扶養控除とは?
配偶者・子どもは対象?
適用要件・金額・手続きなどを
分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

扶養控除」とは、親族を扶養している人が受けられる所得控除です。扶養控除の適用を受けると、所得税や住民税の額が減ります。

扶養控除の適用を受けられるのは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の「控除対象扶養親族」を扶養している人です。控除対象扶養親族は、年収などの要件を満たす必要があります。

令和7年度税制改正により、控除対象扶養親族の合計所得金額が「48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)」から「58万円以下(給与のみの場合は123万円以下)」に引き上げられました。

この記事では扶養控除について、適用要件・金額・手続きなどを分かりやすく解説します。

ヒー

扶養控除とは具体的にどのような仕組みなのでしょうか。

ムートン

扶養している家族がいる場合に利用できる税控除の制度です。詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2025年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

所得税の扶養控除とは

所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される国税です。

ただし、給与などの収入全額に対して所得税が課されるわけではありません。所得税にはさまざま所得控除が設けられており、控除額を所得税の課税標準(=税率をかける前の額)から差し引くことができます。

扶養控除」も所得控除の一つで、親族を扶養している人に適用されます。扶養控除の適用を受けると、所得税の額が減ります

参考:
国税庁ウェブサイト「No.1180 扶養控除」

扶養控除と配偶者控除の違い

扶養控除の対象となるのは、配偶者以外の親族です。

配偶者は扶養控除の対象になりませんが、その代わりに「配偶者控除」の対象となることがあります。配偶者控除も所得控除の一つで、適用を受けると所得税の額が減ります。

ただし、扶養控除には納税者の所得制限がないのに対して、配偶者控除には所得制限が設けられているなどの違いがあります

なお、配偶者の所得が配偶者控除の所得制限を超えた場合も、一定額に達するまでは「配偶者特別控除」を受けることができます。

参考:
国税庁ウェブサイト「No.1191 配偶者控除」
国税庁ウェブサイト「No.1195 配偶者特別控除」

扶養控除を受けられる人の要件

所得税の扶養控除を受けるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります(所得税法84条)。

① 日本の居住者であること
② 控除対象扶養親族を有すること

日本の居住者であること

扶養控除を受けられるのは「居住者」のみです。居住者とは、以下のいずれかに当たる者をいいます(所得税法2条1項3号)。

(a)日本国内に住所を有する者
(b)現在まで引き続いて1年以上、日本国内に居所を有する(=住んでいる)者

控除対象扶養親族を有すること

扶養控除を受けるためには、「控除対象扶養親族」を有している必要があります。控除対象扶養親族の要件は、次の項目で解説します。

なお、控除対象扶養親族に当たるかどうかは、その年の12月31日の現況によって判定します。ただし、判定対象者がその年の12月30日までに死亡している場合は、死亡の時の現況によって判定します(所得税法85条3項)。

扶養控除の対象となる扶養親族の要件

扶養控除の対象となる「控除対象扶養親族」に当たるのは、以下の要件をすべて満たす者です(所得税法2条1項34号、34号の2)。

① 納税者の配偶者以外の親族等であること
② 納税者と生計を一にしていること
③ 年間の合計所得金額が一定額以下であること
④ 事業専従者に当たらないこと等
⑤ 16歳以上であること
⑥ 【令和5年分以後・非居住者の場合】年齢等の追加要件を満たすこと

納税者の配偶者以外の親族等であること

控除対象扶養親族となり得るのは、以下のいずれかに該当する者です。

(a)納税者の配偶者以外の親族
※親族=6親等内の血族および3親等内の姻族

(b)納税者が都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)

(c)納税者が市町村長から養護を委託された老人

なお前述のとおり、配偶者は扶養控除の対象になりません。その代わりに、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられることがあります。

納税者と生計を一にしていること

扶養控除の対象となるのは、納税者と生計を一にする者に限ります。生計を一にする」とは、日常生活に充てる資金を共通にしていることをいいます

同じ家に住んでいる場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、生計を一にするものと認められます。

