。

⑤ 氏名・フリガナ
ご自身の氏名とフリガナを記載します。

⑥ 生年月日
ご自身の生年月日を記載します。

⑦ 個人番号
ご自身の個人番号(マイナンバー)を記載します。

⑧ 職業
営む事業の種類を記載します。
(例)小売業、文筆業、内装工事業など

⑨ 屋号
個人事業を表す名称として用いている屋号があれば記載します。屋号がなければ、記載は不要です。

⑩ 届出の区分
「開業」にチェックします。その他の項目は空欄とします。

⑪ 所得の種類
「事業(農業)所得」にチェックします。

⑫ 開業・廃業等日
個人事業を開業した年月日を記載します。開業届の提出日とは異なるのでご注意ください。

⑬ 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
青色申告承認申請書または消費税課税事業者選択届出書を併せて提出する場合は、該当する書類につき「有」にチェックします。提出しない書類については「無」にチェックします。

⑭ 事業の概要
営む事業の内容を、できるだけ具体的に記載します。
(例)店舗において、消費者向けに食品を中心とした日用品を販売する。

⑮ 給与等の支払の状況
開業届を提出する時点で、従業員を雇っている場合に記載します。

家族従業員は「専従者」、その他の従業員は「使用人」に当たります。専従者・使用人のそれぞれについて、従業員数と給与の定め方(月給など)を記載し、従業員数については合計も記載します。

「税額の有無」については、専従者・使用人のそれぞれにつき、源泉徴収する税額がある従業員が1人でもいる場合は「有」、1人もいない場合は「無」にチェックします。
なお、月給8万8000円未満で、かつ給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出を受けている場合は、源泉徴収は不要です。また、扶養親族等(原則として16歳以上30歳未満、または70歳以上)が1人いる場合は月給11万9000円未満まで、2人いる場合は月給15万9000円未満まで源泉徴収は不要とされています(3人以上の場合は、さらに増額されます)。

⑯ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を併せて提出する場合は「有」にチェックします。提出しない場合は「無」にチェックします。

⑰ 給与支払を開始する年月日
従業員に対して給与の支払いを開始する年月日を記載します。従業員がいない場合は記載不要です。

⑱ 関与税理士
税理士に開業届の提出を依頼する場合は、税理士の氏名と連絡先を記載します。

開業届と併せて個人事業主が提出すべき書類・必要なもの

開業届とともに、事業の状況に応じて以下の書類を提出しましょう。

✅ 青色申告をする場合
→所得税の青色申告承認申請書

✅ 従業員に対して給与を支払う場合
→給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

✅ 源泉所得税を半年分まとめて納付したい場合
→源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

✅ インボイス登録をする場合
→消費税課税事業者選択届出書・適格請求書発行事業者の登録申請書

また、開業届の提出に当たっては、本人確認書類などを持参する必要があります。

所得税の青色申告承認申請書

確定申告時に青色申告を行うためには、事前に税務署長の承認を受けなければなりません

青色申告をする予定の場合は、所得税の青色申告承認申請書を税務署に提出しましょう。初年度から青色申告をするためには事業開始後2カ月以内に提出する必要がありますが、開業届と併せて提出するのがスムーズです。

参考:国税庁ウェブサイト「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

従業員に対して給与を支払う事務所等を開設した場合には、税務署長に対して給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を提出する必要があります。
提出期限は開設日から1カ月以内なので、従業員を雇用する場合は、開業届と併せて提出しておきましょう。

参考:国税庁ウェブサイト「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員から徴収した源泉所得税は、原則として翌月10日までに納付しなければなりません。しかし、税務署長による納期の特例の承認を受ければ、半年ごと(1月分から6月分を7月10日まで、7月分から12月分を翌年1月20日まで)にまとめて源泉所得税を納付することができます。

納期の特例は申請日の翌月に支払う給与から適用されるため、源泉所得税を半年ごとにまとめて納付したい場合は、開業届と併せて源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出しましょう。

参考:国税庁ウェブサイト「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」

消費税課税事業者選択届出書・適格請求書発行事業者の登録申請書

2023年10月1日から始まったインボイス制度に基づく「適格請求書」を発行したい場合は、消費税の課税事業者になった上で、税務署長に対して登録申請を行う必要があります。

個人事業主は、開業後2年間は原則として免税事業者ですが、消費税課税事業者選択届出書を税務署に提出すれば課税事業者に移行できます。
適格請求書を発行したい場合は、開業届と併せて、消費税課税事業者選択届出書と適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しましょう。

参考:国税庁ウェブサイト「D1-4 消費税課税事業者選択届出手続」
   国税庁ウェブサイト「D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」

事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)|都道府県税事務所に提出

個人事業を開始した際には、個人事業税の課税に関して、納税地の都道府県税事務所に「事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)」を提出する必要があります。
提出期限は、事業開始日から15日以内で、開業届よりも早い点に注意が必要です。

事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)の様式や記載方法については、各自治体のウェブサイトや窓口にてご確認ください。

その他必要なもの

開業届を提出する際には、本人確認個人番号(マイナンバー)の確認が行われます。

個人番号カード(マイナンバーカード)を保有している場合はそれを、保有していない場合は運転免許証などの本人確認書類と、マイナンバーが確認できる書類(通知カード・住民票など)を持参しましょう。

開業届に関するQ&A

開業届について、よくある以下の質問への回答をまとめました。

Q1 開業届を提出しないとどうなるのか?
Q2 開業届の写しが必要な場合は、どうすればよいのか?

開業届を提出しないとどうなるのか?

開業届を提出しなくても、特にペナルティはありません

ただし、青色申告をするためには開業届の提出が必須であるほか、住宅ローン審査においても開業届の写しを提出する必要があります。また、屋号を記載した開業届を提出していれば、金融機関において屋号付き口座を開設可能です。

開業届を提出することには多くのメリットがあるので、不提出についてペナルティがないとしても、提出することをおすすめします。

開業届の写しが必要な場合は、どうすればよいのか?

開業届を提出する際にコピー(副本)を持参すれば、税務署の受理印を押してもらえるので、そのまま開業届の写しとして利用可能です。

開業届の提出時に副本を持参するのを忘れた場合や、副本を紛失した場合には、税務署に対して個人情報の開示請求を行えば、開業届を印刷したものを受け取ることができます。

参考:国税庁ウェブサイト「開示請求等の手続」
ムートン

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