電子契約とは?
基本のやり方・メリット・導入ステップ・
活用方法などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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電子契約とは、紙と印鑑(契約書)のやり取りによる契約方法を、電子データと電子署名に置き換えたものです。多くの企業で普及が進む電子契約には多くのメリットがありますが、導入にはさまざまな検討が必要で、導入後の活用促進も欠かせません。
電子契約の導入ステップには、以下のようなものがあります。
①導入の企画・計画→②設計・準備→③実行・テスト→④展開・定着化社内で適切に検討を行い、スムーズな電子契約の導入を実施して活用を図りましょう。
この記事では、電子契約の基本やメリット・導入ステップなどについて分かりやすく解説します。
※この記事は、2025年11月5日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名等を次のように記載しています。
- ・電子署名法…電子署名及び認証業務に関する法律
目次
電子契約の基礎知識|主な用語や関連法令
電子契約は、法務DXの一環として多くの企業で普及が進んでいます。もっとも、導入にはさまざまな検討が必要で、導入後の活用促進も欠かせません。本記事では、電子契約の基礎知識から導入・活用推進のポイントについて解説します。
電子契約とは
電子契約とは、紙と印鑑(契約書)のやり取りによる契約方法を、電子データと電子署名に置き換えたものです。電子契約のシステムは「誰が(本人性)」「何に(完全性)」「いつ(存在時刻)」合意したかを一貫して証明できる仕組みを備えています。
電子署名とは
電子署名とは、電子データの作成者や、電子データが改変されていないことを証明するものです。電子署名法で、以下のように定義されています。
(定義)
第2条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
※下線は筆者。
本人による電子署名がされた文書は、本人の署名または捺印がされた文書と同じく、真正に成立したものと推定され、証拠力を有します(電子署名法3条)。また、電子署名の種類は、大別して以下の2つに分類されます。
当事者型:契約を締結する当事者が、自ら電子署名を行う
立会人型:契約当事者以外の第三者が、契約当事者に代わって電子署名を行う
なお、「電子サイン」とは、電子的に同意を示す行為を幅広く含み、上記の電子署名の要件を満たすもの・満たさないものがあり、その違いは証明力(推定効)に直結します。
タイムスタンプとは
タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術をいいます。電子署名と組み合わせることで、文書の有効性・信頼性を高めます。また、総務大臣の認定を受けた事業者が発行する「認定タイムスタンプ」もあります。
電子帳簿保存法との関係
電子契約により生じた契約書等の電子取引データは、電子帳簿保存法の適用を受けます。保存要件や保存期間を理解の上、実務に落とし込むことが重要です。
電子契約のメリット
電子契約の導入により得られるメリットを紹介します。自社が抱える課題と照らし合わせて考えることにより、導入効果を定量的に把握する指標としても有効です。

| ✅ スピード 印刷・製本・郵送等の物理的作業を削減できるので、契約締結完了までのリードタイムの大幅な削減に繋がり、ビジネスプロセスの迅速化を図ることができます。 ✅ コスト 印刷費・郵送費・封筒費・人件費に加え、電子契約の場合は印紙税も節約することができます(印紙税法第2条・印紙税法基本通達第44条)。 ✅ プロダクティビティ ユーザーはどこでも電子署名ができるので物理的な署名捺印の制約を受けず、また、進捗状況を即時に確認することができるので、効率的に契約締結プロセスを遂行することができます。 ✅ コンプライアンス ファイルは電子文書としてクラウドやローカルサーバー等に保存されるので紛失リスクを回避できます。また、可視化による締結漏れ等のリスクも削減することができます。 ✅ サステナビリティ 紙と輸送を前提としないので、紙の製造や廃棄に必要な素材や二酸化炭素排出量を削減でき、さらに、物流由来の環境負荷を低減することができます。 |
電子契約の導入ステップ
電子契約の導入は、単なるサービスの利用にとどまらない、組織全体の業務プロセスを見直すプロジェクトです。多岐にわたる検討を行う必要があるため、以下では、導入検討の初期段階から運用定着までを4つのステップに分割し、ステップごとの主な検討事項と注意点について解説します。

1|導入の企画・計画
本ステップでは、電子契約導入の方向性と体制を明確にし、社内の合意形成を進めることを目的とします。導入の目的・要件・対象範囲を整理し、後続ステップの基盤を固めることが重要です。
プロジェクトの組成
