男性が利用できる育児休業等の制度|
事業主の対応事項も分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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育児介護休業法では、男性が利用できる育児休業等の制度が定められています。
特に近年の法改正により、育児休業等の制度が充実してきました。実際に男性の育児休業取得率は、令和5年度の30.1%から令和6年度の40.5%へと大幅に上昇しています。育児中の男性が利用できる休業・休暇の制度としては、「出生時育児休業(産後パパ育休)」「(通常の)育児休業」「子の看護等休暇」があります。
また、勤務時間を軽減する制度として「短時間勤務等の措置」「所定外労働の制限」「時間外労働の制限」「深夜業の制限」も利用可能です。
さらに2025年10月からは、3歳以上の未就学児を育てる従業員を対象として、柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが事業主に義務付けられました。加えて、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主には、男性労働者の育児休業等の取得率の公表義務が課されています。
事業主としては、男性も利用しやすい育児休業等の制度を整備したうえで、従業員に対する周知を行いましょう。男性の育児休業等を想定した適切な人員配置を行うことも大切です。
この記事では男性の育児休業等について、育児介護休業法上の制度や事業主の対応事項などを解説します。
※この記事は、2025年10月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
目次
男性の育児休業取得率|令和5年度30.1%→令和6年度40.5%
男性の育児休業取得率は、令和5年度の30.1%から令和6年度の40.5%へと大幅に上昇しました。その背景には、育児休業制度の充実化や、社会全体の意識変革があると考えられます。
近年の法改正により、従来に比べて育児休業制度が充実してきました。本記事でも紹介する「出生時育児休業(産後パパ育休)」の導入をはじめとして、男性が育児休業を取得しやすい制度が整いつつあります。
また、日本では伝統的に「女性が育児を担う」という考え方が広まっていたものの、近年では共働き世帯の増加や男女共同参画の浸透などに伴い、男性が育児を担うことの重要性が高まりました。このような社会全体の意識変革も、低迷していた男性の育児休業取得率の向上に寄与していると思われます。
出典:厚生労働省ウェブサイト「令和6年雇用均等基本調査 事業所調査結果概要」
男性が利用できる育児休業等の種類
育児介護休業法では、男性が利用できる育児休業等の制度が定められています。育児中の男性が利用できる休業・休暇の制度は、以下のとおりです。
① 出生時育児休業(産後パパ育休)
② (通常の)育児休業
③ 子の看護等休暇
出生時育児休業(産後パパ育休)|出生後8週間以内に4週間まで
「出生時育児休業(産後パパ育休)」は、子どもが出生してから8週間以内に4週間(28日)を限度として2回までに分けて取得できる特別の育児休業です(育児介護休業法9条の2)。
母親が産後休業の時期に、父親も出生時育児休業を取得すれば、生まれたばかりの子どもの育児を夫婦共同で行う時間が確保できます。
出生時育児休業の期間中でも、労使協定を締結したうえで労働者の同意を得れば、就労することが認められます。また、出生時育児休業は2回までの分割取得が認められています。
これらの制度上の工夫により、会社の業務を調整しながら取得しやすくなっているのが出生時育児休業の大きな特徴です。
(通常の)育児休業|原則として子どもが1歳になるまで、ただし延長あり
通常の育児休業は、原則として子どもが1歳になる日の前日まで取得できます(育児介護休業法5条1項)。
ただし、両親ともに育児休業を取得するときは、子どもが1歳2か月になる日の前日まで育児休業の延長が認められます(=パパ・ママ育休プラス、同法9条の6)。
また、子どもが保育所に入れない場合などには、最長で子どもが2歳になる日の前日まで育児休業の延長が可能です(同法5条3項・4項)。
なお、通常の育児休業も2回までの分割取得が認められています。出生時育児休業と合わせると、最大4回まで育児休業を取得できます。
子の看護等休暇|小学校3年生まで、看病や学校行事など
「子の看護等休暇」は、子どもの看病や特定の学校行事などのために取得できる休暇です(育児介護休業法16条の2)。2025年4月に施行された法改正より、従来よりも子の看護等休暇が使いやすくなりました。
現在の制度では、子の看護等休暇は子どもが小学校3年生を修了するまで取得できます。
以下のいずれかの理由がある場合には、子の看護等休暇を取得可能です。
- けがをしている、または病気にかかっている子どもの世話をする
