税法上の扶養とは?
2025年の税制改正や
手続きの仕方を分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

税法上の扶養とは、親族を養うことでその人の税負担が軽くなる制度です。

・親族を扶養に入れるには、親族との関係所得年齢などが基準になります。
2025年は税制が大きく改正されたため、基準となる所得額や新制度に注意が必要です。
・扶養の反映は毎月の源泉徴収や12月の年末調整を経て実施します。

本記事では、税法上の扶養の概要や2025年の税制改正について解説します。

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税法上の扶養とは、どういった条件で適用されるのでしょうか。

ムートン

税法上の扶養は、2025年の税制改正により、要件が大きく変わりました。適用条件については最新情報の理解が求められます。税法上の扶養の要件や改正された税制の理解を深めましょう。

※この記事は、2025年9月15日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

税法上の扶養とは

税法上の扶養とは、生計を共にしている所得の少ない家族を養うことで、税負担が軽減される仕組みです。これは扶養控除と呼ばれ、多くの人が利用しています。扶養できる親族の範囲や年齢要件、所得要件について解説します。

扶養にできる親族の範囲

税法上の扶養対象となる親族の範囲は、配偶者を除いた6親等内の血族と3親等内の姻族です。具体的には、以下のような人が該当します。

  • 自身の子ども
  • 両親
  • 別居する祖父母
  • 兄弟姉妹
  • 配偶者の父母
  • 叔父・叔母

上記の親族は、生計を共にしていれば、同居・別居どちらでも扶養対象になり得ます。例えば、離れて暮らす親に毎月仕送りをしている場合や、修学のために別居している子どもの生活費を援助しているケースでは、その親族を扶養に入れられる可能性があります。

扶養に入れられる年齢要件

税法上の扶養に入れられるのは、16歳以上の親族です。そのため、小学生や中学生といった16歳未満の子どもは扶養控除の対象外です。

高校生の子どもが16歳になると、その年から扶養控除の対象になります。また、19歳以上23歳未満の大学生などは「特定扶養親族」として、70歳以上の親は「老人扶養親族」として、それぞれ控除額が大きくなります。

扶養に入れられる所得要件

扶養親族になるための所得要件は、所得が58万円以下であることです。所得とは、収入から必要経費を引いたものを指します。給与収入に換算すると、年収123万円以下です。親族を扶養に入れる際は、学生の子どものアルバイト収入や自身の親の年金受給額が基準に収まっているかを確かめる必要があります。

所得が58万円を超えると、その時点で扶養の対象からは外れます。扶養の可否を決める重要な要件のため、親族の収入を慎重にチェックするのが望ましいです。

税法上と社会保険上の扶養の違い

扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」があり、それぞれ目的や要件が異なります。

制度の目的や判断基準

税法上の扶養は、扶養する人の税負担を軽減する仕組みです。控除額を所得から差し引くことで、所得税・住民税を軽減します。

一方、社会保険上の扶養は、扶養される家族が自身で保険料の負担をせずとも、健康保険の給付や医療保障を受けられる仕組みです。そのため、世帯としての支出がいくらか減ります。

それぞれ目的が異なり、制度の運用の仕方や扶養の基準も異なります。

「年収の壁」の違い

税法上の扶養と社会保険上の扶養で異なるのが、年収の壁です。それぞれ以下のような壁が存在し、扶養に入れるかどうか判断する基準になります。

扶養の種類年収の壁
税法上の扶養123万円の壁(旧 103万円の壁)
社会保険上の扶養106万円の壁
130万円の壁

税法上の扶養における年収の壁は「123万円の壁」と呼ばれ、扶養に入ろうとする親族の収入が123万円を超えると、扶養から外れ、扶養控除の対象外となります。

一方、社会保険上の扶養における年収の壁は「106万円の壁」と「130万円の壁」の2つです。106万円の壁は、従業員51人以上の企業で週20時間以上勤務する人が、会社の社会保険に加入する基準です。130万円の壁は、自身で国民健康保険や国民年金に加入する必要のある基準です。収入が106万円超、もしくは見込み年収130万円以上の場合、扶養には入れません。

会社としては、従業員が扶養する親族の年収がいくらなのかを、正確に把握する必要があります。

手当の取り扱いの違い

扶養の対象かを判断する際は、前述のとおり年収が基準となりますが、取り扱いに注意したいのが「手当」です。

とくに通勤手当(交通費)は気をつけなければなりません。交通費は社会保険上の扶養においては、収入に含まれるものの、税法上の扶養においては原則含まれません。税法上、通勤手当は一定額まで非課税のため、年収123万円の壁を計算する際の給与収入には加算しません。しかし社会保険では、通勤手当も労働の対価である「報酬」と見なされ、年収130万円の壁などの計算に含める必要があります。