電子契約の導入は、法務・総務・経理・情報システム等の管理部門だけではなく、営業・開発等の広範な部門に影響を与えます。そのため、プロジェクトの初期段階から適切なステークホルダーを特定し、関係部門を巻き込みながら推進することが重要です。また、経営層の支援を早期に獲得することで、その後の調整をスムーズに進めることができます。
導入目的と要件の定義
電子契約を導入する目的は企業によって異なりますが、現状の課題を明らかにし、「導入により達成したい到達点(目的)」を明確に定義することが重要です。目的を定義することにより、その後のサービス選定や運用設計等の指針になります。目的を定義したうえで、法的要件、業務要件およびシステム要件等を定義していきます。
現状の業務プロセスの把握および理想の業務プロセスの策定
現状の業務プロセスを可視化し、具体的に課題がどこにあるかを洗い出したうえで、理想の業務プロセスを設計します。承認経路・署名権限・契約書保管の責任区分等を整理して構築することが重要です。
対象書類範囲の選定
電子契約の対象とする契約書の種類・締結数を整理し、優先順位を明確にします。ただし、契約書の作成が法律で義務付けられている契約類型もあるため、電子化の可否には注意が必要です。また、取締役会議事録等を電子化する場合は、商業・法人登記のオンライン申請対応の有無も考慮することが推奨されます。
社内規程・契約書ひな形等の整備
電子契約の導入に際しては、関連する社内規程の整備も必要です。電子契約に関連する主な社内規程について以下に解説します。なお、社内規程は株主総会や取締役会等が決裁する場合もあるので、スケジュール管理には注意が必要です。
- 電子契約に関連する主な社内規程
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文書管理規程:会社文書の作成、保存、廃棄および検索方法等について定めた規程
→会社文書全般に関する規程なので、電磁的記録やその保存場所(クラウド・サーバー等)等について修正する必要があります。印章管理規程:会社印章の種類・作成・管理等について定めた規程
→電子契約の導入前は、物理的な印鑑のみを指すことが通常ですので、電子署名に対応した内容に修正する必要があります。押印規程:会社文書に押印する場合の手続きや印章について定めた規程
→印章管理規程と同様、物理的な押印のみを指すことが通常ですので、電子署名に関する修正が必要です。
また、契約書ひな形の後文(契約書の通数・作成者・契約締結の方法等を記載している箇所)も、電子契約に対応した記載とする修正が必要です。
- 電子契約の場合の記載例
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本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、各当事者が電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。
サービスの比較・選定
電子契約は、ベンダーごとに提供機能や料金が異なります。自社の業務プロセスや統制に適したサービスを導入する必要があります。以下では、サービスの選定ポイントを紹介します。
- 料金体系・コスト構造
- 署名方式(当事者型/立会人型)
- 電子署名法・電子帳簿保存法・e-文書法・会社法369条3項等の法的要件対応の有無
- 商業・法人登記のオンライン申請対応の有無
- 一括送信機能の有無(最大○件、宛先や内容が異なる場合の可否を含む)
- 権限管理や監査ログ機能の有無
- セキュリティ要件・認証取得の有無・種類
- タイムスタンプの有無
- システム連携(モバイル対応の有無を含む)
- サポート体制 等
稟議・決裁
導入サービスの選定と関係部門の合意形成が完了したら、稟議申請を行い、社内承認を得ます。稟議内容には、次の要素を盛り込むと説得力が高まります。
- 導入目的
- 期待効果
- 選定したサービスの概要
- サービスの比較結果
- 社内規程や運用設計方針 等
2|設計・準備
本ステップでは、実際の運用ルールやシステム設定を具体化し、導入に向けた準備を整えます。運用設計・システム設定・関係者への周知を中心に、実行段階に円滑に移行できる体制を構築することが必要です。
運用設計
電子契約の対象とする契約の種類、署名・承認フロー、電子データの保存方法等、実務上の手順を具体的に定めます。決定した内容はマニュアル等にまとめ、手順に変更があった場合には更新して最新の状態を保つことが重要です。
システム設定
運用設計に基づきサービスのシステム設定を行います。自社のデータベースや他のサービスとの連携等、複雑な対応が必要な場合は、情報システム担当者などと協力して構築を行い、適切な設定を行う必要があります。
社内外調整
設計・設定が完了した段階で、関係者との最終調整を行います。以降の展開・定着化にも影響しますので、これまでのステップに関与しなかったメンバーには、資料を作成して実際の画面を見せながら説明を行うなど、丁寧な意思疎通を図る必要があります。
3|実行・テスト
