食品添加物の表示方法
—2022年3月30日策定の「食品添加物の 不使用表示に関するガイドライン」と併せて解説!—
- この記事のまとめ
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2022年3月30日に食品表示基準Q&Aの別表として「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)が策定されました。
昨今の健康志向のニーズに応えるべく
✅「無添加」
✅「添加物不使用」
といった表示がされている食品を目にする機会が多いと思いますが、添加物を使用しなかった場合の表記方法に関しては、食品関連事業者等の裁量に委ねられており、こうした実情を問題視する声がありました。そこで、食品添加物の不使用表示が食品表示基準9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かの指針として、本ガイドラインが策定されるに至りました。
本ガイドラインには猶予期間(2024年3月末まで)がありますが、猶予期間経過後は、本ガイドラインを遵守しない表示を続けていると食品表示基準違反となるリスクが発生することになります。
本記事では、食品添加物の表示に関する基礎を説明した上で、本ガイドラインの内容を解説します。
※この記事は、2022年7月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
食品添加物とは
添加物の定義
「添加物」とは、「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物」と定義されています(食品衛生法4条2項)。
食品の製造・加工を目的とする添加物(いわゆる「製造用剤」等)としては、ろ過助剤、消泡剤等が挙げられます。
食品の保存を目的とする添加物としては、保存料、酸化防止剤等が典型的なものとして挙げられます。
それ以外にも、甘味料、着色料、香料、乳化剤、栄養強化剤等、目的に応じて様々な添加物が使用されています。
添加物については、食品衛生法12条において、一定のものを除いて販売・製造・輸入・加工・使用・貯蔵・陳列が制限されています。
<食品衛生法第12条>
人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
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添加物の種類
日本において使用等が可能な「添加物」は、
①指定添加物 ②既存添加物 ③天然香料 ④一般飲食物添加物 |
の4つに分類されることが一般的であり、厚生労働省のウェブサイトにおいてもこの分類が示されています。
①「指定添加物」とは、食品衛生法12条に基づき、厚生労働大臣の指定を受けた添加物であり、食品衛生法施行規則別表第1に収載されています。
②「既存添加物」とは、既存添加物名簿(平成8年厚生省告示第120号)に掲げる添加物をいいます(「食品表示基準について」(令和4年3月30日消食表第128号)6頁)。
既存添加物は、化学合成品以外の添加物のうち、我が国において広く使用されており、長い食経験があるものです。既存添加物は1995年の食品衛生法改正により、厚生労働大臣の指定の対象が化学的合成品から、天然物を含む全ての添加物に拡大された際に設けられた分類であり、例外的に厚生労働大臣の指定を受けることなく使用・販売等が認められ、既存添加物名簿に収載されています。
なお、既存添加物名簿には、1995年時点で使用実績が確認されたもののみが収載されていますが、流通実態のなくなったもの等については、適宜消除されています。
③「天然香料」とは、「動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物」をいいます(食品衛生法4条3項)。
バニラ香料、カニ香料等が典型例であり、基本的にその使用料はごくわずかであると考えられています。
④「一般飲食物添加物」とは、「一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるもの」をいいます(「食品表示基準について」(令和4年3月30日消食表第128号)6頁)。
イチゴジュース、寒天等が典型例です。
添加物の表示に関する法規制
食品表示基準上の添加物の表示義務
食品表示基準3条では、食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品(業務用加工食品を除く)を販売する際には、設備を設けて飲食させる場合を除き、添加物について以下の表示をしなければならないと定められています。
<食品表示基準第3条第1項「添加物欄」>
1 次に掲げるものを除き、添加物に占める重量の割合の高いものから順に、別表第6の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名及び同表の下欄に掲げる用途の表示を、それ以外の添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名を表示する。
(1) 栄養強化の目的で使用されるもの(特別用途食品及び機能性表示食品を除く。)
(2) 加工助剤(食品の加工の際に添加されるものであって、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものをいう。以下同じ。)
(3) キャリーオーバー(食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいう。以下同じ。)
2 1の規定にかかわらず、複数の加工食品により構成される加工食品にあっては、各構成要素で使用した添加物を、各構成要素を表す一般的な名称の次に括弧を付して、1に定めるところにより表示することができる。
3 1の規定にかかわらず、添加物の物質名の表示は、一般に広く使用されている名称を有する添加物にあっては、その名称をもって、別表第7の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる。
4 1の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に定める用途の表示を省略することができる。
⑴ 添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料
⑵ 添加物を含む旨の表示中「増粘」の文字を含む場合 増粘剤又は糊料
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容器包装に入れられた生鮮食品については、シアン化合物を含有する豆類、アボカド、あんず、おうとう、かんきつ類、キウィー、ざくろ、すもも、西洋なし、ネクタリン、パイナップル、バナナ、パパイヤ、ばれいしょ、びわ、マルメロ、マンゴー、もも、りんご、生かき等、食品表示基準別表第24で添加物の表示が必要とされている場合を除き、保存の目的で添加物を使用したとしても表示義務はないとされています。
