法律文書とは?
種類・記載事項(書き方)
・作成時の注意点などを解説!

この記事のまとめ

法律文書とは、法的な効力を有する文書全般のことです。

法律文書には、契約書公正証書などをはじめとしてさまざまな種類があります。

法律文書は、明確な文言で書くこと、記載すべき事項を漏らさないように作成することが大切です。決まった様式や先例があれば、それに従って作成するのがよいでしょう。

今回は法律文書について、種類・記載事項(書き方)・作成時の注意点などを解説します。

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法律文書って、難しい言葉で書かれていて、読み解くのが大変ですよね。

ムートン

そんなときは、法律文書でよく使われる用語や表現を覚えると良いですよ。「契約書で使われる用語を分かりやすく解説!」の記事にある程度まとまっていますので、少しずつ勉強していきましょう。

※この記事は、2022年11月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

法律文書とは

法律文書とは、法的な効力を有する文書全般のことです。

法律文書は、

・取引を行う場合
・他人に対して金銭の支払いを請求する場合
・トラブルについて和解する場合
・訴訟を提起する場合

など、さまざまな場面で作成されます。

主な法律文書の種類

法律文書には、契約書をはじめとしてさまざまな種類があります。主な法律文書の種類は、以下のとおりです。

・契約書などの合意書面
・利用規約(約款)
・同意書、承諾書
・誓約書、念書
・通知書
・内容証明郵便
・公正証書
・申立書
・訴状

ムートン

それぞれ詳しく解説していきますね。

契約書などの合意書面

法律文書の典型例としては、まず「契約書などの合意内容を明確化した書面(合意書面)」が挙げられます。

民法上、2人以上の当事者が合意した約束事は、契約と呼ばれ、全ての当事者を法的に拘束します。その際に作成される合意書面は、法的効力を有する法律文書の一つです。

合意書面には、

契約書
覚書
合意書

などがあります。

これらは法的には名称以外に差がなく、いずれも法的効力をもつ合意書面という扱いになります。

ムートン

ただし、法的には同じであっても、慣習上、契約書・覚書・合意書は、以下のような使い分けがなされる傾向にありますよ。

名称使い分けの傾向
契約書取引に関する合意書面に付されることが多い
覚書大元となる契約(原契約)を補足したり、変更したりする合意書面に付されることが多い
合意書不法行為や離婚など、取引以外の法律トラブルを解決するための合意書面に付されることが多い

利用規約・約款

利用規約とは、事業者が提供するサービスの、利用に関するルールを記載したものです。約款と呼ばれることもあります。

利用規約・約款は、以下のいずれかに該当する場合、事業者・利用者間における契約内容の一部となります(民法548条の2第1項)。この場合、利用規約・約款は法的効力を有する法律文書に該当します。

利用規約・約款が契約内容の一部となる場合

・利用規約・約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
・利用規約・約款を準備した者が、あらかじめその利用規約・約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

同意書・承諾書

同意書・承諾書とは、何らかの事項につき、提出者が同意していることを証明する書面です。同意書・承諾書も、法律文書の一種といえます。

同意書・承諾書は、例えば、以下のような場合に、法令の要請により、取得が求められます。

・個人情報の提供を受ける場合の同意書
・未成年者と契約を締結する場合の法定代理人の同意書
など

誓約書・念書

誓約書念書とは、相手方に対して何らかの事項を約束する書面(どちらか一方が義務を負う書面)です。

ムートン

契約書などの合意書面は、双方が何らかの事項を約束しあう(双方が義務を負う)ので、この点が誓約書・念書と明確に異なるところです。

誓約書・念書が提出された場合、提出した側は、受領した側に対して法的な義務を負うケースが多いです。また、すでに発生している法的な義務の内容を、誓約書・念書の提出によって確認する場合もあります。

いずれにしても、提出した側が負う法的な義務の内容が記載される誓約書・念書は、法律文書に該当します。

通知書

通知書とは、相手方に対して何らかの事項を通知する書面です。

単なる連絡事項を通知する通知書は、法律文書には該当しません。これに対して、契約によって必要とされている通知を行う通知書については、契約上の義務を果たす書面であるため、法的効力を有する法律文書に該当します。

