契約社員とは?
メリット・デメリット・
正社員・パート・派遣社員などとの違いなどを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「契約社員」とは、一般的には使用者(企業)と有期労働契約を締結してフルタイムで働く労働者のことをいいます。
契約期間に限りがあることから、その契約の終了(雇止め)に際してトラブルが生じることがあるなど、不安定な立場になりがちです。そのため、さまざまな法令により契約社員に関する保護を図っています。
この記事では「契約社員」について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2025年6月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名等を次のように記載しています。
- 高年齢者雇用安定法…高年齢者の雇用の安定等に関する法律
- 労基法…労働基準法
- 労契法…労働契約法
- パート・有期法…短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
目次
「契約社員」の定義
「契約社員」という言葉には、「正社員」と同様にわが国では法的な定義が存在しません。一般的な定義は、「使用者(企業)と有期労働契約を締結してフルタイムで働く労働者」ということになるでしょう。
厚生労働省サイトの「さまざまな雇用形態」というページでは、「契約社員(有期労働契約)」の説明として、「契約社員といわれる人たちなどにみられるように、正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。」という説明がなされています。
厚生労働省の説明に「正社員と違って」とあるように、契約社員について考える際には、正社員との違いに注目する必要があります。労働者を「正社員」と「非正社員」に大別した場合に、契約社員は非正社員に区分されます。この非正社員には、契約社員、パートタイマー、アルバイト、定年後再雇用者、派遣社員などが含まれます。そのため、契約社員とは何かを考える際には、正社員との違いに加えて、非正社員に含まれるさまざまな雇用区分(社員区分)との違いも考慮する必要があります。
雇用区分から考える「契約社員」
雇用区分については通常、①正規雇用か非正規雇用か、②無期雇用か有期雇用か、③フルタイム雇用かパートタイム雇用か、④直接雇用か間接雇用か、という4つの側面から考えることができます。
雇用区分 | 概要 | 具体例 | |
---|---|---|---|
① | 正規雇用 | 企業の中核的な人材 | 正社員・限定正社員 |
非正規雇用 | 上記以外 | 上記以外 | |
② | 無期雇用 | 期間の定めのない雇用 | 正社員・限定正社員・無期契約社員・無期パートタイマー・無期アルバイト |
有期雇用 | 期間の定めのある雇用 | 有期契約社員・有期パートタイマー・有期アルバイト・派遣社員 | |
③ | フルタイム雇用 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)労働する | 正社員・限定正社員(短時間正社員以外)・フルタイム契約社員・フルタイムアルバイト |
パートタイム雇用 | 法定労働時間より短い時間労働する | パートタイム契約社員・パートタイマー・パートタイムアルバイト | |
④ | 直接雇用 | 企業(使用者)と直接労働契約を締結する | 派遣社員以外 |
間接雇用 | 上記以外 | 派遣社員 |
「契約社員」の一般的な定義は、「企業と直接有期労働契約を締結してフルタイムで働く労働者」でした。この定義について、①から④の4つの側面で順番に検討します。
①「正規雇用」と「非正規雇用」
正規雇用(正社員)とは
正規雇用とは、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)により、労働時間、職務の内容、および勤務地のいずれにも制約なく、長期的に企業の中核的な人材として基幹的な業務を担う働き方のことです。
このような働き方をする人が「正社員」なのですが、最近では労働時間、職務の内容、および勤務地のいずれかまたは全部に限定のある労働契約を締結している人もいて、そのような人は「限定正社員」と呼ばれています。このことを踏まえると、正規雇用のポイントは、「無期契約(長期的)」と「中核的な人材」ということになります。
非正規雇用(非正社員)とは
