出勤簿とは?書き方・保存期間・注意点・
テンプレートの活用方法を
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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出勤簿とは、法定三帳簿のひとつで、企業の労務管理に重要な書類です。
・出勤簿は全ての事業者に作成・保存義務があります。
・出勤簿の保存期間は原則5年ですが、経過措置として当分は3年が適用されます。
・出勤簿には、1分単位での正確な記載が求められます。本記事では、出勤簿について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年6月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
出勤簿とは
出勤簿は法定三帳簿のひとつで、企業の労務管理に重要な書類です。法定三帳簿とは出勤簿、賃金台帳、労働者名簿を指し、労働基準監督署の調査時に必ず確認される書類です。
なお、2019年4月より年次有給休暇管理簿の作成・保管義務が定められたため、これを含めて「法定四帳簿」と呼ぶこともあります。
出勤簿を正しく作成するために、目的や対象者について見ていきましょう。
出勤簿の作成目的
出勤簿の主な作成目的は、労働者の労働時間を正確に記録し、給与計算を行うための客観的な根拠資料として活用することです。
具体的には、以下のような目的で使用されることが一般的です。
- 基本給の算定や時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金を計算するため
- 36協定の上限規制遵守状況を確認するため
- 長時間労働を把握し、安全配慮義務を果たすため
- 残業代未払い請求による労務トラブルを避ける客観的な証拠資料となるため
出勤簿は、適切な労務管理と法令遵守を実現するために必要な書類といえます。
出勤簿に記載する対象者
出勤簿の対象者は、雇用形態にかかわらず原則としてすべての労働者です。
さらに、管理監督者も深夜労働の記録が必要であり、裁量労働制の適用者にも始業・就業時刻の記録が求められます。
派遣社員の場合、派遣先企業が労働時間や休憩・休日の管理責任を負うため、派遣先が出勤簿の作成・管理及び派遣元への通知を行い、派遣元はその通知に基づいて賃金計算や労務管理を行います。
出勤簿とタイムカードの違い
タイムカードは、主に始業時刻と終業時刻を客観的に記録する打刻装置の記録で、労働者の出社・退社時刻を示すデータです。一方、出勤簿はタイムカードの記録をもとに、労働時間を集計・整理し、使用者が確認・承認した公式な帳簿です。
労働時間管理の流れは「タイムカード→出勤簿→賃金台帳」で成り立っており、法定項目を満たすには出勤簿での適切な集計・確認が欠かせません。
出勤簿と賃金台帳の違い
出勤簿は労働日数や労働時間数を記録・集計する帳簿で、主に時間に関する情報を管理します。一方、賃金台帳は、出勤簿の労働時間データをもとに算出された給与額や各種手当など、主に金額に関する情報を記録する帳簿です。
出勤簿の記録が不正確だと賃金台帳も法的要件を満たさなくなるため、出勤簿の正確性の確保が重要です。
賃金台帳については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
出勤簿と労働者名簿の違い
労働者名簿は労働基準法107条にもとづいて作成される帳簿で、労働者の人事情報を記録します。一方、出勤簿は、労働日数や労働時間数など労働時間を継続的に記録する帳簿です。
労働基準監督署の調査時には、法定三帳簿の提出が必要となるため、目的と記載事項の理解・管理が重要です。
労働者名簿については、以下の記事で詳しく解説しているためご参照ください。
出勤簿の必須項目と書き方
出勤簿を正確に記録するには、必須項目と書き方を理解する必要があります。出勤簿には、以下の項目の記載が必要です。
- 出勤日と出勤日数
- 労働日数と始業・終業時刻と休憩時間
- 時間外労働を行った日付・時刻・時間数
- 休日労働を行った日付・時刻・時間数
- 深夜労働を行った日付・時刻・時間数
- 氏名
下記では、各項目と書き方について解説します。
出勤日と出勤日数
出勤日と出勤日数では、労働者の出勤日を個別に記録し、賃金計算期間ごとの総出勤日数の記載が必要です。出勤区分は出勤・有給休暇・欠勤・遅刻・早退・振替休日などを明記し、遅刻や早退には理由を添えて記録すると労務管理の透明性が高まります。