2025年の税制改正点

2025年度からは税制が改正され、扶養に関する控除や年収の壁に変化がありました。なかでもポイントとなる以下の3点について解説します。

  • 所得要件が48万円→58万円に引き上げ
  • 扶養親族の所得要件の改正
  • 特定親族特別控除の創設

所得要件が48万円→58万円に引き上げ

2025年分の所得税から、家族を税法上の扶養に入れるための所得基準が48万円以下から58万円以下に変わります。働き方の多様化などを踏まえたもので、扶養控除の適用範囲を広げる目的で改正されました。この基準は、どの扶養親族にも共通して適用されます。

扶養に入るかどうかの基準点がこれまでと変わるため、事務処理の際は新しい基準を念頭に手続きをする必要があります。

扶養親族の所得要件の改正

前述の通り、合計所得金額が引き上げられたことで、パートやアルバイトで働く家族の「年収の壁」も引き上げとなりました。これまで「103万円の壁」と言われていたものが、2025年からは「123万円の壁」に変わりました。詳細は以下のとおりです。

  • 基礎控除:58万円
  • 給与所得控除:65万円

基礎控除は48万円から58万円に、給与所得控除は最低控除額が55万円から65万円に引き上げられています。つまり、基礎控除と給与所得控除を合計して、年間123万円までは、扶養から外れることなく働けるのです。

なお、子どもや親のほか、生計を共にする配偶者の扶養についても、同様に48万円から58万円までに引き上げられています。配偶者の年収が123万円以下であれば、最大38万円(70歳以上は48万円)の配偶者控除を受けられます。

123万円を超えても配偶者特別控除があるため、年収150万円までは最大38万円の控除が適用されます。ただし、配偶者の年収が123万円を超えると、税負担が発生する点には注意が必要です。

特定親族特別控除の創設

合計所得が58万円超123万円以下(収入123万円超〜188万円以下)の19歳以上23歳未満の子どもがいる場合には、特定親族特別控除を適用できるようになりました。控除額は最大63万円です。

従来の特定扶養控除は基準額を1円でも超えると63万円の控除がゼロになりましたが、新設の控除では子の所得に応じて段階的に控除が受けられます。これにより、学生の子どもは年収150万円までは税法上の扶養の対象になります。150万円を超えたとしても控除が適用されるため、扶養する親の税負担も急激に増えることがなくなりました。

控除を受けるためには、年末調整で新設される「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。会社の担当者は、改正後の申告手続きについてよく確認しておくのが望ましいです。

税法上の扶養控除額

税法上の扶養控除としては、主に以下の3つがあります。

  • 扶養控除
  • 特定扶養控除
  • 老人扶養控除

控除される金額や対象が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

扶養控除

扶養控除は、さまざまな親族を扶養した際に適用される控除です。控除対象となるのは、以下のような親族を扶養に入れたときです。

  • 16歳から18歳までの高校生
  • 23歳から69歳までの子どもや親、兄弟姉妹など

控除額は所得税が38万円、住民税は一般的に33万円です。控除は、年末調整で適用の可否を決定します。会社は従業員から提出された届出をもとに、扶養対象となる親族がいるかどうかを判断します。

特定扶養控除

扶養する子どもの年齢が、その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養控除」が適用されます。控除額は所得税で63万円、住民税で45万円となり、家計への節税効果が大きくなります。
基礎控除の拡大により、2025年度からは収入123万円以下までであれば控除の適用対象です。123万円を超えても、前述の特定親族特別控除により、最大で63万円が控除されるようになっています。

老人扶養控除

年齢が70歳以上の親族を扶養する場合は「老人扶養控除」が適用されます。この控除は親との同居の有無で、以下のように金額が変わる制度です。

  • 別居の親に仕送りなどをしている場合:48万円
  • 同居している場合:58万円

「同居」とは、病気療養のための長期入院も含まれますが、老人ホーム等へ入所した場合は対象外となるため注意が必要です。会社としては、親と同居しているかどうかで、控除額を判断します。

税法上の扶養を反映する手続き

税法上の扶養を反映するには、以下の手順で手続きします。

  • 扶養控除等(異動)申告書を提出してもらう
  • 毎月の給与計算で源泉徴収をする
  • 年末調整で扶養状況を確定させる
  • 源泉徴収票を従業員へ交付する