非正規雇用とは、正規雇用以外の働き方の総称です。企業の臨時的な労働力の需要に応じて補助的な業務を担う働き方といえます。契約社員は非正規雇用(非正社員)として位置づけられています。
②「無期雇用」と「有期雇用」
「無期雇用」とは
無期雇用とは、使用者(企業)との間で無期労働契約を締結して働いていること、つまり、労働契約(雇用契約)に期間の定めがないことを意味します。「期間の定めのない雇用」ともいいます。例外的に、定年制、つまり一定の年齢に達すると労働契約が終了する制度が存在する場合は、定年により労働契約は終了します。定年の定めを置く場合は60歳を下回ることはできません(高年齢者雇用安定法8条)。
契約社員は一般的に、後述の有期雇用契約に基づいて働くことが多いのですが、無期雇用契約に基づく「無期契約社員」も存在します。
「有期雇用」とは
有期雇用とは、使用者(企業)との間で有期労働契約を締結して働いていること、つまり、労働契約(雇用契約)に期間の定めがあることを意味します。有期雇用の期間の上限は原則として3年ですが、専門的知識等を有する労働者でその専門的知識等を必要とする業務の場合や満60歳以上の労働者の場合は、5年が上限となります(労基法14条)。
契約社員は、この有期雇用契約に基づいて働くことが多いため、「契約期間がある社員」という意味で、一般的には契約社員と呼ばれています。
「無期転換ルール」とは
無期転換ルールとは、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に、有期契約労働者(契約社員など)からの申込みにより、無期労働契約(期間の定めのない雇用)に転換されるルールのことをいいます(労契法18条)。有期契約労働者が、この無期転換ルールに基づいて、無期転換の申込みをした場合、使用者(企業)は断ることができません。
無期転換ルールは、契約社員(有期契約社員)にとって重要なルールです。ただし、無期転換後の労働条件については、期間の定めのない雇用となる以外は、別段の定めがなければ従前と同様のままであることに注意が必要です。つまり、基本的には、いわゆる「正社員」に即転換するわけではありません。
③「フルタイム雇用」と「パートタイム雇用」
「フルタイム雇用」とは
フルタイム雇用とは、一般的に法定労働時間である1日8時間、1週40時間(労基法32条)の全てにわたって労務を提供する働き方のことをいいます。契約社員がフルタイム雇用で働けば、「フルタイム契約社員」ということになります。
「パートタイム雇用」とは
パートタイム雇用(短時間労働者)とは、1週間の所定労働時間が、同じ使用者に雇用される通常の労働者(正社員)より、短い働き方のことをいいます(パート・有期法2条1項)。契約社員がパートタイム雇用で働けば、「パートタイム契約社員」ということになります。
④「直接雇用」と「間接雇用」
直接雇用とは、使用者(企業)と労働者が直接労働契約を締結している場合をいいます。契約社員は直接雇用にあたります。間接雇用は労働者派遣の場合です。派遣会社(派遣元)が労働者を直接雇用し、各企業(派遣先)に派遣すると、その労働者は派遣社員と呼ばれて、各企業の指示を受けて労務を提供します。この、派遣先と派遣社員の関係が間接雇用にあたります。
パート・有期法の規制
パート・有期法とは、正社員とパートタイム労働者(後述)、有期雇用労働者との不合理な待遇差を解消するなど、パートタイマー、アルバイト、契約社員として働く方の環境を良くするための法律です(パート・有期法)。
「同一労働同一労働同一賃金」とは
同一労働同一賃金とは、同じ企業における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。契約社員の場合、有期雇用であれば、フルタイム雇用、パートタイム雇用を問わず、パート・有期法の保護の対象となります。
不合理な待遇の相違の禁止
パート・有期法は正規雇用労働者(正社員)と短時間労働者、有期雇用労働者との不合理な待遇の相違を禁じています(同法8条)。具体的には、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、正社員との間で、業務の内容およびその業務に伴う責任の程度(以下「業務の内容」とします)、業務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情のうち、その待遇の性質および待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています。
差別的取り扱いの禁止