添加物の表示方法
上記のとおり、添加物の表示方法については、
✅栄養強化の目的で使用した添加物 ✅加工助剤(食品の加工の際に添加されるものであって、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないもの) ✅キャリーオーバー(食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの) |
を除き、原則として、当該添加物の物質名を表示することとされています。
そして、物質名については、食品衛生施行規則別表第1の添加物(食品表示基準別表第8に掲げるものを除く)については、食品衛生施行規則別表第1に掲げる名称により行うことと定められています。
例外的に簡略名や類型名を使用できるケース等については、「食品表示基準について」(令和4年3月30日消食表第128号)5~8頁に記載されています。
食品添加物の不使用表示に関するガイドライン
ガイドライン策定の背景・趣旨
以上のとおり、添加物を使用する際の規律については食品衛生法・食品表示法・食品表示基準において整備されています。
一方で、食品表示基準上、食品添加物の不使用表示に関する特段の規定はなく、食品関連事業者等が容器包装に任意で「無添加」、「不使用」等の表示を行っているという実情を問題視する声がありました。
2020年3月31日に公表された「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」でも、以下のような問題を指摘し、食品表示基準9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かの指針となるガイドラインの策定を提案しています。
・食品表示基準9条では表示すべき事項の内容と矛盾する用語や内容物を誤認させるような文字等を禁止してはいるものの、その解釈を示す食品表示基準Q&Aが網羅的ではない ・「無添加」等の表示方法を示す食品表示基準Q&Aが曖昧である ・「無添加」等の表示は商品の主要面に義務表示事項よりも目立つように表示されるケースがあり、本来見るべき一括表示欄が活用されていない |
このような問題意識を踏まえ、2021年3月に食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会が新たに設置されました。
当該検討会は、実際の表示の中で、検討が必要な食品添加物の不使用表示を類型化し、さらに、各類型のうち、現時点で食品表示基準9条1項1号、2号及び13号に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示について取りまとめました。
そして、2022年3月30日に、食品添加物の不使用表示に関して、消費者に誤認等を与えないよう留意が必要な具体的事項をまとめた本ガイドラインが公表されました。
<食品表示基準>
(表示禁止事項)
第9条 食品関連事業者は、第3条、第4条、第6条及び第7条に掲げる表示事項に関して、次に掲げる事項を一般用加工食品の容器包装に表示してはならない。
(1) 実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
(2) 第3条及び第4条の規定により表示すべき事項の内容と矛盾する用語
(中略)
(13) その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示
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本ガイドラインは、食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではなく、「食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるもの」と自らを位置付けています(本ガイドライン2頁)。
本ガイドラインの適用範囲
本ガイドラインは、食品表示基準の規定に基づき、一般用加工食品の容器包装における、食品衛生法4条2項に規定する食品添加物の不使用表示について適用されるとされています。
なお、食品表示基準14条及び17条に基づき同基準9条1項の規定を準用する場合においても、本ガイドラインを準用することとなるとされています。
<食品表示基準>
(表示禁止事項)
第14条 食品関連事業者が販売する業務用加工食品の容器包装、送り状、納品書等又は規格書等への表示が禁止される事項については、第9条第1項(第12号を除く。)の規定を準用する。
(表示禁止事項)
第17条 食品関連事業者以外の販売者が販売する加工食品の容器包装への表示が禁止される事項については、第9条第1項の規定を準用する。
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容器包装における表示を作成するに当たり注意すべき食品添加物の不使用表示
本ガイドライン2~3頁では、「容器包装における表示を作成するに当たり注意すべき食品添加物の不使用表示」として以下の10の類型を示した上で、各類型の定義や具体例を明記しています。
類型1:単なる「無添加」の表示 類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示 類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示 類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示 類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示 類型6:健康、安全と関連付ける表示 類型7:健康、安全以外と関連付ける表示 類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示 類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示 類型10:過度に強調された表示 |
類型1:単なる「無添加」の表示
定義 | 無添加となる対象が不明確な、単に「無添加」とだけ記載した表示 |
具体例 | ・単に『無添加』とだけ記載した表示のうち、無添加となる対象が消費者にとって不明確な表示 |
問題意識 | ・対象を明示せず単に無添加と表示をすると、何を添加していないのかが不明確であるため、添加されていないものについて消費者自身が推察することになり、一般的に消費者が推察した内容が事業者の意図と異なる場合には内容物を誤認させるおそれがある。 |
類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
