社会保険の加入条件は?
労働時間・賃金・50人以下の
場合などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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企業に勤務するフルタイム労働者や一部の短時間労働者は、厚生年金保険・健康保険・介護保険への加入が義務付けられています。
企業としては、これらの社会保険の対象となる労働者について、加入などの必要な手続きを行わなければなりません。この記事では、社会保険の加入条件や保険料の計算方法、加入時に必要な手続きなどを解説します。
※この記事は、2025年8月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
社会保険とは
「社会保険」とは、会社員や公務員などの賃金を得て働く人が、一定の条件を満たす場合に加入が義務付けられる公的保険です。
被保険者(加入者)が何らかの事故に遭った場合、健康を害した場合、老齢となった場合などには、社会保険からの給付によって被保険者の生活が保障されます。
社会保険の種類
広義の社会保険には、以下の5種類があります。
① 厚生年金保険
老後の生活を支える年金を提供する社会保険です。「1階部分」である国民年金に対して、厚生年金保険は「2階部分」に当たります。
② 健康保険
医療費を補助する社会保険です。医療機関や薬局に支払う費用のうち、原則として7割が健康保険から補助されます。
③ 介護保険
高齢者の介護費用を補助する社会保険です。要介護認定を受けると、介護サービスの費用の7~9割が介護保険から補助されます。
④ 雇用保険
失業中の労働者などの生活保障を目的とする保険です。失業した場合には基本手当を受給できるほか、育児休業等給付・介護休業給付・高年齢雇用継続給付などのさまざまな給付が用意されています。
⑤ 労災保険
労働者がケガをした場合、病気にかかった場合、障害を負った場合または死亡した場合に給付を行う保険です。被保険者が業務上の原因により、または通勤中に負傷等をした場合には、労災保険給付を受給できます。
その一方で、上記のうち厚生年金保険・健康保険・介護保険のみを指して「(狭義の)社会保険」と言うケースもあります。残りの雇用保険と労災保険は「労働保険」と総称されます。
本記事では、単に「社会保険」と言う場合は広義の社会保険を指します。
厚生年金保険・健康保険の加入条件
以下の①~③の要件を全て満たす人は、厚生年金保険および健康保険への加入が義務付けられます。
① 強制適用事業所または任意適用事業所に勤務していること
② 以下のいずれかに該当すること
【パターン1】フルタイム勤務者であること
【パターン2】短時間勤務者であって、一定の要件を満たすこと
③ 除外事由に該当しないこと
強制適用事業所または任意適用事業所に勤務していること
厚生年金保険および健康保険への加入義務の対象となるのは、強制適用事業所または任意適用事業所に勤務している人です。
強制適用事業所とは
「強制適用事業所」とは、以下のいずれかに該当する事業所をいいます。
- 強制適用事業所とは
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・全ての法人の事業所
・個人の事業所であって、従業員が常時5人以上いるもの(農林漁業、サービス業などを除く)
任意適用事業所とは
「任意適用事業所」とは、強制適用事業所以外の事業所で、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けたものをいいます。
従業員が常時4人以下の個人の事業所、または農林漁業・サービス業などを行う個人の事業所は強制適用事業所でないため、原則として厚生年金保険および健康保険への加入義務が生じません。
しかし、従業員の半数以上の同意および事業主の申請によって任意適用事業所になると、厚生年金保険および健康保険への加入義務が発生します。
【パターン1】フルタイム勤務者であること
強制適用事業所または任意適用事業所に勤務している人が、以下の要件をいずれも満たす場合は、厚生年金保険および健康保険に加入する必要があります。
- フルタイム勤務者の要件
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(a)勤務時間が正社員の1週間の所定労働時間の4分の3以上
(b)勤務日数が正社員の1カ月の所定労働日数の4分の3以上
従業員(労働者)のほか、役員(取締役など)についても、上記の要件をいずれも満たす場合は厚生年金保険および健康保険に加入しなければなりません。
【パターン2】短時間勤務者であって、一定の要件を満たすこと
フルタイム勤務者の要件を満たさない人(=短時間勤務者)であっても、以下の要件を全て満たす場合は、厚生年金保険および健康保険に加入する必要があります。
- 短時間勤務者の厚生年金保険・健康保険の加入条件
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・週の所定労働時間が20時間以上あること
・所定内賃金(=残業代などを除いた賃金)が月額8.8万円以上であること
・学生でないこと
・常時雇用している従業員が51人以上の事業所に勤めていること
なお、上記のうち「常時雇用している従業員が51人以上」の要件は、2027年10月以降段階的に撤廃される予定です(後述)。
除外事由に該当しないこと
以下のいずれかに該当する人は、厚生年金保険および健康保険に加入することができません。
