行政指導とは?
行政処分との違い・従わない場合・
具体例・行政手続法のルール・
受けた場合の対処法などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

行政指導」とは、行政機関(役所)が、特定の人や事業者に対して、ある行為を行うことまたは行わないことを求める指導です。

行政指導に法的拘束力はなく、従うか否かは任意です。しかし、無視すると行政処分などが行われることがあります。

行政指導には原則として、行政手続法が適用されます。行政手続法では、行政指導の方式などに関するルールが定められています。

行政指導を受けた際には、まずその理由を確認しましょう。原則として、行政指導の理由を記載した書面の交付を求めることもできます。

その上で、合理的な行政指導には従い、是正が完了したら監督官庁へ報告しましょう。不合理と思われる行政指導については中止を求めることも考えられますが、後に行政処分などを受けるリスクがあることには留意する必要があります。

この記事では行政指導について、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

行政指導って従わなくてもいいんですね。

ムートン

任意だとしても、合理的な指導であるなら従ったほうが賢明です。特に労働関係に関する行政指導を無視して放置すると、後々大きな問題になり、自社のレピュテーションなどに影響がでるリスクがあります。

※この記事は、2024年3月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法

行政指導とは

行政指導」とは、行政機関(役所)が特定の人や事業者に対して、ある行為を行うことまたは行わないことを求める指導です。

行政指導と行政処分の違い

行政指導は、行政手続法2条6号によって以下のとおり定義されています。

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
⑴~⑵ 略
⑹ 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

「行政手続法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

処分(=行政処分)」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為です(同条2号)。言い換えれば、国民の権利や義務に、直接具体的に影響を及ぼすことが法律的に認められている行政機関の行為が「処分」に当たります。

一方、行政指導は、「処分に該当しないもの」と定義されています。

したがって行政処分とは異なり、行政指導には、国民の権利や義務に直接具体的に影響を及ぼす効果(=法的拘束力)が認められていません

行政指導の目的・意義

行政指導に法的拘束力はありませんが、特定の者に任意の協力を求めるという意味合いがあります

いきなり強制力のある行政処分を行うのではなく、まずは行政指導によって任意の協力を求めることは、公権力の行使を抑制しつつ、実態に即した是正対応を促すことができる点でメリットがあると考えられます。

行政指導に従わない場合

行政指導に従わなくても、直ちに法的なペナルティを受けるわけではありません。

ただし、行政指導に従わない者に対しては、改めて行政処分などが行われる可能性が高いです。行政処分には法的拘束力があるため、直ちに具体的な不利益が生じ得るほか、従わなければ刑事罰を科されることもあります。

ムートン

したがって、法的拘束力がないとしても、合理的な行政処分には従った方が賢明です。

行政指導の具体例

行政指導の具体例を一部紹介します。

・残業代の未払いがある事業者に対して、労働基準監督官が是正勧告を行った。

・許認可の申請要件の一部を満たしていなかった事業者に対して、申請を却下する前に、業務体制のさらなる整備を行うよう指導した。

・倫理的に問題がある表現を放送した放送事業者に対して、総務省が見直しを行うように求めた。

行政指導について適用される規律(ルール)

行政指導については、原則として行政手続法に基づく以下のルールが適用されます。

① 行政指導の一般原則
② 申請に関連する行政指導
③ 許認可等の権限に関連する行政指導
④ 行政指導の方式
⑤ 複数の者を対象とする行政指導
⑥ 行政指導の中止等の求め
⑦ 行政指導の求め

行政指導の一般原則

行政機関において行政指導に携わる者は、以下のことに留意しなければなりません(行政手続法32条1項)。

(a)当該行政機関の任務所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと
(b)行政指導の内容が、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであること

また、相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをすることは禁止されています(同条2項)。

ムートン

これらの一般原則は、「法的拘束力を持たず任意の協力を求めるものに過ぎない」という行政指導の性質を表現したものです。

申請に関連する行政指導

申請の取り下げまたは内容の変更を求める行政指導については、行政指導に携わる者は、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず、申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはなりません(行政手続法33条)。

例えば、申請者が従う意思がない旨を明確に述べているのに、同じ行政指導を継続することは行政手続法に違反します。この場合は、行政指導を中止した上で申請内容の審査を行い、法律上の要件に従って受理するか却下するかを判断すべきです。

ムートン

このように、申請に関する行政指導についても、法的拘束力がなく任意の協力を求めるものに過ぎないという性質が貫徹されています。

許認可等の権限に関連する行政指導

許認可等に関する権限を有する行政機関が、その権限を行使するのに先立って、許認可等の申請者や監督対象の事業者に対して行政指導を行うケースは比較的よく見られます。

この場合の行政指導は、

  • 許認可等の取得要件を充足させること
  • 業規制の遵守を求めること

などを目的として行われるものです。

ムートン

行政指導に従わなければ、許認可等を受けられない、制裁的な行政処分を受けるなどの不利益を被る可能性があるので、基本的には従うことが推奨されます。

なお、許認可等に関する権限を有する行政機関が、

  • 許認可等に関する権限を行使できない場合
  • 許認可等に関する権限を行使する意思がない場合

において、許認可等に関する権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより、相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせるような行為は禁止されています(行政手続法34条)。

ムートン

行使し得ない行政処分の権限を振りかざして服従を強制することは、任意である行政指導の一環としては不適切な行為だからです。

行政指導の方式

行政指導に当たっては、その相手方に対して、行政指導の趣旨・内容・責任者を明確に示さなければなりません(行政手続法35条1項)。

また行政指導に当たって、許認可等をする権限または許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、相手方に対して以下の事項を示さなければなりません(同条2項)。