定義 | 無添加あるいは不使用と共に、食品表示基準において規定されていない用語を用いる表示 |
具体例 | ・「人工甘味料不使用」等、無添加あるいは不使用と共に、人工、合成、化学、天然等の用語を使用した表示 |
問題意識 | ・食品表示基準において、食品添加物の表示は化学的合成品と天然物に差を設けず原則として全て表示することとし、「食品表示基準について」でも、食品添加物の表示において「天然」又はこれに類する表現の使用を認めていない。なお、食品表示基準における人工及び合成の用語は、2020年7月に削除されている。 ・化学調味料の用語は、かつてJAS規格において使用されていたが、1989年には削除されており、食品表示基準において使用されたことはない。 ・人工、合成、化学及び天然の用語を用いた食品添加物の表示は適切とはいえず、こうした表示は、消費者がこれら用語に悪い又は良い印象を持っている場合、無添加あるいは不使用と共に用いることで、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 |
類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
定義 | 法令上、当該食品添加物の使用が認められていない食品への無添加あるいは不使用の表示 |
具体例 | ・清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示(清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反である。) ・食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の食品添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該食品添加物を無添加あるいは不使用と表示 |
問題意識 | ・食品添加物に関する法令において当該食品添加物が使用されることはない旨を知らず、当該食品添加物が使用された商品を望んでいない消費者は、当該商品は不使用表示のない商品よりも優れている商品であると読み取るおそれがあり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 |
類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
定義 | 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する他の食品添加物を使用している食品への表示 |
具体例 | ・日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示 ・既存添加物の着色料を使用した食品に、○○着色料が不使用である旨を表示(○○着色料とは、指定添加物の着色料をいう。) |
問題意識 | ・消費者が、食品添加物が含まれている食品を回避したいと考えている場合で、不使用表示の食品添加物と、それと同一機能、類似機能を有する食品添加物の違いが表示において分からない場合、当該商品は、当該不使用表示の食品添加物を使用している商品よりも優れている商品であると読み取るおそれがあり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 |
類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
定義 | 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」と表示しながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する原材料を使用している食品への表示 |
具体例 | ・原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示 ・乳化作用を持つ原材料を高度に加工して使用した食品に、乳化剤を使用していない旨を表示 |
問題意識 | ・食品の特定の成分のみを抽出したこと等により、当該食品との科学的な同一性が失われていると考えられるもので代替することは、社会通念上食品であると考えられるもので代替することとは異なる。しかし、消費者が、食品添加物が含まれている食品を回避したいと考えている場合で、社会通念上食品であるとは考えられないもので代替されていると認知しない場合、当該商品は、食品添加物を使用した商品よりも優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 ・不使用表示と共に同一機能、類似機能を有する原材料について明示しない場合、消費者が当該原材料の機能であると分からず、他の原材料による機能が作用していると読み取るおそれがあり、内容物を誤認させるおそれがある。 |
類型6:健康、安全と関連付ける表示
定義 | 無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付けている表示 |
具体例 | ・体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示 ・安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示 |
問題意識 | ・食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難であり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 ・内容物を誤認させるおそれがある。 |
類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
定義 | 無添加あるいは不使用を健康や安全以外の用語(おいしさ、 賞味期限及び消費期限、食品添加物の用途等)と関連付けている表示 |
具体例 | ・おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示 ・「開封後」に言及せずに「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」と表示 ・商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示 |
問題意識 | ・おいしい理由として食品添加物の不使用表示をする際に、おいしい理由と食品添加物を使用していないこととの因果関係を説明できない場合には、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある(具体例の1つ目)。 ・「保存料不使用なので、お早めにお召し上がりください」と「開封後」に言及せずに表示することで、期限表示よりも早く喫食しなければならないという印象を与えた場合には、食品表示基準3条の規定により表示すべき事項の内容と矛盾するおそれがある(具体例の2つ目)。 ・商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示する際に、変色と着色料の用途との関係について説明ができない場合には、内容物を誤認させるおそれがある(具体例の3つ目)。 |