出勤日と出勤日数の記録は、給与計算や有給管理、勤怠分析にも活用されます。
労働日数と始業・終業時刻と休憩時間
労働日数と始業・終業時刻、休憩時間は、労働時間を正確に算出するための必須項目です。
労働時間の把握は使用者の義務であり、始業・終業時刻の客観的記録にもとづいて実労働時間を算出し、時間外労働や割増賃金の計算根拠とする必要があります。
また、休憩時間も開始・終了時刻を記録として残しておきましょう。
時間外労働を行った日付・時刻・時間数
時間外労働は、法定労働時間の1日8時間・週40時間を超えた労働時間を正確に記録し、36協定の上限規制遵守と適正な割増賃金支払いのために記載が必要です。
2019年4月の働き方改革関連法により、月45時間・年360時間の原則的上限として定められ、超過時には法的処罰の対象となるため注意が必要です。
時間外労働の記載には、実施した日付、開始・終了時刻、時間数を明確に記録します。月末に時間外労働の合計時間を集計し、36協定で定めた上限時間との比較を行います。時間外労働に対しては25%以上の割増賃金支払い義務があることを把握しておきましょう。
休日労働を行った日付・時刻・時間数
休日労働は、法定休日労働と法定外休日労働(所定休日労働)を区別した記録が必要です。
労働基準法では週1日または4週4日の法定休日が定められており、法定休日に労働させる場合は36協定の締結と35%以上の割増賃金支払いが義務付けられています。
一方、法定外休日(所定休日)の労働は、労働時間が1日8時間または週40時間を超えた場合、超過分に対して25%以上の割増賃金が必要です。
休日労働も時間外労働の上限規制に含まれるため、月間・年間の総労働時間管理が重要で、「休日労働を含む月間時間外労働:49時間」といった集計も必要です。
深夜労働を行った日付・時刻・時間数
深夜労働は、午後10時から午前5時までの時間帯での労働を指し、管理監督者も含めたすべての労働者が記録対象です。
労働基準法37条により、深夜労働に対して25%以上の割増賃金支払いが義務付けられており、管理監督者でも深夜業の規制は適用されます。時間外労働と深夜労働が重複する場合、午後10時以降の時間外労働は50%の割増賃金(時間外25%+深夜25%)が適用されます。さらに、月60時間を超える時間外労働は、割増率が50%に引き上げられており、深夜と重複した場合には合計75%の割増賃金が必要です。
深夜労働は労働者の健康に与える影響が大きいため、実施日付、労働時間全体、深夜労働時間を明確に区分して記録することが重要です。
出勤簿の保存
出勤簿は作成と管理だけでなく、適切な保存も法律で義務付けられています。労務トラブルや監督署の調査に備えるためにも、以下では出勤簿の保存について解説します。
出勤簿の保存期間
出勤簿の保存期間は、労働基準法109条により5年間、経過措置として当分は3年間と定められています。起算日は、記録完結日(多くの場合は月末や賃金計算期間の末日)から計算し、退職者は最終出勤日から5年間の保存が必要です。
労働審判や訴訟係属中、労働基準監督署から資料提出要求がある場合、監査法人・税務調査で必要な場合も保存継続が求められます。
出勤簿の保存方法
出勤簿の保存方法は、紙媒体やクラウド保存により要件や注意点が異なるため、自社の規模や業務体制に適した方法を選ぶ必要があります。
紙媒体保存は安全性が高い反面、保管スペースの確保や検索性の低さ、劣化・紛失リスクなどが課題です。また、クラウド保存は利便性が高い一方、サービス依存やセキュリティ管理が求められます。
出勤簿の保存義務違反によるペナルティ
出勤簿の保存義務違反は、労働基準法120条による30万円以下の罰金、労働基準監督署からの是正勧告・指導、重大・悪質な場合は書類送検の可能性があります。
出勤簿は労働時間管理の客観的証拠であり、保存義務違反は刑事罰の対象として厳格に取り扱われています。
保存義務違反を防止するには、定期的な保存状況の点検や労働基準監督署調査に備えた対応マニュアル整備と担当者への周知が重要です。
出勤簿を作成するときの注意点
出勤簿を適切に作成するには、以下の注意点を確認しておきましょう。
- 労働時間を1分単位で記録する
- 手書きの出勤簿には注意が必要
- 印鑑を押すだけでは認められない
- 法改正に注意する
出勤簿をスムーズに作成するためにも、事前に以下の注意点を見てみましょう。
労働時間を1分単位で記録する
