月200時間の労働時間は違法?
スケジュール例や残業代の計算方法、
給与目安、違法となるケースを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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月200時間の労働時間とは、所定内労働時間と残業時間を合計した1カ月の総労働時間が200時間に達している状態のことです。
・月200時間の労働時間といっても、一般的なフルタイム労働者の場合、そのうちの大部分は所定内労働時間のため、直ちに違法な長時間労働とはいえません。
・労働基準法36条に基づく時間外・休日労働に関する協定(36協定)を労使間で締結している場合、総労働時間が200時間でも、そのうちの残業時間が36協定の限度基準である月45時間以内であれば適法となります。
・36協定を締結し、残業時間が限度時間内に収まっていても、労働基準法37条で義務付けられている割増賃金が支払われていなければ、違法となります。本記事では、月200時間の労働時間の法的な扱いや給与計算への影響について、詳しく解説します。
※この記事は、2025年12月5日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
月200時間の労働時間が直ちに違法となるわけではない
労働時間が月200時間ということだけでは、労働基準法違反かどうかを判断できません。違法かどうかは労働契約の内容や労働時間の内訳(所定内労働か時間外労働かなど)などの要因によって判断が分かれるためです。
例えば、労働基準法32条では、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)という上限を定め、これを超える時間を時間外労働(残業時間)として規制しています。月200時間という総労働時間が適法か違法かは、時間外労働の扱いが適切かどうかが鍵となります。
適法・違法の判断基準となるのが、労働基準法36条に基づく時間外・休日労働に関する協定である「36協定」です。36協定とは、法定労働時間を超えて残業をさせるために必須となる労使協定です。
具体的には、月200時間のうちの時間外労働部分が、36協定で定められた上限時間(※)を超えている場合に違法となります(※特別条項のない協定の場合原則月45時間)。なお、36協定は届出に加え、従業員への周知も義務付けられており、違反すると処罰の対象となります。
一方で時間外労働だけで月200時間に達している場合は、どのような協定が結ばれていても認められない時間数のため、例外なく違法状態となるため注意が必要です。
月200時間の労働時間は法定労働時間の上限を超える水準
月200時間の労働は、1カ月あたりの法定労働時間の目安(約160〜177時間、月の暦日数により変動)を超えているため、必然的に時間外労働が発生していることになります。1カ月あたりの法定労働時間の目安は、「1日8時間、週40時間」という法定労働時間の上限から算出できます(週単位の基準を月に換算すると約160〜177時間となる)。
月200時間の労働時間と健康リスクの関係
適法な範囲の残業時間であったとしても、長時間労働は脳・心臓疾患や精神障害など深刻な健康被害を引き起こすリスクがあります。
厚生労働省が定める「過労死ライン」は、発症前1カ月間におおむね100時間、または発症前2〜6カ月間で月平均80時間を超える時間外・休日労働です。月200時間の総労働時間の場合、一般的な計算では残業時間は月26〜27時間程度となり、過労死ラインを下回るため認定基準に該当しません。
月200時間労働の場合の残業時間の目安
1日8時間勤務、土日祝日が休みという一般的な企業を例に挙げます。
この前提における月の所定労働日数は、祝日や暦の関係で約19日〜22日の範囲で変動します。時間換算すると約152時間〜176時間となり、総労働時間の200時間から所定労働時間を差し引くと、24時間(200-176)〜48時間(200-152)が所定外労働時間として算出されます。
また、所定労働時間が6時間など短い契約の場合は、残業時間はさらに長くなる点に留意が必要です。
なお、労働基準法や36協定の上限規制で問題となるのは、法定労働時間を超えた「法定外残業(時間外労働)」です。月200時間の総労働時間の場合、法定外残業は約27時間程度(年間平均の法定労働時間173.3時間を基準とした場合)となり、36協定の一般条項(月45時間以内)の範囲内に収まります。
