離職票とは?
必要な場面・発行手続き・
離職証明書の作成方法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「離職票」とは、離職した人に対してハローワークが発行する書類です。離職者本人が記入する「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票-1)」と、主に事業主が記入する「被保険者離職証明書の本人控(離職票-2)」の2つが含まれます。
離職票は、離職者が雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)の受給を申請する際に使用します。
事業主は原則として、離職日の翌日から10日以内に、ハローワークに対して離職証明書を提出しなければなりません。ハローワークが定める様式に従って、速やかに離職証明書を提出しましょう。この記事では離職票について、必要な場面・発行手続き・事業主における離職証明書の作成方法などを解説します。
※この記事は、2024年2月6日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…雇用保険法
- 規則…雇用保険法施行規則
目次
離職票とは
「離職票」とは、離職した人に対してハローワークが発行する書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といいます。
離職票には、離職者本人が記入する「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票-1)」と、主に事業主が記入する「被保険者離職証明書の本人控(離職票-2)」の2つが含まれます。
離職票と離職証明書の違い
離職票は、雇用保険の基本手当の受給手続きに用いる書類として、ハローワークが離職者に対して交付するものです。
これに対して離職証明書は、労働者が退職する際に、使用者がハローワークに対して離職の事実を証明するために提出する書類です。離職証明書の離職者用控えは、離職票の一部として離職者に交付されます。
雇用保険被保険者資格喪失届(離職票-1)
「被保険者資格喪失届」は、ハローワークで離職者本人が失業給付金の振込先などを記入するOCR用紙です。ハローワークのウェブサイトからダウンロードできるほか、ハローワークの窓口でも交付を受けられます。
被保険者離職証明書の本人控(離職票-2)
「被保険者離職証明書」は、離職者に関する情報を企業が記入する、3枚綴りの複写用紙です。被保険者離職証明書の離職者用控えは、離職票の一部となります。
被保険者離職証明書の様式をインターネット上でダウンロードすることはできず、ハローワークから交付を受ける必要があります。窓口での交付のほか、郵送等によって交付を請求することも可能です。
離職証明書の記載方法については、後述します。
離職票は雇用保険の基本手当を受給する際に使用する
離職票は、離職者がハローワークに対して雇用保険の基本手当の受給を申請する際に提出します。
雇用保険の基本手当(失業保険)とは
雇用保険の基本手当とは、失業して仕事がない求職者の生活を安定させ、求職活動を容易にするために支給される手当です。「失業手当」や「失業保険」とよばれることもあります。
会社を退職してすぐに再就職しない場合には、退職から一定期間が経過した後に、ハローワークに対して雇用保険の基本手当の受給を申請できます。
雇用保険の基本手当の受給手続き
離職者が雇用保険の基本手当を受給するには、以下の手順で手続きを行う必要があります。
① 受給申請
住所地を管轄するハローワークにて休職の申込みを行った後、以下の書類を提出します。
・雇用保険被保険者離職票
・個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか)
・身元(実在)確認書類(顔写真付きのものであれば1種類、顔写真なしのものであれば2種類。コピー不可)
・写真2枚(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm。マイナンバーカードを提示すれば省略可能)
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(一部指定できない金融機関あり)
② 受給資格の決定
ハローワークが受給要件を満たしていることを確認すれば、受給資格が決定されます。
③ 雇用保険受給者初回説明会
受給資格の決定後、雇用保険受給者初回説明会に出席して、受給に関する重要事項の説明を受けます。その際、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が交付されます。
④ 失業の認定
原則として4週間に1回、失業の認定を受ける必要があります。失業の認定を受けるためには、失業認定申告書に求職活動の状況等を記入し、雇用保険受給資格者証とともにハローワークの窓口へ提出します。
⑤ 基本手当の振り込み
失業の認定後、原則として5営業日後に、指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。
雇用保険の基本手当の支給期間
雇用保険の基本手当の所定給付日数は、障害者などの「就職困難者」、会社都合退職等の「特定受給資格者」、または正当な理由のある自己都合退職等の「特定理由離職者」に当たるかどうかによって変わります。
横軸:被保険者であった期間
縦軸:年齢
1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
なお、受給資格決定日から7日間が経過するまでは、雇用保険の基本手当を受給できません(=待期期間)。
また、特定受給資格者または特定理由離職者に当たらない場合は、待期期間後2カ月が経過するまで、引き続き雇用保険の基本手当を受給できません(=給付制限期間)。
さらに、5年間のうち3回以上正当な理由がない自己都合退職をした場合、3回目以降の給付制限期間は3カ月となります。
さらに、基本手当を受給できるのは、原則として離職日の翌日から1年間※です(=受給期間)。受給期間を経過すると、所定給付日数が残っていても、基本手当を受給できなくなります。
※所定給付日数が330日の場合の受給期間は1年間+30日
※所定給付日数が360日で、給付制限を受けない場合の受給期間は1年間+60日