- 子どもに予防接種または健康診断を受けさせる
- 感染症に伴い、学級閉鎖となった子どもの世話をする
- 入園式、卒園式または入学式に参加する
育児中の男性が利用できる、勤務時間に関する制度
休業・休暇の制度以外にも、育児中の男性は以下の勤務時間に関する制度を利用できることがあります。
① 短時間勤務等の措置
② 所定外労働の制限
③ 時間外労働の制限
④ 深夜業の制限
短時間勤務等の措置
事業主は原則として、育児休業をしていない3歳未満の子どもを養育する労働者から申出があった場合は、所定労働時間を短縮する措置を講じなければなりません(育児介護休業法23条)。
これはいわゆる「時短勤務」に相当するものです。短縮後の所定労働時間は、原則として1日当たり6時間となります。
所定外労働の制限
事業主は原則として、小学校入学前の子どもを養育する労働者から申出があった場合は、所定労働時間を超えて働く義務を免除しなければなりません(育児介護休業法16条の8)。この場合、36協定を締結していても、その労働者には時間外労働をさせることができなくなります。
時間外労働の制限
事業主は原則として、小学校入学前の子どもを養育する労働者から申出があった場合は、時間外労働の時間数を制限しなければなりません(育児介護休業法17条)。制限後の上限時間は、36協定の定めにかかわらず「1カ月当たり24時間・1年当たり150時間」となります。
深夜業の制限
事業主は原則として、小学校入学前の子どもを養育する労働者から申出があった場合は、その労働者を深夜に労働させてはなりません(育児介護休業法19条)。
「深夜」とは、午後10時から午前5時までの間を指します。深夜業の制限の申出があった労働者については、この時間帯において残業や夜勤などをさせることができなくなります。
【2025年10月施行】事業主が講ずべき「柔軟な働き方を実現するための措置」
2025年10月からは、3歳以上の未就学児を育てる従業員を対象として、柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが事業主に義務付けられました(育児介護休業法23条の3)。
対象者|3歳以上の未就学児を育てる従業員
柔軟な働き方を実現するための措置の対象となるのは、3歳以上で小学校入学前の子どもを養育する従業員です。正社員だけでなく、パートやアルバイトなども同措置の対象となります。
事業主が講ずべき措置|5つの中から2つ以上を選択
事業主は、以下の5つの中から2つ以上を選択して、柔軟な働き方を実現するための措置を講じなければなりません。
① 始業時刻変更等の措置
フレックスタイム制を導入するか、または始業・終業時刻の繰り上げもしくは繰り下げ(いわゆる時差出勤など)を認めます。
② 在宅勤務等の措置(テレワーク)
1カ月当たり10日以上のテレワークを認めます。
③ 育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度、時短勤務)
1日の所定労働時間を、原則として6時間に短縮します。
通常の時短勤務は3歳未満の子どもが対象ですが、それを延長して小学校入学前まで時短勤務を認めるものです。
④ 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇を与える措置(養育両立支援休暇)
1カ月当たり10日以上取得できる養育両立支援休暇の制度を設けます。
養育両立支援休暇は一部の例外を除き、時間単位で取得できるようにする必要があります。
⑤ 保育施設の設置運営等
会社が自ら保育施設の設置運営を行うか、これに準ずる便宜の供与を行います。
なお、上記の中から導入する措置を選択する際には、事業場の労働者の過半数で組織される労働組合、または労働者の過半数代表者から意見を聴く必要があります。
子どもが3歳になるまでに、個別の周知と意向確認を行う必要がある
事業主は、3歳未満の子どもを養育する従業員に対して、子どもが3歳になるまでの適切な時期(3歳の誕生日の1カ月前までの1年間)に、導入した柔軟な働き方を実現するための措置を周知して、利用の意向の有無を確認しなければなりません。
従業員に対する周知と意向確認に用いる書面の記載例は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。
男性労働者の育児休業等の取得率の公表義務
常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主には、男性労働者の育児休業等の取得率の公表義務が課されています(育児介護休業法22条の2)。
公表義務の対象者|常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主
男性労働者の育児休業等の取得率を公表する義務を負うのは、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主です。
