及び(および)・並びに(ならびに)とは?
意味・法令用語としての使い分け方・
契約書レビュー時の注意点などを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

及び(および)」とは、複数の事柄を並列してならべる際に用いられる接続詞です。英語でいうand”に相当します。例えば「A及びB」は、「AとBの両方」や「AとBはいずれも」という意味になります。

並びに(ならびに)」も「及び」と同じ意味ですが、法律文書では厳密に使い分けられています。「並びに」は上位のカテゴリーを並べる際に、「及び」は下位のカテゴリーを並べる際に用いられます。

【「及び」「並びに」の使い分けの例文】
・日常での文章:昼食では、リンゴバナナパスタを食べなければならない。
・法律での文章:昼食では、リンゴ及びバナナ並びに及びパスタを食べなければならない。
「フルーツ:リンゴ・バナナ」「主食:米・パスタ」でカテゴリー分けがされていることが、接続詞で分かる

この記事では接続詞の「及び」「並びに」について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

法令用語と日常用語で、使われ方が違ったり意味が違ったりするときがありますよね。

ムートン

そうですね。法務担当者としては、そうした違いは当然頭に入れておく必要があります。まずは、基本中の基本である、「及び」「並びに」をみてみましょう。

※この記事は、2023年9月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

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及び(および)・並びに(ならびに)とは|意味・使い分けのルールを分かりやすく解説

及び(および)」とは、複数の事柄を並列してならべる際に用いられる接続詞です。英語でいうand”に相当します。

並びに(ならびに)」も「及び」と同じ意味ですが、法律文書では厳密に使い分けられています。

「及び」の意味・使い方

例えば「A及びB」は、「AとBの両方」や「AとBはいずれも」という意味になります。

2つ並べるときの例文

・日常での表現:昼食では、リンゴバナナを食べなければならない。
・法律上の表現:昼食では、リンゴ及びバナナを食べなければならない。

3つ以上の事柄を並べる際には、「A、B及びC」のように、最後の事柄の直前に「及び」と記載します。これは「A・B・Cの全て」や「A・B・Cはいずれも」という意味です。

3つ並べるときの例文

・日常での文章:昼食では、リンゴバナナブドウを食べなければならない。
・法律での文章:昼食では、リンゴバナナ及びブドウを食べなければならない。

「及び」が使われている条文を読んでみよう

ムートン

「及び」が用いられている法律の条文を見てみましょう。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
⑴ 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
⑵ 略

(所有権の内容)
第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

「民法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法724条は、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を定めています。

同条1号に「損害及び加害者を知った時から3年」で損害賠償請求権が時効消滅するとありますが、これは「損害と加害者の両方を知った時から3年」という意味です。

民法206条は、所有権の内容を定めています。所有者は所有物の「使用、収益及び処分」をする権利を有するとありますが、これは「(所有者は)使用・収益・処分の全てができる」という意味です。

「並びに」の意味・使い方・「及び」との使い分け

「並びに(ならびに)」の意味は、「及び」と同じです。例えば「A並びにB」は、「AとBの両方」や「AとBはいずれも」という意味になります。

ただし法律文書では、「及び」と「並びに」は厳密に使い分けられています。

具体的には、「並びに」は上位のカテゴリーを並べる際に、「及び」は下位のカテゴリーを並べる際に用いられます。

「及び」「並びに」の使い分けの例文

・日常での文章:昼食では、リンゴバナナパスタを食べなければならない。
・法律での文章:昼食では、リンゴ及びバナナ並びに及びパスタを食べなければならない。

【意味】
昼食に食べなければならないものは、以下全て
[リンゴ 及び バナナ] 並びに [米 及び パスタ]

「及び」「並びに」を使い分けることで、並列されたもののカテゴリーを表現できる。
今回の例文では、「フルーツ=リンゴ・バナナ」と「主食=米・パスタ」でカテゴリー分けがされている。

「並びに」が使われている条文を読んでみよう

ムートン

「並びに」が用いられている法律の条文を見てみましょう。

(使用貸借の解除)
第598条 略
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3 略

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法598条は、使用貸借契約(=無償で物を貸し借りする契約)を解除できる場合について定めています。同条2項の「使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的」という部分には、「並びに」と「及び」の両方が用いられています。

この部分は、まず「並びに」によって、
使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的
という2つの大きな(上位の)カテゴリーが並べられています。

次に「及び」によって、「使用(の目的)」と「収益の目的」という2つの小さな(下位の)カテゴリーが並べられています。

【意味】
当事者が以下全てを定めなかったとき
 ①使用貸借の期間
 ②目的
   ├使用の目的
   └収益の目的

ムートン

このように、一文において並列された事柄に上位・下位の区別がある場合は、「並びに」と「及び」を用いてその違いを表現します。

「及び」と他の接続詞の違い|例文とともに解説

法律文書においては、「及び」以外にもさまざまな接続詞が登場します。例えば

  • かつ
  • 又は(または)
  • 若しくは(もしくは)