パート・有期法は、業務の内容・責任と人事異動の有無・範囲が正規雇用労働者(正社員)と同一の短時間労働者および有期雇用労働者について、正社員との差別的な取り扱いを禁じています(同法9条)。
使用者の説明義務
短時間労働者や有期雇用労働者が希望する場合は、使用者が正社員との待遇の相違について、その内容や理由を説明することが義務づけられています(パート・有期法14条2項)。契約社員がパートタイム雇用や有期雇用である場合は、使用者に説明を求めることができます。ただし、使用者は待遇差の内容や理由について説明すれば良く、労働者の同意を得ることまでは義務づけられていないことに注意が必要です。
正社員登用制度
同一労働同一賃金に関する不合理な待遇差を考慮する際の「その他の事情」には、「正社員登用制度」の有無が含まれるとするのが最高裁判所の判例です(メトロコマース事件・最高裁令和2年10月13日判決など)。正社員になろうと思えばなることができる制度が用意されている場合は、正社員と多少の待遇差があっても、不合理ではないと判断されることになるでしょう。
「雇止め法理」による保護
「雇止め」とは
雇止めとは、有期雇用契約の満了時に使用者が契約を更新しないことをいいます。雇止め自体は解雇ではなく、本来は契約自由の原則の範囲に属するものですが、不安定な立場となることの多い有期雇用労働者のために、法令等によって保護が図られています。契約社員も、有期雇用契約を締結している場合は、この保護の対象となります。
「雇止め法理」とは
有期雇用労働者を雇止めに関するトラブルから保護するために、判例法理が形成されてきました。これを「雇止め法理」といい、現在では労契法に成文化されています。
労契法は、①実質無期契約型、②期待保護型の2つの類型について、それぞれ有期労働契約の更新を希望する労働者が雇止めについて異議を述べた場合に、雇止めを制限する条文を設けています。
①の実質無期契約型とは、それまでの有期労働契約が実質的に無期労働契約と同視できる場合で、このような場合に異議が述べられれば雇止めが無効となります(労契法19条1号)。契約期間2カ月の有期労働契約が漫然と更新され続けており、雇止めは信義則上許されないとした判例(東芝柳町工場事件・最高裁昭和49年7月22日判決)が元になっています。
②の期待保護型とは、有期労働契約の更新を労働者が期待し、その期待に合理的理由があり、法的保護に値する場合で、このような場合も異議が述べられれば雇止めが無効となります(労契法19条2号)。臨時工と本工の差から、契約更新に関する期待は法的保護に値せず雇止め有効とした判例(日立メディコ事件・最高裁昭和61年2月4日判決)が元になっています。雇止め無効となる例としては、有期労働契約を締結している契約社員が、企業の人事部長から「あなたは有能だから、ずっとわが社で働いてほしい」などと何度も言われて契約更新を期待したような場合が挙げられるでしょう。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」とは
厚生労働大臣は、雇止めに関するトラブルを未然に防止するため、雇止めに係る通知に関する事項などの基準を定めることができます。その基準が、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」です。この基準には、次のような内容が定められており、有期労働契約を締結している契約社員に適用されます。
更新上限を定める場合等の理由の説明
使用者は、有期労働契約を締結した後で、新たに更新上限を設けたり、更新上限を短縮したりする場合は、あらかじめ労働者に説明する必要があります。
雇止めの予告
使用者は、有期労働契約が、以下の場合に雇止めをするには、少なくとも契約期間が満了する30日前までにその予告をする必要があります。
① 3回以上更新されている場合
② 1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③ 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。
雇止めの理由の明示
使用者は、雇止めの予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付する必要があります。雇止めの後に請求された場合も同様です。
契約期間についての配慮
使用者は、有期労働契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態および労働者の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするように努めなければなりません。