- 厚生年金保険・健康保険に加入できない人
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【厚生年金保険・健康保険共通】
・継続雇用期間が1カ月以内の日雇い労働者
・2カ月以内の期間を定めて使用される人
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・雇用期間4カ月以内で、季節的業務に使用される人
・雇用期間6カ月以内で、臨時的事業の事業所に使用される人
・船員保険の被保険者の人
・国民健康保険組合の事業所に使用される人【健康保険のみ】
・後期高齢者医療制度の被保険者の人【厚生年金保険のみ】
・70歳以上の人
介護保険の加入条件|第1号被保険者または第2号被保険者であること
介護保険に加入する必要があるのは、第1号被保険者または第2号被保険者のいずれかに当たる人です。
- 介護保険の加入条件
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① 第1号被保険者
65歳以上の人② 第2号被保険者
40歳以上65歳未満の医療保険加入者
※医療保険=勤務先の健康保険、または国民健康保険
介護保険に加入すべき第2号被保険者(40~64歳)を雇用している事業主は、介護保険料を賃金から控除したうえで年金事務所へ納付する必要があります。
一方、第1号被保険者(65歳以上)については市区町村が介護保険料を徴収するため、事業主が賃金から控除する必要はありません。
雇用保険の加入条件|週20時間以上働いていることなど
以下の①~③の要件を全て満たす人は、雇用保険に加入する必要があります。
- 雇用保険の加入条件
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① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上継続して雇用される見込みがあること
③ 被保険者とならない者に当たらないこと
(例)
・会社の役員
・会社代表者の同居の親族
・季節的業務(雇用期間4カ月以内)に使用される人
・昼間学生
・家事使用人
・海外で現地採用される者
・臨時または内職的に日雇い労働を行う者
など
ただし、以下の「暫定任意適用事業」については、雇用保険への加入が任意とされています。
- 雇用保険の暫定任意適用事業
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個人経営である以下の事業であって、常時5人未満の労働者を雇用するもの
(a)農業、林業
・土地の耕作、開墾の事業
・植物の栽植、栽培、採取、伐採の事業
・その他農林の事業(b)畜産業、養蚕業、水産業
・動物の飼育の事業
・水産動植物の採捕、養殖の事業
・その他畜産、養蚕または水産の事業※国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業および法人である事業主の事業を除く
暫定任意適用事業については、事業主が任意加入の申請を行い、その申請が認められた場合に限り、雇用保険の加入対象となります。
ただし、その事業に使用される労働者の2分の1以上が希望するときは、事業主は雇用保険への任意加入を申請しなければなりません。
労災保険の加入条件|船員保険の被保険者を除く全ての労働者
船員保険の被保険者を除く全ての労働者は、労災保険の加入対象となります。雇用形態を問いません。
正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトなどについても、労災保険に加入させる必要があります。
ただし、以下の「暫定任意適用事業」については、労災保険への加入が任意とされています。
- 労災保険の暫定任意適用事業
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個人経営の事業であって、以下のいずれかに該当するもの
(a)常時雇用する労働者が5人未満の農業であって、特定の危険または有害な作業を主として行う事業以外のもの(b)労働者を常時使用せず、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の林業
(c)常時雇用する労働者が5人未満の畜産、養蚕または水産の事業
※水産の事業については、以下のいずれかに該当するもの
・総トン数5トン未満の漁船によるもの
・災害発生のおそれが少ない河川、湖沼または特定海面において主として操業するもの
暫定任意適用事業については、事業主が任意加入の申請を行い、その申請が認められた場合に限り、労災保険の加入対象となります。
ただし、その事業に使用される労働者の過半数が希望するときは、事業主は労災保険への任意加入を申請しなければなりません。
社会保険料の計算方法
各社会保険について、保険料の計算方法を解説します。
厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の計算方法
厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の計算式は、以下のとおりです。
保険料額=標準報酬月額×保険料率
「標準報酬月額」は、支給される賃金の額に応じて決まります。厚生年金保険料については32段階、健康保険料と介護保険料については50段階の標準報酬月額が設定されています(令和7年度)。
標準報酬月額は、日本年金機構が毎年9月に決定します(=定時決定)。
