SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは?
読み方・具体例・関係する法律・アウティングとの
関係・対策などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

SOGIハラスメント(SOGIハラ)」とは、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関連して行われる嫌がらせです。

性的指向・性自認を理由とする、
・ いじめ・無視・暴力
・ 差別的な言動・嘲笑・呼称
・ 不当な異動・解雇・入学拒否・転校強制
・ 他人の性的指向や性自認を許可なく公表すること
・ 望まない性別での生活の強要
などがSOGIハラに当たります。

この記事ではSOGIハラについて、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

SOGIハラ、初めて聞きました。

ムートン

最近はいろいろなハラスメントがありますからね。ハラスメントの基本から学びたい方は、「ハラスメントとは?定義・種類・関係する法律・発生時の対応方法などを分かりやすく解説!」の記事からお読みください。

※この記事は、2023年11月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • LGBT法…性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律
  • 労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
  • 男女雇用機会均等法…雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
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SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは|読み方も含め分かりやすく解説!

SOGIハラスメント(SOGIハラ)」とは、性的指向性自認に関連して行われる嫌がらせです。「ソジハラ」「ソギハラ」などと読みます。

”SOGI”とは|LGBTQとの違いも解説

SOGI”とは、性的指向(Sexual Orientation)」と「性自認(Gender Identity)」の頭文字を取った総称です。

性的指向とは

「性的指向」とは、恋愛感情または性的感情の対象となる性別についての指向をいいます(LGBT法2条1項)。

言い換えれば、「誰を(男女どちらを)好きになるか」が性的指向です。

性自認とは

「性自認」とは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいいます(LGBT法2条2項)。

言い換えれば、「自分を男性・女性のどちら(またはどちらでもない)と認識しているか」が性自認です。

性的マイノリティの総称である”LGBTQ”は、

  • レズビアン(Lesbian=女性を恋愛対象とする女性)
  • ゲイ(Gay=男性を恋愛対象とする男性)
  • バイセクシュアル(Bisexual=両性を恋愛対象とする人)
  • トランスジェンダー(Transgender=生物学的な性と性自認が一致していない人)
  • クエスチョニング(Questioning=性的指向や性自認が定まっていない人)
  • クィア(Queer=レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーには当てはまらない性的少数者)

という「どんな人であるか」を表す用語です。

これに対してSOGIは、性の要素そのもの(誰を好きになるか/自分の性を男性・女性のどちら(またはどちらでもない)と認識しているか)を表しています。

SOGIハラが問題視されるようになった背景

SOGIハラが問題視されるようになったのは、性のあり方の多様性が社会全体において広く認知されるようになったためです。

性的指向が異性に向いていること(=ヘテロセクシュアル)や、性自認が生物学的性と一致していることを当然視せず、多様な性のあり方を認めて共存すべきだという考え方が浸透したことに伴い、SOGIハラが注目されるようになりました。

LGBTQは性的マイノリティのみを指しているため、該当しない人にとっては他人事のように感じられてしまうおそれがあります。

一方、SOGIは誰もが持っている性の要素です。全ての人が性のあり方の問題を自分のこととして考えることができるように、SOGIという言葉を用いるべきだとする考え方が広まりつつあります。

SOGIハラに当たる行為の具体例

SOGIハラに当たる行為としては、以下の例が挙げられます。

具体例1|性的指向・性自認を理由とするいじめ・無視・暴力
具体例2|差別的な言動・嘲笑・呼称
具体例3|不当な異動・解雇・入学拒否・転校強制
具体例4|他人のSOGIを許可なく公表すること(アウティング)
具体例5|望まない性別での生活の強要

