契約書の訂正方法|訂正印・捨印・変更契約の各方法や注意点などを解説!

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この記事のまとめ

契約書は、当事者の合意があれば訂正できます

契約書を訂正する方法には、主に以下の4パターンがあります。
①訂正印+二重線により訂正する
②捨印を用いて訂正する
③一部変更契約を締結する
④全面変更契約を締結する

誤記などの軽微な訂正であれば、訂正印または捨印を用いて行うことが多いです。これに対して、実質的な内容に及ぶ訂正については、変更契約を締結して行うのが適切でしょう。

契約書を訂正する際には、改ざんが行われないように注意すべきです。また、重要な事項を変更するために作成された変更契約書には、収入印紙の貼付を要する場合があるのでご注意ください。

この記事では、契約書を訂正する際の方法や注意点などを解説します。

ヒー

契約書にミスがあることに気づいたのですが、もう印刷・製本してしまいました。

ムートン

契約書を訂正する場合の方法、ルールについてこの記事で勉強しましょう。

※この記事は、2023年10月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

契約書の訂正は当事者の合意によって行う

約書の訂正は、すべての当事者の合意によって行います

一部の当事者が勝手に契約書を訂正しても、原則としてその訂正は他の当事者に対して効力を生じません。それだけでなく、私文書の変造として刑事罰(3か月以上5年以下の懲役、刑法159条2項)を科されるおそれがあるので絶対にやめましょう。

契約書の訂正方法のパターン

契約書を訂正する方法には、主に以下の4パターンがあります。

①訂正印+二重線により訂正する
②捨印を用いて訂正する
③一部変更契約を締結する
④全面変更契約を締結する

誤記などの軽微な訂正であれば、訂正印または捨印を用いて行うことが多いです。これに対して、実質的な内容に及ぶ訂正については、変更契約を締結して行うのが適切でしょう。

訂正印+二重線による契約書の訂正方法

訂正印と二重線によって契約書を訂正する際の手順と、その際に生じやすい疑問点について解説します。

訂正印+二重線を用いた訂正の手順

訂正印と二重線によって契約書を訂正する際の手順は、以下のとおりです。

①訂正によって削除する文字の上から、ボールペン等で二重線を引きます。

②二重線によって削除した文字の付近に、訂正後の文言をボールペン等で記載します。

③訂正箇所の付近に、削除した文字数と追記した文字数をそれぞれ記載します。
(例)削除4文字、加入4文字

④二重線で削除した文字の上から、または訂正箇所の付近に訂正印を押します。

訂正印にまつわるよくある疑問

訂正印と二重線によって契約書を訂正する際に、生じやすい以下の疑問点について適切な取り扱いを解説します。

疑問1|使用する訂正印は何にすべき?
疑問2|訂正印は双方ともに必要?
疑問3|文字数の数え方は?

疑問1|使用する訂正印は何にすべき?

契約書の訂正に用いる印鑑(=訂正印)は、契約書の締結に用いた印鑑(=署名欄に押した印鑑)と同じものを用いるべきです。締結時と同じ印鑑を用いることで、訂正についても権限ある者が行ったことを証明できます。

なお、押印を省略してサインにより契約書を締結した場合は、訂正についても締結者のサインによって行いましょう。

疑問2|訂正印は双方ともに必要?

契約書を訂正する際の訂正印は、当事者全員が押す必要があります。契約書の訂正は当事者の合意に基づいて行う必要があり、訂正印はその合意を証明するものだからです。

当事者の一部が訂正印を押していないと、後に訂正の有効性について争いが生じるおそれがあるのでご注意ください。

疑問3|文字数の数え方は?