無期転換後の労働条件についての説明
使用者は、無期転換後の労働条件を決定するにあたって、他の通常の労働者(正社員等)とのバランスを考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければなりません。
契約社員とパートタイマー、アルバイトの違い
契約社員の一般的な定義は、「使用者(企業)と有期労働契約を締結してフルタイムで働く労働者」でした。それに対して、パートタイマーの一般的な定義は、「使用者と(企業)と有期労働契約を締結してパートタイムで働く労働者」ということになるでしょう。ですが、契約社員でもパートタイムで働く場合があることに注意が必要です。また、アルバイトも一般的には「使用者と(企業)と有期労働契約を締結してパートタイムで働く労働者」なのです。つまり、パートタイマーとアルバイトは「呼び名」の違いに過ぎない面があります。
あくまで一般的な区別になりますが、正社員が企業の中核的な人材で基幹的な業務を担当する存在であるならば、契約社員はそれに近い業務を担当することもある存在、パートタイマーやアルバイトは補助的な業務を担当する存在ということができるでしょう。
高年齢者雇用安定法と契約社員
高年齢者雇用安定法は企業に65歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけています(高年齢者雇用安定法9条)。この措置と契約社員との関係を見ていきます。
継続雇用制度(再雇用制度)
企業が定年制を設けている場合、高年齢者雇用安定法の定めとの関係では、以下のいずれかを選択する必要があります。
- 定年を65歳まで引き上げる(高年齢者雇用安定法9条1項1号)
- 定年後も引き続いて雇用する制度を設ける(同法9条1項2号)
- 定年の定めを廃止する(同法9条1項3号)
この中で、定年後も引き続いて雇用する制度のことを継続雇用制度といいます。企業において定年を迎えた労働者が、正社員契約ではなく、その企業と新たに労働契約を締結することになるため、定年後再雇用制度ともいいます。定年後再雇用者は、カテゴリーとしては契約社員の一種となりますが、有期契約の場合と、無期契約の場合があります。
無期転換ルールの特例
定年後再雇用者は契約社員の一種となるため、無期転換ルール(労契法18条)の対象となりますが、使用者が有期雇用特別措置法に設けられた「継続雇用の高齢者に対する無期転換ルールの特例」の適用に関する認定申請を行えば、無期転換ルールの適用対象外となります。
契約社員のメリットとデメリット
ここまで、契約社員について詳しく見てきましたが、そのメリットとデメリットについてもまとめておきます。
契約社員のメリット
契約社員は、有期労働契約の場合は、労働契約の期間が明確であるため、ライフスタイルに応じた働き方をすることが可能となります。たとえば、海外に留学する資金を貯めるため、3年間だけ働こうという計画を立てるような場合です。
また、有期労働契約は原則として契約期間途中で解除できないため、契約期間中は労働者としての身分が保障されています。ただし、「やむを得ない事由」がある場合は使用者(企業)から労働契約を解除(解雇)することができることには注意が必要です(民法628条、労契法17条)。他には、正社員との比較で、原則として時間外労働や配転(職務内容や勤務地の変更)がないことも、人によってはメリットといえるでしょう。
契約社員のデメリット
契約社員のデメリットとしては、雇用の不安定さと待遇の低さが挙げられます。有期労働契約の場合は、雇止めの可能性が常にあります。また、正社員に比べると、通常の賃金だけでなく、賞与や退職金など、さまざまな待遇面に差が生じてしまうのが現実です。また、長期雇用を前提としていないため、人材育成面でもスキルアップのための研修などが用意されていないことが多いという面もデメリットの1つです。
就業規則作成のポイント
使用者(企業)が契約社員に関する就業規則を作成する際には、まず、契約社員の「定義」を明確にする必要があります。この記事でお伝えした雇用区分を踏まえた定義を就業規則に記載してください。また、正社員との区別を常に意識してください。正社員だけに適用される規定とそうでない規定が就業規則上明確になるようにする必要があります。契約社員に関する就業規則を別規程とするのも1つの方法です。
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