退職証明書とは?
記載内容や発行の流れ、
注意点を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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退職証明書とは、労働基準法に基づき、労働者が請求した場合に企業側が「退職したこと」や在籍期間中の労働条件等を証明する書類です。
・退職証明書は、労働基準法22条1項に基づき、退職者から請求があれば「遅滞なく」発行することが義務付けられています。
・労働者や退職者からの申請がない場合は、発行する必要はありません。
・正当な理由なく発行を拒んだ場合は、30万円以下の罰金が科される場合があります。本記事では、退職証明書について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
退職証明書とは
退職証明書は、労働者が請求した場合に、会社が退職の事実や在籍中の労働条件などを証明する書類です。
労働基準法22条1項により、退職証明書には使用期間・業務内容・役職・賃金・退職理由などを記載し、遅滞なく交付しなければなりません。請求は退職日から2年以内に限られ、期限を過ぎると発行義務はなくなります。
発行を拒否したり遅延したりした場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
退職証明書と離職票の違い
退職証明書と離職票は、発行元・法的根拠・使用目的が異なる書類です。
退職証明書は労働基準法に基づき、企業が退職者本人の請求に応じて発行する証明書で、転職や各種手続きに使用されます。
一方、離職票は雇用保険法に基づき、企業がハローワークに離職証明書を提出したうえで、ハローワークが発行する公的書類です。失業給付の申請時に必要となり、企業が直接発行するものではありません。
退職証明書と離職証明書の違い
退職証明書と離職証明書は、発行先や発行条件が異なります。
退職証明書は、退職者から請求があった場合に企業が発行し、本人に交付する書類です。
一方、離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は、雇用保険に加入していた従業員が離職した際、企業がハローワークに提出しなければならない書類です。
退職証明書と解雇理由証明書の違い
退職証明書と解雇理由証明書は、目的と記載内容が異なります。
退職証明書は退職の事実や在籍期間などを証明する一般的な書類です。一方、解雇理由証明書は、労働基準法22条2項に基づき、解雇された労働者が請求した際に、具体的な解雇理由を記載して交付するものです。
退職証明書では「退職の事由:解雇」と簡潔な記載で問題ありません。一方、解雇理由証明書では、遅刻・欠勤の回数や業務能力の問題など、就業規則に基づく詳細な理由を明記する必要があります。
退職証明書の記載内容と書き方
退職証明書には、法律で定められた項目を中心に、一定の情報を記載する必要があります。用途に応じて記載項目を選択できる点も特徴のひとつです。ただし、退職者の希望しない事項を記載することはできません。
退職証明書の主な記載内容は、以下のとおりです。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合は解雇理由)
以下では、実務で迷いやすい記載内容や書き方のポイントについて、項目ごとに詳しく解説します。
使用期間
退職証明書における「使用期間」とは、従業員が会社に在籍していた期間のことです。
入社日と退職日を明確に記載し、年・月・日まで正確に記入する必要があります。使用期間の情報は、勤続年数の確認や試用期間の判断材料として、転職先企業や行政機関で重視されます。
書き方としては「○年○月○日から○年○月○日まで」と表記してください。
実際の勤務開始日ではなく、雇用契約に基づく在籍期間を記載する点に注意が必要です。不明確な記載は誤解を招く恐れがあるため、就業規則や雇用契約書を確認して正確に記入する必要があります。
業務の種類
退職証明書の「業務の種類」には、退職者が実際に従事していた職務内容を具体的かつ正確に記載する必要があります。
