原本とは? 写し(コピー)との違い・
提出を求められるケース・原本証明・
契約書原本に関する注意点などを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

原本(げんぽん)」とは、一定の内容を表示するため、確定的なものとして作成された文書です。
契約などの法律行為は原本に基づいて行われるため、法律行為がなされた事実や内容を立証する観点から、原本の重要性は高いといえます。

原本の内容に基づいて作成され、原本と同一の内容を有する文書は「写し」と呼ばれます。写しはその性質等により、「謄本」「抄本」「正本」「副本」などに分類されます。

文書の提出は写しで足りるとされるケースもありますが、重要な法律行為をする際や、金融機関・公的機関等への申請を行う際には、原本書類の提出が求められます。

原本を提出できない理由がある場合は、原本に代えて原本証明付き写しを提出することもあります。原本証明とは、写しの内容が原本と同一であることにつき、原本の作成者が行う証明です。

契約書原本を保管する際には、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ強化、電子取引データの保存時に適用される電子帳簿保存法収入印紙の貼付の要否などに注意しなければなりません。

この記事では原本について、写しとの違い・提出を求められるケース・原本証明・契約書原本に関する注意点などを解説します。

ヒー

提出書類に「住民票の写し(原本)」とありますが、これって役所で交付される書類のことですか? コピーでもよいのですか? コンビニで印刷できるのはどっちですか?

ムートン

「原本」と「写し」はややこしいですね。自治体の管理する「住民票の原本」、その「住民票の写し」の原本という意味です。コンビニ交付でも大丈夫ですが、自分でコピーしたものは要件を満たしません。

※この記事は、2024年4月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

原本とは

原本(げんぽん)」とは、一定の内容を表示するため、確定的なものとして作成された文書です。

原本が重要である理由

原本が重要な文書であるのは、法律行為がなされた事実や内容に関する直接的な証拠に当たるためです。

契約などの法律行為は原本に基づいて行われるため、その事実や内容を立証するためには、原本が最も有効な証拠となります。
特に契約トラブルの予防や、実際にトラブルが発生した場合の訴訟対応などの観点からは、原本をきちんと保管しておくことが大切です。

電子データの原本とは

契約書などの文書は、電子データによって作成(締結)することもできます。電子データについては、電子署名タイムスタンプが付されたファイルを原本として取り扱うのが一般的です。

ただし電子データについては、コンピュータ上で全く同じものを複製できるので、原本と写しを厳密に区別することができません。
そのため、電子署名やタイムスタンプなどを通じて、原本ファイルの改ざんを防ぐことが重要になります。

原本と写し・謄本・抄本・正本・副本の違いと関係性

原本の内容に基づいて作成され、原本と同一の内容を有する文書は「写し」と呼ばれます。写しはその性質等により、「謄本」「抄本」「正本」「副本」などに分類されます。

写しとは

写し」とは、原本に基づいて作成され、原本と同一の内容を有する文書です。「コピー」と呼ばれることもあります。

例えば運転免許証の場合、公安委員会から交付を受けるカードが原本であり、そのコピーが写しに当たります。
本人確認等の際に運転免許証の提出を求められることがありますが、原本を提出すると手元に運転免許証がなくなってしまうので、写しを提出することになります。

住民票については、市区町村役場に保管されている帳簿(データ)が原本であり、市民が交付を受ける証明書類は写しに当たります。

謄本とは

謄本」とは、原本に基づいて作成され、原本全部と同一の内容を有する文書です。写しの中でも、原本全部の内容をコピーしたものが謄本と呼ばれています。

謄本に当たる文書として、特に有名なのが「戸籍謄本」です。戸籍謄本の正式名称は「戸籍全部事項証明書」といいます。
戸籍謄本は、戸籍簿に記載されている全員の身分事項を証明するものです。原本である戸籍簿は市区町村役場に保管されており、市民が交付を受ける戸籍謄本は、戸籍簿の写しに当たります。