1年を通して手続きを進めていくため時間はかかりますが、適切に手続きができればトラブルのリスクは減ります。手順をおさえて、実際の事務の参考にしてください。

扶養控除等(異動)申告書を提出してもらう

まずは、従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。この申告は、その年最初の給与支払日の前までと、年末調整の際に行います。会社は申告書に書かれた扶養親族の人数に基づき、毎月の給与から天引きする所得税を計算します。

子どもが生まれる、就職するなど、年の途中で家族の状況に変化があった場合も提出を求めます。2025年からは、19歳から22歳の子どもを扶養する際に新設の「特定親族特別控除申告書」も必要となるため、人事労務担当者は案内の徹底が求められます。

毎月の給与計算で源泉徴収をする

従業員から提出された扶養控除等申告書に基づき、会社は毎月の給与計算時に所得税を天引き(源泉徴収します。徴収額は、国税庁の「源泉徴収税額表」を用いて、給与額と申告された扶養親族の人数に応じて決まります。扶養親族の数が多ければ年間の税負担が軽くなるため、それも見越して徴収します。

源泉徴収はあくまでも1年分の所得税を分割して前払いしている「仮納税」の作業です。そのため、この時点での計算は暫定的なものであると理解しておくのが望ましいです。最終的な税額は、次項の年末調整で確定させます。

年末調整で扶養状況を確定させる

年末調整は、1年間の給与総額が確定した段階で、その年の所得税額を正しく計算し直し、毎月の源泉徴収額との過不足を精算する手続きです。扶養親族に該当するかどうかの判断は、年の途中ではなく「その年の12月31日時点」の状況で行います。

例えば、年の途中で子どもが16歳になった場合でも、年末時点で16歳以上であればその1年間ずっと扶養していたものとして控除を適用します。

年末に扶養から外れると、1年分の控除の対象外となります。その年の12月31日時点の状況をもとに、扶養の対象かどうかを判断しましょう。

源泉徴収票を従業員へ交付する

年末調整による年間の所得税の計算が完了すると、会社は「給与所得の源泉徴収票」を作成し、従業員へ交付します。

源泉徴収票には、1年間に支払われた給与の総額や納めた社会保険料、適用された扶養控除などの所得控除、納付した所得税額が全て記載されています。従業員にとっては、住宅ローンを組む際の収入証明や、自身で医療費控除などの確定申告を行う際に必須となる重要書類です。

人事労務担当者は、翌年の1月31日までには全従業員へ源泉徴収票を交付する必要があります。交付をもって、扶養の事務手続きは終了です。

税法上の扶養に関するQ&A

税法上の扶養に関する質問や疑問をまとめました。扶養手続きの事務における参考にしてください。

従業員の配偶者の年収が103万円を超えた場合の対応は?

2025年分からは基準となる年収の壁が103万円ではなく「123万円」になります。従業員の配偶者のパート収入などが年間123万円を超えた場合、その従業員は「配偶者控除」の適用対象外となり、段階的に控除額が少なくなる「配偶者特別控除」の対象になります。

年収150万円までであれば、配偶者特別控除でも、配偶者控除と同様最大38万円の控除が受けられますが、配偶者の収入が123万円を超えると、配偶者自身に税負担が発生します。

もし従業員から配偶者の年収が増えた旨があった場合は、すみやかに「配偶者控除等申告書」の提出を求め、状況把握に努めるのが望ましいです。

75歳以上の親は税法上の扶養の対象になる?

75歳以上の両親も、税法上の扶養の対象になります。70歳以上であれば「老人扶養控除」が適用され、控除額が48万円または58万円に増えます。

75歳以上の親が扶養の対象から外れるのは、健康保険です。75歳以上の人は、全員が後期高齢者医療保険に加入するためです。

育休中の配偶者は税法上の扶養の対象になる?

育休中の配偶者は扶養対象になる可能性があります。給与の支払いが止まると、所得が大きく減るためです。

会社員の配偶者であれば、年収123万円以下になれば扶養対象になります。会社は育休中の配偶者の収入がいくらか把握して、配偶者が扶養対象になることを従業員に伝えると親切です。

ムートン

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参考文献

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」

監修者

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遠藤良介 社会保険労務士(愛知社労士会所属)
Reメンバー労務オフィス
労務相談、社会保険・労働保険手続き、社内規定類作成、ライフプランニング相談ほか