内容証明郵便

内容証明郵便とは、郵便局が差出人・受取人・差し出し日時・内容を証明する郵便物です。

内容証明郵便が用いられることが多いのは、差出人が受取人に対して、何らかの法的な請求を行う場合です。この場合、内容証明郵便は法的効力を有する法律文書に該当します。

公正証書

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書であり、法律文書の一種といえます

前提として、文書は、

私文書:私人が作成した文書
公文書:公務員が作成した文書

に分けられます。

公文書は、公正な第三者である公務員がその権限に基づいて作成しているため、私文書に比べ、法的な証明力が高いとされています。そのため、重要な契約書などを公正証書化することにより、証明力が高くなるというメリットがあります。

公正証書化することが多いのは、以下のような書面です。

・遺言書
・離婚合意書
・遺産分割協議書
・その他の重要な契約書
など

申立書

申立書は、

・裁判所に対して調停・審判・保全処分などを求める場合
・行政機関に対する審査請求を行う場合

などに作成・提出する書面です。

これらの申し立ては、いずれも法律で定められた手続きであるため、申立書は法的効力を有する法律文書に該当します。

訴状

訴状は、裁判所に訴訟を提起する際に作成・提出する書面です。

訴訟も法律によって定められた手続きであるため、訴状は法的効力を有する法律文書に該当します。

法律文書の基本的な記載事項(書き方)

法律文書に記載すべき事項は、その目的や作成の背景事情などに応じて千差万別です。そのため、作成する際に内容を個別に検討する必要がありますが、ここでは基本的な構成に絞って、法律文書の記載事項(書き方)を紹介します。

法律文書には、大まかに以下の事項を記載します。

・表題
・当事者の情報
・作成日
・前文
・本文
・後文
・別紙
・作成者の署名、押印

表題

法律文書を作成する際には、冒頭に表題(タイトル)を記載します(表紙がある場合には、表紙にも記載します)。

ムートン

表題の付け方については特に法的なルールがありませんが、内容が一目で分かるように付けることが望ましいです。

法律文書の表題(タイトル)の例

<契約書>
・金銭消費貸借契約書
・不動産売買契約書
・株式譲渡契約書
・業務委託契約書
など

<覚書>
・業務委託契約書に関する覚書
など

<利用規約>
・○○(サービスの名称)利用規約
など

<誓約書>
・秘密保持に関する誓約書
など

なお、実務上の慣習になっている表題の付け方がある場合は、基本的にそれに従うことで問題ありません。

当事者の情報

法律文書には、当事者の情報を明記する必要があります。具体的には、文書の作成者と宛先者に関する情報が必要です。また、代理人が文書を作成する場合には、本人と代理人の情報を両方明記します。

多くの法律文書では、表題の次に

・○○様(個人の場合)
・○○御中(法人・団体の場合)

として宛先を記載します。

その次に、作成者の住所・氏名(名称)・連絡先を記載します(法人・団体が作成者の場合は、代表者の肩書と氏名も記載します)。

ただし、契約書などの合意書面については、後文の後に署名欄を設けて、そこに締結当事者の情報を記載するのが一般的です。

作成日

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法律文書を作成する際には、法的効力の発生時点を明確化するため、作成日を明記することも重要です。

作成日は、当事者の情報の上部または下部辺りに記載するのがよいでしょう。ただし、契約書などの合意書面の場合は、署名欄に記載するのが一般的です。

前文

契約書などの合意書面では、合意に関する基本的な事項を明らかにするため、以下の内容を含む前文を記載するケースが多いです。

契約書の前文に記載すべき事項

・当事者の氏名(名称)
・当事者が予定している取引の内容(簡潔に)
・契約締結日
・本文の内容にて契約を締結する旨
など

(例)
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社●●(以下「乙」という。)は、甲が乙に対して、顧客を紹介し、もって乙の販売活動の促進を図ることを目的として、2022年●月●日付で、以下のとおり顧客紹介契約(以下「本契約」という。)を締結する。

なお、前文は省略しても構いません。契約書などの合意書面以外の法律文書では、前文を記載しない方が一般的です。

本文

法律文書の本文は、その文書によって発生させたい法的効力の内容を踏まえて作成する必要があります。例えば契約書の場合は、以下の事項などを記載します。

契約書の本文に記載すべき事項(例)

・取引の内容
・相互の権利義務の内容
・一般条項(秘密保持条項、契約解除条項、損害賠償条項など)

