発注請書(注文請書)とは?
発注書(注文書)との違い・発行する目的・
記載例・収入印紙の要否・発行時の確認事項
などを分かりやすく解説!
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※この記事は、2023年9月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
発注請書(注文請書)とは
発注請書とは、発注者からの発注書(注文書)による申込みに対して、「承諾」する意思を示す書類です。「注文請書」「受注書」と呼ばれることもあります(以降、本記事では、「注文請書」という表現を使用します)。
注文請書を発行する目的
注文請書を発行する目的は、発注・受注の事実および内容を明確化することです。
発注と受注を口頭で行っていると、受注者と発注者の間で、発注の有無や内容について認識がずれてしまうおそれがあります。
メールなどを通じて受注と発注を行う場合も、どれが発注でどれが受注なのかが不明確だと、後でトラブルの原因になりかねません。
そこで実務上、発注者は注文書に発注内容を明記して受注者に交付し、受注者は注文請書を発注者に交付する手続きが行われています。
注文書と注文請書のやりとりがあることによって、発注および受注が行われたこと、およびその内容が明確になり、トラブルの防止につながります。
注文請書と注文書の関係性
注文書は、発注者が受注者に対して取引や業務についての「申込み」の意思を示す書面です。
これに対して注文請書は、受注側の注文書による申込みについて、「承諾」する意思を示す書面です。
注文書の交付を受けた受注者は、その内容を確認した上で、問題なければ発注者に注文請書を交付します。
注文請書の記載例・記載事項
注文請書は、
- 注文書とは別の(独立した)書面である場合
- 注文書と一体になった書面である場合
があります。
注文書から独立した注文請書の記載例・記載事項
注文書から独立した注文請書には、受注条件を詳細に記載するパターンと、注文書を引用するパターンの2つがあります。
受注条件を詳細に記載する場合
注文請書 発行日:○年○月○日 △△株式会社 御中 東京都○○区○○ 下記のとおり、ご注文をお請けいたしました。 受注金額 38万5000円 品番・品名 数量 単価 金額 ×××× 2個 10万円 20万円 ×××× 3個 5万円 15万円 小計 35万円 消費税 3万5000円 合計 38万5000円 納期 △年△月△日 検収期日 □年□月□日 支払期日 ×年×月×日 備考 納品日が属する月の末日までに請求書をお送りいたします。 振込手数料は貴社にてご負担くださいますようお願い申し上げます。 以上 |
上記の注文請書には、受注内容が細かく記載されています。注文書にも条件の詳細が記載されますが、注文請書でも改めて記載することで、再確認を行う意図があります。
ただし、注文書と注文請書の内容に異なる部分があると、後にトラブルの原因になるおそれがあります。そのため、注文書と注文請書を照合して、齟齬がないことを慎重に確認しましょう。
注文書を引用する場合
注文請書 発行日:○年○月○日 △△株式会社 御中東京都○○区○○ 以上 |
上記の注文請書では、注文書の内容を引用するかたちで受注の意思表示を行っています。
この場合、注文書の内容どおりに受注したことになります。注文書と注文請書を照合せずに済むため、手間が省けるメリットがあります。
ただし、注文書に不合理な条件が記載されていても、その内容のとおりに受注したことになってしまいます。
注文書と一体である注文請書の記載例・記載事項
注文書 発行日:○年○月○日 ○○株式会社 御中東京都○○区○○ 以下のとおり発注いたします。 …… 以上 注文請書 ○年○月○日 △△株式会社 御中東京都○○区○○ 上記の注文につき、上記記載の条件にて受注いたします。 以上 |
注文書と一体になった注文請書の記載内容は、上記記載例のとおりシンプルです。
日付・宛先・作成者に加えて、注文書の内容のとおり受注する旨を記載しておけばよいでしょう。
注文書と一体になった注文請書は、発注者が注文書を交付する際に添付します。そのため、注文請書のドラフトも発注者が作成します。
注文請書に収入印紙の貼付は必要?
