2024年(令和6年)に施行される法改正のまとめ!
フリーランス保護新法・労働法関連の改正などを
分かりやすく解説!

この記事のまとめ

2024年(令和6年)には、企業法務に関連するさまざまな改正法・新法施行が予定されています。企業の法務担当者は、自社の事業に関連する法改正について、その内容を正しく理解しておきましょう。

この記事では、2024年中の施行が予定されている主な法改正の概要を解説します。

ヒー

2024年は、どんな法改正があるのでしょうか?

ムートン

4月に労働関係を中心に施行が複数あるほか、秋頃にはフリーランス保護新法の施行なども予定されています。チェックしていきましょう!

※この記事は、2023年12月4日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • フリーランス保護新法…特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律
  • 改善基準告示…自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
  • 電子帳簿保存法…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
  • 景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法
  • 障害者差別解消法…障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
  • 障害者総合支援法…障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
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10分で読める!2024年施行予定の法改正まとめ

目次

2024年(令和6年)施行予定の主な法改正一覧

2024年には、企業法務などに関連する各種の改正法および新法施行が予定されています。

ムートン

分野ごとに分けて、ご紹介していきます。

2024年に施行が予定されている主な法令

<法務>
① フリーランス保護新法(2024年11月1日施行)

<労務>
② 労働安全衛生規則改正(2024年4月1日施行)
③ 労働基準法施行規則改正(2024年4月1日施行)
④ 改善基準告示改正(2024年4月1日施行)
⑤ 厚生年金保険法・健康保険法改正(2024年10月1日施行)

<経理財務>
⑥ 電子帳簿保存法改正(2024年1月1日開始)
⑦ 金融商品取引法改正(2024年4月1日施行)

<知的財産>
⑧ 意匠法改正(2024年1月1日施行)
⑨ 商標法改正(2024年4月1日施行)
⑩ 不正競争防止法改正(2024年4月1日施行)
⑪ 景品表示法改正(2024年10月1日施行)

<その他>
⑫ 障害者差別解消法改正(2024年4月1日施行)
⑬ 障害者総合支援法改正(2024年4月1日施行)
⑭ 民法改正(2024年4月1日施行)
⑮ 不動産登記法改正(2024年4月1日施行)
⑯ 民事訴訟法改正(2024年3月1日施行)

ムートン

それでは、一つずつ概要を解説していきますね。

フリーランス保護新法(2024年11月1日施行)|契約内容の明示等を義務化

フリーランス保護新法は、働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的とした法律です。

各種の労働法が適用される労働者とは異なり、フリーランスは取引における立場が保障されていません。下請法によって一定の保護を受けられる場合もありますが、資本金要件を満たさず下請法が適用されないケースもあります。

フリーランス保護新法は、資本金の多寡を問わず以下の規制などを定め、取引におけるフリーランスの保護を図るものです。2024年11月1日の施行が予定されています。

フリーランス保護新法のポイント

・書面等での契約内容の明示
・報酬の60日以内の支払い
・募集情報の的確な表示
・ハラスメント対策

ヒー

フリーランスと取引をする場合はこの内容を守ることが必要になるんですね…メモメモ。

ムートン

詳しい内容は以下の記事で解説しています!

労働安全衛生規則改正(2024年4月1日施行)|化学物質管理者の選任の義務化

化学物質管理者」とは、事業場における化学物質の管理に係る技術的事項を管理する担当者で、従来はガイドラインによって位置づけられていました。

労働安全衛生規則の改正により、2024年4月1日以降は、リスクアセスメント対象物を扱う全ての事業場において化学物質管理者の選任が義務付けられます。

ヒー

リスクアセスメント対象物なんて聞いたことないですけど…

ムートン

化学製品の製造などだけでなく、業務用の洗剤や業務用トナーなど、身近なものもリスクアセスメント対象物に指定されている場合があります。適切に対応しましょう!

労働基準法施行規則改正(2024年4月1日施行)|労働条件明示のルール・裁量労働制の見直し

労働条件明示のルールの変更

労働基準法施行規則の改正により、2024年4月1日以降は、労働者を雇い入れる際に交付する労働条件通知書に以下の事項の記載が義務付けられます

2024年4月1日から必要となる記載事項

・就業場所および従事すべき業務の変更の範囲
・更新上限の有無および内容
・無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨
・無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件

ヒー

弊社に「労働条件通知書」という書面は無いみたいです。

ムートン

雇用契約書」などで兼ねている場合は、その内容に記載が必要となりますよ。

裁量労働制の見直し

また、専門業務型裁量労働制の対象業務として以下の業務が追加されるほか、労使協定等に記載すべき事項として以下の事項が追加される予定です。

<追加される対象業務>
・銀行または証券会社における顧客の合併および買収に関する調査または分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務(M&Aアドバイザリーに関する業務)