出勤簿の労働時間記録は、労働基準法24条の賃金全額払いの原則に基づき、原則1分単位で行う必要があります。
15分未満や30分未満の端数切り捨ては、労働時間の賃金の不払いとなり、労働基準法違反のリスクが高くなるため注意が必要です。
月間の時間外労働、休日労働、深夜労働の合計時間については、1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる端数処理が例外的に認められる場合もあります。ただし、就業規則での明記と公正な運用が条件です。
手書きの出勤簿には注意が必要
手書きの自己申告による出勤簿の作成自体は、違法ではありません。しかし、自己申告の結果、働き方改革関連法施行による労働安全衛生法の改正により義務となった「客観的な労働時間の把握や使用者の確認」が不十分である場合は、労働時間管理義務違反となる可能性があります。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、自己申告性による労働時間の把握も可能とされていますが、その際は以下の対応が求められます。
- 自己申告制に関し労働者、管理者に対して十分な説明を行うこと
- 自己申告された労働時間と入退場記録から把握した在社時間などに著しい乖離がある場合は実態調査を実施し、補正すること
- 自己申告できる時間数に上限を設けるなど、適正な自己申告を阻害する措置を設けないこと
- 違法な時間労働の延長を記録状適正であるかのように偽装することが慣習的に行われていないか確認すること
このような背景から、実務では手書きによらず、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間記録等の客観的な方法による労働時間の把握が原則です。
適法に運用するには、客観的記録との照合・確認、定期的な実態調査、使用者と労働者双方の確認などが不可欠です。
印鑑を押すだけでは認められない
出勤日に印鑑を押すだけの出勤簿は、労働時間の記録が不十分で、労働基準法が求める記載事項を満たしていないため不適切です。
また、出勤簿は賃金台帳を作成する際の根拠資料のひとつとされており、記録内容は労働基準法に基づく記載義務とも関係します。
労働基準法108条では、賃金台帳に「労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数」の記載が義務付けられています。
印鑑のみの出勤簿を使用している場合は、法的要件を満たす出勤簿フォーマットへの早急な見直しが重要です。
法改正に注意する
労働法制は継続的に改正されており、出勤簿の記載要件や管理方法も最新の法令・ガイドラインに準拠した運用が必要です。
改正に対応しない出勤簿運用は、法令違反のリスクを抱えることになります。法改正への対応を確実にするには、厚生労働省のウェブサイトや労働局からの情報を定期的に確認し、専門家との相談や業界団体のセミナー参加により最新情報を入手することが重要です。
出勤簿のペーパーレス化(勤怠管理システムの導入)
出勤簿のペーパーレス化とは、紙による手書きや印鑑管理の出勤簿から、勤怠管理システムの電子的な仕組みに移行し、デジタルで労働時間を記録・管理することです。
近年は、労働時間の正確な記録や帳簿の長期保存が求められるなど、法令への対応が強化されており、ペーパーレス化の需要が高まっています。
勤怠管理システムを導入するにあたり、自社の勤務形態に合う記録方法や集計機能、帳簿出力機能などを比較・検討し、段階的に移行を進めることが重要です。
出勤簿を電子化する3つメリット
出勤簿を電子化するメリットは、主に以下の3点が挙げられます。
- 業務効率化を図れる
- 人為的ミスを減らせる
- 他のアプリ・システムと連携できる
出勤簿の電子化を検討している場合、まずはメリットを確認しておきましょう。
業務効率化を図れる
出勤簿の電子化により、従来の手作業による集計・計算・転記作業が大幅に削減され、業務効率化が可能です。
紙やエクセルでの手動管理では、毎日の記録や月末の集計作業、給与計算への転記などをすべて手作業で行うため、多くの作業時間を要します。
勤怠管理システムを導入すれば、管理や計算が自動化され、短時間で作業が完了します。また、36協定のチェックや有給残日数管理もリアルタイムで行え、労基署への資料準備も必要データを即座に出力可能です。
人為的ミスを減らせる
出勤簿を電子化すると、手作業による記入ミス、計算ミス、転記ミスが排除され、労働時間管理の正確性が大幅に向上します。