具体例1|性的指向・性自認を理由とするいじめ・無視・暴力

性的指向・性自認を理由とするいじめ・無視・暴力はSOGIハラに当たります。

(例)
・レズビアンであることを理由にいじめられた。
・ゲイであることを理由に無視された。
・トランスジェンダーであることを理由に暴力を振るわれた。

具体例2|差別的な言動・嘲笑・呼称

他人の性的指向・性自認に対する差別的な言動・嘲笑・差別的な呼称はSOGIハラに当たります。

(例)
・ゲイであることを「ホモは気持ち悪い」と侮辱された。
・トランスジェンダーであることを会社の同僚の前で笑われた。

具体例3|不当な異動・解雇・入学拒否・転校強制

職場において、性的指向・性自認を理由に異動を命じたり、解雇したりすることはSOGIハラに当たります。

また学校において、性的指向・性自認を理由に入学を拒否したり、転校を強制したりすることもSOGIハラに当たります。

(例)
・トランスジェンダーであることを「他の従業員が不快に思っているから」などの理由で解雇された。
・「ゲイは気持ち悪い」という上司の偏見によって、希望していない別の部署へ異動させられた。
・入学試験の面接時に性的指向や性自認に関する質問をされ、レズビアンであると答えたところ、「レズビアンはうちの学校に馴染まない」などの理由で入学を拒否された。

具体例4|他人のSOGIを許可なく公表すること(アウティング)

他人の性的指向や性自認を許可なく公表する「アウティング」はSOGIハラに当たります。

(例)
・職場の同僚に、ゲイであることを勝手に暴露された。

具体例5|望まない性別での生活の強要

本人の性自認を無視して、望まない性別での生活を強要することはSOGIハラに当たります。

(例)
・性自認が男性であるにもかかわらず、生物学的性が女性であることを理由に「女性らしくスカートをはきなさい」と言われた。
・性自認が女性であるにもかかわらず、生物学的性が男性であることを理由に「化粧なんて女みたいなことはせず、男らしくしておきなさい」と言われた。

SOGIハラに関連する法律

SOGIハラは「パワーハラスメント(パワハラ)」や「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」にも当たることがあります。
パワハラについては労働施策総合推進法、セクハラについては男女雇用機会均等法によって、それぞれ事業主に防止措置等の義務が課されています。

労働施策総合推進法|SOGIハラとパワハラ

労働施策総合推進法において、パワハラは以下の3つの要件を満たす行為と定義されています。

①優越的な関係を背景として行われること
②業務上必要かつ相当な範囲を超えて行われること
③労働者の就業環境を害すること

SOGIハラに当たる行為のうち、上司が部下に対して行うものや、集団が個人に対して行うものなどは、優越的な関係を背景としているためパワハラに当たることがあります。

事業主(企業)は、SOGIハラを含む職場におけるパワハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

厚生労働省が公表しているパワハラ防止指針では、性的指向や性自認に関する以下の行為がパワハラの例として示されています。

  • 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
  • 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

また、パワハラに関する事後対応に当たっては相談者・行為者等のプライバシーを保護する必要がありますが、プライバシーには性的指向・性自認などの機微な個人情報も含まれることが指摘されています。

男女雇用機会均等法|SOGIハラとセクハラ

男女雇用機会均等法において、セクハラは以下の2つの要件を満たす行為と定義されています。

①職場において行われる性的な言動であること

②以下のいずれかに該当すること
(a)労働者の対応により、当該労働者が労働条件について不利益を受けること(=対価型セクハラ
(b)労働者の就業環境を害する言動であること(=環境型セクハラ

SOGIハラは性的指向や性自認に関する不当な言動であるため、職場で行われた場合にはセクハラにも該当します。

厚生労働省が公表しているセクハラ防止指針では、セクハラには同性に対するものも含まれ、被害者の性的指向や性自認を問わない旨が明記されています。

SOGIハラを放置した場合に企業が負うリスク

職場におけるSOGIハラを放置すると、企業は以下のリスクを負うことになります。

リスク1|被害者から損害賠償請求を受ける
リスク2|レピュテーションが低下する

リスク1|被害者から損害賠償請求を受ける

SOGIハラによって精神的損害などを受けた従業員に対し、会社は安全配慮義務違反(労働契約法5条)または使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償義務を負うことがあります。

