持分会社とは?
株式会社との違いや持分会社の種類などを
分かりやすく解説!

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弁護士法人NEX弁護士
2015年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。経済産業省知的財産政策室や同省新規事業創造推進室での勤務経験を活かし、知的財産関連法務、データ・AI関連法務、スタートアップ・新規事業支援等に従事している。
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この記事のまとめ

持分会社とは、合名会社合資会社合同会社の3つの会社の総称をいいます。

持分会社は、株式会社と比較し設立コストやランニングコストが低い、所有と経営が一致している、定款自治が広く認められているといった特徴をもっています。

この記事では、持分会社について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

取引先に「〇〇合同会社」という会社がありますね、これって株式会社とは違うのですか?

ムートン

合同会社は持分会社の1つです。持分会社は株式会社と比較した際に、いくつかの特徴がありますよ、以下で確認していきましょう。

※この記事は、2023年5月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

持分会社とは

会社法では、株式会社合名会社合資会社合同会社という4種類の会社の類型が設けられています(会社法2条1号)。このうち、株式会社を除いた、3つの会社を総称して、持分(もちぶん)会社といいます(会社法575条1項)。

以下では、持分会社と株式会社との違いや、持分会社に関する会社法の規律について見ていきます。

持分会社と株式会社の違い

持分会社株式会社とでは各種の相違点があります。後の項目でも個別の点について見ていきますが、まず、ここでは、社員の責任の内容や設立費用等について総論的に見ていきます。

社員の責任の内容

株式会社の構成員は「株主」ですが、持分会社の構成員は「社員」といいます。
株式会社の構成員である「株主」は全て有限責任であるため、会社や会社債権者に対して出資額の限度でのみ責任を負いますが、持分会社の構成員である「社員」には株主と同様に有限責任のみを負担する社員(有限責任社員。会社法580条2項)と、会社や会社債権者に対して無限に責任を負担する社員(無限責任社員)がいます。

持分会社の種類」に記載のとおり、持分会社を構成する社員が有限責任社員か無限責任社員かによって、どの持分会社に分類されるかが分かれてきます。

設立費用

持分会社と株式会社とでは、以下のとおり、持分会社の方が設立に係る費用を削減できます。

合名会社・合資会社合同会社株式会社
定款収入印紙4万円
(印紙税法2条、別表第一・6号)
※電子定款の場合は不要
4万円
(印紙税法2条、別表第一・6号)
※電子定款の場合は不要
4万円
(印紙税法2条、別表第一・6号)
※電子定款の場合は不要
定款認証手数料不要不要3~5万円
(公証人手数料令35条1号~3号)
登録免許税6万円
(登録免許税法2条、別表第一・24号(一)ロ)
6万円か資本金額×0.7%の高い方
(登録免許税法2条、別表第一・24号(一)ハ)
15万円か資本金額×0.7%の高い方
(登録免許税法2条、別表第一・24号(一)イ)

持分会社のメリット・デメリット

後の項目で詳細を記載しているものもありますが、株式会社と比較した場合の持分会社のメリットデメリット(特徴)としては以下のようにまとめることができるでしょう。

持分会社のメリット・デメリット(特徴)

① 設立費用・ランニングコストが安い
設立費用は、「設立費用」のとおり、持分会社の方が株式会社に比べ安くなっています。また、持分会社は、株式会社と異なり計算書類の公告義務がないため公告費用がかからないなど、ランニングコストの面でもメリットがあります。

② 社員の意思を反映した迅速な業務執行が可能(「持分会社の管理・運営」も参照)
株式会社の場合、その経営陣(取締役)は、構成員である株主から分離されています(所有と経営の分離)。一方、持分会社の場合、その構成員である社員が業務執行を行うこととされています。このため、持分会社では、より構成員の意思を反映した経営を行いやすいといえます。
また、株式会社の場合、会社の意思決定は株主総会や取締役会といった機関で承認される必要がありますが、一方、持分会社の場合、社員により業務執行が行われますので、より迅速に意思決定を行いやすいといえます。

③ 定款自治が広く認められている
持分会社についても、会社法上さまざまなルールが定められています。もっとも、そのうち多くのルールは定款で修正可能とされています。このため、持分会社の社員は、定款を活用することにより、より自社に合った会社経営を行うことが可能です。

