同一労働同一賃金とは?
事業主が意識すべき考え方や
対応のポイントを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「同一労働同一賃金」とは、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正社員との間の不合理な待遇差を禁止するというルールです。不当に低い待遇に甘んじる傾向にあるこれらの労働者を保護し、十分な待遇が与えられるようにすることを目的としています。
同一労働同一賃金は賃金だけに限らず、福利厚生などを含めたすべての待遇が対象となります。事業主は厚生労働省のガイドラインを踏まえて、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者に適切な待遇を与えなければなりません。
この記事では、同一労働同一賃金について詳しく解説します。
※この記事は、2025年10月15日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・パートタイム・有期雇用労働法…短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
- ・労働者派遣法…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
目次
同一労働同一賃金とは
「同一労働同一賃金」とは、正社員とそれ以外の労働者の間の不合理な待遇差を禁止するというルールです。短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者に適用されます。
同一労働同一賃金の目的
同一労働同一賃金の目的は、不当に低い待遇に甘んじる傾向にある短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者を保護し、十分な待遇が与えられるようにすることです。
日本では従来、正規雇用の労働者(正社員)と比べて契約社員やパート、派遣労働者など非正規雇用の労働者の待遇が低く抑えられる傾向にありました。
勤務時間や責任の重さが待遇に反映されているなら問題ありませんが、実際には正社員と同等の働きをしているのに、「非正規社員だから」というだけの理由で待遇を低く抑えられるケースも少なくありません。
こうした状況を是正するため、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法によって同一労働同一賃金が定められました。正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止することにより、非正規社員の待遇を改善することを目的としています。
同一労働同一賃金を定めた法律
同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法で定められています。いずれの法律も、大企業に対しては2020年4月1日から、中小企業に対しては2021年4月1日から適用が開始されました。
パートタイム・有期雇用労働法|均衡待遇と均等待遇
- パートタイム・有期雇用労働法
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(不合理な待遇の禁止)
第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第9条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第11条第1項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。引用元│短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
パートタイム・有期雇用労働法は、短時間労働者と有期雇用労働者を保護する法律です。
短時間労働者:1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者
有期雇用労働者:契約期間の定めがある労働者
パートタイム・有期雇用労働法では、8条において「均衡待遇」、9条において「均等待遇」が定められています。
「均衡待遇」とは、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止することをいいます。
「均等待遇」とは、正社員と同視できる短時間労働者・有期雇用労働者に対する差別的取扱いを禁止し、正社員と同等の待遇を義務付けることをいいます。
均衡待遇と均等待遇は、同一労働同一賃金の2本柱であり、いずれも重要な考え方です。
労働者派遣法
- 労働者派遣法
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(不合理な待遇の禁止等)
第三十条の三 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。
2 派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であつて、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。引用元│労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
労働者派遣法は、派遣労働者を保護するための法律です。
派遣労働者:派遣元事業主に雇用されつつ、派遣先の指揮命令下で働く労働者
労働者派遣法でもパートタイム・有期雇用労働法と同様に、均衡待遇と均等待遇が定められています。労働者派遣法30条の3第1項が均衡待遇、同条第2項が均等待遇を定めたものです。
同一労働同一賃金における「不合理な待遇差」とは|ガイドラインを踏まえて解説
同一労働同一賃金の下で禁止される、正社員とそれ以外の労働者の間の「不合理な待遇差」については、厚生労働省が「同一労働同一賃金ガイドライン」を公表しています。
法律の規定および同ガイドラインに沿って、「不合理な待遇差」に関する考え方を解説します。
同一労働同一賃金はすべての待遇が対象|賃金だけに限らない
同一労働同一賃金は、賃金に限らずすべての待遇について適用されます。
例えば、以下のような待遇が同一労働同一賃金の対象となります。
・基本給
・賞与
・手当
・福利厚生
・教育訓練
など
待遇差が妥当かどうかを判断する際の考慮要素
正社員とそれ以外の労働者の間で待遇差が設けられている場合に、それが妥当かどうかを判断するに当たっては、以下の要素が考慮されます。