リスク2|レピュテーションが低下する

職場においてSOGIハラが横行していることが報道されたり、SNS上で発信されたりすると、企業としてのレピュテーションが大幅に低下してしまいます。

その結果、顧客離れや取引の打ち切りなどによる業績の悪化に直結しかねません。

職場におけるSOGIハラを防止するための対策

職場におけるSOGIハラを防止するため、企業は以下の対策を行いましょう。

対策1|ハラスメント防止方針の明確化および周知・啓発
対策2|ハラスメント相談窓口の設置
対策3|ハラスメント発生時における対応体制の整備

対策1|ハラスメント防止方針の明確化および周知・啓発

まずはSOGIハラを含むハラスメントを禁止する方針を、就業規則などにおいて明確化すべきです。ハラスメント防止方針の内容は、社内報・パンフレット・ホームページなどを活用して、従業員に対して周知・啓発しましょう。

また、ハラスメントを就業規則上の懲戒事由として列挙するなど、SOGIハラをした従業員に対して、厳正な処分ができるようにしておきましょう。

対策2|ハラスメント相談窓口の設置

SOGIハラを含むハラスメントの早期発見および適切に対処を可能とするため、社内または社外においてハラスメント相談窓口を設置しましょう。

相談窓口の担当者は、人事部門と連携してハラスメントに対処することが求められます。適切な対応ができるように、マニュアルの作成や研修などを通じて準備を整えましょう。

対策3|ハラスメント発生時における対応体制の整備

実際にSOGIハラなどの相談を受けた場合に備えて、体制整備を行うことも重要です。調査の担当者や手続きを明確にすること、被害者ケアの仕組みを整備すること、再発防止策を適切に講じることなどが求められます。

職場でSOGIハラが発生した際に企業がとるべき対応

職場においてSOGIハラの発生が疑われる場合は、事態の収拾を図るために以下の対応を行いましょう。

1|事実関係の調査・当事者に対するヒアリング
2|被害者のケア(加害者からの引き離しなど)
3|加害者に対する懲戒処分の検討
4|再発防止策の策定・実施

1|事実関係の調査・当事者に対するヒアリング

まずは事実関係の調査を行い、SOGIハラの有無や実態の正確な把握に努めましょう。

調査の一環として当事者に対するヒアリングも行うべきですが、行為者へのヒアリングについては証拠の隠滅などを防ぐため、客観的な事実の調査が終わった段階で行うのが一般的です。

行為者から合理的な弁明があった場合には、その内容を検討した上で、必要に応じて追加調査を行いましょう。

2|被害者のケア(加害者からの引き離しなど)

SOGIハラの被害者に対しては、安心して仕事ができるように(休職中の場合は復帰できるように)精神的なケアを行いましょう。産業医との面談を勧めたり、メンターが声かけをしたりすることなどが考えられます。

また、SOGIハラの被害者と加害者は、配置転換等を通じて速やかに引き離しましょう。

3|加害者に対する懲戒処分の検討

SOGIハラの事実が認定できた場合は、加害者に対する懲戒処分を検討しましょう。

ただし、懲戒処分を行うには以下の要件を満たしている必要があります。

①就業規則において懲戒の種類と懲戒事由が定められており、その内容が従業員に周知されていること
②従業員の行為の性質・態様などに照らして、懲戒処分が客観的に合理的であり、社会通念上相当であると認められること(=懲戒権の濫用に当たらないこと)

SOGIハラの内容に照らして重すぎる懲戒処分は、懲戒権の濫用として無効になるので注意が必要です(労働契約法15条)。

4|再発防止策の策定・実施

SOGIハラが再び行われないように、再発防止策を策定した上で、従業員に対して周知しましょう。

SOGIハラが発生した経緯を踏まえたうえで、その原因をなくすような対策を検討する必要があります。ハラスメントに対する懲戒規定を強化することも考えられるでしょう。

具体的な再発防止策は、社内の役員・従業員だけでなく、弁護士などの外部専門家も加えて検討するのも一案です。

ムートン

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