契約書の訂正箇所に記入する削除または追記(加入)の文字数は、文字の種別(ひらがな・カタカナ・漢字・英数字・記号など)にかかわらず1文字ずつカウントします。

(例)
訂正前:15人以上
訂正後:20人以上(ただし、2023年10月1日以降は30人以上)

→「15人以上」の削除については「5文字削除」と記載します。「15」が半角でも全角でも同様です。

「20人以上(ただし、2023年10月1日以降は30人以上)」の追記については「29文字加入」と記載します。読点や括弧についても、それぞれ1文字とカウントします。

捨印による契約書の訂正方法

捨印」とは、文書の余白部分に行われ、後で誤りが判明した際には訂正印として利用できるようにした押印です。

契約書に捨印を押す場合は、冒頭(タイトル部分)の上部余白に押すのが一般的です。契約書を訂正する必要が生じれば、その訂正内容を捨印の隣に記載することで、捨印を訂正印として用います。

捨印を押すと、原本を所有する当事者に対して、訂正の権限を一任することになります。軽微な誤字・脱字の修正程度であれば問題ありませんが、重要な条項を書き換えられてしまうおそれもあるので、捨印を押してよいかどうかは慎重に検討しましょう。

一部変更契約による契約書の訂正方法

契約書全体の効力を原則として維持しつつ、一部のみを変更する契約を「一部変更契約」といいます。訂正が契約の実質的な内容に及ぶものの、訂正の分量自体はそれほど多くない場合は、一部変更契約によって訂正するのがよいでしょう。

一部変更契約は、原契約と同様に、すべての当事者が署名・押印等を行う方法により締結します。

一部変更契約の記載例

契約書を訂正するための一部変更契約については、以下の記載例を参考に条項を作成してください。

一部変更契約の記載例
○○一部変更契約書

 
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲及び乙の間の×年×月×日付□□契約書(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)に関して、以下のとおり一部変更契約書(以下「本変更契約」という。)を締結する。本変更契約で用いられる用語は、本変更契約で別途定義される場合を除き、原契約において定義された意味を有する。
 
第1条(原契約の変更)
1. 原契約第○条を以下のとおり変更する。
(変更前)
……
(変更後)
……
 
2. 原契約第○条第○項を削除する。
 
3. 原契約第○条として、以下の条文を追加する。
……
 
第2条(変更の効力)
1. 本変更契約に基づく原契約の変更の効力は、本変更契約締結日から将来に向かって生じるものとし、原契約に基づき既に行われた行為の効力に何らの影響も与えるものではない。
2. 本変更契約に基づき明示的に変更された原契約の条項を除き、原契約の他の条項は、引き続き有効にその効力を維持する。
 
第3条(合意管轄)
甲及び乙は、本変更契約から生じた紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
 
以下後文、署名欄

一部変更契約によって契約書を訂正する際には、「原契約の変更」などと見出しを付して、訂正(変更・削除・追加等)の内容を記載します。

訂正の効力については、以下のことを明記しておきましょう。

  • 一部変更契約の締結日から将来に向かって生じること
  • 原契約に基づき既に行われた効力には影響が生じないこと
  • 変更されない原契約の状況は引き続き効力が維持されること

合意管轄を定める場合は、原契約と同じ裁判所を専属的合意管轄裁判所に指定しましょう。

なお、一部変更契約のタイトルには「一部変更契約」と明記するのが一般的ですが、「○○契約の変更に関する覚書(合意書)」などとしても構いません

全面変更契約による契約書の訂正方法

訂正が契約の実質的な内容に及び、かつ訂正の分量が比較的多い場合は、全面変更契約を締結して訂正するのがよいでしょう。

また、訂正の分量がそれほど多くない場合でも、訂正内容を含めた契約全体を一覧的に把握できるように、あえて全面変更契約を締結するケースもあります。

全面変更契約は、一部変更契約と同様に、すべての当事者が署名・押印等を行う方法により締結します。

全面変更契約の記載例

全面変更契約においては、前文で全面変更を行う旨を明記したうえで、訂正を反映した本文すべてを改めて記載します。

全面変更契約の記載例
○○全面変更契約書

 
○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、甲及び乙の間の×年×月×日付□□契約書(その後の変更等を含み、以下「原契約」という。)に関して、以下のとおり全面変更契約書(以下「本変更契約」という。)を締結する。
 