① 職務の内容
・業務の内容
・業務に伴う責任の程度
② 職務の内容および配置の変更の範囲
③ その他の事情
幅広い事情を考慮する余地がある一方で、待遇差に反映してよいのは、その待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものに限られています。
不合理と認められる待遇差の具体例
同一労働同一賃金ガイドラインにおいて、不合理な待遇差の例として挙げられているものを、待遇の種類ごとに紹介します。
基本給
(例)
(a) 経験が豊かな正社員Xに対して、経験に劣る有期雇用労働者Yよりも高い基本給を支給しているが、Xの経験は現在の業務と関係がない。
→考慮すべきでない経験を基本給の差に反映しているため、不合理な待遇差に当たります。
(b) 短時間労働者Xに対して、正社員と同一の販売目標を設定し、それを達成できない場合は業績や成果に応じた基本給を支給しない。
→達成した成果や業績に違いがある場合は、その違いに応じた基本給を支給しなければなりません。短時間労働者に無理難題を課して、達成できない場合は成果給を一切支給しないとするのは問題があり、不合理な待遇差に当たります。
(c) 勤続年数に応じた基本給を支給する会社において、有期雇用労働者Xの勤続年数を当初の雇用開始時ではなく、現在の雇用契約の期間のみによって評価している。
→有期雇用労働者の勤続年数は、当初の雇用開始時から通算して評価する必要があります。契約更新ごとに勤続年数をリセットして評価し、それを基本給に反映するのは不合理な待遇差に当たります。
賞与
(例)
(a) 会社の業績等への貢献が正社員Xと同一である有期雇用労働者Yに対し、Xと同一の賞与を支給していない。
→貢献度が同じであるにもかかわらず、正社員と比べて有期雇用労働者の賞与を少なくするのは不適切であり、不合理な待遇差に当たります。
(b) 正社員には貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間労働者と有期雇用労働者には賞与を支給していない。
→短時間労働者や有期雇用労働者に対しても、貢献度に応じた賞与を支給する必要があります。正社員には賞与を支給するのに、短時間労働者または有期雇用労働者には一切賞与を支給しないのは不合理な待遇差に当たります。
手当
(例)
(a) 正社員Xと同じ名称・内容の役職に就いている有期雇用労働者Yに対して、Yよりも低い額の役職手当を支給している。
→役職が同じであるのに、正社員と有期雇用労働者の役職手当の額に差をつけるのは不合理な待遇差に当たります。
(b) 正社員Xと同じ時間数・内容の深夜労働または休日労働を行った短時間労働者Yに、Xよりも低い割増率によって深夜手当または休日手当を支給した。
→同じ深夜労働や休日労働をしたのに、正社員と有期雇用労働者の深夜手当・休日手当の額に差をつけるのは不合理な待遇差に当たります。
(c) 正社員Xに対して、有期雇用労働者Yよりも高い額の食事手当を支給している。
→労働時間の途中で食事のための休憩時間がある労働者に対して食事手当を支給する場合は、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者に同額を支給する必要があります。
正社員と有期雇用労働者の間で食事手当の額に差をつけるのは不当であり、不合理な待遇差に当たります。
(d) 正社員Xと有期雇用労働者Yはいずれも転勤があるのに、Xには地域手当を支給する一方で、Yには地域手当を支給していない。
→特定の地域で働く労働者に地域手当を支給する場合は、正社員と短時間労働者・有期雇用労働者で同額としなければなりません。
正社員と有期雇用労働者の間で地域手当の額に差をつけるのは不当であり、不合理な待遇差に当たります。
同一労働同一賃金を実現するため、事業主がとるべき対応
同一労働同一賃金を実現するため、事業主としては以下の対応などを行いましょう。
① 情報収集と社内点検
② 就業規則と賃金体系の見直し
③ 効果の検証(モチベーションの向上や離職率の低下)
情報収集と社内点検
まずは従業員に対するヒアリングなどによって情報収集を行い、同一労働同一賃金に違反する状況が生じていないか点検しましょう。
特にヒアリングの際には、従業員が忌憚のない意見を述べられるような工夫が求められます。例えば、直属の上司ではない人(人事部員など)が1対1でヒアリングをする、匿名での意見を認めるなどの対応が考えられます。
就業規則と賃金体系の見直し
就業規則や賃金体系を確認して、非正規社員の待遇が正社員よりも不当に低く抑えられている場合は、速やかに是正を図りましょう。
正社員と非正規社員の待遇差が不合理であるかどうかを判断する際には、前掲の「同一労働同一賃金ガイドライン」を参考にしてください。
効果の検証(モチベーションの向上や離職率の低下)
同一労働同一賃金を実現するための取り組みが、どのような効果を生じているのかを検証することも大切です。
例えば、主に非正規社員に対して定期的にアンケート調査を行い、実際に待遇が改善したと感じるかどうかや、モチベーションが向上したかどうかなどを聞くことが考えられます。
また、同一労働同一賃金に関する取り組みを強化する前後で、非正規社員の離職率がどのように変化したかを調べることも有用です。
同一労働同一賃金に違反した事業主が負うリスク
同一労働同一賃金に違反した場合、事業主は以下のリスクを負うことになります。これらのリスクを避けるためにも、同一労働同一賃金を徹底しましょう。
① 労働者からの金銭請求
② 行政指導・行政処分
③ 離職率やエンゲージメントへの悪影響
労働者からの金銭請求
不合理な待遇差別を受けた非正規社員は、会社に対して、正当な待遇と実際の待遇の差額を支払うよう請求してくる可能性があります。
非正規社員の金銭請求を受けた場合、その対応に多大な労力を要するうえに、思いがけず高額の支出を強いられるおそれもあるので要注意です。
行政指導・行政処分
同一労働同一賃金に違反した事業主は、厚生労働大臣から勧告などの行政指導や、公表・改善命令などの行政処分を受けることがあります。特に行政処分を受けた場合は、その事実が社会的に広まり、企業のレピュテーションに悪影響を及ぼす可能性が高いので十分ご注意ください。
離職率やエンゲージメントへの悪影響
同一労働同一賃金が保障されていない職場は、非正規社員にとって魅力度が低いと言わざるを得ません。非正規社員が働きがいを失い、離職率が高まったり、エンゲージメント(=企業に対する愛着や貢献意欲など)が低下したりするおそれがあります。
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