本文に記載すべき内容は、法律文書の目的や、作成の背景事情などによって千差万別です。できる限り必要な事項を網羅し、かつ明確な文言で記載するように努めましょう。

後文

契約書などの合意書面では、「後文」と呼ばれるまとめの文章を記載するのが通例です。合意書面の後文には、以下の事項を記載します。

合意書面の後文に記載すべき事項(紙の書面の場合)

✅ 作成の目的
→「本契約の成立を証するため」

✅ 書面の通数
→「本書○通を作成し」(当事者の数と同じ通数を作成するのが一般的)

✅ 作成者・契約締結の方法
→「甲乙それぞれ記名押印(署名捺印)の上」

✅ 保管者
→「各自1通ずつを保管する」

(例)
「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印の上、各自1通ずつを保管する。」

契約書の後文に記載すべき事項(電子書面の場合)

✅ 作成の目的
→「本契約の成立を証するため」

✅ 電磁的記録で書面を作成する旨
→「本書の電磁的記録を作成し」

✅ 作成者・契約締結の方法
→「甲乙それぞれ電子署名を施し」

✅ 保管者
→「各自その電磁的記録を保管する」

(例)
「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙それぞれ電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」

別紙

本文中に記載すると雑多になりそうな細かい事項については、別紙にまとめるのが一般的です。

例えば不動産売買契約では、不動産の表示(不動産に関する情報)を別紙に記載することがあります。

別紙を添付する場合、本文中の適切な箇所で別紙を引用することを忘れないようにしましょう。

(例)
甲は乙に対して、別紙1記載の不動産を譲渡する。

作成者の署名・捺印等

法律文書が真正に成立したことを確実に証明するためには、作成者が署名(サイン)または押印を行うことが望ましいです。

当事者の署名または押印がある場合には、文書が真正に成立したと推定され、証拠力が高まるからです(民事訴訟法228条4項)。

なお、日本では、民事訴訟法228条4項の推定効を生じさせるために、慣習的に、以下のいずれかの方式をとることが多いです。

・署名捺印方式:サイン+押印
・記名押印方式:サイン以外の方法で名称などを表示+押印

※捺印・押印は、いずれも「印鑑を押す」という意味です。
※法人が当事者の場合は、記名押印方式によるのが一般的です。

署名捺印または記名押印は、契約書などの合意書面の場合は署名欄(署名ページ)に、それ以外の法律文書の場合は、当事者の情報を記載する部分に行うことが多いです。

法律文書を作成する際の注意点

法律文書を作成する際には、以下の各点に注意しましょう。

・明確な文言で作成する
・必ず権限のある人が作成する
・記載すべき事項を全て記載する
・決まった様式があるものは、それに従う
・先例があれば、それを参考にする

明確な文言で作成する

法律文書の文言が不明確だと、発生する法的効力の内容も不明確となり、関係当事者の間でトラブルが発生する原因になります。

そのため、法律文書は

分かりやすくかつ2通り以上の文言に解釈されない明確な文言

を用いて作成してください。

必ず権限のある人が作成する

法律文書は、必ず権限のある人が作成しなければなりません。

・個人が作成する場合は本人または代理人
・法人が作成する場合は代表者またはその授権を受けた者

が、それぞれ作成する必要があります。

権限のない者が作成した法律文書は無効であり、相手方やその他の当事者から責任追及を受けることは避けられません。

記載すべき事項を全て記載する

法律文書には、

・想定される取引の内容
・法令上記載が求められる事項

など、必要な事項を全て記載することが大切です。

関連する事務について豊富な経験をもつ担当者が、複数人で慎重にチェックを行い、記載すべき事項に漏れがないことを確認してから発送などを行いましょう。

決まった様式があるものは、それに従う

法律文書の作成方式は原則として自由ですが、例外的に、法令等によって様式が決まっているものがあります(例:金融商品取引法に基づく各種申請書など)。

この場合、異なる様式を使用すると受理されませんので、必ず決まった様式を用いて法律文書を作成しましょう。

信頼できる先例があれば、それを参考にする

以前にも社内で同種・類似の法律文書を作成したことがあり、かつ適切なリーガルチェックが行われた場合には、その先例を参考に法律文書を作成するのがよいでしょう。

ただし、法令改正などに応じた修正が必要な場合もあるので、先例をうのみにすることなく、ゼロベースで内容をチェックすることも大切です。

この記事のまとめ

法律文書の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

田中豊著『法律文書作成の基本[第2版]』日本評論社、2019年