労働時間が月200時間になるスケジュール例
労働時間が月200時間になるスケジュールは、業種や勤務形態(フレックスや変形労働時間制など)により異なります。以下では、一般的な完全週休2日制の企業で、所定労働日数が22日の月であることを前提に、どのような場合に月200時間労働になるかの例を3パターン紹介します。
- 毎日一定時間残業する場合
- 特定の曜日にまとめて残業する場合
- 休日出勤で労働時間を調整する場合
例1. 毎日一定時間残業する場合
月間の所定労働日数を22日と仮定した場合、月200時間の労働時間に達するには、24時間の残業が必要となります。1日あたりに換算すると、約1時間5分の残業が発生する計算です。
例えば、始業が9時、定時が18時の場合、毎日19時過ぎまで残業する勤務パターンです。毎日少しずつ残業時間が発生していることになるため、残業の常態化に注意が必要となります。
例2. 特定の曜日にまとめて残業する場合
月間の所定労働日数を22日、1日8時間勤務と仮定した場合、週1回6時間程度の残業を月に4回行うと、月200時間に到達します。
例えば、月曜から木曜は18時の定時で退社し、金曜日のみ24時頃まで残業するパターンがこれに該当します。週末の会議や月末の締め作業など、特定日に業務が集中する企業で見られるパターンです。
なお、22時以降の労働には深夜割増賃金(0.25倍)が発生するため、時間外労働の割増(0.25倍)と合わせて0.5倍の割増賃金支払いが必要です。
例3. 休日出勤で労働時間を調整する場合
毎週土曜日に6時間勤務を4回行うと、月200時間に到達します。
例えば平日は定時(18時)で退社し、毎週土曜日に9時から15時まで6時間勤務するパターンが該当します。繁忙期やプロジェクトの納期対応で休日出勤が発生する企業などで見られるパターンです。
なお、法定休日(労働基準法35条で義務付けられた毎週最低1日以上の休日)に労働させた場合は、労働時間にかかわらず少なくとも1.35倍の休日割増賃金が必要です。一方、法定外休日(企業の就業規則で定められた法定休日以外の休日)の出勤は、基本的には通常の賃金で計算します。
ただし、その週の労働時間が法定の40時間を超えた場合は、超過分について1.25倍の時間外割増賃金が必要です(法定労働時間を超えない部分は法定内残業として割増なし)。週40時間以内であれば、割増賃金は発生しません。
月200時間労働した場合の給与の計算方法
月200時間労働した場合の給与は、1時間あたりの賃金を算出し、労働時間を掛け合わせて算出します。その1時間あたりの賃金算出の分母となるのが、年間を通して平均化した「月平均所定労働時間」という基準値です。
この基準値を元に1時間あたりの賃金を算出し、さらに残業した時間が法定内残業か法定外残業かを区別し、それぞれに一定の割増率を適用して総支給額を計算します。
以下では、月給20万円・年間休日105日・1日8時間勤務の従業員が月20日の所定労働日数で200時間働いた場合の例を元に、具体的な給与の計算方法を解説します。
1. 月平均所定労働時間を算出する
まずは、月給を時給換算する際の分母となる「月平均所定労働時間」を算出します。月給制の場合、月によって暦の日数が異なるため、年間を通じて平均した1カ月あたりの時間数を使って「1時間あたりの賃金」を計算するのが原則です。
月平均所定労働時間は「(365日 − 年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12カ月」で算出します。実務上は月ごとの暦日で所定労働時間が変わりますが、年間休日105日・1日8時間勤務という条件に当てはめると、「(365日 − 105日) × 8時間 ÷ 12カ月」となり、月平均所定労働時間は約173.3時間となります。
2. 1時間あたりの賃金を算出する
1時間あたりの賃金は「(基本給+諸手当)÷月平均所定労働時間」で算出します。
ここで計算式に加算する「諸手当」とは、役職手当や資格手当など、仕事の内容や責任に対して支払われる賃金のことです。
一方で、家族手当や通勤手当、別居手当などの個人的事情に基づく手当は、計算式には含めません。労働の対価とは性質が異なる手当は、労働基準法において割増賃金の算定基礎から外す「除外賃金」と定められているためです。