出勤簿の手動管理は、始業・終業時刻の記入ミスや36協定上限の見落としなどの人為的ミスが発生しやすく、給与の過不足支給や法令違反につながります。
勤怠管理システムを導入することで、労働時間や休日・深夜労働の集計や36協定の自動監視、賃金台帳と給与計算ソフトの自動連携によりミスを減らし、正確で効率的な管理が可能です。
他のアプリ・システムと連携できる
出勤簿を電子化すれば、給与計算ソフトや人事・会計システムなどとの自動連携が可能となり、業務全体のデジタル化と一元管理を実現し、効率化とミス防止に直結します。
紙やエクセル管理では、勤怠データを手動で複数のシステムに重複して入力する必要があり、作業効率の悪化と入力ミスの原因でした。
勤怠管理システム導入すれば、API連携やデータエクスポート機能により、シームレスなデータ連携が可能になります。
出勤簿を電子化する3つのデメリット
出勤簿を電子化する際は、メリットだけでなくデメリットもあわせて確認することが重要です。
- 導入時にコストと時間がかかる
- システムに慣れるための研修が必要になる
- システム障害やデータ損失のリスクがある
以下では、各デメリットについて解説します。
導入時にコストと時間がかかる
出勤簿の電子化は、初期導入費用と月額運用費用に加え、システム設定やデータ移行、労働者教育などに時間とコストがかかる点に注意が必要です。
勤怠管理システムの導入には、システム利用料や月額費用などのコストが発生します。さらに、移行期間は1〜3カ月間程度と時間を要する可能性があります。
ただし、出勤簿の電子化は、長期的には業務効率化や法令対応の強化も見込めるため、自社の状況に応じて導入するとよいです。
システムに慣れるための研修が必要になる
出勤簿の電子化では、労働者全員がシステム操作を習得する必要があり、ITに不慣れな労働者や年配社員への研修に時間と労力を要します。
管理者は承認フローや管理機能の習得に加え、部下への指導スキルも必要です。また、操作方法に慣れるまでには個人差があるため、研修の実施にも時間を要します。
研修効果を高めるためには、ITスキルレベル別の研修プログラム作成や実践的研修の実施が重要です。
システム障害やデータ損失のリスクがある
出勤簿の電子化には、システム障害やサーバーダウン、データ消失やセキュリティ侵害などのリスクがあります。
クラウド型勤怠管理システムの場合、インターネット接続とサーバーの安定性に依存するため、打刻不能や出勤簿データへのアクセス不能が発生するおそれがあります。
リスクに備えるには、システムを選ぶ段階で障害発生時の対処法やデータのバックアップ体制などを確認することが重要です。
出勤簿テンプレートの活用
出勤簿を効率的に作成・管理するには、用途に合ったテンプレートを選ぶ必要があります。以下では、エクセル・PDF形式・自動計算付きテンプレートなど、主な出勤簿テンプレートの活用方法を紹介します。
エクセルテンプレート
エクセルテンプレートを活用すれば、手作業による計算ミスを防ぎつつ、勤怠管理システムほどの費用をかけずに業務効率化を実現できます。
エクセル関数の活用により、労働時間の自動計算や時間外労働・深夜労働・休日労働の自動判定・集計、有給休暇残日数の自動管理など、豊富な機能を利用可能です。
うまく活用すれば、手動計算時間が瞬時に短縮され、月末集計作業も短時間で完了し、労基署資料準備もスピーディーに行えるようになります。
PDF形式テンプレート
出勤簿PDFテンプレートは、手書き運用を継続したい企業や印刷配布が必要な現場作業主体の業種において、統一されたフォーマットでの勤怠管理を実現する選択肢です。
PDF形式は、印刷時のレイアウト崩れがなく、どの環境でも同じ表示・印刷結果が可能なため、統一性を確実に保てます。
手書き記入後のスキャン保存や電子化移行時の移行期間運用、緊急時・システム障害時のバックアップ運用など、多様な活用方法があります。
自動計算付きテンプレート
出勤簿の自動計算付きテンプレートは、正確な労働時間管理と36協定・有給休暇管理の自動化を実現し、法令遵守と業務効率化の両立が可能です。
厚生労働省基準に準拠し、働き方改革関連法や割増賃金の自動計算などに対応するなど、包括的な法令遵守支援機能を備えています。
自動計算付きテンプレートには無料版や1カ月・6カ月・1年分対応のもの、業種別カスタマイズ版などの多様な選択肢があるため、適切な選択が重要です。
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