【大阪高判令和6年3月14日】
幼児の縊死事故を引き起こした
ロール式網戸の欠陥が認定された事例

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この記事のまとめ

大阪高裁令和6年3月14日判決では、当時6歳の幼児の首にロール式網戸の昇降をするための操作コードが絡まって発生した縊死事故が問題になりました。

大阪高裁は、幼児が縊死したことに関する本件製品の欠陥および製造業者であるY社の製造物責任を認定しました。その理由として大阪高裁は、安全対策が日常的・継続的に確実に実行されるための十分な指示・警告がなされていたとは認められない点を指摘しています。

また、リフォーム工事を担当して本件製品を設置したT社についても、使用者責任による損害賠償を命じました。その理由として大阪高裁は、幼児の両親に対して取扱説明書を交付せず、操作コードの危険性やクリップの使用方法等も説明しなかったことなどによる注意義務違反を指摘しています。

本判決は、製品における安全対策のあり方を具体的かつ詳細に認定しているため、実務上大いに参考となります。

裁判例情報
大阪高裁令和6年3月14日判決(裁判所ウェブサイト)

※この記事は、2025年10月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

事案の概要

本件は、両親の外出中、当時6歳の幼児の首にロール式網戸の昇降をするための操作コードが絡まり、幼児が縊死してしまった事件です。

幼児の両親であるAとBは、事故の原因となった製品(本件製品)を製造したY社と、リフォーム工事の際に本件製品を選定したT社に対して損害賠償を請求する訴訟を提起しました。
AとBは、Y社は本件製品の製造者として製造物責任を負い、T社は本件製品の選定および使用方法の説明等に関する注意義務違反によって使用者責任または不法行為に基づく損害賠償責任を負うと主張しました。
さらにAは、リフォーム工事に係る契約をクーリングオフしたと主張し、T社に対してすでに支払った申込金10万円の返還も請求しました(法定書面が交付されていないので、クーリングオフ期間が経過していないと主張)。

これに対してT社は、契約者であるAに対し、申込金10万円を控除したリフォーム工事の残代金1947万4914円の支払いを求める反訴を提起しました。

原審の大阪地裁は、本件製品の欠陥を認定せず、A・BのT社およびY社に対する損害賠償請求を棄却しました。
その一方で大阪地裁は、Aによるクーリングオフを有効と認め、T社に対してAに申込金10万円を返還するよう命じるとともに、残代金1947万4914円に係るT社の請求を棄却しました。

A・BとT社は原審判決を不服とし、自らの敗訴部分について大阪高裁に控訴を提起しました。

判決の要旨

大阪高裁は、幼児が縊死したことに関する本件製品の欠陥およびY社の製造物責任、ならびにT社の説明義務違反を認定し、原審判決を破棄して、Y社・T社に対して総額5800万円余りの損害賠償を連帯してA・Bに支払うよう命じました。

本件製品については、付属している操作コードの危険性に対してクリップの使用による安全対策がとられていたものの、その安全対策が日常的・継続的に確実に実行されるための十分な指示・警告がなされていたとは認められないとして、欠陥の存在およびY社の製造物責任を認定しました。

また、T社が本件製品を設置してAに引き渡す際、操作コードにクリップと注意等が書かれたタグを正しく装着せず、操作コードの危険性やクリップの使用方法等を説明しなかった点について注意義務違反を認め、T社の使用者責任を認定しました。

他方でAによるクーリングオフは、原審と同様に有効と認め、T社の控訴を棄却しました。

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