仮に月給20万円の中に除外賃金が含まれていない(全て計算対象の賃金である)とした場合、計算式は「20万円 ÷ 173.3時間 = 1,154円」です。算出された1,154円は、残業代を計算する際の「1時間あたりの単価(1.0倍)」となります。
3. 法定外残業時間を算出する
次に法定外残業時間の時間数を計算します。1日8時間で20日の勤務ですから、月の所定労働時間は160時間になります。総労働時間200時間から160時間を差し引いた40時間が残業時間(所定外労働時間)です。
続いて、この40時間を「法定内残業時間」と「法定外残業時間」に切り分けます。それぞれの定義は以下の通りです。
- 法定内残業時間: 会社が決めた所定時間は超えているが、法定労働時間の上限(1日8時間・週40時間)には収まっている時間。
- 法定外残業時間:法定労働時間の上限を超えて働いた時間。割増賃金の対象となる。
本ケースでは1日の所定労働時間がすでに法定上限の8時間に設定されているため、定時を超えた労働は全て「法定外残業」となります。
したがって、法的に割増が不要な「法定内残業」は0時間となり、残業分の40時間全てが割増賃金(1.25倍)の支払い対象として計算されます。
4. 残業代を算出する
時間外労働の賃金は「1時間あたりの賃金×時間外労働時間×割増率」で算出します。
労働基準法が定める時間外労働の割増率は、原則として25%(割増率1.25)以上です(ここでは25%とします)。また、22時以降の勤務には別途深夜割増(25%)が加算されるため、合計の割増率は1.50です。
今回の例の場合、「1,154円 × 40時間 × 1.25」となり、残業代は57,700円と計算できます。
なお、2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働に対する割増率は50%(割増率1.50)へ引き上げられました。
5. 月の総支給額を算出する
月給20万円(諸手当なし)、1日8時間勤務、年間休日105日の条件で雇用された従業員が月200時間働いた場合、残業代は57,700円、総支給額(額面)は257,700円となります。
なお、算出された40時間の時間外労働は、36協定における原則的な上限(月45時間)の範囲内です。
月200時間労働が違法となるケース
月200時間働かせたこと自体ですぐに違法となるわけではありませんが、適切な労務管理や賃金の支払いがなされていない場合は違法となります。
月200時間の労働が法律違反となる具体的なケースは、以下のとおりです。
- 36協定を締結していない
- 限度時間(月45時間、年間360時間)を超えている
- 割増賃金が支払われていない
36協定を締結していない
36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合、労働基準法違反として処罰の対象となります。手続きを行わずに時間外労働をさせた場合、たとえ1分でも違法となります。
特に注意が必要なのが、36協定の有効期限です。過去に36協定を締結していても、有効期限が切れた36協定は「協定未締結」と同じ扱いとなり、その状態で時間外労働をさせると違法となります。
【特別条項付き36協定なしの場合】限度時間(月45時間、年360時間)を超えている
36協定における時間外労働の限度時間は、原則として「月45時間、年360時間」です。限度時間を超えて従業員に労働させるには、あらかじめ「特別条項付きの36協定」を締結しなければなりません。
したがって、特別条項付きの36協定を結ばずに限度時間を超えて時間外労働をさせた場合は、法的な要件を満たしていないため違法となります。
なお、時間外労働が限度時間を超えているかどうかは、対象期間の総労働時間から対象期間の総法定労働時間を差し引いた時間外労働時間で判断します。
【特別条項付き36協定の場合】時間外労働が絶対的な上限を超えている
特別条項付き36協定を締結すれば、原則の上限を超えて時間外労働をさせることが年6回まで可能です。ただし、特別条項付き36協定により原則の上限を超えられるのは、決算業務、ボーナス商戦、納期のひっ迫、大規模なクレームへの対応など、臨時的な特別の事情がある場合に限られます。
さらに、特別条項付き36協定を適用する場合であっても、企業は以下の法律で定められた上限を超えて、従業員を働かせることはできません。