雇用保険の基本手当の支給額
雇用保険の基本手当の支給額(=基本手当日額)は、原則として離職直前の賃金の日割額の50~80%(60~64歳は45~80%)です。賃金が低いほど高率となります。
ただし、年齢区分ごとに以下の基本手当日額の上限が設けられています。
30歳未満 | 6,945円 |
30歳以上45歳未満 | 7,715円 |
45歳以上60歳未満 | 8,490円 |
60歳以上65歳未満 | 7,294円 |
離職票の発行手続きの流れ
労働者の離職後、ハローワークが離職者に対して離職票を交付するまでの手続きの流れは、以下のとおりです。
① 事業主のハローワークに対する届出
事業主は、労働者が離職した日の翌日から10日以内に、ハローワークに対して届出を行う義務を負います(法7条、規則7条)。その際には原則として、ハローワークに対して離職証明書を提出しなければなりません。
② ハローワークの事業主に対する離職票の交付
ハローワークは、事業主から提出された届出書類を確認した上で、雇用保険被保険者資格喪失届(離職票-1)と被保険者離職証明書の本人控(離職票-2)を事業主宛に発行します。
③ 事業主の離職者に対する離職票の交付
事業主が離職者に対して、郵送等によって離職票を交付します。
離職証明書の作成・提出が不要なケース
労働者が離職した際には、事業主は原則としてハローワークに離職証明書を提出しなければなりません。
ただし例外的に、離職者が雇用保険の基本手当の受給を要しない場合には、離職証明書の提出が不要となります。具体的には、以下のいずれかに該当する場合は離職証明書を提出しなくて構いません。
① 離職者が離職票の交付を希望しない場合
② 離職者が死亡した場合
離職者が離職票の交付を希望しない場合
離職者が離職票の交付を希望しない場合には、事業主はハローワークに離職証明書を提出しなくて構いません(規則7条3項)。離職証明書を提出しない場合は、離職者から離職票の交付を希望しない旨を記載した書面を差し入れてもらい、保存しておきましょう。
ただし、離職日において59歳以上の被保険者については、離職票の交付を希望しない場合でも、事業主において離職証明書を作成してハローワークに提出する必要があります。
離職者が死亡した場合
離職者が死亡した場合には、雇用保険の基本手当を受給できないため、離職票の交付が不要とされています。
事業主における離職証明書の記載事項
離職証明書の記載事項は以下のとおりです。厚生労働省の資料に示されている記載上の注意もご参照ください。
① 基本情報
② 被保険者期間算定対象期間・賃金支払基礎日数
③ 賃金支払対象期間・基礎日数・賃金額・備考・賃金に関する特記事項
④ 離職理由
⑤ 離職者が記載すべき事項(事業主は記載しなくてよい事項)
基本情報
まずは基本的な情報として、以下の事項を記載します。
- 離職者の氏名
- 離職者の住所
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 離職年月日
住所については、原則として離職時の住所を記載します。ただし、本人の希望に従って退職後の住所を記載することも可能です。
被保険者期間算定対象期間・賃金支払基礎日数
「被保険者期間算定対象期間」は、特定受給資格者または特定理由離職者に該当する場合は離職日前1年間、それ以外の場合は離職前2年間です。
「離職日の翌日」欄に、離職年月日の翌日の日付を記載します。
その下の欄には、離職日から遡って1カ月ごとに区切った期間を記載します。被保険者期間算定対象期間に属する月を、新しい方から順番に記載していくということです。
そして「賃金支払基礎日数」の欄に、当該期間における賃金支払いの基礎となった日数を記入します。
賃金支払基礎日数が11日以上である月が、特定受給資格者または特定理由離職者の場合は6カ月間、それ以外の場合は12カ月間に達した時点で、それより前の記載は省略できます。
記載欄が足りない場合は、続紙としてもう1枚離職証明書を用意して記載しましょう。
賃金支払対象期間・基礎日数・賃金額・備考・賃金に関する特記事項
「賃金支払対象期間」の欄には、賃金締切日の翌日から賃金締切日までの期間(月給制の場合は、月の初日から最終日までとするのが一般的)を、離職日の属する期間から順に遡って記載します。
「基礎日数」の欄には、当該期間における賃金支払いの基礎となった日数を記載します。
「賃金額」の欄には、実際に支払った賃金額を記載します。月給制または週給制の場合はA欄、日給制・時間給制・出来高制の場合はB欄です。両方に該当する場合は、金額を区分して記載します。
「備考」の欄には、参考事項がもしあれば記載します。
例えば、「賃金支払基礎日数」が11日以上である月が12カ月以上(高年齢被保険者および短期雇用特例被保険者の場合は6カ月以上)ない場合、または「基礎日数」が11日以上の月が6カ月以上ない場合には、その両方が10日以下の機関について、当該期間における賃金支払いの基礎となった時間数を記入します。
「賃金に関する特記事項」の欄には、毎月決まって支払われるもの以外に、3カ月以内の期間ごとに支払われる特別の賃金がある場合に、各被保険者期間算定対象期間内に支払われた特別の賃金の支給日、名称および支給額を記入します。記入しない場合には斜線を引きます。
離職理由
離職証明書の様式に記載された離職理由の中から、該当するものを選択してチェックします。
「具体的事情記載欄(事業主用)」には、退職に至った具体的な経緯を記載します。
自己都合退職であれば「自己都合による退職」で構いませんが、会社都合退職の場合は「解雇」「退職勧奨を受けての退職」などと具体的に記載しましょう。
離職者が記載すべき事項(事業主は記載しなくてよい事項)
以下の事項は離職者が記載するので、事業主は記載しなくて構いません。
- 離職理由の離職者記入欄
- 具体的事情記載欄(離職者用)
- 離職者本人の判断
- 離職者の署名欄
離職証明書の作成・提出を怠った事業主に対する罰則
事業者が離職証明書の作成・提出義務を怠った場合、行為者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます(法83条1号)。
さらに両罰規定により、法人にも「30万円以下の罰金」(法86条1項)が科されます。
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