転職先の職務経歴確認にも関わるため、抽象的な表現は避けるべきです。記載例としては、「営業部における法人営業業務」「経理部における決算・会計処理業務」など、部署名と業務内容をセットで記載します。
複数の部署を経験している場合は、在籍期間ごとに分けて記入します。
その事業における地位
退職証明書における「その事業における地位」とは、退職者が在籍中に就いていた役職や職位をいいます。
記載する際は、就業規則や組織図に基づき、正式名称で正確に記入します。例えば、「営業部課長」「総務部主任」「一般職」など、職位を明確に記載することが必要です。
昇進・昇格があった場合は、「一般職(令和3年4月~令和5年3月)、主任(令和5年4月~令和6年3月)」のように、期間を区切って記載します。責任範囲を示す補足があると、より実態に即した内容になります。
賃金
賃金について記載する際は、基本給・諸手当・賞与などの内訳を分け、正確な金額と支給時期を明示することが重要です。例えば、「基本給25万円、諸手当5万円、月額計30万円(令和6年3月支給分)」など、具体的に記載します。
年収を記載する場合は、「年収420万円(基本給300万円、諸手当60万円、賞与60万円)」のように内訳も明記します。希望がない場合は、「退職者の希望により記載しない」と明記するか、項目自体を省略することも可能です。
退職の事由(解雇の場合は解雇理由)
退職証明書の「退職の事由」は、客観的事実に基づいた正確な記載が必要です。
自己都合退職であれば「一身上の都合により退職」や「転職のため退職」、会社都合退職であれば「事業縮小のため退職」や「定年退職」など、具体的な理由を明記します。
解雇の場合は、就業規則に明示された解雇事由に基づき「就業規則第○条第○項に該当する事由により解雇(無断欠勤○日間など)」のように、根拠と具体的事実を記載します。
退職勧奨では「会社からの退職勧奨に応じて退職」と記載するのが適切です。
退職証明書の発行が求められる場面
退職証明書は、退職後の各種手続きや転職活動の場面で必要とされることがあります。求められる理由や提出先はケースによって異なり、内容や発行タイミングにも注意が必要です。
退職証明書の発行が求められる場面は、主に以下のとおりです。
- 従業員が転職先企業から提出を求められた場合
- 従業員が退職後に国民健康保険や国民年金へ加入する場合
- 従業員が離職票を紛失した場合
以下では、実務でよく見られる具体的な場面について紹介します。
従業員が転職先企業から提出を求められた場合
退職済の元従業員が転職先企業から退職証明書の提出を求められたなど、労働者から退職証明書の発行の請求を受けた場合、企業は労働基準法22条1項に基づき、労働者に退職証明書を遅滞なく発行する義務があります。
転職先企業では一般的に、退職理由や在籍期間、職務内容などを確認し、採用判断や試用期間の設定に役立てます。とくに正社員採用や中途採用では、入社手続きの一環として提出を求められることがあります。
発行が遅れると転職活動に支障をきたす恐れがあるため、社内での対応体制を整えておくことが重要です。
従業員が退職後に国民健康保険や国民年金へ加入する場合
従業員が退職後に国民健康保険や国民年金へ切り替える場合、市区町村の窓口で退職証明書の提出を求められることがあります。
とくに離職票の発行前や紛失時には、退職証明書が被保険者資格喪失の証明書類として必要になるため、企業側は迅速な対応が重要です。
記載内容には「退職年月日」「退職理由」「社会保険の資格喪失日」などが含まれるため、正確な情報に基づいて発行する必要があります。
従業員が離職票を紛失した場合
従業員が離職票を紛失した場合、企業は退職証明書を代替書類として発行し、迅速に対応する必要があります。
離職票の再発行には時間がかかるため、失業給付の申請や各種手続きを円滑に進めるためには、退職証明書の発行が有効です。元従業員からの請求があれば、企業は退職証明書を遅滞なく交付しなければなりません。
退職証明書発行の流れ
退職証明書は、従業員からの請求に応じて企業が発行する書類であり、発行までの流れを正しく理解する必要があります。退職証明書発行の流れは、以下のとおりです。
- 退職者からの請求受付
- 記載事項の確認