などです。それぞれ意味が異なるので、特に契約審査を行う際などには、使い分けに注意する必要があります。

「及び」と「かつ」の違い

かつ」とは、複数の事柄の全てが成立することを意味する接続詞です。

「並びに」「及び」と同様に、英語で言う”and”に相当し、実際に「並びに」や「及び」と同じ意味で用いられることもあります。

ただし、「かつ」は、満たすべき条件を示す際に用いられることが多いのが特徴です。

【例文】
甲が借入金の返済を怠り、かつ、乙が甲に対して当該借入金の返済を催告した後3日間が経過した場合には~

ムートン

「かつ」が使用されている法律の条文を見てみましょう。

(公示による意思表示)
第98条 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
3~5 略

第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
⑴ 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
⑵ 略
2 略

「民法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法98条は、公示による意思表示の方法を定めています。
同条2項では、公示による意思表示を

「裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載して行う」

としていますが、これは「裁判所の掲示場への掲示」と「(少なくとも1回の)官報掲載」の両方を行う必要があるという意味です。

民法622条の2は、賃貸借契約における敷金の返還について定めています。
同条1項1号では、

「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に敷金を返還すべき

としていますが、これは「賃貸借契約の終了」と「賃貸物の返還」が両方行われた場合に、初めて敷金を返す義務が生じるという意味です。

「及び」と「又は(または)」「若しくは(もしくは)」の違い

又は(または)」と「若しくは(もしくは)は、複数の事柄のうちいずれかを選択できることを意味する接続詞です。

「及び」は英語でいうと”and”で、例えば「A及びB」は、「AとBの両方」や「AとBはいずれも」という意味です。

これに対して、「又は」「若しくは」は英語でいうと”or”です。例えば「A又はB」「A若しくはB」は、「AとBのいずれか」という意味になります。

「又は」と「若しくは」の使い分け方は、「並びに」と「及び」の使い分け方と同じです。「又は」は上位のカテゴリーを並べる際に、「若しくは」は下位のカテゴリーを並べる際に用いられます。

(代理権の消滅事由)
第111条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
⑴ 本人の死亡
⑵ 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 略

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

民法111条は、代理権の消滅事由を定めています。

同条1項2号では、

「代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと」

が代理権の消滅事由とされています。

その意味は、「代理人が死亡した」「代理人が破産手続開始の決定を受けた」「代理人が後見開始の審判を受けた」という3つのうちいずれかの事由が発生すれば、代理権が消滅するということです。

この部分は、まず「又は」によって、
「代理人の死亡」又は「代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと」
という2つの大きな(上位の)カテゴリーが並べられています。

次に「若しくは」によって、「代理人が破産手続き開始の決定(を受けたこと)」と「(代理人が)後見開始の審判を受けたこと」という2つの小さな(下位の)カテゴリーが並べられています。

「及び」が使われることの多い文書の例

「及び」が使われることの多い文書としては、以下の例が挙げられます。

①契約書・覚書・合意書など
②同意書・誓約書・念書など
③法令の条文

契約書・覚書・合意書など

契約書・覚書・合意書は、複数の当事者による合意内容をまとめた法律文書です。

ムートン

契約書・覚書・合意書の詳細については、以下の記事を参照ください。

同意書・誓約書・念書など

同意書・誓約書・念書は、一方の当事者が相手方に対して提出する法律文書です。

ムートン

同意書・誓約書・念書の詳細については、以下の記事をご参照ください。

法令の条文

これまで民法の例を挙げたように、法令の条文にも「及び」が用いられています。

法令の条文では、「及び」と「並びに」が両方用いられていたり、「かつ」「又は」「若しくは」など他の接続詞と「及び」が併せて用いられていたりすることが多いです。

ムートン

本記事で解説した使い分け方を参考にして、法令の意味を正しく理解しましょう。

「及び」に関する契約書のレビュー時のチェックポイント

契約書をレビューする際には、接続詞として「及び」がよく登場します。

「及び」に関連して、特に以下のポイントに注意して契約書をレビューしましょう。

①漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一する
②「又は」「若しくは」との使い分けには特に注意する

ポイント1|漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一する

「及び」の表記は、漢字で「及び」と記載しても、ひらがなで「および」と記載しても構いません

しかし、同じ契約書の中で「及び」と「および」が混在していると、体裁の観点から違和感があります。そのため、漢字表記とひらがな表記のいずれかに統一することが望ましいでしょう。

「並びに(ならびに)」「又は(または)」「若しくは(もしくは)」など、他の接続詞も同様です。

表記ゆれを修正するためには、ワープロソフト(Microsoft Wordなど)の検索機能と置換機能を活用しましょう。例えば、文書全体について「および」を「及び」に置換すれば、一挙に表記を統一できます。

ポイント2|「又は」「若しくは」との使い分けには特に注意する

「及び」と「並びに」の使い分けを誤ったとしても、契約条項の意味に違いはありません。

これに対して、「及び」(=and)と「又は・若しくは」(=or)は、文脈によっては全く違う意味になることがあります。

(例)
「A及びBに対して通知しなければならない」
→AとB両方への通知が必要

「A又はBに対して通知しなければならない」
→AとBのうちいずれかに通知すればよい

ムートン

契約条項の内容に鑑み、「及び」と「又は・若しくは」が適切に使い分けられているかどうかは、特に注意深くチェックしましょう。

ムートン

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