本ステップでは、設計した運用を試験的に実施し、現場での課題を抽出・改善することを目的とします。小規模なパイロット導入から開始し、得られた知見を踏まえて全社展開に備えることが重要です。
パイロット導入
特に電子契約を初めて導入する際には、「パイロット導入」(小規模での試験的運用)も有効です。契約書の種類、部署および期間等を限定し、試験的に導入することで予期せぬ問題や現場での課題を早期に発見し、全社展開に備えた対策を講じることができます。パイロット導入のポイントは以下の通りです。
- ・対象契約:秘密保持契約等、標準化しやすい契約書から開始
- ・対象部門:契約件数が一定量あり、効果測定がしやすい部門で開始
- ・実施期間:1~3カ月を目安に設定(導入効果や課題が把握できる程度)
設定した導入目的と繋がるKPI指標(契約締結までのリードタイム、削減コスト等)を設定し、定性的・定量的に行うとより効果的です。
本格展開の準備
パイロット導入で得られた知見を反映したうえで、全社的な運用に向けた現場導入の準備を進めます。実際の利用者が安心して活用できる状態をつくることが重要です。以下に現場の抵抗を低減し、円滑に浸透させるためのポイントを紹介します。
- 現場導入を円滑に進めるためのポイント
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①説明資料の作成・配布
電子契約の導入は、業務フローの変更として負担を伴います。定着を成功させるには、まずその導入目的と具体的なメリットを丁寧に説明し、利用者の納得感と理解を得ることが不可欠です。また、現場での安定的な活用を促進するため、利用者が迷わず操作できるよう、以下のような分かりやすい資料を整備することも重要です。ベンダーが提供する資料がある場合は、積極的に連携し、実態に合わせてカスタマイズするということも考えられます。
マニュアル:基本操作や契約手続の流れを体系的に整理した資料
FAQ:利用者が直面しやすい疑問やつまずきやすい場面を整理した資料
操作動画:実際の画面を示しながら操作手順を解説した動画資料②社内研修・勉強会
資料の配布だけでは理解が定着しにくいため、社内トレーニングや勉強会を実施し、実際にシステムを操作しながら説明を受けられる場を設けることで、利用者の安心感が高まり、導入後の利用定着率を向上させることができます。③サポート窓口の設置
システム導入初期には、現場からさまざまな質問が必ず寄せられます。現場の混乱を最小限にするために、サポート窓口を設置することも重要です。窓口担当者には基本的な操作知識を持たせ、問い合わせ内容を集約・分析し、FAQやマニュアルに反映する仕組みを作ると、長期的に運用を安定させる基盤を構築することができます。
4|展開・定着化
本ステップでは、導入した電子契約を組織全体に定着させ、継続的に改善することを目的とします。具体的には、運用管理・モニタリング・ナレッジ更新を通じて、電子契約を業務プロセスとして安定的に運用することが求められます。
運用管理
電子契約の運用管理を適切に行っていくためには、以下の3点が重要なポイントとなります。
| ①権限・アカウント管理 人事異動や入退職に伴うアカウントの削除や権限変更は適宜見直す必要があります。加えて、定期的に棚卸しを実施することにより、内部統制の維持を高めることができます。 ②システム設定・メンテナンス管理 サービスベンダーからの機能アップデートをキャッチアップし、マニュアル等への反映や周知も行う必要があります。担当者を明確にしておくことが重要です。 ③監査対応・証跡管理 電子契約は、法的証拠力を前提としたシステム運用が求められます。署名履歴・アクセスログ・監査ログを適切に保管し、必要に応じて監査部門や外部監査人に提示できる状態を維持する必要があります。また、承認フローや代理署名ルールが正しく運用されているかを定期的に点検することで、ガバナンスの信頼性が高まります。 |
運用状況のモニタリングと改善
導入した電子契約を有効に活用し続けるためには、データに基づくモニタリングと結果を踏まえた改善が不可欠です。以下はモニタリング指標の例です。
✅ 電子契約の利用率・浸透率
✅ 削減コスト(人件費・印紙税・郵送費等)
✅ 契約締結までのリードタイムの短縮率
✅ 保管・検索に要する工数の減少 等
FAQやマニュアル等の更新
問い合わせ等により得られた知見は、整理のうえFAQやマニュアル等に蓄積します。定期的に更新することで現場は迅速に対応ができ、かつ、問い合わせ工数を減らすことができます。また、運用の属人化を防ぎ、再現性のある仕組みを構築することができます。
まとめ|電子契約でDX・生産性向上へ
上で述べたように、電子契約の導入には複数のメリットがあり、導入の負担やコストはかかるものの、社内のDXを推し進め、生産性を向上させる手がかりとなります。
適切に検討を行い、スムーズな電子契約の導入を実施して活用を図りましょう。
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