- 退職証明書の作成
- 退職日に合わせて発行・交付
- 発行済みの退職証明書のコピーを記録・保管
以下では、退職証明書を発行する際の基本的な流れについて解説します。
1|退職者からの請求受付
退職証明書の発行は、退職者からの請求があった時点で始まります。請求方法は、退職前の事前申請、退職日当日の依頼、退職後の郵送・電話・メールによる連絡などさまざまです。
代理人を通じた請求が行われる場合もあります。転職先への提出期限が迫っているケースでは、迅速な対応が求められます。
企業側では、請求窓口を明確にし、身元確認・請求内容の記録・発行予定日の通知など基本的な受付体制を整備しておくことが重要です。
2|記載事項の確認
退職証明書の発行の際は、記載内容を退職者の請求に基づき正確に確認することが重要です。
労働基準法22条1項では、「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」の5項目のうち、請求があった事項のみを記載すると定められています。
未請求の項目を記載することは同法22条3項違反となります。また、ブラックリストの回覧など、計画的に就業を妨害する行為は同法22条4項で禁止されているため、注意が必要です。
企業側は、口頭請求の場合でも書面で内容を確認し、記録を残す体制を整えることが重要です。
記載希望を明確にできる申請書をあらかじめ用意することで、確認漏れや記載ミスを防ぎ、法的リスクの回避につながります。
3|退職証明書の作成
退職証明書の作成は、正確な情報をもとに統一された書式で行います。
記載ミスや不備があると、退職者に不利益を与えるだけでなく、企業の信頼や法的リスクにも関わるため、細心の注意が必要です。作成時は、厚生労働省の様式を参考にした社内テンプレートを使用し、人事システムの情報を正確に転記します。
発行日・発行者名・宛名の記載漏れがないよう確認を徹底し、会社印や代表者印も適切に押印する必要があります。作成・確認・承認の担当者を分けた体制を整えれば、書類の正確性と信頼性の確保が可能です。
4|退職日に合わせて発行・交付
退職前に請求を受けた場合、退職証明書の発行・交付は、原則として退職日に合わせて行います。
交付方法は、退職日当日の手渡しのほか、退職予定日を記載した事前発行、書留などによる郵送、PDF形式でのメール送付、代理人への交付などが考えられます。
とくに国民健康保険や国民年金の手続きには期限があるため、迅速な対応が必要です。複数の交付手段を用意し、交付記録を残すことで、確実な対応と退職者の利便性を両立できます。
5|発行済みの退職証明書のコピーを記録・保管
退職証明書を発行した際は、コピーを記録として適切に保管する必要があります。
発行履歴は、後日の労働紛争や行政調査への対応、再発行依頼への備えとして重要な役割を果たします。保管方法としては、発行済み書類のコピーを紙または電子データで保存し、発行日・発行者・交付方法などを台帳に記録します。
保管期間は労働基準法の時効(3年)を目安に設定し、個人情報保護の観点からアクセス権限を制限することも重要です。
企業は記録管理規程を整備し、法的リスクの低減と業務の効率化を図ることが求められます。
労働者の退職時に交付が必要なその他の書類
退職時には退職証明書のほかにも、労働者に対して交付すべき書類が複数あります。書類は、離職後の公的手続きや再就職活動に必要となるため、内容や役割を正しく理解し、確実に準備しなければいけません。
以下では、それぞれの書類について詳しく解説します。
離職票
離職票は、雇用保険被保険者が退職した際に、失業給付の申請に必要となる公的書類です。
企業は雇用保険法に基づき、退職日の翌々日から10日以内に離職証明書をハローワークへ提出します。その後、ハローワークを通じて離職票(離職票-1・2)が交付されます。
離職票は、退職者が59歳以上である場合を除いて、本人が希望しなければ発行されません。離職票には、被保険者番号・退職日・離職理由・直近6カ月の賃金などを記載し、内容は客観的事実に即して作成する必要があります。
源泉徴収票
源泉徴収票は所得税法に基づき、退職者に対して必ず交付すべき法定書類です。