(a)当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
(b)(a)の条項に規定する要件
(c)当該権限の行使が(b)の要件に適合する理由

行政指導が口頭でなされた場合において、相手方から上記の各事項を記載した書面の交付を求められたときは、行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、書面を交付しなければなりません(同条3項)。

ただし、相手方に対しその場で完了する行為を求める行政指導や、すでに文書または電磁的記録によって相手方に通知されている事項と同一の内容を求める行政指導については、書面の交付は不要です(同条4項)。

複数の者を対象とする行政指導

同一の行政目的を実現するため、一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするとき、行政機関は、あらかじめ事案に応じて行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限り、策定した行政指導指針を公表しなければなりません(行政手続法36条)。

ムートン

これは、複数の対象者に対して、内容や程度がバラバラな行政指導が行われることを防ぐとともに、対象者側にとっての予測可能性を確保するためです。

行政指導の中止等の求め

各法令において、法令に違反する行為の是正を求める行政指導について、法律上の根拠規定が置かれていることがあります(例:景品表示法に基づく勧告)。

(勧告及び公表)
第28条 内閣総理大臣は、事業者が正当な理由がなくて第26条第1項の規定に基づき事業者が講ずべき措置を講じていないと認めるときは、当該事業者に対し、景品類の提供又は表示の管理上必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる
2 内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を行つた場合において当該事業者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。

「不当景品類及び不当表示防止法」– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

このような行政指導を受けた者は、当該行政指導が法律上の要件に適合しないと考えたときは、行政機関に対してその旨を申し出て、行政指導の中止その他必要な措置をとるよう求めることができます(行政手続法36条の2第1項本文)。

行政指導の中止等の申し出は、以下の事項を記載した申出書を提出して行わなければなりません(同条2項)。

(a)申出をする者の氏名または名称、住所または居所
(b)当該行政指導の内容
(c)当該行政指導がその根拠とする法律の条項
(d)(c)の条項に規定する要件
(e)当該行政指導が(d)の要件に適合しないと思料する理由
(f)その他参考となる事項

申し出を受けた行政機関は、必要な調査を行った上で、行政指導が法律上の要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければなりません(同条3項)。

ただし、当該行政指導がその相手方について、弁明その他意見陳述のための手続きを経てされたものであるときは、行政指導の中止等の申出が認められません(同条1項但し書き)。

行政指導の求め

何人も、法令に違反する事実がある場合において、法律上の根拠がある行政指導がされていないと考えたときは、その行政指導をする権限を有する行政機関に対してその旨を申し出て、行政指導をするよう求めることができます(行政手続法36条の3第1項)。

行政指導を求める申し出は、以下の事項を記載した申出書を記載して行わなければなりません(同条2項)。

(a)申出をする者の氏名または名称、住所または居所
(b)法令に違反する事実の内容
(c)当該行政指導の内容
(d)当該行政指導の根拠となる法令の条項
(e)当該行政指導がされるべきであると思料する理由
(f)その他参考となる事項

申し出を受けた行政機関は、調査を行った上で必要と認めるときは、行政指導をしなければなりません(同条3項)。

行政手続法が適用されない行政指導の例

行政の範囲は極めて広いため、上記の行政手続法のルールを一律に適用することが適当でない場合もあります。

そのため、以下に挙げるような特定の行政分野については、行政手続法の適用が除外されています。

・刑事事件に関する法令に基づいて、検察官などが行う行政指導
・国税または地方税の犯則事件に関する法令に基づいて、税務署長などが行う行政指導
・学校などにおいて、教育、訓練などの目的を達成するために、学生や生徒に対して行う行政指導
・刑務所、留置場などにおいて、収容の目的を達成するために行う行政指導
・公務員または公務員であった者に対して、その職務または身分に関して行う行政指導
・外国人の出入国、難民の認定などに関する行政指導
など

行政指導を受けた場合にとるべき対応

行政指導を受けた場合には、以下の方法により対応しましょう。

① 行政指導の理由を確認する|原則として書面の交付を請求可能
② 合理的な行政指導には従う|是正後は監督官庁へ報告する
③ 不合理な行政指導に対しては中止を求める|ただし行政処分等のリスクに注意

行政指導の理由を確認する|原則として書面の交付を請求可能

まずは、どのような理由で行政指導が行われたのかを確認しましょう。

申請に関する行政指導であれば、申請内容について何らかの不備が指摘されるケースが多いです。法令違反の是正を求める行政処分であれば、どのような行為が法令違反と判断されたのかを具体的に確認する必要があります。

行政処分の理由については、原則として書面の交付を求めることができますので(行政手続法35条3項)、口頭で行政処分を受けた場合は理由書面の交付を請求しましょう。

合理的な行政指導には従う|是正後は監督官庁へ報告する

行政指導に従わないと、申請の却下や制裁的な行政処分などの不利益を受けるおそれがあります。

そのため、法的拘束力がないとしても、合理的な行政指導には従った方が賢明です。行政指導に従った是正が完了したら、速やかに監督官庁へ報告しましょう。

不合理な行政指導に対しては中止を求める|ただし行政処分等のリスクに注意

行政指導の内容や理由が不合理な場合は、従わなくても構いません。行政機関に対して従う意思がないことを明示し、行政指導の中止を求めることも考えられます。

ただし行政指導に従わない場合は、行政処分を受けるなどの不利益が生じる点に注意が必要です。行政指導に従うべきか否かについては、後の行政処分等のリスクについても慎重に考慮した上で判断しましょう。

ムートン

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参考文献

総務省ウェブサイト「行政手続法Q&A」

中原 茂樹著『基本行政法 第3版』日本評論社、2018年