| 【絶対的な上限】 ・時間外労働+休日労働の合計:単月100時間未満 ・時間外労働+休日労働の合計:2〜6カ月平均80時間以内 ・時間外労働のみ:年720時間以内 ・月45時間超は年6回まで |
企業には、単月ごとの労働時間だけでなく、2カ月から6カ月の期間における、時間外労働と休日労働の平均時間についても、上限を超えないよう厳密な管理が求められます。
割増賃金が支払われていない
法定労働時間を超える労働には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払う義務があります。
例えば、月200時間の総労働時間で法定外残業が30〜40時間発生している場合、対象となる法定外残業に対して割増賃金が正しく算出・支給されているかを精査しなければなりません。
また、固定残業代制度を導入している企業でも、あらかじめ設定された固定残業時間を実労働時間が超過した際には、不足分の割増賃金の支払いが必要です。「営業手当に含まれている」「年俸制だから残業代は出ない」といった理由だけで、実労働時間に基づく残業代の清算を怠ることは、労働基準法違反となります。
長時間労働を減らす方法
長時間労働を削減するには、以下のような複数の施策を組み合わせる必要があります。
- 朝型勤務やノー残業デーなどの働き方を導入する
- 勤怠管理システムで労働時間を正確に把握・管理する
- 業務改善により業務効率向上を目指す
- 計画的に従業員教育を実施する
朝型勤務やノー残業デーなどの働き方を導入する
ノー残業デーや朝型勤務の導入により、長時間労働を削減できます。
ノー残業デーは週1回など定期的に定時退社日を設け、管理職が率先して退社を促す取り組みです。例えば「毎週水曜日は18時完全退社」と明確に定め、守れない場合は振替日を設定するなど、柔軟な運用ルールが効果的です。
朝型勤務は、夜20時以降の残業を原則禁止し、早朝勤務にシフトさせる制度を指します。
勤怠管理システムで労働時間を正確に把握・管理する
勤怠管理システムを導入し、労働時間をリアルタイムで可視化することで、36協定の上限超過を未然に防げます。
クラウド型の勤怠管理システムによっては、従業員の労働時間を日次で集計し、時間外労働が一定時間に達した時点で本人や上司に自動で警告メールを送信する機能が備わっています。
勤怠管理システムを利用することで、月末の締め作業で初めて超過に気づくのではなく、月30時間や40時間の段階で警告を出すことで、違反ラインに到達する前に業務調整や人員配置の見直しが可能です。
また、PCのログイン・ログオフ時間と勤怠打刻時間の乖離を自動チェックする機能により、実労働時間と申告時間の差異を把握し、未払い残業の防止につながります。
業務改善により業務効率向上を目指す
業務プロセスを見直し、不要な業務を削減することで、労働時間の短縮が可能です。業務改善には「ECRS(イクルス)の原則」が有用です。具体的には、以下の4つの視点で改善を図ります。
- Eliminate(排除):不要な会議や資料作成をなくすこと
例)形骸化した定例会議の廃止、閲覧されていない日報作成をやめる - Combine(結合):類似業務をまとめること
例)関連する複数の会議を一本化する、情報共有と報告を同時に行う - Rearrange(交換):業務の順序、場所、担当者を入れ替えて効率化を図ること
例)業務プロセスの順序を最適化する、営業ルートを見直して移動距離を短縮する - Simplify(簡素化):ツールによる自動化やマニュアル作成で作業を簡素化すること
例)手入力での集計作業をRPAやマクロを活用して自動化する
計画的に従業員教育を実施する
業務の属人化を解消し、複数の従業員が同じ業務を遂行できる体制を構築することで、特定の担当者への業務集中を防ぎ、長時間労働を削減できます。
まず、各業務の手順やノウハウをマニュアル化・ドキュメント化し、可視化することが重要です。マニュアルを基に定期的に担当業務をローテーションさせ、一つの業務を複数のメンバーが遂行できるバックアップ体制を構築します。
また、管理職に対して、労働時間管理や安全配慮義務に関する法的知識、部下の長時間労働を是正するマネジメント手法の教育も必要です。管理職の労務管理スキルを向上させることで、組織全体の長時間労働削減につながります。
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参考文献
監修者