所得税法226条では、企業は退職した従業員に対し、退職日以後1カ月以内に源泉徴収票を交付する義務があると定められています。
確定申告や転職先での年末調整に必要不可欠なため、支払金額・源泉徴収税額・控除額・扶養親族数などの情報を正確に記載することが重要です。12月31日時点で在職していない場合は、年末調整は行わず、確定分のみを記載します。
退職証明書を発行する際の注意点
退職証明書を発行する際は、以下の注意点を事前に把握しておく必要があります。
- 労働者の請求しない事項を記入してはならない
- 退職者からの請求があった場合のみ発行義務が生じる
- 正当な理由なく遅延や拒否した場合は罰則が科される
- 退職者本人以外からの請求は本人の同意や委任状が必要である
- 個人情報の保護を徹底する
以下では、退職証明書の発行時に注意すべきポイントについて解説します。
労働者の請求しない事項を記入してはならない
上記のとおり、退職証明書には、労働者が請求した事項のみを記載しなければなりません。
労働基準法22条3項では、請求していない事項を記入することを禁じており、違反すればプライバシー侵害や就業妨害とみなされる恐れがあります。
記載できるのは「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」の5項目で、退職者は必要な内容だけを選んで請求できます。企業側が独断で不要な項目を追加することは認められていません。
発行時には、記載希望項目を退職者に必ず確認し、内容を記録として残す対応が求められます。
退職者からの請求があった場合のみ発行義務が生じる
退職証明書は、退職者本人からの請求があった場合にのみ発行義務が生じます。
労働基準法22条1項でも「労働者が……請求した場合においては、使用者は、……交付しなければならない」と明記されており、一律で発行する書類ではありません。退職者の任意の請求に基づいて発行する運用とすることで、不要な事務処理や個人情報の過剰な提供を防げます。
退職手続き時には、証明書の必要有無を本人に確認し、内容の記録が必要です。
正当な理由なく遅延や拒否した場合は罰則が科される
退職証明書の発行を正当な理由なく拒否または遅延した場合、企業は労働基準法120条により30万円以下の罰金を科される可能性があります。
労働基準法22条1項では「遅滞なく」交付する義務が定められており、企業側の都合や感情的な対応は認められていません。
「遅滞なく」とは、事情が許す限り早くを意味しますが、具体的な日数が定められているわけではありません。ただし、遅延した対応は違法とみなされる恐れがあるため、でき得る限り早く発行する必要があります。
意図的な遅延や不当な拒否は、労働基準監督署への申告や行政指導の対象となるため、社内で対応ルールを整備し、担当者に法的義務を周知することが重要です。
退職者本人以外からの請求は本人の同意や委任状が必要である
退職証明書は、原則として退職者本人からの請求に基づき発行します。
第三者からの請求に応じる場合は、本人の同意書や委任状の提出が必要です。記載内容には退職理由や労働条件などの個人情報が含まれるため、本人以外への交付には慎重な対応が求められます。
家族であっても同意がなければ交付できず、代理人による請求には委任状と身分証明書の確認が必須です。電話や口頭のみの確認では不十分なため、書面での手続きを徹底する必要があります。
社内では確認手順や委任状の様式を明文化し、対応ルールを明確にしておくことが重要です。
個人情報の保護を徹底する
退職証明書の発行の際は、個人情報の保護を徹底する必要があります。
証明書には氏名、在籍期間、職務内容、賃金などの機微な情報が含まれるため、個人情報保護法に基づいた適切な管理が求められます。電子ファイルはパスワードを設定し、アクセス権限を人事担当者に限定することが基本です。
郵送の場合は、書留や本人限定受取郵便を利用し、誤送付による情報漏洩を防ぐ対策が必要です。発行記録の保存期間を明確に定め、期間終了後は適切に廃棄します。
社内規程に基づいた運用とあわせて、担当者への情報管理研修も継続的に実施することが望ましいです。
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