公証役場で作成する公正証書についても、謄本の交付を受けることができます。公正証書の謄本については、正本(後述)と併せて交付を受けるのが一般的です。

抄本とは

抄本」とは、原本に基づいて作成され、原本の一部と同一の内容を有する文書です。
謄本が原本全部の写しであるのに対して、抄本は原本の一部分のみを写し取ったものに当たります。そのため、謄本と抄本は対比されることが多いです。

抄本に当たる文書としては、「戸籍抄本」がよく知られています。
戸籍抄本の正式名称は「戸籍個人事項証明書」といい、戸籍簿に記載されている人のうち一部の人の身分事項を証明するものです。個人の事項のみを証明すれば足りる場面においては、戸籍抄本の提出を求められることがあります。
もっとも、戸籍抄本の記載事項はすべて戸籍謄本に記載されているので、戸籍抄本に代えて戸籍謄本を提出することも認められるケースが多いです。

民間において作成する文書についても、分量が多く謄本を作成するのが煩雑である場合は、必要な部分だけを抜粋した抄本を作成することがあります。

正本とは

正本」とは、権限のある者が原本に基づき作成する謄本であって、原本と同一の効力を有するものをいいます。
正本は、ある場所において原本を保管する必要があるものの、それとは別の場所で正式な文書を用いるべき場合などに作成されます。

正本が作成される文書としては、判決書公正証書などが代表例です。

判決書の原本は裁判所で保管されますが、確定判決の正本を強制執行の申立てに用いることができます(民事執行法25条)。

公正証書の原本は公証役場で保管されますが、当事者は正本の交付を受けることができます。例えば遺言執行は、公正証書遺言の正本に基づいて行います。
なお公正証書については、正本とは別に謄本の交付を受けることもできます。正本と謄本の内容は同じですが、金融機関や行政機関に対して提出または提示する際には、謄本ではなく正本を用います。

副本とは

副本」とは正本の写し」を意味するのが一般的ですが、単に原本の写しという意味で用いられることもあります。

例えば、訴訟を提起する際には裁判所に訴状を提出しますが、訴状の写しは「副本」と呼ばれます。
原告は訴訟を提起するに当たり、訴状の副本を裁判所に提出しなければなりません。裁判所は被告に対して、訴状の副本を送達します(民事訴訟規則58条1項)。

原本書類の提出が求められるケース

文書の提出は写しで足りるとされるケースもありますが、重要な法律行為をする際や、金融機関・公的機関等への申請を行う際には、原本書類の提出が求められます。

原本書類の提出が求められる場合としては、以下の例が挙げられます。

① 金融機関に融資審査を申し込む場合
② 不動産を売却する場合
③ 相続手続きを行う場合

金融機関に融資審査を申し込む場合

金融機関に対して融資を申し込む際には、契約書に実印の押印を求められるのが一般的です。その場合、実印が契約者本人のものであるかどうかを確認するため、印鑑登録証明書の原本の提出を求められます。

また、収入状況についての審査に用いるため、確定申告書課税証明書の提示を求められることがあります。確定申告書については写しを提出しますが、課税証明書については、自治体の窓口で交付を受けた原本を提出します。

不動産を売却する場合

不動産の売却に当たって、特に重要な文書に当たるのが「登記識別情報通知」です。

登記識別情報」とは、不動産の登記名義人本人であることを公的に証明する情報をいいます。
登記識別情報が記載された登記識別情報通知は、不動産の登記手続きを行う際に必要な公的文書で、不動産の売買時に売主が買主へ原本を交付します。

さらに、不動産の売買契約書には実印を押印するため、印鑑登録証明書の原本についても提出が必要です。

相続手続きを行う場合

金融機関や法務局において相続手続きを行う際には、相続の内容を証明する書類の提出が必要になります。

具体的には、遺産分割を行った場合には遺産分割協議書および印鑑登録証明書の各原本、遺言書に基づいて相続する場合は遺言書の原本の提出が必要です。
また遺言書については、公正証書遺言と法務局で保管されている自筆証書遺言を除き、家庭裁判所が発行する検認済証明書の原本も必要となります。