④ 資本のコミットメントが不完全(「社員の退社」や「出資の払戻し」参照)
株式会社の場合、株主は、原則として、会社から脱退して資本の払戻しを受けることができません。このため、株主が一度出資した資本は、会社の事業のために継続的に使用されることになります。
一方、持分会社の場合、社員は、資本の払戻しを受けたり、会社からの脱退に当たり資本の払戻しを受けることが可能です。このため、社員が出資した資本が必ずしも会社の事業のために継続的に使用されるとは限らない点に留意が必要です。

⑤ 構成員の地位の譲渡が制限されている(「持分の譲渡」参照)
④のとおり、株式会社の場合、株主は、原則として、会社から脱退して資本の払戻しを受けることはできませんが、その代わりに、原則として、株式を自由に譲渡することが可能であり、これにより出資した資本の回収を図ることが可能です。
一方、持分会社の場合、④のとおり、社員は、会社からの脱退に伴い資本の払戻しを受けることはできますが、原則として、社員全員の承諾がなければ持分を自由に譲渡することはできません。

⑥ 資金調達をすることが困難
株式会社の場合、株式等を発行することにより、資金調達を行うことが可能です。
一方、持分会社の場合、株式会社のように柔軟に資金調達を行うことは困難です。

持分会社の種類

合名会社とは

合名会社とは、社員全員が無限責任社員である会社をいいます(会社法576条2項)。

合資会社とは

合資会社とは、社員の一部が無限責任社員であり、残りの社員が有限責任社員である会社をいいます(会社法576条3項)。

合同会社とは

合同会社とは、社員全員が有限責任社員である会社をいいます(会社法576条4項)。
合同会社の設立数は近年増加しており、例えば、個人事業主が法人化する際や、外資系子会社の設立等に利用されています。持分会社の中では、最もよく耳にする会社ではないかと思います。

持分会社の設立

ここでは、持分会社の設立手続きについて見ていきます。持分会社の設立に当たっては、以下の手続きを経る必要があります。

定款の作成
出資の履行
設立の登記

①定款の作成

持分会社を設立するには、まず、社員となろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名または記名押印をする必要があります(会社法575条1項)。

定款には、以下の事項を記載します(会社法576条1項各号)。

目的(1号)
商号(2号)
本店の所在地(3号)
④ 社員の氏名・名称および住所(4号)
⑤ 社員が無限責任社員有限責任社員のいずれであるかの別(5号)
⑥ 社員の出資の目的(有限責任社員は、金銭等に限る)とその価額・評価の標準(6号)

⑥社員の出資の目的(内容)については、有限責任社員の場合は、株式会社と同様金銭等(会社法151条1項柱書参照)に限られますが(会社法576条1項6号)、無限責任社員についてはこのような制限がありません。このため、無限責任社員は、労務提供等を出資の目的(内容)とすることも可能です。

なお、株式会社の場合、作成した定款の効力を生じさせるためには、公証人の認証を受ける必要がありますが(会社法30条1項)、持分会社の場合には公証人の認証を受ける必要はありません。このため、「設立費用」に記載のとおり、株式会社の場合、定款の認証に、3~5万円の手数料を要しますが(公証人手数料令35条1号~3号)、持分会社の場合、この費用を削減できます。

②出資の履行

設立しようとする会社が合同会社の場合、合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、出資に係る金銭の全額の払込み等をしなければなりません(会社法578条本文)。
一方、合名会社・合資会社については、このような規律はありませんので、出資が未履行の状態で会社を成立させることも可能です。

③設立の登記

最後に、本店の所在地で設立の登記をすることによって、持分会社は成立します(会社法579条)。

持分の譲渡

持分会社の社員としての地位を持分といいますが、一定の手続きを経れば、持分譲渡することもできます。
すなわち、社員は、他の社員全員の承諾を得れば、その持分の全部または一部を譲渡することができます(会社法585条1項)。また、業務を執行しない有限責任社員の持分については、業務を執行する社員全員の承諾があれば譲渡することが可能です(同条2項)。
なお、以上の会社法上の定めは任意規定であり、定款でこれらとは異なる定めを設けることも可能です(同条4項)。

持分会社の管理・運営

持分会社では、定款に別段の定めがない限り、社員が持分会社の業務を執行します(会社法590条1項)。社員が2人以上ある場合は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定しますが(同条2項)、常務については、原則として、各社員が単独で行うことが可能です(同条3項)。

また、持分会社では、定款で業務を執行する社員を定めることができ、その場合、業務執行の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって行います(会社法591条1項)。そして、業務を執行する社員は、持分会社を代表することになります(会社法599条1項・2項)。

以上の規律は、持分会社の構成員である社員が業務執行を行うという点で、株式会社において所有と経営の分離が図られていることとは大きな違いがあるといえます。

社員の加入・退社

持分会社では、社員が新たに持分会社に加入したり、既存の社員が退社することがあります。以下、社員の加入や退社の手続き等について、詳しく見ていきます。

ヒー

社員の加入・退社って、従業員の入社・退職や、役員の就任・退任とは違いますよね? どのように捉えればよいのでしょう?