従来は「1000人超」とされていましたが、2025年4月に施行された法改正によって「300人超」に引き下げられ、より多くの企業が公表義務の対象となりました。
公表すべき事項
公表義務の対象となる企業が公表すべき事項は、以下のいずれかの割合です。
① 育児休業等の取得割合
=育児休業等をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数
② 育児休業等と育児目的休暇の取得割合
=(育児休業等をした男性労働者の数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数)÷配偶者が出産した男性労働者の数
公表の頻度と方法
男性労働者の育児休業等の取得率は年1回、インターネットなど一般の人が閲覧できる方法によって公表しなければなりません。厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」というウェブサイトでの公表が推奨されています。
| 参考:両立支援のひろばHP |
男性の育児休業等に関して、事業主が取り組むべきこと
男性従業員が育児休業等を取得しやすくするため、事業主には以下の取り組みなどが求められます。
① 育児休業等に関する社内規程・制度の整備
② 従業員に対する周知
③ 男性の育児休業等を想定した人員配置
④ 育児休業等に関する相談窓口の設置
育児休業等に関する社内規程・制度の整備
常時雇用する労働者が10人以上の事業場では、育児休業等に関する制度の内容を就業規則に記載しなければなりません(労働基準法89条1号)。
常時雇用する労働者が9人以下の事業場でも、育児休業等に関する制度の内容を明確化するため、就業規則に定めることが推奨されます。
また就業規則以外にも、育児休業等の制度の細則を定めた社内規程を設けることも考えられます。従業員から見て分かりやすく、かつ疑義のない明確な形でルールを定めましょう。
従業員に対する周知
就業規則に定めた育児休業等に関する制度の内容は、以下のいずれかの方法によって従業員に周知しなければなりません(労働基準法106条1項、労働基準法施行規則52条の2)。
(a) 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
(b) 書面を従業員に交付する
(c) 磁気テープや磁気ディスクなどに記録し、かつ、各作業場にその記録の内容を常時確認できる機器を設置する
デスクワークの従業員向けには、イントラネットに掲載して周知するのが一般的です。PCを操作する機会が乏しい従業員に対しては、掲示や書面交付などによる周知を検討しましょう。
男性の育児休業等を想定した人員配置
男性の育児休業取得率は年々高まっているため、事業主は育児休業によって男性従業員が抜けることを想定しておくべきです。
できる限り余裕をもった人員配置をして、男性従業員が育児休業を取得した際には、その仕事をカバーできる体制を整えておきましょう。
育児休業等に関する相談窓口の設置
育児休業等の取得については、従業員から質問が寄せられることが想定されます。事業主が設けている制度について正しい情報を伝えるために、相談窓口を設置して従業員からの相談を受け付けることが望ましいです。
男性の育児休業に関して利用できる助成金
男性の育児休業取得を促進するため、政府は「両立支援等助成金」の一つとして「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」を設け、事業主を支援しています。
出生時両立支援コースは中小企業を対象としており、第1種と第2種の2つが設けられています。それぞれの受給要件と支給額は以下のとおりです。
| 受給要件 | 支給額 | |
|---|---|---|
| 第1種 | 男性が育児休業を取得しやすい雇用環境と業務体制の整備に取り組み、子どもの出生後8週間以内に開始する連続5日間以上の育児休業を取得した男性労働者が出た場合 | 1人目:20万円 ※雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合は30万円 2人目・3人目:10万円 |
| 第2種 | 男性労働者の育児休業取得率が1事業年度で30ポイント以上上昇し、50%を達成した場合(または一定の場合に2年連続70%以上となった場合) | 60万円 ※申請時にプラチナくるみん認定事業主であれば15万円加算 |
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参考文献
厚生労働省ウェブサイト「令和6年雇用均等基本調査 事業所調査結果概要」
厚生労働省ウェブサイト「育児・介護休業等に関する規則の規定例 13 参考様式」
厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」