原本証明とは

原本を提出できない理由がある場合は、原本に代えて原本証明付き写しを提出することもあります。
原本証明」とは、写しの内容が原本と同一であることにつき、原本の作成者が行う証明です。

原本証明が必要になる場面

原本証明が必要になるのは、本来であれば原本を提出すべきであるものの、何らかの理由によって原本を提出できないときです。

例えば、行政機関への申請に当たって定款を提出する必要がある場合に、原本そのものは会社で保管しなければならず提出できないので、原本証明付き写しを提出することがあります。

原本証明の方法

原本証明は、原本の写しを作成した上で、その写しに以下のような文章を記載し、押印する方法によって行います。

原本証明の記載例

この写しは原本と相違ないことを証明します。
○年○月○日
【氏名】 印

原本が2枚以上にわたる場合は、ホチキス止めまたは袋とじをして割印を押し、最終ページの余白などに原本証明を記載します。

契約書原本に関する注意点

契約書の原本を作成・保管するに当たっては、特に以下の各点に注意しましょう。

① 契約書原本の保管時にはセキュリティを重視する
② 電子契約の原本データは、電子帳簿保存法に従って保存する
③ 契約書原本には、収入印紙の貼付を要する場合がある

契約書原本の保管時にはセキュリティを重視する

契約書の原本が勝手に外部へ持ち出されると、営業秘密や顧客情報の漏洩、契約書の改ざんなどによるトラブルのリスクが高まります。そのため、契約書の原本を保管するに当たっては、無断での持ち出しをふせげるようにセキュリティを強化すべきです。

紙の契約書については、鍵のかかるキャビネットなどで保管し、鍵を厳重に管理するのがよいでしょう。
電子契約のデータについては、保存先フォルダにアクセス権を設定し、ファイル自体にもパスワードを付して、データの内容にアクセスできる人の範囲を最小限に絞りましょう。

また、契約書原本の取り扱いについて、従業員のセキュリティ意識を向上させるための社内研修を定期的に実施しましょう。弁護士などの専門家を講師に呼ぶ方法のほか、e-ラーニングを活用する方法なども考えられます。

電子契約の原本データは、電子帳簿保存法に従って保存する

電子契約データの保存については、電子帳簿保存法の規定が適用されます。具体的には、「真実性」と「可視性」の要件を満たす方法で原本データを保存しなければなりません。

電子契約データについての電子帳簿保存法の要件

① 真実性
保存した電子契約データにつき、改ざんが行われないような仕組みを整備する必要があります。

② 可視性
税務調査等の際に、税務職員の求めに応じて電子契約データをスムーズに出力して確認できるようにしておく必要があります。

電子帳簿保存法に基づく電子契約データの保存方法等の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。

契約書原本には、収入印紙の貼付を要する場合がある

書面で作成した契約書が印紙税課税文書に当たる場合には、作成時に収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙の貼付を怠ると、税務調査の際に指摘されて過怠税が課されるほか、悪質な場合には刑事罰を受けるおそれもあるので注意が必要です。

収入印紙を貼付すべき契約の種類

第1号文書|不動産売買契約書・金銭消費貸借契約書など
第2号文書|工事請負契約書など
第5号文書|合併契約書・吸収分割契約書・新設分割契約書
第7号文書|取引基本契約書・業務委託契約書など
第12号文書|信託契約書
第13号文書|保証契約書
第14号文書|金銭・有価証券の寄託契約書
第15号文書|債権譲渡・債務引受けの契約書

収入印紙を貼付すべき契約書の種類や、収入印紙の貼り方などについては、以下の記事を併せてご参照ください。

ムートン

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