ムートン

持分会社の社員は、株式会社であれば株主のことです。つまり、社員の加入は出資者が増えるイメージですね。また、上記のように、業務執行を行う社員は会社の経営権も持っているといえます。

社員の加入

持分会社は、新たに以下の事項を定款に規定することで、社員を加入させることができます(会社法604条1項・576条1項4号~6号)。

① 新たに加入する社員の氏名・名称および住所(会社法576条1項4号)
② 新たに加入する社員が無限責任社員・有限責任社員のいずれであるかの別(同項5号)
③ 新たに加入する社員の出資の目的(有限責任社員は、金銭等に限る)とその価額・評価の標準(同項6号)

定款の変更には、原則として社員全員の同意が必要ですので(会社法637条)、新たに社員を加入させるには、原則として社員全員の同意が必要ということになります。社員の加入は、定款の変更をした時に効力を生じますが(会社法604条2項)、合同会社の場合には、定款の変更に加え出資の履行を完了することも必要です(同条3項)。

社員の退社

持分会社の社員は一定の要件を満たすことで、持分会社から任意に退社することもできますし(任意退社。会社法606条)、一定の事由が発生した場合には(強制的に)退社することになります(法定退社。会社法607条)。

まず、任意退社として、社員は、①持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合、②ある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、定款に別段の定めがない限り、6カ月前までに退社の予告をすることにより事業年度の終了時に退社することができます(606条1項・2項)。
加えて、社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができます(会社法606条3項)。

次に、法定退社として、持分会社の社員は、以下の事由が生じると、持分会社を(強制的に)退社することとなります

① 定款で定めた事由の発生(会社法607条1項1号)
② 総社員の同意(同項2号)
③ 死亡(同項3号)
④ 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る)(同項4号)
⑤ 破産手続開始の決定(同項5号)
⑥ 解散(前2号に掲げる事由によるものを除く)(同項6号)
⑦ 後見開始の審判を受けたこと(同項7号)
⑧ 除名(同項8号)
⑨ 持分の差押債権者による退社(会社法609条)
⑩ 持分会社の設立が無効または取り消された場合において、その原因が一部の社員のみにあるときに、他の社員全員の同意により持分会社が継続された場合の当該社員(会社法845条)

なお、上記⑤~⑦については、持分会社は、これらの事由によっては退社しない旨を定めることができます(会社法607条2項)。また、上記③④については、持分会社は、定款で、相続人等の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定めることができます(会社法608条1項)。

持分会社の社員が退社すると、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款の変更があったものとみなされます(会社法610条)。また、退社した社員は、持分の払戻しを受けることができます(会社法611条1項)。

もっとも、合同会社の場合、社員の全員が有限責任社員であるため、一部の社員が退社しその持分が払い戻されると債権者に不利益が及ぶ可能性があります。
このため、合同会社が社員に持分の払戻しをするには、合同会社が持分の払戻しにより社員に交付する金銭等の帳簿価額が、当該持分の払戻しをする日における剰余金額(会社法626条4項、会社計算規則164条)を超える場合、債権者異議手続きを経る必要があります(会社法635条)。

利益の配当

持分会社の社員は、持分会社に対し、利益の配当を請求することができます(会社法621条1項)。各社員の損益分配の割合は、定款で別段の定めがなければ、各社員の出資の価額に応じて定めることになります(会社法622条1項)。

出資の払戻し

持分会社の社員は、持分会社に対し、既に出資した金銭等の払戻しを請求することができます(会社法624条1項)。社員が出資の払戻しを受けても、社員の地位は失いません

もっとも、合同会社の場合、社員の全員が有限責任社員であるため、出資の払戻しがされると債権者に不利益が及ぶ可能性があります。
このため、合同会社の社員は、定款の変更によりその出資の価額を減少しなければ、合同会社に対して、出資の払戻しを請求することができません(会社法632条1項)。また、合同会社が出資の払戻しにより社員に交付する金銭等の帳簿価額が、出資の払戻請求の日における剰余金額と出資の価額の減少額とのいずれか少ない額を超える場合は、出資の払戻しをすることができません(同条2項)。

ムートン

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参考文献

田中亘著『会社法[第4版]』東京大学出版会、2023年