第1条(定義)
……

全面変更契約の難点は、訂正前のバージョンからどこが変更されたのか分かりにくい点です。
全面変更契約のドラフトを当事者間でやり取りする際には、変更履歴を付すなどして、訂正箇所を明示しましょう。また、相手方から送られてきた全面変更契約のドラフトについては、訂正前のバージョンとの間で機械的に文書比較を行うなどして、不適切な変更が行われていないことを確認しましょう。

電子契約書の訂正方法

契約書の原本が電子契約である場合は、訂正印(+二重線)や捨印を用いて契約書を訂正することはできません。電子契約の原本ファイルを印刷して訂正印等による訂正を行っても、その訂正の効力には疑義が生じるおそれがあるので注意が必要です。

電子契約を訂正する必要が生じた場合は、一部変更契約または全面変更契約の方式をとりましょう。変更契約は紙で締結することもできますが、契約管理の観点からは、原契約と同様に電子契約によって締結するのが便利です。

契約書を訂正する際の注意点

契約書を訂正する際には、特に以下の2点に十分注意しましょう。

注意点1|改ざんされないように注意する
注意点2|変更契約書には収入印紙の貼付を要する場合がある

注意点1|改ざんされないように注意する

契約書の訂正は当事者の合意に基づかねばならず、一部の当事者が知らないうちに契約書を訂正することは改ざん(変造)に当たります。

しかし実際には、契約書の訂正と称して改ざんを行った結果、契約内容を巡るトラブルが生じるケースが少なくありません。自社として改ざんを行わないことはもちろん、契約相手による改ざんが行われないように、きちんとチェックを行う必要があります。

特に以下の2つのパターンは、契約書の訂正に伴って行われがちな改ざんの典型例です。それぞれ適切に対策を行いましょう。

①捨印を悪用して、相手方当事者に無断で契約書の内容を変更する
<対策>
・捨印を押さない(訂正が必要となった際には、必ず内容の確認を行う)
・捨印を押す場合は、相手方当事者が十分信頼できるかどうかを慎重に検討する

②全面変更契約のドラフトに、相手方当事者が承諾していない変更内容を勝手に反映する(そして、その変更内容が見咎められずに、そのまま全面変更契約が締結されてしまう)
<対策>
・変更履歴機能などを用いて、訂正による変更内容を明示する
・相手方から受け取ったドラフトにつき、訂正前のバージョンとの間で機械的に文書比較を行うなどして、不適切な変更が行われていないことを確認する

注意点2|変更契約書には収入印紙の貼付を要する場合がある

変更契約書を締結して原契約を訂正する際には、変更契約書に収入印紙を貼付すべき場合があります。

原契約書において証されるべき事項のうち、重要な事項を変更するために作成した変更契約書は、印紙税の課税文書となるため収入印紙の貼付が必要です
例えば、以下のような訂正を含む変更契約書には、収入印紙の貼付が必要と考えられます。

(例)
・工事請負契約書により定めた取引条件のうち、工事代金の支払方法を変更する場合
・製造請負基本契約書により定めた取引条件のうち、製品の納期を変更する場合
・清掃請負基本契約書により定めた取引条件のうち、清掃範囲を変更する場合
など

変更契約書に貼付すべき収入印紙の金額は、課税文書の種類(号数)によって異なります。また、第1号文書および第2号文書については、取引金額によっても収入印紙の金額が変わります。

課税文書の種類(号数)ごとの印紙税額については、以下の記事を併せてご参照ください。

なお、変更契約を電子契約によって締結すれば、変更内容や原契約の種類にかかわらず、収入印紙を貼付する必要はありません。収入印紙代を節約したい場合は、電子契約の導入をご検討ください。

ムートン

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