<労使協定等への記載が追加される事項>
・労働者本人の同意を得ること
・労働者が同意をしなかった場合の不利益な取り扱いの禁止
・同意の撤回の手続き
・各労働者の同意および同意の撤回に関する記録の保存

ムートン

裁量労働制を導入している事業場では、3月末までに協定届などを提出する必要があります。

改善基準告示改正(2024年4月1日施行)|特定業種における労働時間の上限規制の見直し

2024年4月1日より改正改善基準告示が施行され、ドライバーの労働時間に関する規制が厳格化されます。具体的には、ドライバーの拘束時間の上限が短縮されるほか、勤務間インターバルの確保などが求められます。

ヒー

これって「2024年問題」と言われているものですよね。

ムートン

ドライバーのほか、医師建設業などでも労働時間の上限規制が適用になります。

厚生年金保険法・健康保険法改正(2024年10月1日施行)|51人以上の事業所で短時間労働者が社会保険の適用対象に

事業者がパート・アルバイトなどの短時間労働者を社会保険に加入させる義務を負うのは、以下の①および②の要件をいずれも満たす場合です。

改正前の社会保険の適用対象

① 特定適用事業所または任意特定適用事業所であること
特定適用事業所:短時間労働者を除く被保険者の総数が常時100人を超える事業所
任意特定適用事業所:特定適用事業所以外であって、労使の合意に基づき、短時間労働者を社会保険の適用対象とする旨を申し出た事業所

② 短時間労働者が以下の要件をすべて満たすこと
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が2カ月超見込まれる
・賃金の月額が8.8万円以上
・学生でない

現行法上、短時間労働者を社会保険に加入させる義務が強制的に適用される「特定適用事業所」は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時100人を超える(101人以上の)事業所とされています。

2024年10月1日以降は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時50人を超える(51人以上の)事業所が特定適用事業所とされ、その範囲が大幅に拡大されます

ヒー

50人くらいの規模の企業・事業所から対応の準備をする必要が出てきますね。

ムートン

該当する規模の事業所がある事業者は特に注意しましょう。

電子帳簿保存法改正(2024年1月1日開始)|電子取引データ保存の宥恕期間が終了

2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法により、電子取引に係るデータは電子保存が義務付けられ、紙に印刷して保存することは不可とされています。ただし、2022年1月1日から2023年12月31日まで2年間の宥恕措置(経過措置)が設けられ、一定の要件を満たす場合には紙媒体による印刷保存も認められていました。

2024年1月1日以降は上記の宥恕措置が撤廃されるため、電子取引に係るデータは電子保存が一律で義務付けられます。

ムートン

メールやオンラインでの取引の記録を残す方法が必要になります。要件を確認してくださいね。

金融商品取引法改正(2024年4月1日施行)|四半期報告書の廃止等

金融商品取引法では、上場企業に対して企業情報の開示を義務付けています。

上場会社の開示書類の一つとして、3カ月ごとに開示が義務付けられてきた「四半期報告書」は、取引所規則に基づいて開示される決算短信と内容が重複するケースも多いことから、その必要性に疑問が呈されていました。
2024年4月1日に施行される改正金融商品取引法では、企業開示の効率化の観点から、四半期報告書廃止され、決算短信に一本化されます。

改正金融商品取引法にはその他、顧客本位の業務運営の確保や金融リテラシーの向上、デジタル化の進展に対応した顧客等の利便向上・保護に関する規定が盛り込まれています。

ヒー

上場企業はすぐに対応が必要となりますね。

ムートン

企業開示については昨年の人的資本の情報開示なども含め、動きのあるところです。注意しましょう。

景品表示法改正(2024年10月1日施行)|確約手続・直罰の導入等による事業者への取組促進等

2024年10月1日より施行される改正景品表示法では、以下の変更が行われます。

改正景品表示法のポイント

① 事業者の自主的な取り組みの促進
・確約手続きの導入
・課徴金制度における返金措置の弾力化

② 違反行為に対する抑止力の強化
・課徴金制度の見直し
・罰則規定の拡充

③ 円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等
・国際化の進展への対応
・適格消費者団体による開示要請規定の導入

特に、是正措置計画の認定を受けることで措置命令や課徴金納付命令を回避できる確約手続きや、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰(100万円以下の罰金)が導入される点が注目されます。

ヒー

罰則が強化されるんですね…!