また同じ家に住んでいなくても、以下の2つの要件を満たす場合には、生計を一にするものと認められます。

(a)勤務や修学などの余暇には、家に帰って来るのが常例となっている
(b)常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている

参考:
国税庁ウェブサイト「所得税法基本通達2-47」

年間の合計所得金額が一定額以下であること

扶養控除の対象となる親族等は、合計所得金額が一定額以下の者に限られています。パートやアルバイトなどによって得た収入が一定額を超えた場合は、扶養控除を受けることができません

控除対象扶養親族の合計所得金額の上限は、年度によって以下のように変化してきました。

年度控除対象扶養親族の合計所得金額の上限
~令和元年分38万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
令和2年分~令和6年分48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
令和7年分~58万円以下(給与のみの場合は123万円以下)

令和7年分からは、いわゆる「103万円の壁」が引き上げられたことに伴い、控除対象扶養親族の合計所得金額の上限も引き上げられました
親族等の所得が給与のみである場合は、その年額が123万円以下なら扶養控除の対象となります。

事業専従者に当たらないこと等

以下のいずれかに当たる者は、扶養控除の対象外となります。

(a)青色申告者の事業専従者として、その年に一度でも給与の支払いを受けた者

(b)白色申告者の事業専従者である者

※事業専従者:以下の3つの要件をすべて満たす者
・青色申告者または白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族である
・その年の12月31日現在の年齢が15歳以上である
・原則としてその年を通じて6カ月を超える期間、その青色申告者または白色申告者の営む事業に専ら従事している

16歳以上であること

扶養控除の対象となるのは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上である者のみです

従来は15歳以下の者も扶養控除の対象とされていました。しかし、平成22年(2010年)に子ども手当(現:児童手当)が導入された際、その財源を確保するために15歳以下の者が扶養控除の対象から外されました(=年少扶養控除の廃止)。

【令和5年分以後・非居住者の場合】年齢等の追加要件を満たすこと

令和5年分以後の所得税において、非居住者(=居住者でない者)である親族が扶養控除の対象となるためには、その親族が以下の(a)~(c)のいずれかに該当することが必要です。

(a)その年の12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満である

(b)その年の12月31日現在の年齢が70歳以上である

(c)その年の12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満であって、以下のいずれかに該当する
・留学により国内に住所および居所を有しなくなった
・障害者である
・納税者からその年において生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている

【控除対象扶養親族の区分別】扶養控除の金額

扶養控除の金額は、控除対象扶養親族の区分によって以下のとおり定められています。

控除対象扶養親族の区分扶養控除の金額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族同居老親等以外の者:48万円
同居老親等:58万円

一般の控除対象扶養親族|38万円

一般の控除対象扶養親族」とは、特定扶養親族と老人扶養親族のいずれにも当たらない控除対象扶養親族です。
具体的には、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上19歳未満、または23歳以上69歳未満である者が一般の控除対象扶養親族に当たります

一般の控除対象扶養親族については、38万円の扶養控除を受けられます。

特定扶養親族|63万円

特定扶養親族」とは、その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族です。

特定扶養親族については、63万円の扶養控除を受けられます。

老人扶養親族|48万円または58万円

老人扶養親族」とは、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の扶養親族です。

老人扶養親族のうち、納税者の配偶者または直系尊属(父母や祖父母など)であって、納税者またはその配偶者と常に同居している者を「同居老親等」といいます。
同居老親等については、58万円の扶養控除を受けられます。

同居老親等以外の老人扶養親族については、48万円の扶養控除を受けられます。

なお、老人ホームなどに入所している場合は、常に同居しているとはいえないので同居老親等に当たりません

扶養控除の適用を受ける手続き

扶養控除の適用は、年末調整または確定申告によって行います。

年末調整による扶養控除

会社などに勤めて給与を得ている人は、原則として年末調整の対象となります。

年末調整によって扶養控除の適用を受けるためには、勤務先に対して「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」を提出する必要があります
勤務先の会社などは、年末調整を行う際に同申告書を確認したうえで、扶養控除を適用して所得税額を計算します。