注文請書は、発注者と受注者の間で契約が締結された証である点で、契約書の一種といえます。
一部の契約書は印紙税の課税文書とされていますが、注文請書についても上記の理由から、印紙税の課税文書として収入印紙の貼付を要する場合があります。
収入印紙を貼り忘れると、税務調査の際に追徴課税を受けるおそれがあるので、課税文書である注文請書には忘れずに収入印紙を貼りましょう。
収入印紙の貼付が必要な注文請書の例
収入印紙の貼付を要する注文請書の代表例は、請負工事の注文請書(=工事注文請書)です。
工事注文請書は、第2号文書として印紙税が課税されます。印紙税額は、契約金額に応じて以下のとおりです。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
なお、継続的な取引を前提とする業務委託契約については、基本契約書が印紙税の課税文書とされています(第7号文書、印紙税額は4,000円)。
これに対して、個々の業務の受託・委託を行う注文請書(または個別契約書)については、原則として印紙税の課税文書に当たらず、収入印紙の貼付は不要です。
ただし、業務委託契約が民法上の「請負契約」(=受託者が仕事を完成させる義務を負う契約)に当たる場合は、個々の注文請書(または個別契約書)も第2号文書に当たるため、収入印紙の貼付が必要になります。
収入印紙の貼付を要しない注文請書の例
印紙税の課税文書に当たらない注文請書については、収入印紙を貼付する必要がありません。
例えば以下の注文請書については、収入印紙の貼付は不要です。
・物品の売買に関する注文請書(継続する売買契約で第7号文書に当たるものを除く)
・仕事の完成を目的としない業務に関する注文請書
・工事注文請書その他の請負に関する注文請書のうち、契約金額が1万円未満のもの
など
ただし、請負と売買のどちらに該当するかについては、明確に判断するのが難しい場合もあります(請負であれば収入印紙の貼付が必要ですが、売買であれば収入印紙の貼付は原則不要です)。
注文請書を電子交付する場合は収入印紙が不要
工事注文請書など、紙で交付する場合は印紙税の課税文書に当たるものでも、電子データによって交付する場合は、収入印紙を貼付する必要がありません。
これは電子データで交付される書面は、印紙税の課税文書に当たらないと解されているためです。
国税庁も以下のとおり、電子メールで送信された注文請書には印紙税が課税されないとの見解を示しています。
……注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
文書回答事例 別紙1-3 – 国税庁
ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。
ただし上記見解(ただし書)のとおり、電子交付した注文請書を印刷して相手方に交付した場合は、印紙税が課されるので、注意しましょう。
注文請書を発行する際にチェックすべき注文書の項目
受注者が発注者に対して注文請書を発行する際には、注文書の内容をよく確認することが大切です。
①業務・納品物の内容
②報酬の金額・計算方法
③報酬の支払い時期
④検収手続き
業務・納品物の内容
業務や納品物の内容は、注文書の中で最も重要な記載事項の一つです。
業務や納品物について、発注者との間で認識に齟齬があると、トラブルが生じかねません。受注者としては、業務や納品をやり直すことになり、余計なコストが発生するリスクがあります。
記載内容に違和感があれば、発注者に確認した上で、必要に応じて修正を求めましょう。
また、業務や納品物の内容の中に、受注者が対応できない事項が記載されている場合も、発注者に対して修正を求める必要があります。
報酬の金額・計算方法
報酬の金額や計算方法について、発注者と受注者の間で認識が異なっていると、大きなトラブルの原因になり得ます。
例えば税抜・税込の区別や、報酬が発生する業務・納品とそうでないものの区別などは、発注者と受注者の認識が異なりやすいポイントの代表例です。
少しでも疑義がある場合には、発注者に確認した上で認識をすり合わせ、合意した内容を注文書に明記してもらいましょう。
報酬の支払い時期
受注者にとっては、発注者から報酬が支払われる時期も重要な関心事項です。適切な期間のうちに報酬が支払われなければ、受注者の資金繰りが厳しくなってしまうおそれがあります。
基本契約書に報酬の支払い時期が明記されていれば問題ありませんが、そうでない場合は、個別の注文書において支払い時期を明記してもらいましょう。
検収手続き
受注者が発注者に対して成果物を納品する場合は、発注者側で「検収」と呼ばれる手続きを行います。
発注者は納品物をチェックした上で、受注者に対して合否を通知します。合格であれば納品が確定し、報酬が発生します。
検収手続きについて、発注者側の幅広い裁量を認めると、何度も納品をやり直させられたり、いつまで経っても検収が行われなかったりするトラブルのリスクが生じます。ゆえに、受注者としては、検収手続きについて細かくルールを定めることが望ましいです。
例えば検収の基準をあらかじめ明示する、検収の期限を定める(期限が経過すれば自動的に合格とする)などのルールを、基本契約書や注文書に明記してもらうように交渉しましょう。
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