類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
定義 | 消費者が、通常、当該食品添加物が使用されていることを予期していない食品への無添加あるいは不使用の表示 |
具体例 | ・同種の製品で一般的に着色料が使用されておらず、かつ、食品元来の色を呈している食品に、「着色料不使用」と表示 ・同種の製品が一般的に当該食品添加物を使用していないことから、消費者が当該食品添加物の使用を予期していない商品に対して、当該食品添加物の不使用を表示(消費者が当該食品添加物の使用を予期していない例としては、ミネラルウォーターに保存料の使用、ミネラルウォーターに着色料の使用等がある。) |
問題意識 | ・当該食品添加物が使用された商品を望んでいない消費者は、同種の製品で一般的に食品添加物が使用されることがないため食品添加物の使用を予期していない状況においては特に、当該商品は不使用の表示がない商品よりも優れている商品であると読み取るおそれがあり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある。 |
類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
定義 | 加工助剤、キャリーオーバーとして食品添加物が使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への無添加あるいは不使用の表示 |
具体例 | ・原材料の一部に保存料を使用しながら、最終製品に「保存料不使用」と表示 ・原材料の製造工程において食品添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示 |
問題意識 | ・食品添加物の表示については、当該食品の原材料の製造又は加工の過程まで確認を行うことが必要であり、一括表示外であっても、確認結果に基づいた表示を行わない場合、内容物を誤認させるおそれがある。 |
類型10:過度に強調された表示
定義 | 無添加あるいは不使用の文字等が過度に強調されている表示 |
具体例 | ・商品の多くの箇所に、過剰に目立つ色で、〇〇を使用していない旨を記載する ・保存料、着色料以外の食品添加物を使用している食品に、大きく「無添加」と表示し、その側に小さく「保存料、着色料」と表示 |
問題意識 | ・表示が事実であれば直ちに表示禁止事項に該当するおそれがあるとはいえないが、容器包装のあらゆる場所に過度に強調して不使用表示を行うことや、一括表示欄における表示と比較して過度に強調されたフォント、大きさ、色、用語などを用いることが、消費者が一括表示を見る妨げとなり、表示上の特定の食品添加物だけでなく、その他の食品添加物を全く使用していないという印象を与える場合、内容物を誤認させるおそれがある。 ・他の類型項目と組み合わさった際、他の類型項目による誤認を助長させるおそれがある。 |
本ガイドラインに基づく表示の見直しの猶予期間
本ガイドラインでは、「本ガイドラインは、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かのメルクマールとなるものであり、同基準第9条に新たな規定を設けるものではないことから、本来であれば特段の経過措置期間を要するものではない」としつつ、現在表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示が行われている可能性がある中で、表示の点検や包装資材の切替えに要する期間等を考慮し、2年程度(2024年3月末まで)の間に表示の見直しが求められるとしています。
2024年3月末までに「製造・販売等された加工食品が見直し前の表示で流通することはやむを得ないと考えるが、2年に満たない間においても、可能な限り速やかに見直しを行うことが望ましい」旨も併記しており、食品関連事業者等による早急な見直しが推奨されています。
食品関連事業者等としての留意点
本ガイドラインを含む表示規制への理解
食品関連事業者としてまず重要なのは、本ガイドラインを含む食品表示に関する規制を適切に理解することです。
食品表示については、食品表示法や食品表示基準といった法令から、本ガイドラインを含む各種ガイドラインまで、様々なルールや規制が張り巡らされています。
そして、これらの法令やガイドラインは世の中の問題意識を踏まえて、改正を繰り返したり、新たなルールが設けられたりしているため、絶えず情報をアップデートしていく必要があります。
添加物に関しては、食品表示法上、添加物使用時には使用した添加物を適切に表示することが義務付けられていましたが、添加物を使用しなかった場合の表記方法に関し、従前ガイドライン等はなく、食品関連事業者等の裁量に委ねられていました。
しかし、本ガイドラインの猶予期間経過後は、本ガイドラインを遵守しない表示を続けていると食品表示基準違反となるリスクが発生することになります。
猶予期間の間に本ガイドラインの内容をきちんと理解することが、食品関連事業者等にとって出発点となります。
本ガイドラインに基づく表示の見直し
本ガイドラインに関しては、企業や消費者団体にとっては悩みの種かと思います(2022年3月31日付けの東京新聞の「『無添加』表示の規制強化 消費者庁、違反時には罰則 企業戸惑い、一部の消費者団体は反発」と題する記事参照)。
特に消費者の方々のニーズに応えて、添加物を使用せずに製品の安全性と美味しさの両立を追求してきた食品関連事業者等の中には、本ガイドラインの規律への対応に苦慮する方々もいるかもしれません。
しかし、本ガイドラインの猶予期間経過後、本ガイドラインの10の類型に該当するような表示を継続してしまっている場合には、食品表示法違反の指摘を受けるリスク、そしてそれにより製品や企業の信頼やレピュテーションがダメージを受けるリスクがあります。
本ガイドラインの4(1)では、「食品関連事業者等が、食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否か自己点検を行う際に用いることができるものであり、これによって表示禁止事項に該当するおそれが高い食品添加物の不使用表示が防止されることが期待される」との記載があり、NG集・チェックリストとしての活用が期待されています。
猶予期間の間に本ガイドラインの10の類型に該当する表示がないかをチェックし、該当する可能性のある表示についてリスクを低減すべく見直しを検討することが、企業のリスクマネジメントの観点からは重要と考えられます。