ただし、支給する賃金の額が大幅に変動した場合などには、定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されます(=随時改定)。随時改定事由に該当した場合は、日本年金機構への届出が必要です。
厚生年金保険料の保険料率は18.300%です。
健康保険料と介護保険料の保険料率は、都道府県によって異なります。
例えば令和7年度の東京都の場合、介護保険の第2号被保険者である人は健康保険分と介護保険分を合わせて11.50%、それ以外の人は健康保険分のみで9.91%です。
なお、厚生年金保険・健康保険・介護保険の保険料は、事業主と被保険者(労働者など)が折半で負担します。
雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算式は、以下のとおりです。
雇用保険料額=賃金総額×雇用保険料率
「賃金総額」とは、労働の対償として支払う全てのものの額をいいます。基本給や手当に加えて、賞与や残業代なども賃金総額に含める必要があります。
雇用保険料率は、事業の種類に応じて定められています。
令和7年度の場合、一般の事業の雇用保険料率は1.45%です。そのうち0.55%が労働者負担、0.9%が事業主負担とされています。
雇用保険料は、年度当初に概算で申告・納付を行い、翌年度の当初に確定申告を行って精算します。
労災保険料の計算方法
労災保険料の計算式は、以下のとおりです。
労災保険料額=年間賃金の見込額×労災保険料率
労災保険料率は、事業の種類に応じて定められています。
労災が発生しやすい傾向にある職種については、保険料率が高く設定されています。令和7年度の場合、通常のサービス業などは0.3%ですが、最も高い金属鉱業・非金属鉱業・石炭鉱業は8.8%となっています。
労災保険料は事業主の全額負担で、被保険者の負担はありません。
労災保険料も雇用保険料と同じく、年度当初に概算で申告・納付を行い、翌年度の当初に確定申告を行って精算します。
社会保険の加入手続き
雇用する従業員が社会保険の加入対象となる場合に、事業主が行うべき手続きを解説します。
厚生年金保険・健康保険・介護保険の加入手続き
厚生年金保険・健康保険・介護保険の加入対象となる従業員を雇用した場合には、事業主が「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出しなければなりません。
勤務時間の変更などによって、既存の従業員が新たに厚生年金保険・健康保険・介護保険の加入対象となる場合も同様です。
被保険者資格取得届の提出期間は、資格取得の事実(雇用や勤務時間の変更など)が生じてから5日以内です。
事業主は、被保険者資格取得届の提出に当たり、従業員の本人確認や個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号の確認を行う必要があります。
雇用保険・労災保険の加入手続き
雇用保険と労災保険の加入手続きは、「一元適用事業」と「二元適用事業」のどちらに当たるかによって異なります。
| 事業の種類 | 概要 | 雇用保険・労災保険の加入手続き |
|---|---|---|
| 一元適用事業 | 二元適用事業以外の事業。雇用保険と労災保険の手続きをまとめて行う | 所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出する |
| 二元適用事業 | 以下のいずれかに当たる事業。雇用保険と労災保険の手続きを別々に行う (a)都道府県および市町村が行う事業、ならびにこれらに準ずる事業 (b)港湾の運送事業 (c)農林・水産の事業 (d)建設の事業 | (a)雇用保険 所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に「保険関係成立届」を提出する (b)労災保険 所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出する |
50人以下の企業にも社会保険の適用が拡大されるのはいつから?
現在では、短時間勤務者(前掲)が厚生年金保険および健康保険の加入対象になり得るのは、常時雇用する従業員が51人以上の事業所に限られています。
2025年の国会で成立した年金制度改正法により、常時雇用する従業員数の要件は、以下のとおり段階的に撤廃されることが決まりました。
| 時期 | 常時雇用する従業員数の要件 |
|---|---|
| 2027年10月~ | 36人以上 |
| 2029年10月~ | 21人以上 |
| 2032年10月~ | 11人以上 |
| 2035年10月~ | 撤廃 |
社会保険に加入させるべきパート・アルバイトなどの範囲が広がるので、各事業者においては注意を要します。
社会保険への加入義務を怠った企業が受けるペナルティ
従業員を社会保険に加入させる義務を怠った事業主は「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されます(健康保険法208条など)。
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参考文献
日本年金機構ウェブサイト「Q.標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。」
厚生労働省ウェブサイト「令和7年度の労災保険率について(令和6年度から変更ありません)」