年末調整については通常、10月から12月ごろに勤務先から案内がありますので、指示に従って手続きを行いましょう。

確定申告による扶養控除

個人事業主などが扶養控除を受けるためには、扶養控除に関する事項を確定申告書に記載して、税務署に提出する必要があります。給与所得者であっても、確定申告を行う場合には同様の手続きが必要です。

確定申告書に記載すべき事項は、以下のとおりです。

  • 第一表の「所得から差し引かれる金額」の「扶養控除」欄に、扶養控除の額を記載する
  • 第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に、控除対象扶養親族の情報を記載する

確定申告書は、税務署の窓口への持参、郵送またはe-Taxによって提出します。

確定申告の期間は、原則として対象年度の翌年2月16日から3月15日までです。ただし、始期または終期が土曜・日曜・祝日に当たる場合は、翌平日にずれます。
また、所得税の還付を求める申告(還付申告)については、上記の期間の前でも行うことができます。

扶養控除を適用した場合の所得税額の計算例

以下のケースについて、実際に所得税額を計算してみましょう。

(例)
・令和7年度
・納税者は50歳
・納税者の月収は60万円、年収720万円(給与のみ、賞与なし、社会保険料および税金の控除前)
・控除対象扶養親族に当たる子が2人(20歳と17歳)
・協会けんぽの健康保険および厚生年金保険に加入
・東京都で勤務
・適用される控除は、基礎控除、給与所得控除、扶養控除および社会保険料控除の4つのみ

上記のケースにおいて、基礎控除、給与所得控除、扶養控除および社会保険料控除の額は以下のとおりです。

① 基礎控除
58万円

② 給与所得控除
720万円×10%+110万円
=182万円

③ 扶養控除
63万円+38万円
=101万円
※20歳の子は特定扶養親族(63万円)、17歳の子は一般の控除対象扶養親族(38万円)

④ 社会保険料控除
40万7808円+64万7820円
=105万5628円(健康保険料と厚生年金保険料の合計)

(a)健康保険料
1月~3月:月3万4161円
4月~12月:月3万3925円

3万4161円×3+3万3925円×9
=40万7808円

(b)厚生年金保険料
1月~12月:月5万3985円

5万3985円×12
=64万7820円

上記を合計すると、所得控除の総額は「446万5628円」となります。

所得控除の総額を年収720万円から差し引くと、1年間の所得は「273万4000円」です(1000円未満は切り捨て)。この所得額に所得税の税率表を適用します。

所得税額
=273万4000円×10%-9万7500円
=17万5900円

復興特別所得税額
=17万5900円×2.1%
=3693.9円

所得税と復興特別所得税の合計額
=17万5900円+3693.9円
=17万9500円(100円未満は切り捨て)

上記の計算により、所得税と復興特別所得税の合計額は「17万9500円」となりました。なお、それとは別に住民税がかかります。

参考:
国税庁ウェブサイト「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
国税庁ウェブサイト「No.2260 所得税の税率」

住民税の扶養控除|所得税とは金額が異なる

住民税についても扶養控除の適用を受けられますが、所得税とは以下のとおり金額が異なっています。

控除対象扶養親族の区分扶養控除の金額(所得税)扶養控除の金額(住民税)
一般の控除対象扶養親族38万円33万円
特定扶養親族63万円45万円
老人扶養親族同居老親等以外の者:48万円
同居老親等:58万円
同居老親等以外の者:38万円
同居老親等:45万円

参考:
東京都ウェブサイト「個人住民税」

なお、住民税の計算方法は自治体によって異なる場合がある点にご注意ください。

ムートン

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参考文献

国税庁ウェブサイト「No.1180 扶養控除」

国税庁ウェブサイト「No.1191 配偶者控除」

国税庁ウェブサイト「No.1195 配偶者特別控除」

国税庁ウェブサイト「所得税法基本通達2-47」

国税庁ウェブサイト「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」