ムートン

もし違反をしてしまったら、誰がどう対応するか、という視点で理解しておくべきです。

意匠法改正(2024年1月1日施行)|新規性喪失の例外規定の要件緩和

2024年1月1日より施行される改正意匠法では、新規性喪失の例外規定の適用を受けるために必要な手続きが緩和されます。

意匠登録を受けるためには、その意匠に新規性が認められる必要があります。発表(公開)によって新規性を喪失した意匠を登録したい場合、例外適用として全ての公開意匠を網羅した証明書を提出することが必要でしたが、この要件が緩和され、最先の公開意匠についての証明書で足りることとなります。

ムートン

既に発表してしまった意匠について、登録の可能性が広がる改正といえます。

商標法改正(2024年4月1日施行)|登録可能な商標の拡充等

2024年4月1日より施行される改正商標法では、以下の変更によって登録可能な商標が拡充されます。

商標法改正のポイント

・コンセント制度の導入
・他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和

ヒー

コンセント制度って何ですか?

ムートン

コンセント制度は、「先行登録商標の権利者の同意があれば両商標の併存登録を認める制度」です。詳しくは以下の記事を確認してください。

不正競争防止法改正(2024年4月1日施行)|ブランド・デザインの保護強化等

2024年4月1日より施行される改正不正競争防止法では、主に以下の改正が行われます。

不正競争防止法改正のポイント

① ブランド・デザインの保護強化
② 営業秘密・限定提供データの保護強化
③ 損害賠償額の算定規定の拡充
④ 外国公務員贈賄罪の強化・拡充

ヒー

デジタル空間でもブランドやデザインの保護ができるようになるんですね。

ムートン

企業の資産を守るために把握しておきましょう。

障害者差別解消法改正(2024年4月1日施行)|事業者による障害者への合理的配慮の提供の義務化

2024年4月1日より施行される改正障害者差別解消法に基づき、事業者に対して障害者への合理的配慮の提供が義務付けられます

障害者差別解消法の内容

・障害を理由とする「不当な差別的取扱い」の禁止
・障害のある人から申出があった場合に「合理的配慮の提供」を求める

これまで障害者に対する合理的配慮の提供義務は、国や地方公共団体などに限って義務付けられていました。民間事業者については、障害者に対する合理的配慮の提供は努力義務とされていましたが、今回の改正によって法律上の義務となります。

ヒー

現場ではどういった対応をするかという判断に迷いそうですね。

ムートン

施行までに事例などを見て、望ましい対応を検討しておくことが必要になるでしょう。

障害者総合支援法改正(2024年4月1日施行)|障害者等の地域生活や就労支援の強化等

2024年4月1日より施行される改正障害者総合支援法では、障害者等の希望する生活をよりよく実現するため、以下の変更が行われます。

障害者総合支援法改正のポイント

①障害者等の地域生活の支援体制の充実
②障害者の就労支援および障害者雇用の質の向上の推進
③精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備
④難病患者等に対する適切な医療の充実および療養生活支援の強化
⑤障害者・難病等についてのデータベースに関する規定の整備
⑥その他

ヒー

企業は障害者雇用率(2024年度からは2.5%)なども守る必要がありますよね。

ムートン

短時間での就労など、さまざまな方法が考えられます。

民法改正(2024年4月1日施行)|嫡出推定制度の見直し

2024年4月1日より施行される改正民法により、女性の離婚後100日間の再婚禁止期間が廃止されます。それに伴い、離婚後300日以内に生まれた子どもも、再婚した夫の子と推定されるようになります。

ヒー

嫡出推定の内容は最高裁の判例が出て改正されるものですね。

ムートン

企業法務に直結するものではありませんが、民法改正の内容は把握しておいて損はありません。

不動産登記法改正(2024年4月1日施行)|相続登記の義務化

2024年4月1日より施行される改正不動産登記法により、相続によって不動産の所有権を取得してから3年以内に相続登記の手続きを行うことが義務付けられます

ムートン

こちらも企業法務に直結するものではありませんが、所有者不明土地問題の解決に向けたものとして理解しておきましょう。

民事訴訟法改正(2024年3月1日施行)|口頭弁論のオンライン実施

2024年3月1日より施行される改正民事訴訟法では、新たに口頭弁論(=裁判所の法廷における主張・立証の手続き)のオンライン実施が認められるようになります。

さらに今後は、2026年5月までに、民事訴訟のIT化に関する各種改正が全面的に施行される予定です。

ムートン

民事訴訟などの手続きはオンライン化の実施が進みつつあります。キャッチアップしておきましょう。

ムートン

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